Y-20 (航空機)

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Y-20 (中国語:运-20 “鲲鹏”)

2014年の中国国際航空宇宙博覧会で展示されたY-20

2014年の中国国際航空宇宙博覧会で展示されたY-20

Y-20中国語运-20/運輸-20)は中国人民解放軍空軍が開発中の大型輸送機である[1]

概要[編集]

2012年12月25日、中国網がY-20の画像が流出したと報じた。公開された画像と情報によると、外観や大きさはウクライナAn-70(ただしAn-70はターボプロップ機)やロシアIl-76に似ている[2]

過去、中国の主力輸送機は、最大離陸重量61t、最大搭載量20tのY-8C-130並みの中型輸送機)であり、そのため、1990年代初頭より、中国は初の大型輸送機としてロシアのIl-76の導入を推進した。1991年には最初の3機が到着し、92年には7機が追加された。98年には、中国は14機のIl-76を保有しており、2005年にはさらに34機の発注が行なわれた。しかしこの発注分の引渡しは主としてコスト面の問題により遅延していると伝えられていた。こうした問題から、中国は大型輸送機の海外依存を脱却し国産化を図ったものと考えられる。

また、以前中国人民解放空軍はロシアからIl-78を購入しようとしたが、交渉が難航して購入に至らなかった経緯があり、将来は輸送機型だけでなく、派生型として、Y-20をベースとした空中給油機早期警戒管制機などが開発されるものと思われる。特にJ-11(Su-27)系列に対応した空中給油機の導入は中国人民解放軍空軍の悲願であり、もし導入されれば南シナ海におけるJ-11系列の進出範囲は劇的に拡大すると思われる。

今後は中国人民解放軍空軍の主力大型輸送機として100~300機程、大量生産される予定と思われる。

2013年1月26日14:00に初飛行に成功したと公表された。

設計[編集]

デザインは下反角のついた高翼配置、大型の単垂直尾翼、高水平尾翼配置の、輸送機としてはオーソドックスなものである。プロトタイプのエンジンはIl-76と同じ、ロシア製のソロヴィヨーフ D-30KU(推力23,150 lbf (103 kN))ターボファンエンジンを輸入してパイロン懸吊方式で4基装備している。しかしD-30KUではやや推力不足であり、国産のWS-20(推力31,000 lbf (138 kN))に換装される予定である[3]

Y-20は、主翼に超臨界翼を採用し、複合材料の使用比率を高める可能性があるとしている。これにより軽量化を図り、上昇能力を強化し、揚抗比を高め、エンジンの推力と最大離陸重量を変更せずに、搭載量を増やすことが可能としている。ボーイング787のようにコックピットには全曲面ガラスを採用している[4]

Y-20は貨物室の高さと幅をAn-70並の4メートル、貨物室の容積を320m2まで拡大し、今後輸送することになる大型貨物に対応するとしている[5]

過去にアントノフと中国でAn-70をジェット化したような輸送機を共同開発する話があり、胴体形状がAn-70に似ているのはそのためと思われる。また、購入したIl-76も開発の参考にされたと思われる。中国はIl-76の長年の使用、メンテナンス、KJ-2000への改造により、大型輸送機に関する豊富な経験と研究を蓄積したとされる。

Y-20は生産・製造コストを抑えるため、いくつかの部品を3Dプリント技術により製造している。3Dプリンタによる大型部品を使用した輸送機はY-20が初めてである[6]

諸元[編集]

  • 全長:47 m
  • 全幅:45 m
  • 全高:15 m
  • 最大速度:700 km/h
  • 巡航速度:高度8,000 mでM0.7、低空で630 km/h
  • 最大離陸重量:220 t
  • 最大積載量:66 t
  • 最大航続距離:7,800 km
  • 上昇限界高度:13,000 m
  • 最短離陸滑走距離:600-700m[7]
  • エンジン:ソロヴィヨーフ D-30KU(推力23,150 lbf (103 kN))
主な軍用輸送機の比較
XC-2
日本の旗
C-1
日本の旗
A400M
欧州連合の旗
C-130J
アメリカ合衆国の旗
C-17
アメリカ合衆国の旗
Y-20
中華人民共和国の旗
KC-390
ブラジルの旗
Il-214
ロシアの旗
画像 Xc-2 20110520.jpg JASDF Kawasaki C-1 Aoki-1.jpg Airbus A400M EC-404 (8135661129).jpg C-130J 135th AS Maryland ANG in flight.jpg C-17 test sortie.jpg Xian Y-20 at the 2014 Zhuhai Air Show.jpg Embraer-KC-390.jpg MTS Il214 maks2009.jpg
乗員 3名 5名 3-4名 3-6名 2-4名 3名 2名
全長 43.9m 29.0m 45.1m 29.79m 53.0m 47.0m 33.91m 33.2m
全幅 44.4m 30.6m 42.4m 40.41m 51.8m 45.0m 35.05m 30.1m
全高 14.2m 9.99m 14.7m 11.84m 16.8m 15.0m 10.26m 10.0m
空虚重量 60.8t 24t 60.8t 34.25t 128.1t 100t ?t ?t
基本離陸重量 120t 39t ?t 70.305t 263t ?t ?t ?t
最大離陸重量 141t 45t 136.5t 79.38t 265.35t 220t 81.0t 68.0t
最大積載量 約30t 8t 37t 19.050t 77.519t 66t 23.0t 20.0t
発動機 CF6-80C2K1F×2 JT8D×2 TP400-D6×4 AE2100-D3×4 F117-PW-100×4 D-30KU×4 V2500-E5×2 PD-14×2
ターボファン ターボプロップ ターボファン
巡航速度 マッハ0.8
890km/h
(高度12,200m)
マッハ0.65
650km/h
マッハ0.68-0.72
780km/h
マッハ0.65
643km/h
マッハ0.77
830km/h
(高度7,620m)
マッハ0.70
630km/h
(高度8,000m)
マッハ0.8 マッハ0.75
航続距離 12t/6,500km 0t/2,400km
6.5t/2,185km
8t/1,500km
0t/8,710km
20t/6,390km
30t/4,540km
0t/6,445km
16.3t/3,150km
0t/9,815km
72t/4,630km
0t/7,800km 0t/6,019km
13.3t/4,815km
23.6t/2,593km
4.5t/6,000km
20t/2,500km
最短離陸滑走距離 500m 460m 770m 600m 910m ? ? 1,200m
運用状況 実用試験中 現役
2011年より退役中
実用試験中 増備中 実用試験中 開発中

脚注[編集]

  1. ^ “中国初の国産大型軍用輸送機Y-20の写真流出”. 中国網. (2012年12月25日). http://japanese.china.org.cn/photos/2012-12/25/content_27508201.htm 2012年12月27日閲覧。 
  2. ^ “中国初の国産大型軍用輸送機Y-20 米C-17と20年の技術差”. 中国網. (2012年12月26日). http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2012-12/26/content_27518957.htm 2012年12月27日閲覧。 
  3. ^ “China Flies First Large Turbofan”. ainonline.com. (2014年1月17日). http://www.ainonline.com/aviation-news/ain-defense-perspective/2014-01-10/china-flies-first-large-turbofan 2014年10月5日閲覧。 
  4. ^ “运20运输机用全曲面风挡玻璃 机头阻力减小”. 凤凰网. (2013年3月21日). http://news.ifeng.com/mil/video/detail_2013_03/21/23351895_0.shtml 2014年7月5日閲覧。 
  5. ^ “中国 世界3番目の大型輸送機試験飛行国に”. 中国網. (2012年12月5日). http://japanese.china.org.cn/photos/2012-12/05/content_27316865.htm 2013年1月2日閲覧。 
  6. ^ 央视首次曝光运20运输机驾驶舱内部珍贵画面
  7. ^ “Y-20が初飛行 最短離陸距離は600メートルのみ”. 中国網. (2014年2月10日). http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2014-02/10/content_31423096.htm 2014年7月5日閲覧。 

関連項目[編集]

  • An-70
  • Il-76
  • C-17
  • Y-9 - Y-8の後継機。Y-20とともに運用される中国の新型中型輸送機。

外部リンク[編集]