鉄道模型

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HOゲージのレイアウト
Oゲージのジオラマ

鉄道模型(てつどうもけい)は、一定の縮尺軌間による鉄道車両線路模型をいう。

目次

概要 [編集]

指先でつまめるようなサイズのものから、実物の数分の一で、乗用台車を牽引して跨って乗れる程度のものまで、実物のように動作をする列車模型と、その周りの情景を含め一般的に「鉄道模型」と呼ぶ。

当初は高価な趣味であったが、一般に普及するにつれて庶民の住宅事情を反映し小サイズの模型がより普及する傾向にある。かつてはブリキ製の玩具との境界はあいまいであったが、次第に決められた縮尺・軌間によって車両やレイアウトジオラマを製作して、コレクションしたり線路上を走行させて鉄道の情景を楽しむための規格が定められるようになった。

遊戯施設などで実物の鉄道の1/3サイズで製作され、客車の内部に乗車できるもの(イギリス:ロムニー・ハイス&ディムチャーチ鉄道、日本:伊豆修善寺虹の郷)や、鉄道車両の実物大試作モックアップなども模型ではあるが、一般的にはこれらを鉄道模型とはいわない。また、プラモデルや置物などのような走行させることができない列車模型も、鉄道模型とは区別される。

他の種類の模型と異なり、鉄道模型では車両と線路軌間)が常に対となっている。縮尺によってサイズはさまざまであるが、ある程度の数の縮尺に集約されている。これは縮尺に規格を定める事で既製品を利用できるようにするためである。

歴史 [編集]

イギリス [編集]

ロケット号の模型 (Goethe, verschwunden). Abbi. Archiv d. ProMediaTeam Ltd.

イングランドにおいて19世紀初頭から生産されていた。当初はそれらは実物の宣伝用として製作されていた。

1862年ロンドンのメイヤーズがカタログに蒸気機関車を掲載した。1898年バセット・ロークが創業し、ドイツビングなどを下請けにしてスケールモデルを供給しはじめた。バセット・ロークは1921年OOゲージを発売した。

ドイツ [編集]

1835年アドラー号と亜鉛製の人形客車が販売された。1840年、最初のドイツ製の板金による鉄道模型の生産の記録が残っている。1886年ビングが最初の製品を発売した。1887年、Schonnerが縮尺約1/22・軌間65mmと、縮尺約1/12・軌間115mmの蒸気機関車と客車と線路を発売した。

1891年メルクリンライプツィヒ・メッセに最初の鉄道模型を出品した。メルクリンは最初に0番、1番、2番、3番という名称の鉄道模型を生産した。1901年雑誌上で初めて鉄道模型の標準化規格化について議論され、1891年のメルクリンの規格を元にすることになった。

1922年にビングから0番規格の半分のサイズのOO番(OOゲージ)が発売され、Bing-Tischeisenbahn(ビング卓上鉄道)の名で展開された。当初はぜんまい式だったが1924年には電気式になった。1935年春にトリックスから、秋にはメルクリンからOOゲージ製品が発売された。

日本 [編集]

日本に伝来した鉄道模型:嘉永年間渡来蒸気車

幕末に帝政ロシアプチャーチンが来航し、蒸気で走る模型を披露したとの記録がある。また、ペリー黒船浦賀に来航した際に、幕府に蒸気機関車の模型を献上したとされる[1]佐賀藩精錬方であった田中久重が蒸気車の雛型(模型)を作った。桂小五郎がナポレオン号を持ち帰った記録もある。また、加賀大野弁吉が蒸気機関車の模型を作った記録がある。これらの機関車は2003年国立科学博物館で開催された江戸大博覧会[2]で展示された。このように日本では実物よりも先に模型の方が完成した。これにより蒸気機関に関する理解が深まった。その後、鉄道省で教材として作られた。

1930年代になり、子供の科学誌で本間清人が「50mmゲージ」を提唱する。その後科学画報誌で香西健が「35mmゲージ」を提唱する。また、ドイツやアメリカから2番1番Oゲージ等の鉄道模型が輸入され、愛好者層を中心に徐々に普及した[3]。その後、第二次世界大戦による中断を経て1950年代は進駐軍向けのOゲージHOゲージの輸出が盛んになりやがて外貨獲得の手段として輸出が拡大する。1960年代になると16番ゲージが愛好者層を中心として普及し、1980年代以降、Nゲージの普及により愛好者層が拡大し現在に至る。また、一部の愛好者の間では、実物の狭軌を再現するナローゲージも提唱されている。

小型化 [編集]

1945年にアメリカのH.P.プロダクツから縮尺1/120・軌間12mmの鉄道模型(TTゲージ)が発売された。後にイギリス西ドイツでも展開された。1957年にイギリスのローンスターが縮尺1/152・軌間8.25mmの手押し動力の列車模型を発売した。1959年には西ドイツのトリックスが縮尺1/180の手押し動力の鉄道玩具を試験的に生産したが、実験段階を抜け出すことはなかった。1960年にイギリスのローンスターが縮尺1/148・軌間9mmの鉄道模型「トレブル・オー・レクトリック」を発売した。後にNゲージとして発展することになる。

1972年、西ドイツのメルクリンから縮尺1/220・軌間6.5mmのZゲージが登場した。当時はこれ以上小さい模型はないという意味からZと名付けられたが、2008年に日本の栄進堂からさらに小さな縮尺1/450・軌間3mmのTゲージが発売された。

規格 [編集]

鉄道模型には縮尺(スケール)や軌間(ゲージ)、電動式のものは電流電圧などさまざまな規格が存在し、それら規格にもとづいて製品化されている。また、自作する場合はそれら規格に適合するように製作されることが多い。

イギリスアメリカヨーロッパ大陸などでは鉄道模型の愛好者団体(NMRAMOROPなど)が存在し、それぞれが統一規格と呼べるものを定めているが、それらの規格は、細かい点において他者の規格とは異なっている場合もある。

各スケールにおける「標準となる軌間(ゲージ)」は、原則として実物の標準軌(1435mm)を縮小したものである(後述)が、「XXスケール」であれば「XXゲージ」になるとは限らない。同一スケールであっても標準軌より狭いナローゲージや広いブロードゲージも存在する。

縮尺(スケール) [編集]

スケールは「ものさし」・「縮尺」のことであり、サイズは寸法である。日本ではメートル法が採用されているので分数表示が主流であるが、ヤード・ポンド法を採用している国や地域では、1フィート (304.8mm) を何インチにするかという表示法が用いられる。

  • 例えば、1フィートを1インチとすれば、それは1/12サイズ(1インチスケール)であり、1/2インチとすれば1/24サイズ(1/2インチスケール)である。同じように3/8、1/4、3/16、1/8とすれば、それぞれ1/32サイズ、1/48サイズ、1/64サイズ、1/96サイズとなる。

ヨーロッパではさらにメートル法と組み合わせて1フィートを3.5mm、7mmとするスケールも採用され、それぞれ1/87サイズ(HOスケール)、1/43.5サイズ(Oスケール)となる。


主な縮尺(スケール) [編集]

ここでは縮尺呼称、基本となる縮尺(スケール)、標準となる軌間(ゲージ)、用例を記す。

3番(III)
サンバン、縮尺1/16 - 1/22.5 ・軌間64mm - 89mmである。縮尺や標準となる軌間は国やメーカー、車種によって異なる。鉄道模型の最初期に登場したものであるため、規格や呼称にばらつきがあり注意が必要である。
16mm
縮尺1/19である。1ftを16mmに縮尺したもので、標準となる軌間は存在せず、もっぱらイギリスにおいてナローゲージに用いられる縮尺。3番スケールのナローゲージに相当する。
2番(II)
ニバン、縮尺1/22.5 - 1/29 ・軌間50.4mm - 50.8mmである。縮尺や標準となる軌間は国やメーカー、車種によって異なり、欧州大陸では軌間64mmとされることがある。庭園鉄道に広く使用されるGゲージは、2番スケールのナローゲージに相当する。→2番ゲージGゲージを参照
1番(I)
イチバン、縮尺1/30.5 - 1/32 ・軌間45mmである。縮尺や標準となる軌間は国やメーカー、車種によって異なる。イギリスでは10mmスケールとも呼ばれる。→1番ゲージを参照
O番(O)
レイバン、縮尺1/43 - 1/48 ・軌間32mmである。縮尺や標準となる軌間は国やメーカー、車種によって異なる。イギリスでは7mmスケールとも呼ばれる。→OスケールOゲージを参照
1/4インチ
縮尺1/48 ・軌間29.9mmである。アメリカで1930年代後半に鉄道模型の縮尺として採用された。クォーター・インチ・スケールとも呼ばれる。→Oスケールを参照
S
エス、縮尺1/64 ・軌間22.42 - 22.5mmである。アメリカのアメリカンフライヤー、オーストラリア(Sn3 1/2、軌間16.5mm)などで主に採用されている。1番の半分のサイズであったことからH1(ハーフ1)とも呼ばれていた。→Sゲージを参照
OO
ダブルオー、縮尺1/76.2 ・軌間16.5mm - 19mmである。OOゲージ、EMゲージ、Proto4(P4ゲージ)、アメリカンOOなど標準となる軌間は複数存在する。イギリスにおいて最も普及しているスケールである。4mmスケールとも呼ばれる。→OOゲージを参照
3.8mm
縮尺1/80 ・軌間16.5mmである。主に16番ゲージ日本型で用いられる。日本以外では、1950年代のヨーロッパにおいて技術上HOスケールでの製造が困難な模型を縮尺1/80で製造することがあり、それらの製品に対し名付けられていた。→16番ゲージを参照
HO
エイチオー、縮尺1/87.1 ・軌間16.5mmである。1930年代にOOから派生したスケールで、北米やヨーロッパ大陸で最も普及している。3.5mmスケールとも呼ばれる。→HOスケールHOゲージを参照
TT
ティーティー、縮尺1/120 ・軌間12mmである。東ヨーロッパで広く普及している。イギリスでは縮尺1/101.5の3mmスケールが採用されている。→TTゲージを参照
N
エヌ、縮尺1/148 - 1/160 ・軌間9mmである。縮尺は国やメーカー、車種によって異なる。日本で最も普及しているスケールである。→Nゲージを参照
Z
ゼット、縮尺1/220 ・軌間6.5mmである。1972年にメルクリンが開発した当時最小の鉄道模型。2010年現在ではこれを下回るスケールも存在する。→Zゲージを参照

軌間(ゲージ) [編集]

当初は鉄道線路を構成する2本のレールの中心間距離で表されていたが、現在ではレールの頭部の内側の距離を表す。

実物を縮小するとゲージは好きなように決められるが、実際にはある程度の数の軌間に集約される。なるべく既存の軌間を採用すれば、輪軸や線路が既製品より流用できるからである。

標準軌とナローゲージ・ブロードゲージ
原則として実物の標準軌(1435mm)を基準として縮小されたものが模型の標準の軌間となり、通常「XXゲージ」と呼ばれるものは「XXスケールにおける標準軌(の鉄道模型)」に相当する。

実物が標準軌より狭いものは狭軌鉄道(ナローゲージ)と呼ばれ、ナローゲージの種類には、ケープゲージ・3フィート半(1067mm)、メーターゲージ(1000mm)、3フィート (914mm)、2フィート半(762mm)、2フィート(610mm)などが存在する。模型においては市販されている線路や車両は豊富であるが、標準軌に比べ採用する愛好者は少ない。

実物が標準軌より広いものは広軌鉄道(ブロードゲージ)と呼ばれ、ブロードゲージの種類には5フィート(1524mm)、5フィート3インチ(1600mm)、5フィート半(1676mm)、7フィート(2140mm)などが存在する。模型においては市販されている線路や車両はわずかで、標準軌やナローゲージに比べ採用する愛好者は非常に少ない。

  • ヨーロッパ式では「XXゲージ(標準軌)」、「XXm(メーター)」、「XXe(2フィート半)」、「XXi(2フィート以下)」などと記す。
  • アメリカ式では「XXスケール(標準軌)」、「XXn3(3フィート)」、「XXn2 1/2(2フィート半)」などと記す。
  • たとえばHOスケールでのケープゲージはHOn3 1/2(エッチオーエヌ3と2分の1)、メーターゲージはHOm(エッチオーエム)などと呼称される。
  • 日本や南アフリカなどでは実物はナローゲージであるものの、市販されている模型は標準軌仕様となっていることが多い。フィンランドやオーストラリア、アイルランドなどでは実物はブロードゲージであるものの、市販されている模型は標準軌仕様となっている事が多い。

主な軌間(ゲージ) [編集]

ここでは各縮尺(スケール)における標準軌を中心に記す。各スケールにおけるナローゲージやブロードゲージは主な縮尺のリンク先を参照。

127mm
5番スケールでの標準軌に相当
  • 縮尺1/12。主にライブスチームで採用。縮尺や軌間は国やメーカーによって異なる。5インチゲージとも呼ばれる。
89mm
3番スケール(欧州大陸)での標準軌(3番ゲージ、III)
  • 縮尺1/16。主にライブスチームで採用されている。3インチ半ゲージとも呼ばれる。
64mm
3番スケール(イギリス)での標準軌に相当(3番ゲージ、III)
  • 縮尺1/22.5・軌間64mm - 65mm。現在では廃れている。
2番スケール(欧州大陸)での標準軌(2番ゲージ、II)
50mm
日本において戦前、子供の科学誌で本間清人が製作記事を執筆し普及した。後に35mmゲージが普及すると廃れた。
2番スケール(イギリス)での標準軌に相当(2番ゲージ、II)
  • 縮尺1/22.5 - 1/29・軌間50.4mm - 50.8mm。縮尺や軌間は国やメーカーによって異なる。
45mm
1番スケールでの標準軌に相当(1番ゲージ、I)
  • 縮尺1/30.5 - 1/32・軌間44.5mm。もっぱら観賞用や、ライブスチームに用いられる。
32mm
Oスケールでの標準軌(Oゲージ、0、零番、0番)
  • 縮尺1/43 - 1/48。国やメーカー、車種によって異なる。
29.9mm
1/4インチスケール(Oスケール)での標準軌(Qゲージ、Proto48)
  • アメリカのOスケールの縮尺1/48では標準軌は29.9mmとなるため、軌間32mmのOゲージから派生した。
22.5mm
Sスケールでの標準軌(Sゲージ
  • ヨーロッパでは軌間22.5mm、アメリカでは軌間22.42mm。
19mm
OOスケールでの標準軌(アメリカ)
  • アメリカのOOゲージは軌間16.5mmではなく、縮尺1/76から算出した軌間19mmを採用した。現在では廃れている。
18.83mm
OOスケールでの標準軌(P4ゲージ)
  • OOゲージの派生規格の一つで、P4ゲージまたはProto4と呼ばれる。OOゲージ、EMゲージよりも縮尺と軌間の関係がより正確である。
18.2mm
OOスケールでの標準軌(EMゲージ)
  • OOゲージの派生規格の一つ。EMゲージと呼ばれる。OOゲージよりも縮尺と軌間の関係がより正確である。"Eighteen Millimetres"が名称の由来[1]
16.5mm
HOスケール、OOスケールでの標準軌(HOゲージOOゲージ
12mm
TTスケールでの標準軌(TTゲージ
9mm
Nスケールでの標準軌(Nゲージ
6.5mm
Zスケールでの標準軌(Zゲージ
ZJゲージ
4.8mm
ZZ TRAIN
3mm
Tゲージ

ファインとコース [編集]

ファイン
ファインとは「細かい」という意味の「fine」である。車輪、線路特にポイントのフログを実物に近づける、あるいは同等にした鉄道模型のことであり、どの縮尺・軌間の鉄道模型においても使われる用語である。Oゲージ以上ではProto48などのグループが活動している。HOゲージ以下ではなかなか難しいが、Proto87などのグループが研究している。対する用語はコース(後述)である。
コース
コースとは粗いという意味の「coarse」である。鉄道模型は玩具から発達してきたので、脱線しにくいというのがその不可欠な条件の一つであった。そのためには、実物と比べて高いフランジ、厚いタイヤ、幅の広いフランジウェイを持つ分岐器のフログが必要であった。その後「ファイン」な模型を欲する人たちも出てきたので、そのような模型の一群をファインゲージと呼ぶ。「コース」であれば玩具的というわけではなく、「ファイン」がやや特殊であり、「コース」が鉄道模型の標準となることが多い。

ティンプレート [編集]

アメリカで発生した鉄道模型の一分野。もともとは高級な模型であったが、クリスマスプレゼント用の大量消費時代が到来した1936年ごろ、ライオネルが発展可能なシステムを提示してから一挙にアメリカの標準模型として大衆化された。文字通り「tinplate」でブリキ製の鉄道模型を指す言葉であり、ハイレール (hi-rail) という言葉と同義である。背の高い中空レールを用いる玩具的鉄道模型であって、スケールモデルに対する用語である。ハイ・フランジ車両が走るように作られており、中央三線式の集電方式が主流である。年少者のみならず大人の趣味としても認知され、アメリカでは大規模な交換会・スワップミートが数日にわたって開かれる。

Oゲージの場合、おおむね縮尺1/64 - 1/48であるが一定しない。小さく作れば大型機でも小半径を走らせることができるため、縮尺1/58としている製品もある。ティンプレートはOゲージが多いがアメリカンフライヤーではSゲージもある。これは当初より二線式を採用していた。

制御方式 [編集]

交流三線式

交流方式 [編集]

メルクリンライオネルに代表される方式で、中央三線式を採用しているが、交流方式であることは必ずしも三線式であることを意味するわけではなく、少数ながら交流二線式の鉄道模型も存在する。1930年代には効率のよい整流器や強力な永久磁石が民生用にはなかったので、直巻電動機電磁石による方向転換装置との組み合わせが採用された。絶縁車輪を用いなくても良いので今でも根強い人気がある。

最近電子工学の進歩に伴い、多重制御方式(後述)を好むユーザーが増えてきたため、交流とは言えども正弦波ではない交流駆動の模型が増えている。

直流二線式
線路に流れる電気と車両の進行方向の関係

直流方式 [編集]

直流を得るには蓄電池あるいは小型の整流器を必要とした。自動車産業の発達したアメリカでは、セレン整流器が民生用として市販され始めたので、これを流用して「直流12V」という規格が成立した。通常は左右のレールのみから集電する直流二線式が用いられるが、少数ながら直流三線式の鉄道模型も存在する。トリックスでは、直流二線式の「トリックス・インターナショナル」に対して、直流三線式の「トリックス・エクスプレス」が存在する。

直流二線式では、主に車両から見て右側にあるレールにプラスの電気が流れている時に前進する製品が多い。[4]

直流方式の利点は、機械的な逆転装置なくして自由に前進後退を選べることであった。交流方式の直巻電動機界磁を車載整流器で一定方向磁界とすれば(これをpolarizedという)手元のスイッチひとつで進行方向を切り替えることができた。第二次世界大戦永久磁石界磁となり、これは分巻電動機の一種であって模型機関車の駆動用電動機として最も適するとは言えないが、広く用いられるようになった。

  • 直巻電動機は、動力車の起動時に電流の二乗に比例してトルクが発生し、実物の発車状況を再現しやすく、巡航時には電流値が減少し、登り坂では回転が落ちて電流値が上昇し、牽引力が増す。それに対し永久磁石による界磁を持つモーターでは、磁石が電機子を吸引することにより、車輪を廻した時ギヤを介してモーターが回転しないため、実物の鉄道車両が惰行する様子を再現できない。

現在のもっとも進んだ駆動方式では、電子制御でモーターの回転数を実物を模した加減速曲線で駆動し、Bemf(逆起電力)を測定して回転数を一定に保つ方式をとっている。また、永久磁石に吸着されない無鉄心型モーター(コアレスモーター)を採用し、逆駆動するウォームギヤとの組み合わせで押して動く(Free-rolling mechanism )動力車が実用化されている。

12Vという電圧は先述のように自動車産業から派生したものであったが、線路が長くなると電気抵抗が無視できなくなり、電流値を減らして電圧降下を小さくすることができる高電圧化の論議が1980年代に始まった。24V化という動きもあったが、効率のよいモーターの採用とともにその声は聞こえなくなった。OゲージGゲージではレイアウトの規模が大きいので、場合により16 - 18Vを採用することもある。

多重制御方式 [編集]

同一の線路上の複数の車両を個別に制御する方式の総称。車両の運転のみならず、警笛前照灯尾灯の点滅などもこの概念に含まれる。古くは交流を混ぜて流し、周波数によって識別する方式としてゼネラル・エレクトリックのアストラック(Automatic Simultaneous Train ControlsASTRAC)や交流と直流を同時に流す方式などがあったが、アナログ方式ではせいぜい数台が限度であった。三線式の線路を使用したメルクリンのデルタシステムもあった。デジタル式ではホーンビィのZERO-1やメルクリンのメルクリンデジタル等があった。他にCTC-16というデジタル式もあった。いずれも専用のデコーダを搭載するもので、一部を除き従来の車両と同じ線路上を走らせることはできなかった。

現在ではデジタルコマンドコントロール(DCC)が世界的な標準になり、欧米ではあらかじめDCCの搭載を想定したコネクタを装備した車両が普及している。DCCでは理論上、アドレス長が10bitの場合、同時に1024台に指令を出すことができる。

駆動方式 [編集]

鉄道模型が登場した頃は、手で押すものであった。時代の進歩とともに、ぜんまい駆動や蒸気による自力走行できるものになり、最終的に電気による外部からのコントロールが可能になった。

それは、乗ってコントロールする必要があったり、あるいは動き始めたら放置せねばならない蒸気駆動より、室内で楽しめるより小さな電動模型への進化であった。もちろん蒸気駆動はライブスチームとして特化した進化をとげたが、電動模型はより小さなサイズへと向かった。

ぜんまいによるもの [編集]

初期の鉄道模型ではぜんまい式の動力の物が存在した。それらはスプリングモーターと称された。現在でも一部のブリキ製鉄道玩具に使用される。

蒸気によるもの [編集]

当初は簡易なボイラーと単動首振りエンジンを組み合わせた、動き出したら水または燃料がなくなるまで走り続ける物が多かった。そのうちに実物と全く同等なつくりで、人間をのせた車両を牽いて走る模型が主流となった。これは給水、焚火、運転が実物どおりでタービン発電機やインジェクタまで装備するものが現れた。またアメリカで実用化された関節式機関車を、実物どおりのボールジョイントの給排気管で結ぶ模型も出現している。また、蒸気タービンで発電して電動モーターで走る模型も試作されている。

手軽に運転できる電動式模型の普及により一時期廃れていたが、1970年代半ば頃から一部の熱心な愛好者と彼らに支えられた新たなメーカーの参入により以前に比べよりハードルが低くなってきている。また、近年、各地で愛好者が集う運転会が開かれ、徐々に愛好者は増えつつある。

また、メルクリンなどの既存のメーカーも新製品を出しつつある。電子工学の進歩により、小型模型をラジオ・コントロールすることが可能になり、1番ゲージでは多くの人たちが楽しむようになった。また近年、イギリスのホーンビィからOOゲージの電熱蒸気機関車が発売され、外部から汽笛吹鳴までコントロールできる完成品も発売されている。 現在はライブスチームと呼ばれる、庭園鉄道の一分野として楽しまれている。

電気モーターによるもの [編集]

電動模型は、家庭への配電と同時に始まった。当時の電池は高価で性能が悪かったからである。交流による家庭への配電が開始される前に一部の地域では直流で配電されていた。

当初採用されていた蒸気あるいはぜんまい式の二線式軌道に集電用の第三軌条を付け加えることにより電動化が実現された。二線式を採用するには車輪を絶縁しなければならないので、それまでに売った車両の改造をしなければならなかったが、実物に習い中央の第三軌条から集電すればそれまでの製品との不整合がなくなる。日本では実物に中央三線式の鉄道が存在しなかったため、このタイプの集電方式は玩具的であると嫌われたが、逆に欧米では本物と同じであるとして受け入れられてきた。

当初は直巻電動機を自作し変圧器または抵抗器で制御していた。抵抗器は食塩水を用いたものもあった。小型の電動機が模型用として発売されるようになると、それを納める動力車の大きさが決まってしまう。すなわち模型のサイズの小型化はモーターのサイズの小型化の歴史であった。

界磁コイルを軸の延長上に移したり、両軸モーターを作り車軸間に納めたり、この時期の工夫は目覚しい。

界磁が電磁石の直巻電動機は、交流でも直流でも回転し、実物同様、機関車、電車の駆動には適する特性を持っていた。起動時に電流の2乗に比例して起動トルクが発生し、回転が上がると同時に電流が減少する。速度に応じて徐々に電圧を上げれば実感的な運転ができるわけである。

しかし、逆転には界磁の極性を反転させねばならなかった。ライオネルメルクリンらは、電流を瞬間的に遮断することにより作動する逆転リレーなどを開発し市販した。しかし分岐機を通過する際に誤動作することがあり、モーターの回転による遠心力を用いた誤動作防止装置が一部の愛好者によって開発された。

1930年代になると直流駆動への試みが始まった。一部の地域では直流で配電されていたが、大部分の地域では交流による配電だった。アメリカではモータリゼーションにより自動車用の小型の整流器が民生用として発売されたのを受け、界磁電流をセレン整流器で整流して走行電流の極性を反転して逆行させる工夫がなされた。また電圧は自動車の12Vを標準電圧として採用した。

1940年代になると永久磁石を界磁にしたマグネット・モーターが市販されるようになった。これは、小型軽量で消費電力も少なかったが、分巻特性を持ち、与えられた電圧と回転数が正比例するものであった。すると、抵抗による電流制御よりも電子機器による電圧制御によるコントロールが望ましくなる。これはトランジスタ・コントローラの発達を促し、レオスタットを駆逐した。

マグネット・モーターは、停止時に界磁が電機子を吸着して動きにくくするコッギング(英語ではteethingという)が避けられず、機関車は手で押して動かすことは不可能であった。マグネット・モーターの軸を手で廻すとあたかもサイコロを転がすごとく、特定の位置で引っかかりを感じるが、直巻電動機を採用していたライオネルメルクリンの機関車は、レールに手で押し付けて押せばモーターが回転する。

また、最近ではコッギングがなくスムーズな走行でより大きなトルクが出せるコアレス・モーターやコッギングはあるが、より大きなトルクが出せるブラシレスモーターも普及しつつある。

モーターから車輪までの動力伝達にはウォームギヤが多用される。スパーギヤベベルギヤの使用は少ないが、一部高級機種ではウォームギアの一種であるコースティング・ギヤの使用も認められる。それは前者では一段で大きなギヤ比を実現でき、また、モーター軸と駆動軸が直交するのがモーターの配置上大変便利な位置関係だからである。しかし鉄道模型で使用されるウォームギヤは安全性の観点から逆駆動できないものが多いため、特殊なクラッチを用いて歯車の自動切り離しをする手法も現れた。しかしこの手法は一過性のもので、製品に反映される性格のものではなかった。一方、コースティング・ギヤを使用した機種では逆駆動の問題は解決している。

マグネット・モーターの一種のコアレス・モーターは鉄心を持たないムービング・コイル型モーターでそれをスパーギヤで減速すると押して動く動力車ができる。しかし限られた空間に収められるギヤはギヤ比が1:4程度のものであり、あまりにも牽引力が小さく、最高速が大きすぎるものであった。1984年にコースティング・ギヤが開発され、高効率と静粛性を併せ持つ動力車の実現が可能になった。

これらの電動模型は同一線路上ではすべての動力車が同一の動きをするが、それでは不満足な愛好者は多重制御方式へと向かい、それはデジタルコマンドコントロールとして実現された。

内燃機関によるもの [編集]

一部の愛好者やメーカーによって内燃機関を搭載した鉄道模型が製造されている。生産数は少ないが熱心な愛好者の手によって伝承されている。内燃機関にはガソリンエンジングローエンジンを使用し、実物のガス・エレクトリック方式のように発電機を駆動して電気モーターで推進するものや、減速機を介して動輪を駆動するものが存在する。またレシプロ機関だけでなくガスタービンを動力としたものも一部の愛好者の手で作られている。

サウンドシステム [編集]

1940年代より、電気式蓄音機の出力をレールにつなぎ、車両に搭載したスピーカーから音を出す構造のものが存在した。その後改良され、1970年代には蒸気機関車のロッドの動きに同期してブラスト音を出すPFMサウンドが出現した。また、外部の音源からの音声信号を無線で飛ばし、車載の受信機で受信してスピーカーから再生するものもあった。1990年代にはデジタル式の音源を備えたものが普及している。現在ではサウンド機能のあるDCCデコーダー以外にもカンタムサウンドやMRCシンクロサウンドボックスのように従来のアナログコントローラーを使用し、車載のデジタル音源から車両の電圧変化に応じて音を出すものがある。

主な鉄道模型メーカー・ブランド [編集]

(日本国内は50音順、日本以外はアルファベット順)

鉄道模型を扱った作品 [編集]

主なイベント [編集]

脚注 [編集]

  1. ^ 昌平坂学問所の河田八之助(河田興)が跨って乗車した記録がある。昌平坂学問所日記を参照
  2. ^ 江戸大博覧会
  3. ^ この当時は主に富裕層の子弟が愛好家層を形成していた
  4. ^ NHK趣味悠々 ようこそ!鉄道模型の世界へ ~レイアウト制作入門~ (日本放送出版協会) 10ページ

関連項目 [編集]

外部リンク [編集]