屋上庭園

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古代の屋上庭園

『バビロンの空中庭園』
16世紀オランダ人画家マルティン・ファン・ヘームスケルク英語版油彩画新バビロニアの王都バビロンを描いた想像画であり、空中庭園を近景、バベルの塔を遠景として描いている。

近現代の屋上庭園

キューバサンティアーゴ・デ・クーバにあるカーサ・グランデ・ホテルの屋上庭園
21世紀の屋上庭園、なんばパークス
日本大阪市2007年撮影。

屋上庭園(おくじょうていえん、英語roof garden)とは、建築物の上層部、すなわち屋上ベランダなどといった地表から離れた高所に造られた庭園のことである。

古くは、世界の七不思議の一つに数えられた、古代メソポタミア新バビロニア王国における「バビロンの空中庭園」が有名であるが、現代の比較的規模の大きい屋上庭園の場合、この有名な「空中庭園(英語:hanging garden)」になぞらえて「空中庭園」と雅称されることも少なくはない[1]。ただし、「屋上庭園」と違って「空中庭園」は定義されることのない名称であり、庭園の定義に適う設備を持たない空中庭園も存在する(後述)。

概要[編集]

ビルなど屋根が平で屋上を持つ建築物の空間癒しや潤いを求めて緑を置くケースは増えてきたが、従来[いつ?][どこ?]鉢植えプランターを置くだけであった。このようなものも屋上庭園であるが、さらに推し進めて、客土によって人工地盤を造り、植栽を施して造園することも珍しいケースではなくなってきた。例えば21世紀初期の日本首都圏など都市部では、ヒートアイランド現象解消の切り札としても注目を集めている。

現代の屋上庭園[編集]

荷重対策[編集]

建物の上に植物を植えるのに加えて、客土を加えるため、どれだけの重さが建物にかかるかを計算して植栽計画を立てる必要がある。目安としては以下のものがある。植栽当時小さくても成長した場合はこれらの人工土壌の条件は変更できないので十分な計画が必要である。

  • 地被植物(例:芝生)の場合、客土の厚さは15cm以上。必要重量は300kg/m²
  • 低木(50cm以上、2m未満の樹木など。例:ツツジサツキ)の場合、客土の厚さは30cm以上。必要重量は500kg/m²。
  • 中木(2m以上、3m未満の樹木など)の場合、客土の厚さは40cm以上。必要重量は700kg/m²。
  • 高木(3m以上の樹木など)の場合、客土の厚さは60cm以上。必要重量は1,000kg/m²以上。

土壌改良[編集]

荷重対策の一環として比較的軽い土を使用する。また通気性、排水性、保水性などと水素イオン指数 (ph) を考慮に入れて土壌を作る。 2から4割ほど土壌改良材を入れるようにする。土壌改良材にはバーミキュライトピートモスなどがある。

_時代[いつ?]頃から、土以外の素材に根を張らせるための技術が開発されている。その例として、緑化コンクリート、吸水性ポリマーなどがある。緑化コンクリートは壁面緑化などにも使われており、吸水性ポリマーについては、屋上緑化以外にも、砂漠化対策や農業などの分野に使われている。

防水対策[編集]

植物には水が不可欠であるがコンクリートが水に腐食しないように注意を払う必要がある。スラブと呼ばれる、屋根の地の部分にモルタルを塗り、防水シートを敷くなどの方法が考えられる。

給水設備[編集]

給水管を埋設し、タイマーによる水遣りやスプリンクラーを使用することが考えられる。

排水処理[編集]

人工地盤のため、水がたまりやすく、植物の根を腐らせる虞が高い。余分な水が速やかに排出されるように配慮が必要である。 その方法には以下のものがある。

  • 勾配をつける。
  • 排水層を設ける。
  • 配水管を埋設する。

風圧対策[編集]

高木を植えた場合、土壌が軽いことや、根が浅いことから台風などの強風で抜けてしまうことが考えられる。対策としては、単一の植樹はせずに、ある程度寄せて植えることが考えられる。

屋上庭園の一覧[編集]

ここでは、著名もしくは重要な屋上庭園を、時代順もしくは地域別で列記する。

近世以前の屋上庭園[編集]

近現代の屋上庭園[編集]

日本国外[編集]

シンガポールにある、シティハーベストチャーチの屋上庭園/2006年撮影。
ニューヨークにあった、アスターホテルの屋上庭園
ヨーロッパ
ル・コルビュジエの設計によるもの
アジア
北アメリカ
アメリカ合衆国ニューヨーク州。非現存。■右に画像あり。
南アメリカ
  • ブラジル文部省庁舎 屋上庭園
  • ブラジル再保険協会庁舎 屋上庭
未整理
  • オークランドミュージアム 屋上庭園

日本国内[編集]

北海道
2011年平成23年)9月23日に開園した[2]北海道初の本格的屋上庭園[2]。敷地面積約1300テレビドラマ風のガーデン』の舞台となった富良野の庭園を手がけたガーデンデザイナー上野砂由紀が監修した屋上庭園[2]
宮城県
福島県
群馬県
埼玉県
千葉県
東京都区部
開業当時の松屋浅草支店
屋上に8人乗りロープウェイを目玉とする庭園型の遊戯施設「スポーツランド」が見える。
1907年明治40年)に開園した[4]、総面積60(約198.4m²)程度で、噴水盆栽、廻転パノラマ望遠鏡などを備えた非常設型の施設。日本初の屋上庭園。非現存(1970年代初頭[4]に閉園?)。
1931年昭和6年)11月1日の浅草支店開業時に開園した[5]、日本初の常設型屋上庭園[4]でもある遊戯施設。「○○ランド」という命名法の元祖[5]。施設は屋上と7階とで構成され、屋上には、庭園、動物園、自動木馬、8人乗りロープウェイ「航空艇」、ミニチュア機関車、その他様々な遊戯設備が設置されていた[6]2010年(平成22年)5月31日閉園。■右列に画像あり。
屋上面積20,167m²のうち2,731m²に、草花を中心とした400品種以上の低木地被植物を植栽[7]。設計 日建設計[7]中央区晴海、所在。
3階部が横に広がる形で屋上庭園になっている[8]。敷地面積は東京ドームグラウンドの約3分の1[8]。文京区後楽、所在。
施設面積約500m²、中高木約40本[10]千代田区霞が関、所在。
1984年(昭和59年)3月に整備された[12][7]、施設面積2,614m²の屋上庭園[12]2013年(平成25年)に改修竣工予定[11]。設計 国際航業、ほか[7]。千代田区神田駿河台、所在。
成城コルティの屋上庭園(西側)/東京都世田谷区。2008年撮影。
2013年(平成25年)3月末日、開園予定(現在、未完成)。「大橋“グリーン”ジャンクション」の「目黒天空の庭」と銘打って、ジャンクションループ線の屋上を全面的に緑化し、加えて、富士山の眺望が見所であることから、富士見台が設けられる。庭園の面積約7,000m²、一周400m、幅16〜24mの回遊路が地上11〜35mの高さを結び、24mの高低差を持つ[13][14][15][16]。また、換気所[* 1]の屋上には自然再生緑地「おおはし里の杜」が整備されている[17]目黒区大橋、所在。
東京都多摩地域
神奈川県
静岡県
愛知県
三重県
新潟県
中央の建物の屋上全面が庭園になっている[18]。また、周囲の5箇所には「空中庭園」と名付けられた地表の庭園がある[18]
富山県
俯瞰で見るなんばパークス大阪市。2007年撮影。
兵庫県公館の屋上庭園
神戸市。2005年撮影。
アクロス福岡 ステップガーデン
福岡市。2009年撮影。
京都府
芝生広場やハーブ園鳥類食餌木など100種を超える植物を植栽し、井戸水を利用したビオトープも設置している[7]京都府久御山町、所在。
奈良県
大阪府
兵庫県
広島県
香川県
愛媛県
福岡県
隣接する天神中央公園と一続きとなって、小さな緑化地帯を形成する[20]。山のを一から育てるような設計思想で造園された施設であり、竣工当時は苗木が植えられただけでコンクリート面と骨組み剥き出しの状態であった[1]土壌も現地で作られ、風媒鳥媒による自然木の根付きも手伝って、20年後には当初75種類であった木々は200種類近くまで増え、森とも呼べる規模に育った[1]。■右列に画像あり。
長崎県
鹿児島県

屋上庭園でない空中庭園[編集]

日本の東京都にある代々木ゼミナール本部校代ゼミタワーの空中庭園[21]大阪市にある梅田スカイビルの空中庭園展望台などは空中庭園を謳ってはいるが、庭園という定義に適うような緑化空間は存在せず、「空中のやすらぎ空間」といったようなコンセプトの施設である。

上記以外で、屋上庭園でないことが明らかな、あるいはその可能性が高い空中庭園を、以下に挙げる。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 換気所とは、換気に必要な送風機などの設備を納める施設のことで、当地では1棟のビルになっている。

出典[編集]

  1. ^ a b c 「空中庭園」 『美の壺』 NHKテレビ
  2. ^ a b c 大都会の屋上で想像を膨らませる北海道の草原情景 - 空のガーデン”. (公式ウェブサイト). 札幌市 (2011年10月4日). 2012年10月26日閲覧。
  3. ^ a b c d e f 屋上緑化部門:屋上緑化大賞(国土交通省大臣賞) (PDF)”. (公式ウェブサイト). 財団法人 都市緑化機構 (2012年3月). 2012年10月26日閲覧。
  4. ^ a b c 東京 屋上物語 第1回 松屋浅草”. まだある昭和ナビ(ウェブサイト). 大空出版. 2012年10月26日閲覧。
  5. ^ a b c 松屋の沿革”. (公式ウェブサイト). 松屋. 2012年10月26日閲覧。
  6. ^ 『松屋百年史』 社史編集委員会編、株式会社松屋、1969年11月
  7. ^ a b c d e f 屋上緑化部門:国土交通省大臣賞 (PDF)”. (公式ウェブサイト). 財団法人 都市緑化機構 (2012年4月3日). 2012年10月26日閲覧。
  8. ^ a b 進化する、東京ドームシティ。進化させる、ミーツポート。 (PDF)”. (公式ウェブサイト). 株式会社東京ドーム (2007年6月). 2012年10月26日閲覧。
  9. ^ 「霞ヶ関合同庁舎3号館屋上庭園」の公開について”. (公式ウェブサイト). 国土交通省 (2012年). 2012年10月26日閲覧。
  10. ^ a b 国土交通省屋上庭園”. (公式ウェブサイト). 国土交通省. 2012年10月26日閲覧。
  11. ^ a b “三井住友海上、東京・千代田区の環境性能ビル「駿河台新館」の使用開始 都内トップクラスの環境性能ビル、三井住友海上駿河台新館が完成”. 日経電子版 (日本経済新聞社). (2012年5月2日). http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=308842&lindID=3 2012年10月26日閲覧。 
  12. ^ a b c d 駿河台ビル・新館の緑地”. (公式ウェブサイト). 三井住友海上. 2012年10月26日閲覧。
  13. ^ 大橋“グリーン”ジャンクション”. (公式ウェブサイト). 首都高速道路株式会社. 2012年11月9日閲覧。
  14. ^ まちと一体化する大橋“グリーン”ジャンクション”. (公式ウェブサイト). 首都高速道路株式会社. 2012年11月9日閲覧。
  15. ^ 大橋ジャンクションでつながる”. 東京SMOOTH(公式ウェブサイト). 首都高速道路株式会社. 2012年11月9日閲覧。
  16. ^ 平成24年10月20日(土曜日) 目黒天空庭園見学会 全国初! ジャンクションの屋上に憩いの公園! - 目黒区報道ニュース”. (公式ウェブサイト). 目黒区 (2012年10月20日). 2012年11月9日閲覧。
  17. ^ 大橋“グリーン”ジャンクション”. 首都高エコ通信(公式ウェブサイト). 首都高速道路株式会社. 2012年11月9日閲覧。
  18. ^ a b 庭園”. (公式ウェブサイト). 新潟市民芸術文化会館(りゅーとぴあ). 2012年10月26日閲覧。
  19. ^ 環境への基本姿勢”. (公式ウェブサイト). 京都機械工具株式会社 (KTC). 2012年10月26日閲覧。
  20. ^ ステップガーデン”. (公式ウェブサイト). 福岡市. 2012年10月25日閲覧。
  21. ^ 代々木ゼミナール本部校 代ゼミタワー オベリスク (PDF)”. (公式ウェブサイト). 社団法人 日本建築業連合会 (2008年12月). 2012年10月26日閲覧。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]