ギヤードターボファンエンジン
ギヤードターボファンエンジン(Geared Turbo Fan Engine, GTF)とは、ジェットエンジンの一種をいう。GTFは従来のターボファンエンジンの発展形であり、従来と異なるのは、ファンを減速して駆動するために遊星歯車機構が採用される点である。
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概要 [編集]
一般にターボファンエンジンは、ファンの直径をより大きくする、すなわちバイパス比を大きくすることで燃費が改善される。バイパス比が増える事はファンと低圧タービンの直径の比が増える事を意味する。
しかし、ファンの回転数を下げないままファンを極端に大径化すると、ファンブレードの先端が音速に達してしまい、造波抗力による大幅な損失が生じてしまう。一方、ターボファンエンジンにおいてファンに直結されている低圧コンプレッサは、回転数をある程度より下げると、その効率が著しく低下する。したがって、圧縮機の回転数を下げるにも限界があった。
仮にファンの回転数をブレードに最適な速度で回転させようとすると低圧タービンの回転数は下がり、その為、ファンを回転する為に必要なエネルギーを取り出す為に低圧タービンの段数を増やす必要が出てくる。遊星歯車による減速機構を取り入れる事で低圧圧縮機の軸とファンの間のギア比を変えることでファンと低圧タービンをそれぞれ最適な回転数で運転できる。
そこで、低圧コンプレッサの回転数を維持しつつ、大口径化したファンに適した低い回転数を実現するために、ギヤードターボファンエンジンでは、タービン軸とファン軸の間に、回転数の差を設けるための減速歯車を介在させている。
その構造上GTFは、ターボプロップエンジンのプロペラをタービンと同軸のダクテッドファンとしたものに近いといえる。
この仕様のエンジンとしては長年使用されるハネウェル TFE731、ハネウェル ALF 502/507,や最近のプラット・アンド・ホイットニー PW1000Gがある。
ギヤード・ターボファンでは減速ギアボックスを通じて駆動されるファンが大半の推力を生み出しその他の推力はエンジンから直接生み出される。 ファンと低圧圧縮機とタービン間のギアボックスはそれぞれのエンジンセクションが最適な運転速度になる事を目的とする。それぞれがより高効率で回転する事によりエンジンの圧縮機の段数と部品点数を減らす事が出来る。
ハネウェル TFE731 [編集]
詳細は「ハネウェル TFE731」を参照
ハネウェル TFE731はライカミングが開発してアライドシグナルを経て現在はハネウェル・エアロスペースが生産するビジネスジェット機用のギヤードターボファンエンジンである。 このエンジンは1972年からガレット・エアリサーチ (Garrett AiResearch) により設計・製造されていた。現在はハネウェル・エアロスペースにより製造されている。累計の生産台数は11,000台以上である。
ハネウェル ALF 502 [編集]
詳細は「ハネウェル ALF 502」を参照
ハネウェル ALF 502/LF 507 はライカミングが開発してアライドシグナルを経て現在はハネウェル・エアロスペースが生産するギヤードターボファンエンジンである。1980年に認証を取得してBAe 146やボンバルディア チャレンジャー 600に搭載される。高推力のLF 507はアブロ RJの更新型のBAe 146に搭載される。初期に開発されたYF102は試作機であるノースロップ YA-9に搭載された。CH-47ヘリコプター用のターボシャフト・エンジンであるT55-712を元に開発された。
ハネウェル LF 507 [編集]
ハネウェル ALF 502/LF 507 はライカミングが開発してアライドシグナルを経て現在はハネウェル・エアロスペースが生産するギヤードターボファンエンジンである。ALF 502の強化型でBAe 146に使用される。
プラット・アンド・ホイットニーPW1000G [編集]
| PW1000G | |
プラット・アンド・ホイットニーは1998年頃からPW8000として知られるギヤードターボファン (GTF) の開発に着手した[1]。このエンジンは、本質的にはプラット・アンド・ホイットニーPW6000の改良型であり、そこからファンを取り除いて、ギアと新しい2段のファンに取り替えたものである。数年後、PW8000は中止された[2]。 その後まもなくAdvanced Technology Fan Integrator (ATFI)計画が持ち上がり、まだPW6000のターボ機械を使用していたが、新しいギアボックスと単段式のファンが加えられた。これがドイツのMTUとの共同開発による新しく設計されたコアを基にしたGTF計画に繋がった。
さらにギヤード・ターボファンの現在の設計には経済性を高める為の可変エリアノズルが含まれる。[3]
2008年7月、このGTFはPW1000Gへと改名された[4]。
プラット・アンド・ホイットニーによると、PW1000Gはナローボディ機やリージョナルジェット機において、従来のエンジンに比べ10%から15%の燃費改善効果があり、より静粛である、とのことである。[5]
エンジンはプラット・アンド・ホイットニーのボーイング747-SP[5]に懸架されて試験され、PW1000Gの飛行試験の第2段階ではエアバスA340-600の第2パイロンに懸架され2008年10月14日にトゥールーズで最初に飛行した。[6]
PW1524Gの試験は2010年10月に開始された。[7]
量産開始は2013年になる見通しである。[5]
低燃費に重点をおいて開発されている、三菱重工/三菱航空機の小型旅客機MRJが初の採用機体となる予定。
仕様 [編集]
出典: プラット・アンド・ホイットニー,[8] flightglobal.com,[9][10] エアバス[11]
| 形式 | PW1100G | PW1215G/1217G | PW1400G | PW1521G/1524G |
|---|---|---|---|---|
| ファン直径 | 81 in (2.1 m) | 56 in (1.4 m) | 74 in (1.9 m) | |
| バイパス比 | ~12:1 | ~12:1 | ~12:1 | |
| 推力 | 15,000–17,000lbf (67–76kN) | 25,000–32,000lbf (110–140kN) | 21,000–23,300lbf (93–104kN) | |
| 燃費(現在のエンジンとの比較) | -12.5% | −12% | −14% | |
| 騒音 (ステージ4に対して) | −15 dB | −20 dB | ||
| 航空機1機あたりの二酸化炭素の排出量削減 | −2,700 t | −3,000 t | ||
| NOx排出 (CAEP 6に対するマージン) | −50% | −55% | ||
| 重量 (現在のエンジンとの比較) | ||||
| 構成[12] | 1-G-2-8-2-3 | 1-G-3-8-2-3 | 1-G-3-8-2-3 | |
| 搭載機 | A320neo | MRJ | MS-21 | Cシリーズ |
| 運用開始 | 2015年 | 2014年 | 2016年 | 2013年 |
一般的特性
- 形式: ターボファン (1215G, 1217G, 1521G, 1524G)
- 全長:
- 直径: 1,422–1,854ミリメートル (56.0–73.0in)
- 乾燥重量:
構成要素
性能
出典:MTU[13]
特徴
- 低燃費
- GTFでは、バイパス比が増大されることによって燃費が改善される。例えばPW1000では従来比12%の燃費改善が謳われている。
- 低騒音
- GTFでは、ファンが従来よりも低速で回転しているため、風きり音が低減される。
- 圧縮機の単純化
- 高回転の駆動によって圧縮機の効率が向上するため、GTFでは圧縮機の段数を削減することができる。これにより、重量の低減・メンテナンス性の向上・製造コストの低減が実現されている。
- 遊星歯車機構の採用
- GTFには遊星歯車の減速機構が用いられる。この遊星歯車の数は、ファンの高出力に耐えるため、他用途の場合より増加されており、より複雑な機構となっている。遊星歯車の数は、通常の用途で3個が一般的であるのに対し、例えばPW1000では5個が採用されている。なお、遊星歯車を採用して問題は生じないのはPW1000程度の低出力型に限られる。大出力エンジンに遊星歯車を採用しようとしても、さらに複雑化された機構を採用せざるを得ず、機械駆動による騒音、振動の増加、信頼性、メンテナンス性の低下などの問題が顕在化し、実現困難となる。
- なお、実際にターボプロップエンジンでは、遊星歯車機構とより複雑な可変ピッチ機構とが採用されているものもある。しかし、実用化されているのは、PW1000Gのコア出力に相当する1万馬力級までのエンジンであり、これを大幅に超える大出力エンジンは実用化されていない。ちなみに、ターボファンエンジンではPW1000の数倍の推力のものが実用化されている。
搭載機 [編集]
- MRJ(予定)
- ボンバルディア Cシリーズ(予定)
- エアバスA320neo
- イルクート MS-21(予定)
脚注 [編集]
- ^ Pratt & Whitney's surprise leap.
- ^ The Short Life and Untimely Demise of the PW8000
- ^ “P&W readies for CSeries “third knob” engine testing”. 2011年2月27日閲覧。
- ^ “P&W launches geared turbofan plane engine”. The Gazette (2008年7月14日). 2008年7月14日閲覧。
- ^ a b c Garvey, William. Pratt Gears Up for PW1000G Aviation Week. Accessed: 9 January 2011.
- ^ Airbus-owned A340 flies P&W geared turbofan engine
- ^ “Pratt & Whitney geared PW1524G testing underway”. 2010年10月31日閲覧。
- ^ PurePower PW1000G
- ^ P&W seals deal to begin design on GTF for Russia's MS-21
- ^ Airbus set to launch A320 NEO
- ^ Airbus offers new fuel saving engine options for A320 Family
- ^ ファン-ギア-低圧圧縮機-高圧圧縮機-高圧タービン-低圧タービンの順番で数字はそれぞれの段数をあらわす。
- ^ MTU
出典 [編集]
- 文献
- Connors, Jack (2010). The Engines of Pratt & Whitney: A Technical History. Reston. Virginia: American Institute of Aeronautics and Astronautics. ISBN 978-1-60086-711-8.
- Francillon, René J. McDonnell Douglas Aircraft since 1920. London: Putnam, 1979. ISBN 0-370-00050-1.
- Gunston, Bill (2006). World Encyclopedia of Aero Engines, 5th Edition. Phoenix Mill, Gloucestershire, England, UK: Sutton Publishing Limited. ISBN 0-7509-4479-X.
関連項目 [編集]
外部リンク [編集]
- 航空実用事典 エンジンと動力装置 engine & powerplant(日本航空)
- Jets Gear up to Fly Greener
- Pratt & Whitney Launches Geared Turbofan Engine with Mitsubishi Regional Jet
- Pratt & Whitney Geared Turbofan engine selected to power Mitsubishi Regional Jet
- MTU Aero Engines designs high-speed turbine for P&W's GTF geared turbofan
- First phase of GTF flight testing complete