ヘッドフォン
ヘッドフォンまたはヘッドホン(英: headphone(s))は、再生装置や受信機から出力された電気信号を、耳に接近したスピーカーを用いて音波(可聴音)に変換する装置である。
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[編集] 説明
両耳に当てるものはステレオフォン、耳に差し込む形式のものはイヤフォン(earphone(s))、マイクを備えたものはヘッドセットともそれぞれ呼ばれる。
通常、コネクタ(ジャックとプラグ)を用いて音響機器と分離できるようになっている。代表的な例がiPodなどの携帯型オーディオやMP3プレーヤーなどのデジタルオーディオプレーヤー、携帯電話、CDプレーヤー、パソコンである。
もともとヘッドフォン用の接続端子としては直径6.3mmのステレオプラグ(コネクタ)が一般に用いられてきた。しかし現在では特にポータブルオーディオに代表されるような小型化の要請から、3.5mmのステレオミニプラグ(コネクタ)やさらに小型の専用端子などが用いられる場合が多くなっている。音質の観点では接触面積の多いコネクタの方が有利とされ、現在でも室内鑑賞を目的とした高級ヘッドフォンでは標準プラグ(コネクタ)を用いている。またミニプラグ・標準プラグの両方に対応させるため、変換プラグが付属しているものも多い。
聴取者(ヘッドフォン)と音響機器とはケーブルでつながっているがこれを物理的に離すためにアナログFM変調、Bluetooth、Wi-Fiなどの無線や赤外線を用いて基本ユニットが音声信号を送信したものをヘッドフォン側で受信することでコードレス(ワイヤレス)にしたものもある。このようなタイプは音声信号復調を行なう電子回路のため、電源供給が必要になる。よってヘッドフォン側に一次電池あるいは二次電池を内蔵することになり、重量あるいは体積が大きくなる傾向がある。
D/Aコンバータを内蔵し、デジタルオーディオケーブルの入力を可能にしたものもある。DVDプレーヤーなどからアンプを介さず再生する他、パソコンのサウンドカードあるいはオンボードのデジタル端子に接続する利用法がある。
オーディオ系の常として、製品ごとに性能・表現性に大きく差がある。
[編集] 駆動方式
[編集] ダイナミック型
ダイナミックスピーカーと同じ構造で、磁石の作る磁界の中で音声電流が流れるコイル(ボイスコイル:voice coil)にローレンツ力が発生し、コイルに取り付けた振動板を振動させる方式である。ダイナミック型は、電流に対するローレンツ力を線形にする設計が可能であり、無電流のときコイルに力が発生せず振動系の支持を柔らかくできるため、低歪と広い再生周波数帯域が両立できる非常に優れた方式である。今日、ヘッドフォンの最も一般的な方式であり、大量生産のため価格も安く手に入る。世界初のダイナミック型ヘッドフォンは1937年、ドイツのEugen Beyerが作った。現在でもbeyerdynamic社は主要メーカーの一つである。インピーダンスは16Ω~70Ω程度のものが一般的である。ポータブル機器向けのものは16Ω~30Ω程度の低インピーダンスのものが多く、室内用途の一部高級機では数百Ωの高インピーダンスのものも存在するが、音質とインピーダンスは無関係である。
[編集] マグネチック型
磁石に取り付けた固定コイルに電流を流し、磁石の吸引力を変化させて振動板を兼ねる鉄片を振動させる方式。吸引力が非線形なため歪が出やすく、鉄片が磁石に吸着してしまわないように振動系を固く支持する必要があるため、周波数帯域が狭くなるという原理上の欠点がある。最も簡便なタイプであり、音質も音声情報を認識する最低限のものであるためヘッドフォンとは区別されることも多い。一般に片耳モノラルイヤホンであり、その場合は丸みを帯びた開口部を外耳道に数ミリ挿入する。外耳道の入口で支持するだけのため脱落しやすい。
[編集] バランスド・アーマチュア型
マグネチック型とほぼ同じだが、マグネチック型が鉄片を直接振動板として用いるのに対して、こちらは鉄片の振動を細い棒(ドライブロッド)で振動板に伝えて振動させるという点が異なる。戦前から昭和の中頃までテレビ・ラジオの個別聴取のために使用されてきたマグネチックスピーカーと全く同じ原理である。ダイナミック型と比較すると、吸引力が非線形なため歪が出やすく、鉄片が磁石に吸着してしまわないように振動系を固く支持する必要があるため、周波数帯域が狭くなるという原理上の欠点がある。しかし、ダイナミック型より小型化が容易なことから、音質よりも小型化が要求される外耳道挿入型補聴器等によく用いられている。
イヤホン(日本ではインナーイヤー型ヘッドフォンと称される)の高級タイプでは、低域用・中域用・高域用など専用ドライバーに分けて、周波数帯域が狭いなどの原理上の欠点をある程度改善した製品が開発されている。
[編集] 圧電型
薄い圧電体を2枚の金属板で挟み、これに音声電圧を加えることによって圧電効果(ピエゾ効果)による振動を発生させる方式である。インピーダンスが高過ぎて通常のアンプとは合わないため、動作させるためには専用機器を使う必要がある。歪や再生周波数帯域の点でダイナミック型に劣るため、現在、生産しているメーカーは皆無に等しい。圧電体がロッシェル塩であればクリスタル型、圧電セラミックであればセラミック型となる。
[編集] クリスタル型
ロッシェル塩を使った圧電型である。入力インピーダンスが高く、微弱な電力でも音を発生できるため、鉱石ラジオでは必須のイヤホンであり、昔の主流であった。近年まで学校工作用として製造されていたが、現在は製造しているメーカーは全くない。同じ原理でマイクにもなり使用されていた。ロッシェル塩の結晶は潮解性を持つため、近年は「クリスタル(イヤホン)」を謳っていてもセラミック型である事が多い。
[編集] 静電型
コンデンサ型またはエレクトロスタティック型とも呼ぶ。背極(ステーター)のごく近傍に薄い導体の膜(振動膜)をおく。振動膜に直流電圧(バイアス電圧)をかけ、背極に音声の交流電圧をかけると静電力の変化によって振動膜が振動する。通常は背極を2枚用意し、その間に振動膜を置く(プッシュプル方式)。背極には空気を流通させる穴をあける。電圧に対して線形な静電力が振動膜の全面にほぼ均一に発生するため、低歪でしかも周波数特性に有害な分割振動が起こりにくいという特長がある。しかし、一般にヘッドフォンの振動板は小さくて分割振動が起こりにくいので、良く設計されたダイナミック型が静電型に劣る原理的な理由はない(よく振動板の質量が歪の原因であるように言われるが、質量には非線形要素がないので歪とは無関係である)。静電型は高い電圧を必要とするため、また抵抗負荷ではないため専用のアンプが必要である。日本のスタックスが静電型ヘッドフォンを製造販売している。なお、同社ではイヤー・スピーカーと呼ぶ。
[編集] 構造
ヘッドホンの構造は大きく2つに分けられ、それぞれ次のような特徴がある。
- オープンエアー型(開放型)
- 発音部分の背面が開放されており、音が自由に出入りできるもの。一般に高音が良く伸び音がこもらない反面、低音はやや弱い事が多い。また、音漏れが大きいのも難点である。DJなど、同時に外の音を聞くことが要求される場合にも用いられる。
- 密閉型(クローズド型)
- 発音部分の背面を密閉したもの。力強い低音を再生できるが、音がこもるものも多い。遮音性が高いため、音質よりも外部の音を遮断することを重視する場合に好んで用いられる。ヘッドフォン自体の音も音漏れしにくくよく遮断するので公共の場で利用するヘッドホンに用いられるほか、ヴォーカル録音等のモニタにも愛用される。
ただし音の傾向については構造による違いより、どちらかというとメーカーによる差が大きい。例えばゼンハイザーの開放型ヘッドホンは低音が強調されて、オーディオテクニカの密閉型ヘッドホンは高音が強調されて鳴る傾向があることで知られているが、これらは癖や傾向であって、機種によって音は全然違うことがほとんどである。また、代表的な機種の音だけが取り上げられて、メーカーの癖だと思われていることが多く、実際に試聴しないと音の傾向がわからないことがほとんどである。また遮音性・音漏れについても密閉型だから高いとは必ずしも言えない。
[編集] 種類
[編集] インナーイヤー型
耳介に引っ掛けるタイプ。日本国内で携帯プレーヤーを購入したときに付属してくることが多い。その多くが耳の形状に合うように設計されているため装着感が良く、スポーツなど激しい動きでも脱落しにくい。この形式には開放型が多いため、比較的音漏れしやすい。
[編集] カナル型
外耳道(ear canal)を指し、耳の穴にインナーイヤー型よりも深く差し込んで使用する形式のヘッドフォン。構造上密閉型が多く、遮音性能が比較的良好なため、騒音のやや大きい場所でも音楽等を楽しむことができる。このため、騒音の大きなところでも聞く習慣に繋がりやすく、その際は必然的に音量を上げるため、生涯治らない難聴を引き起こす原因になりやすい。耳に合うかどうかは個人差があり、音質や装着感などにも大きく影響する。そのため外耳道挿入部が着脱式部品(イヤーピース)となっており、大きさの異なる複数の部品が付属する製品が多い。外耳道に挿入する部分がゴム製で摩擦が大きいものは、耳からヘッドフォンがインナーイヤー型より抜けにくくなっている。外部からの遮音性が高い反面、(製品や個人差によっては)自分の鼻息、歩いたときの振動、あるいはコードの擦れ音など身体の音が顕著に増幅されてしまう欠点があり[1]、コードの擦れ音対策がなされている製品もある。近年各メーカーから相次いで販売されるようになった。
[編集] ヘッドバンド型
ヘッドバンドを頭の上に乗せるものである。「オーバーヘッド型」とも呼ばれる。主に室内で使用するヘッドフォンに用いられるが、近年ポータブル用途を意識した比較的小型でコードも短いものも各社から発売されている。耳に良く密着し、密閉型では音漏れしにくいものが多い。しかし持ち運ぶときにかさ張る、髪型が乱れるなどの理由で敬遠される事もある。最近では折り畳み型もある。
[編集] ネックバンド型
通常は頭上にあるヘッドバンドが首の後ろ側に位置している方式。携帯用のヘッドフォンに用いられる。これを採用したのは1997年にソニーから発売されたMDR-G61が最初で、ゼンハイザーもこの方式のヘッドフォンを販売している。長所はヘッドバンドが頭部を押さえないため、装着しても髪型の崩れを気にする必要がなく、帽子をかぶることもできる。運動中にも邪魔にならない。短所はヘッドフォン本体の脱落を防ぐために装着した時の締め付け具合が強く、またマフラーやフード付きの衣服を着用している場合にはヘッドバンドが邪魔になる場合がある。
[編集] 耳掛け型・クリップ型
クリップを外耳に引っ掛けるもの。コードをハウジング内に収納するモデルもあり、(インナーイヤー型と比較して振動板面積が大きく取れる割に)非常にコンパクトで携帯に便利である。しかし外耳に引っ掛けるため耳に密着しにくく、音漏れしやすい。長時間使用すると外耳に痛みが出る事もある。パステルカラーであったりメッキのアクセントの入っているものなど、ファッション性を重視した製品も多い。
[編集] 使用上の注意
ヘッドフォンを大きな音量で用いると、一時的または永続的な耳の損傷や難聴を起こすことがある(→ヘッドフォン難聴)。また運転中や運動中などに使用すると、外部の音が遮られることにより、交通事故に遭遇するなどの他の危険も生ずる。1日100デシベル以上の音を15分以上聞くと難聴になりやすいと言われている。
[編集] ヘッドフォンとステレオ再生
ヘッドフォンとステレオスピーカーを用いた再生の最大の違いは、音像の定位と臨場感である。
一般のレコードなどに見るステレオ音源は、擬似ステレオ(ステレオフォニック)で再生されることを前提とし、原理は左右の音量を違えるだけで、スピーカーを結ぶ直線上の任意の位置に音象が定位しているように聞こえるという、人間の錯覚を利用したものである。この錯覚を引き起こすためには、スピーカーとの距離、部屋の反響などが必要で、これはアンプに繋ぐだけの一般のヘッドフォンでは原理的に不可能である。また、往年のクラシック系の音源は、ある程度部屋の反響を前提とする録音方式のものもあり、ヘッドフォンでは奥行きなどの臨場感が出ない。そのため、ヘッドフォンでこれらの擬似ステレオ音源を聴取すると、両耳を結ぶ短い直線上にボヤッと音像が定位するだけで、自然な広がりの音像とは似ても似つかないものになる。しかし、この不自然さを気にするかどうかは慣れや個人差もあり、特にポピュラー音楽の聴取では気にしない人が多い。ヘッドフォンは、部屋の反響音がなく周囲の騒音も聞こえにくいので、個々の楽器や音声そのものがはっきり聞こえるため、解像度が良いと逆に喜ぶ人も多い。ヘッドフォンが唯一臨場感を発揮するのは、音響的に人体に良く似せた人形の耳の中にマイクを仕込んで録音された(バイノーラル録音)音源を再生する時だけであり、原理的にはあたかもその場にいるかのように聞こえる真の立体音響を実現できるはずだが、実用化のためには課題も多い。
[編集] ヘッドフォンの新しい利用法
[編集] サラウンドヘッドフォン
前述のようにヘッドフォンは一般に音が頭の中でなっているような感覚があるため、映画の鑑賞などでは違和感がある事もあった。しかし現在ではドルビーなどのサラウンド技術を用いたサラウンドヘッドフォンが開発され、手軽なサラウンド環境として人気を集めている。多くのサラウンドヘッドフォンでは赤外線や電波によるコードレス化も併せて行われていることが多い。ソニーは、1998年に普通のヘッドフォンでも5.1chサラウンドを再現できる最初の5.1chサラウンドヘッドホンMDR-DS5000を発売している。その後、ドルビー社も同様の機能を持つ「Dolby Headphone」を開発している。なお同技術は5.1chの再生を目的としているため、ステレオ音声の場合はPro Logic IIなどと併用する必要がある。
コンピュータゲームのQuakeやカウンターストライクに代表されるFPSと呼ばれるジャンルではゲーム中の物音から敵の所在や動きを察知する事が重要であり、この点では安物のヘッドフォンでも6スピーカー・サラウンドシステムより優れている。音の方向性を知るにも小さな音を聞き取るにも、ヘッドフォンはスピーカーより有利である。
また、サラウンドヘッドフォンにはステレオ環境から人間の聴覚の特性を利用してサラウンドを再現するバーチャルサラウンドヘッドフォンと、通常のサラウンドスピーカーと同様に左右にそれぞれ複数のスピーカーを搭載したリアルサラウンドヘッドフォンがあり、前者は音の定位がはっきりしないと感じる場合があり、用途や利用環境、使用者によって感想は多種多様となりやすく、後者は音の方向性がつかみやすいものの、スピーカーが多いために重量が増しやすい。
[編集] ノイズキャンセリングヘッドフォン
「消音スピーカー#ノイズキャンセラー」も参照
雑音と逆位相の電気信号を音源信号に適量付加することにより、雑音と逆位相の音を発生させ、騒音をある程度相殺する方式のヘッドフォンである。周囲の騒音を拾うためのマイクロフォンと、騒音信号を増幅するためのアンプを内蔵し、このために電池などを別途必要とする。iPodなどの普及と共に近年人気を集めている。2006年にはパナソニックとソニーのデジタルオーディオプレーヤーの一部にノイズキャンセリングヘッドフォンが標準で添付されるようになった。
ノイズキャンセリングヘッドフォンの騒音低減率はだいたい20dB程度であり、一般の騒音用耳栓の約30dB~40dBには遠く及ばない。特に、ノイズキャンセリングヘッドフォンは、高音域の騒音を低減することが原理的に苦手であり、低減は概ね低音部においてのみ行われる。このように騒音を完全に相殺できる訳ではないので過度な期待は禁物だが、鉄道や自動車などの車両内における低音騒音にはある程度効果が認められている。騒音相殺アンプを迂回できない機種の場合、充分に静寂な環境においては、このアンプの出力に含まれる雑音信号成分(ヒスノイズ)が逆に気になることもある。
[編集] 主要メーカー
[編集] 日本のメーカー・ブランド
- オーディオテクニカ:密閉型が多く、木材を用いた高級ヘッドフォンのシリーズもある。
- スタックス:イヤースピーカーと呼ばれるヘッドフォンを主に製造する。
- ソニー:スタジオモニターユースのMDR-CD900STなどを製造販売している。
- パイオニア:開発・製造は主に子会社の東北パイオニアが行う。
- 日本ビクター
- パナソニック:Technicsブランドも存在する。
- エレガアコス
- ローランド
- デノン
- 日立マクセル
- CEC
- 多摩電子工業
- アシダ音響:ST-31型を製造していた。
- ファイナルオーディオデザイン
- ラディウス
[編集] 日本以外のメーカー・ブランド
- AKG
- バング&オルフセン
- ベイヤーダイナミック
- ボーズ
- エティモティック・リサーチ
- コス
- フィリップス
- プラントロニクス
- ゼンハイザー
- シュア
- アルティメット・イヤーズ
- ウルトラゾーン
- クリエイティブテクノロジー
- サムソン・テクノロジーズ
- ウェストン
- モンスターケーブル
- Cresyn
- Grado Labs
- JLab Audio
- Klipsch Audio Technologies
- Ortofon
[編集] 脚注
- ^ “高機能ヘッドホンでイイ音を備えたソニー「ウォークマンEシリーズ」”. BCNランキング. BCN (企業) (2007年6月27日). 2010年4月2日閲覧。