マルチメディアカード

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マルチメディアカード

マルチメディアカード(Multi Media Card)とは、メモリーカードの規格である[1]。MMCと略される。

概要[編集]

サンディスクシーメンスインフィニオン・テクノロジーズ)が共同開発し、1997年11月に発表した規格[2]が元となって1998年10月に設立されたMultiMediaCard Associationが規格の開発維持を行っている。

サイズは 32mm×24mm×1.4mm、重さは2g未満である。 インタフェースは7ピン・シリアルで、クロックは最大20Mbps、書き込み速度は最大2MB/s程である。 Version 4.2まではSPIモードがあり、低速で良ければSPIバスでの複数デバイスの接続を簡単にできた。

記憶容量は当初の4MBから順次増加し、最大4GB(2005年)までのメディアが存在する。 高速化した HS-MMC(52MB/s, 13ピン)やミニサイズの RS(Reduced Size)-MMC(24x18x1.4mm)、さらに小型のMMC Micro、コンテンツ保護機能があるSecureMMC(UDAC-MB方式)などのバリエーションがある。

このように高速化が進んだ結果、端子数の少ない高速インタフェースとしてSIMカードの高速化や、超小型ハードディスクドライブ用にATAコマンドへ対応し低消費電力インタフェースとしてなど、応用範囲が広がりつつある。

SDメモリーカードとは物理形状・電気特性・コマンドフォーマットで互換があるため、SDメモリーカードを使用している機器でもマルチメディアカードを利用できることが多い。但しコマンド自体は機能置き換えや追加があり互換は無い。また小型のminiSDやmicroSDとはRS-MMC、MMC Microともに物理形状などが異なり互換性はない。

日本国外では携帯電話シェアトップのノキアがRS-MMCを外部メディアとして採用していたために需要も大きかったが、近年ではそのノキアもmicroSDカードにシフトしている。日本では、もともとマイナーだったことに加え上位互換性のあるSDメモリーカードの急速な普及によりほとんど見かけなくなり、過去の規格と見られていた。

2004年12月に発売されたノキア製携帯電話Vodafone 702NK (Nokia 6630)のヒットにより同端末に採用されているRS-MMCの取り扱いを始めるメーカーやショップが現れるなど、一時注目を集めた。加えて、FreeBSDではSDメモリーカードの特許問題を回避するためSDメモリーカードを「マルチメディアカードの例外的な実装」として認識し「SDメモリーカードではない」と主張、実装が進められている。またMMC microというさらに小型のカードも発売され、また新たにカシオキヤノンデジタルカメラにMMCplusも対応している。

MMCplus High Speed 32 MB
各MMC規格メモリーカードの比較
MMC HS-MMC MMCplus RS-MMC DV RS-MMC MMCmobile MMCmicro
24mm 24mm 24mm 24mm 24mm 24mm 12mm
長さ 32mm 32mm 32mm 18mm 18mm 18mm 14mm
厚み 1.4mm 1.4mm 1.4mm 1.4mm 1.4mm 1.4mm 1.1mm
体積 1,075.2mm3 1,075.2mm3 1,075.2mm3 604.8mm3 604.8mm3 604.8mm3 184.8mm3
動作電圧 2.7V~3.6V 2.7V~3.6V 1.65V~1.95V
2.7V~3.6V
2.7V~3.6V 1.65V~1.95V
2.7V~3.6V
1.65V~1.95V
2.7V~3.6V
1.65V~1.95V
2.7V~3.6V
端子数 7ピン 13ピン 13ピン 7ピン 7ピン 13ピン 10ピン
バス幅 1ビット 1・4・8ビット 1・4・8ビット 1ビット 1ビット 1・4・8ビット 1・4ビット
最大クロック 20MHz 20・26・52MHz 20・26・52MHz 20MHz 20・26MHz 20・26・52MHz 20・26・52MHz
バス最大速度 2.5MB/s 52MB/s 52MB/s 2.5MB/s 3.25MB/s 52MB/s 26MB/s

eMMC[編集]

eMMC は embedded MMC の略で、MMC のコンポーネントを BGA パッケージに入れた物。SPIバスはサポートしない。スマートフォンやタブレットなどでよく使われている。JEDEC より 2013年10月に eMMC 5.0 が[3]、2015年2月に eMMC 5.1 がリリースされた。eMMC 5.0 の転送速度は400MB/sec。

eMMCでは、ホスト・システムは単に論理ブロック・アドレスにデータを読み書きするだけである[4]。 eMMCコントローラのハードウェアとファームウェアは、エラー訂正とデータ管理を実行することで、ホストシステムの負荷を軽減する[5][6]。 e.MMCは100、153、169ボール パッケージで、8ビット パラレル インターフェイスをベースとしている[7]

eMMCは、基本的なホームタスクやオフィスタスクなど、小さなファイルやポータブル家電の保存に適している[8]

eMMCはSPIバスプロトコルをサポートしておらず、NANDフラッシュメモリを使用している[9]

eMMC の容量は、32 GB から 64 GB、128 GB から 256 GB。


関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ コンテンツ記録用メモリカードに関する技術動向調査” (PDF). 特許庁技術調査課. 2014年3月8日閲覧。
  2. ^ 1997 Wescon”. IEEE (1997年). 2014年3月7日閲覧。
  3. ^ JEDEC、400MB/secの転送速度に対応するeMMC 5.0規格を公開 ~スマートフォンやタブレットのストレージ性能が2倍に - PC Watch
  4. ^ eMMC and its applications in the Medical Field”. www.flexxon.com. 2023年9月4日閲覧。
  5. ^ “[https://www.embeddedartists.com/wp-content/uploads/2020/04/Working_with_eMMC.pdf Working with embedded MultiMediaCard (eMMC)]”. www.embeddedartists.com. 2023年9月4日閲覧。
  6. ^ eMMC VS HDD: Which Is Better & What's The Difference”. www.easeus.com. 2023年9月4日閲覧。
  7. ^ What is MMC and eMMC?”. ici2016.org. 2023年9月4日閲覧。
  8. ^ Introduction to MMC Card – Its Definition and Variants”. www.minitool.com. 2023年9月4日閲覧。
  9. ^ NAND and eMMC: All You Need to Know About Flash Memory”. www.makeuseof.com. 2023年9月4日閲覧。

外部リンク[編集]