ハーブ園

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ハーブ園(ハーブえん)、ハーブガーデンとは、ハーブで構成された花壇のことで、香草、薬草であるハーブを植えることで、その収穫と利用、あるいは草姿、花、香りを楽しむ庭園。薬草を育てている場合は、薬草園と呼ばれる。

概要[編集]

西洋では中世に修道院バラやハーブを中心にした庭を作りはじめているが、これは医薬用の植物栽培という実用面での側面があった。ハーブ類で庭を構成すると花が少なく緑色が多くなる傾向があるため、現在では草木の高さや、大きさ、遠近法などで変化をつけ、カラーリーフなどが多用される。

江戸時代には、幕府が各地の薬草園へ採薬使を派遣し、各地の人々に薬草知識を広めると共に幕府へ薬を持ち帰る活動を行った[1]

ハーブ園の例[編集]

ハーブスパイラル[編集]

初夏のハーブスパイラル

ハーブスパイラルまたはハーブスネイルは、立体的なガーデニングベッド(高床)でキッチンハーブ栽培するものである。

パーマカルチャー・デザインの一例。その構造は、異なる気候帯の植物が必要とする条件を、非常に小さなスペースで満たすことを可能にしている。

構造[編集]

ハーブスパイラルの側面
特別な形:キュケルハウスによる感覚伝達のためのらせん状の薬草迷宮
植栽を含むハーブスパイラルの構築スキーム

螺旋が石の山を巻いて、上向きになっている。充填された土は、上部にいくほど砂が混じり、透水性を高めていく。

下から見ると、南側(北半球では北側)の日陰にある小さな池からハーブのスパイラルが始まっている。これにより、湿度の高いマイクロクライメイトが形成される。

真ん中の部分をノーマルゾーンと呼び、あたりの土壌は腐植質も残っているが、湿潤地帯よりも透水性が高いという点で、典型的な中央ヨーロッパの栽培条件に相当する。ここには、部分的に日陰になっている場所もあります。ここでよく育つ植物は、たとえばパセリコリアンダータラゴンキャラウェイオレガノバジル等である。

螺旋の上部には乾燥地帯が形成されている。土壌は透水性があり、無駄がなくなり、ハーブスパイラルの内部構造により、水はけがよくなっている。これは、セージタイムラベンダーなど、地中海沿岸の多くの料理用ハーブにとって理想的な条件である。

これらのゾーン間の移行は流動的で、幅広い栽培条件をカバーすることができる。

害虫駆除と同時に花の受粉をサポートするエコロジーを考えるなら、巣作り補助剤を使うことで、動物にとって適切な生息環境を形成する可能性がある。よく知られていることであるが、ランドスケープの消費によって利用できる自然環境が少なくなっていることである。

ニッチ巣箱は、ニッチもしくは半端なに大人気であるが、ネコテンカササギなどの家畜が原因で、ミソサザイルリビタキなどの個体数が絶滅の危機に瀕している。捕食者対策が施されたキャビティを使用することで、これらの鳴禽類を保護することができるのである。

スパイラルの南側に設置された昆虫の巣箱は、野生のハチジガバチなどのヒメバチ類の生息地となる。暑さが大好きなそれら生物はこの場所をありがたく受け入れてくれることであろうが、これらの昆虫を庭に定着させることは「害虫」の個体数を調整するという副次的な効果もあり、庭の生態系バランスを考える上でも重要である。また、哺乳類の場合は、害虫駆除に有効なトガリネズミの住処にもなっていく。ここでは、あるコンパスの方向に沿った方位を意識する必要はない。

イモムシナメクジを食べるハリネズミには、ハリネズミの巣箱を設置することで何とかなる。野生では、木の切り株のくぼみや葉っぱの山を好んで住むので、その中にきちんと刈り込まれた庭の世界は必要がない。

歴史[編集]

ハーブスパイラルは、オーストラリア人のビル・モリソン (Bill Mollisonにさかのぼる[2]。彼は1981年に「パーマカルチャー」の概念で「ライト・ライブリフッド賞」を受賞した。同年、彼は講演で、1978年にアボリジニの砂紋からヒントを得て、ハーブスパイラルを発明したことを紹介した。1988年に出版された『パーマカルチャー:デザイナーズ・マニュアル』[3]は、自然界や様々な原始民族の間で象徴的な螺旋形が普遍的に存在することを詳しく述べ、彼のハーブ・スパイラルの絵も添えている。パーマカルチャーの要素の中でも、ハーブスパイラルは特に最初から成功していたのである。世界中のプロやアマチュアのガーデナーが真似をし、ガーデンショーやモデルガーデンでも何度も目にすることができる。

脚注[編集]

  1. ^ Ⅱ 自然へのあついまなざし―18世紀”. www.ndl.go.jp. 国立国会図書館. 2023年8月9日閲覧。
  2. ^ The Herb Spiral - an Element of Permaculture. 特集「パーマカルチャーからの便り」、Mitteilungen des Permakultur Institut e.V., Steyerberg. 1991年4月
  3. ^ Mollison, Bill: Permaculture: A Designers' Manual. Tagari Publications, 1988, ISBN 0-908228-01-5(英語)

参考文献[編集]

  • Member's Voice(ハーブガーデン&好きなハーブ編) (特集 アロマテラピー/精油と植物(種子・果実・根茎編)) Aromatherapy environment (53), 2009年9月
  • ハーブガーデンへ出かけよう(10)松江イングリッシュガーデン「ハーブとライフスタイル」Gott Keith Aromatherapy environment (46), 2007年12月
  • 三輪 進 , 農業法人と経営(32)新しい活路へ向けたサービス業型 オオバ生産 大分県・(有)ハーブガーデン , 農耕と園芸 61(9), 80-82, 2006年9月号
  • ハーブガーデンへ出かけよう(1)「布引ハーブ園」見てある記 Aromatherapy environment (36), 2005年6月
  • 市川 恵子 , ぶきっちょさんのハーブガーデン-作り方と楽しみ方 , 月刊ゆたかなくらし , 2004年1月号-2005年1月号
  • 長谷川 由美 , ハーブだより Japan aromatherapy , 2004年
  • 実践してわかった導入のための発見&反省ポイント (特別企画 高校生 夏休み一日「職人体験」実践レポート-ハーブガーデンで農業体験/高級レストランで調理体験/風鈴工房で風鈴制作) キャリアガイダンス, 2000年11月号
  • 双葉SA(上り線)ハーブガーデン構想・ハーブガーデン=リサイクル・イージーメンテナンス&サービス , 道路と自然 25(1), 1997年11月号
  • 中島 宣隆, 園芸 わたしのベジタブル&ハーブガーデン , 婦人之友 91(3), 1997年3月号
  • 加藤 宏子, 農業における新産業の成立過程・ハーブ産業:三春ファームハーブガーデンの事例を中心に , 家政経済学論叢 (32), 1996年5月号

関連項目[編集]