ランドスケープ・プランニング

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ランドスケープ・プランニング:landscape planning)とは、 ランドスケープ・アーキテクチュアのうち、都市地域、地方広域圏、国土保全に至る規模のプランニング計画策定行為。

類似の用語・用法に造園計画があり、『造園用語辞典』(東京農業大学造園科学科編、彰国社、1985/1996 ISBN-10: 4395100058 ISBN-13: 978-4395100057)によると、この語の英語表記は (landscape planningではある。

概要[編集]

武内和彦は、現代ランドスケープ・プランニングを捉える構図:特集・ランドスケープ・プランニングの現在-ランドスケープ研究65(3)(2001年)において、日本における景観という言葉が、日本にランドスケープ概念を導入した人物の一人である地理学者辻村太郎の著書(1937年、『景観地理学講話』)において、「混同を防ぐ為に此所では地域の意味を含ませない」とし、「大罷に於いて眼に映ずる景色の特性と考へて差支ない」と述べている翻訳による概念の変化や視覚的側面に限定されたものと多くの人々によって理解されてきた綾小化をとりあげて、これを避けるため、また世界共通の課題としてランドスケープ・プランニングを議論するために、日本で「ランドスケープ・プランニング」という表記を定着させるべきとしている。これは日本語においてランドスケープ計画として表記することもできるが、日本語の「計画」という言葉ではプランニングとプランの違いが表現できないためとしている。同じ号の特集でハノーファー大学のフォン・ハーレンの文『ヨーロッパにおけるランドスケープ役割と可能性・プランニング』から、参加型の計画づくりが進むにしたがって、固定された目標像としてのプランよりも、そこに到達する過程であるプランニングが重要視されるようになろうと指摘し、その意味でもプランニングはそのまま表記する方が望ましいとしている。

なお、日本の景観法における景観計画の英語表記は、landscape planである。

この他武内は、ランドスケープ・プランニングは一般に一つは視覚・心理的な側面を重視した計画、もう一つは生態環境的な側面を重視した計画という二面性をもつものとして捉えられてきたとし、日本語では、前者を風景計画、後者を環境計画と言い換えることも可能としているが、自身の国際会議などをつうじて確認して、こうした二面性を併せもつことこそがランドスケープ・プランニングの特質だということとしており、ハーバード大学のカール・スタイニッツが示した歴史的なランドスケープ・プランニングの発展過程でそのことが裏付けられ、心象風景から全体地域に至るまで、その概念の多義性こそが、ランドスケープの特質とし、ランドスケープ・プランニングの二面性をむしろそのような多義性を内包しているがゆえに、ランドスケープ・プランニングは、単なる風景計画や環境計画とは異なるユニークさを有しているとしている。

フォン・ハーレンはランドスケープ・プランニングも、生態系や審美性さらには人間の要求をも包含した総合的な行為であると考える必要を示し、また持続的な土地利用という理想のもとに、ランドスケープの多機能性に注目した空間的な環境計画である、と定義することもできること、そして既存または新たな土地利用の形態あるいはモデルの持続性を生態系と審美性の両面において持続的な生産性と関連づけながら評価するものであるとしている。その意味でランドスケープ・プランニングの焦点は,持続性の追求にあるとし、また経済面や、参画性を的確に組み込むことでさらなる相乗作用を見込むこともできるとしている。

丸田頼一編『環境都市計画事典』(朝倉書店、2005、ISBN:9784254180183 ISBN:4254180187)には、 ランドスケープ計画 Landscape Planning についての解説がある。 この書によると、ランドスケープ計画とは、対立しがちな人間の諸活動とその基盤となる自然的環境の相互関係を整序しながら、ランドスケープを持続的に保全・整備し、利用するために策定される計画であり、環境都市計画の基本目標の実現を支援する最も重要な計画の1つであると解説している。そして、一般に、ランドスケープ計画は、様々な特性を内包する全体空間を主たる対象とし、広域圏、都市および地区のおのおのの空間スケールに対応する必要があることを指摘している。

32A 環境都市計画の意義・目標 環境都市とランドスケープ Environment City and Landscape では、今日都市の整備に際しては、環境保全、防災レクリエーション、景観保全等様々な機能・効果を有する緑・緑地の保護・保全、公園緑地の系統的配置等をもって都市のグラウンドデザイン(ground design)を形成し、生態的にも適正な空間秩序による持続性ある環境都市の形成を目途としていること、また、環境都市・スマートシティ(環境配慮型都市)の創造にあたって、地球的規模での環境保全を視野に入れ、将来にわたって自然と人間活動との循環体系を重視する必要があることからかんがみ、このような局面において、ランドスケープの視点から、欧米での都市整備の特色を概観すると、欧州では、地域古来の風土や文化に根ざした整備が中心となってきていることを指摘し、ドイツのとイギリスアメニティ思想、アメリカ合衆国についての変遷をとりあげ解説している。

ドイツでは、その思想が今日の生態学的視点を重視した土地利用計画や都市整備にまで及んでいる。特に1976年制定の連邦自然保護・ランドスケープ保全法により、州や都市レベルで「ランドスケープ計画」が策定される。

自然生態的特性に特に配慮したランドスケープ計画の1つとしてよく知られている、ドイツの「ラントシャフツプラン (de:Landschaftsplan」。その特徴としては、 調査および解析・評価の段階において、ヒートアイランド現象や大気汚染にかかわる都市気候の改善、ビオトープの保全等の生物多様性の確保の側面が特に重視されていることが指摘でき、これを計画に、明確に位置づけている。

また、計画立案のプロセスにおいて、「都市建設管理計画 (de:Bauleitplan」Bプランの中の「土地利用計画 (de:Flachennutzung-splan」Fプラン、との一体化が義務づけられている。 このFプランやBプランと連携させつつ、都市計画に計画を組み込むことにより、都市と自然との調和、都市環境の質的向上等が体系的に図られている。

ドイツにおけるランドスケープのプランニングでは、プランニングと都市建設管理計画ふたつが実施され、課題の解明、予備調査をへて、ランドスケープ計画を伴った都市建設管理計画策定の必要性に対する意志決定(都市建設管理計画では、ランドスケープ計画を伴った都市建設管理計画策定の必要性に対する意志決定)を行う。 その後、ランドスケーブ要素・自然の質の把握(都市建設管理計画では、都市計画現況調査)、 ランドスケープの機能・解析・評価(都市建設管理計画では、都市計画の評価)、 を行い、ランドスケーププランナー判定:土地利用に対するランドスケープ育成上の総括的コンセプトの作成と、都市計画思想案の策定と、ランドスケープ計画の立案、ランドスケー計画構想(都市建設管理計画では、都市建設管理計画構想)をへて、主要なランドスケープ計画を伴った都市建設管理計画構想、地権者等関係者との協議、公開協議、制度上の手続きという流れとなっている。

『環境都市計画事典』では、米国について、19世紀末、広大な国土において都市や地域ごとに特徴的な整備や都市デザインの展開が主流となり、特に、公園緑地系統による都市デザインの起源となった「パークムーブメント」(1858年)公園緑地系統をはじめとして、20世紀前半の都市美運動近隣住区論等の思想が脈々と流れてきたこと、また、20世紀半ばより造園実務にかかわる人物らが自然資源や都市景観の視覚的、空間的構造等を詳細に捉えた「ランドスケープデザイン」、人間的スケールによるコミュニティ形成等を重視した発想が影響力を及ぼすとともに、環境汚染の深刻化に対する法制化が活発となった。

このような中で、イアン・マクハーグの「デザイン・ウィズ・ネイチャー」(1969年)が刊行され、ランドスケープの科学的分析を土地利用計画に反映させたエコロジカルデザインの提唱を取り上げ、これは近年GIS技術の進歩に伴い、多角的に実用化されていること、また、20世紀後半以降は、大量生産・消費型の経済活動等を前提とする都市整備がもたらした環境悪化への反省から、新興住宅地や再開発等のコミュニティ単位を中心に、都市・地域レベルを対象として人間的な価値とランドスケープの統合に規範を置いたニューアーバニズム、健全な都市成長を目指すスマートグロース等が提唱されていることで、環境とさらに共生都市に向けた包括的な計画や事業手法への転換がみられているとしている。

『環境都市計画事典』ではまた、計画策定にあたって、計画目的および計画対象範囲を設定した後、ランドスケープにかかわる基礎調査および解析・評価を実施するとし、以下のとおり示している。

  • はじめに調査では、自然的条件(気象地形水系地質土壌植生動物相等)、社会的条件(土地利用、公災害、法適用、文化財、緑地の保全志向、レクリエーション志向等)、その他(レクリエーション資源・施設、景観等)に関して幅広い調査項目を設定する。
  • 次に、主として緑地の諸機能を多様な側面から解析・評価する。また、環境都市との関係で、都市の生態性にかかわる自然環境保全、健康性にかかわるレクリエーション、安全性にかかわる防災、快適性にかかわる都市景観、その他、教育・文化性や連帯性にかかわる側面からの解析・評価が考えられる。また、解析・評価の結果はオーバーレイによる総合化、シミュレーションによる予測等へと展開される。
  • そして、計画の課題や目標の検討、計画原案の提示、代替案の検討等を経て計画が決定され、緑地の配置パターン、保全・整備の目標、目標実現のための施策等が導き出される。

同書には、緑地機能とランドスケープ計画の対象空間、調査項目および環境都市計画の目標との関係を示してある。

緑の基本計画[編集]

『環境都市計画事典』では日本の都市における代表的なランドスケープ計画としては、都市緑地法に基づく緑の基本計画をあげている。「緑の基本計画」は、緑地機能を環境保全、レクリエーション防災および景観構成の4系統に分け、各系統の解析・評価を総合化し、緑地の多面的・複合的な機能を最大限に発揮し得る緑地パターン、緑地の配置計画や実現のための施策の方針を導き出す計画手法を採用しており、各自治体においてその策定が推進されている。

こうして日本において近年、緑の基本計画の推進のほか、エコシティ等の環境保全型都市整備や様々な都市緑化施策等が展開されつつある一方、都市整備に関する法体系の不備、経済性や利便性の優先、都市景観や市民活動に関する国民意識の歴史的希薄さ等は否めず、環境都市の構築に重要な環境教育・学習等も緒に着いたばかりであるとし、今後、景観法や都市緑地法等の運用をも踏まえ、ランドスケープに視座した積極的な環境都市の追求が必要としている。

参考文献[編集]

  • ランドスケープ・プランニング : その理論と実際(B.ハケット著 ; 蓑茂寿太郎鹿島出版会 1977年)
  • プロセス アーキテクチュア 127 : Ecological Landscape Planning(横張眞祐乗坊進篠沢健太責任編集 プロセス アーキテクチュア 1995年10月)
  • 丸田頼一:都市緑化計画論、丸善、1994
  • デーヴィッドL・スミス著、川向正人訳:アメニティと都市計画、鹿島出版会、1977
  • ランドスケープ大系第1巻ランドスケープの展開、日本造園学会編、技報堂出版、1996

関連項目[編集]