同族経営

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同族経営(どうぞくけいえい)とは、特定の親族などが支配・経営する組織のことを指す。

家族経営ファミリービジネスオーナー系企業およびファミリー企業などとも称す。

日本法人税法では、上位3株主の持ち株比率をあわせて50 %を超える会社を「同族会社」と定義する。この定義によれば、株式の需要が低い中小企業の多くや、買収防衛策として経営者が株式の大部を確保している一部大企業も同族会社に該当することになる。

一般的な定義

ファミリービジネスとは、現在も創業家一族が所有し、経営において実質的な支配権を行使している企業をいう[1]

法人税法で定義する同族会社のように、50 %以上の出資比率を要件としない。例えば、出資比率はファミリー全体で5 %しかなくても、創業家一族が経営陣となって実質的に支配している場合はファミリービジネスとなる[1]

一般的には、『ファミリービジネス≒中小企業』というイメージを持たれがちであり、実際に中小中堅企業が中心ではあるが、上記の定義によれば、ファミリーの出資比率が少ない上場企業であってもファミリービジネスに該当する。例えば、トヨタ自動車竹中工務店サントリーキヤノンなどもファミリービジネスである[1]

現状

2019年(平成31/令和元年)に発表された「グローバル・ファミリー企業500社ランキング」によれば、世界の同族経営会社上位10社のうち5社がアメリカ合衆国の企業、4社がドイツの企業であった。1位はウォルマート、2位はフォルクスワーゲン、3位はウォーレン・バフェットが率いるバークシャー・ハサウェイであった[2]

日本では、経済全体に占めるファミリービジネスの比重は極めて大きく、企業数で見ると全体の約95 %はファミリービジネスである。また、雇用者数は全体の6 - 7割を占めている[3]。旧・金剛組を筆頭として、日本のファミリービジネスは海外に比べて長寿という傾向も見られる。業歴100年超のファミリービジネスは欧州全体で6,000社、米国では800社と言われているのに対して、日本では3万社と推測されている[3]

フランスには創業200年以上の優良企業が加盟するエノキアン協会という団体があり、全世界で40社(2010年6月現在)が加盟しているが、このうち5社が日本企業である。(月桂冠、赤福、法師岡谷鋼機虎屋)こうしたことから日本は世界でも有数のファミリービジネス大国と呼ぶことができる。

なお、日本では私立学校法医療法社会福祉法更生保護事業法NPO法公益社団法人・公益財団法人法により学校法人医療法人社会福祉法人更生保護法人特定非営利活動法人公益社団法人公益財団法人については当該役員、役員の配偶者及び三親等以内の親族が役員の一定数又は総数の一定割合を超えて含まれることになってはならないことが規定されており、強固な同族経営にならないようにしている。

海外においては創業者や創業メンバーが黄金株を保有している場合が見られ、基本的に上場企業の黄金株発行が禁止されているNASDAQニューヨーク証券取引所上場企業においても、創業者や創業メンバーが上場前に発行した黄金株を保有している場合が見られる。

社会主義国中華人民共和国においても同族経営企業は存在しており、2019年版「世界同族企業500社」に中国企業が散見される。

メリット

  • 株式買収によって経営権が奪われるリスクを低下させる。結果株式に左右されない経営を進められる。
  • 会社が拡大するに従って、経営者一族がリターンを得る。特に上場時には莫大な財産を獲得できることが多い。
  • 会社を一族(特に息子)に継承(世襲)させることにより、社長交代など、経営陣の移行を円滑なものにできる場合がある。また次期社長候補の経営者としてのキャリア形成(いわゆる帝王学)を、早期の段階から計画的に実施できる。
  • 本来自分が得る分の収入を家族に分散させることにより、節税できる。
  • 株主の圧力などで短期の経営成果を求めがちな経営に比べて長期的な視点で見た経営を進められる。
  • 一族の上位の人間と一族でない部下や一般社員との間の緊張をうまく利用すれば、長期の視点での組織能力の強みとなる場合がある。たとえば「宣伝上手」にはオーナー系企業が多いという知見がある[4]

デメリット

  • 「税法上の定義」に基づく同族会社に該当すれば、大株主の権限制限など、法的な制限が課されることになる。ドイツにおける同族会社の多さは企業の社会的責任が主張される背景となった。
  • 生活費遊興費を社費でまかなう、創業・経営者一族が(個人的な理由で)気に入った者を要職につけたり、気に入らない者を閑職に追いやったりするなど、会社や資産の私物化を進めることで公私混同を招き、放漫経営となる傾向にある。
    • なお、税法では生活費など「雑多な出費」を経費に計上すれば税金を節約できる仕組みとなっている背景から、この傾向は中小企業になれば特に強くなる。ただし生活費などの私的利用を目的に社費を流用した場合、税法で認められている一定の支出(交際費や福利厚生費など)を超える部分は当然ながら役員報酬として認定され、個人の給与所得として源泉所得税が課税されることとなる。また、創業者一族が気に入らない者を入れない、追放することになるため、反対意見を出せない「イエスマン」しか存在せず、何らかの問題が起きても表面化しないことにつながる。
  • 適切な能力を持たない者が経営者となるリスクを高める。また要職が能力以外の要因で与えられるという点で、社員のモチベーションを低下させる。
    • この件については、大日本帝国海軍との比較で、「同族企業に入る人間は最初から幹部になれないと承知で入るから、横一線で採用した人間を、途中の試験でエリートと非エリートに分ける日本軍の手法より、非エリートの納得は得やすい」という意見もある[5]
  • 一族の利益を、株主や社員より不当に優先させる場合がある。例えば莫大な賠償金から逃れるための、資産分割の手段に利用される場合がある。
  • 要職の後継者候補が、親子間の不仲や対立で家業を継ぎたがらない「お家騒動」の場合、経営計画が円滑にいかなくなる。
  • 外部からの視野が入りにくく、また経営者が後継者候補(特に経営者の子供の場合)に対して、公私で自身の帝王学を教育することによって、会社経営がマンネリ化する恐れがある。
  • 良くも悪くも、独特の個性的な社風が変わりにくく、経営改革の最大の障害となりやすい。

その他の用法

同族会社(もしくは、同族経営、同族企業)という呼び方は、以下のような企業に対しても使われることがある。

  • 社長(あるいは代表取締役など)を、自分の子(特に長子(長男長女)、広義では娘婿も。)または配偶者や孫さらには兄弟姉妹に継承させる。
  • 自分の子(特に長子)を、若年から子会社社長や部長・取締役などの重役につかせる。
  • 元専業主婦の配偶者、学業を終えたばかりの息子や娘(特に長子)など、実績のない一族の人間に要職または重役に就かせる。
  • 一族で株式と経営権の大部分を占有している。

こうした意味での同族経営が行われている会社の成功率が低いわけではないものの、企業不祥事の報道の際には経営の私物化が不祥事の原因であるとやり玉に挙げられることが多く、ダーティイメージを持たれやすい。

韓国では経済の大半が創業者一族からなる財閥に支配されていることから、一族に有利な人事が行われる傾向にある。2014年末に発生したナッツ・リターン事件ではこうした財閥一族の人事に対する国民の不満が一挙に爆発した。

創業者の意向により、ホンダのように同族経営の否定を表明する企業も存在する。また、もともと同族企業であっても、オーナー社長の意思により一族を重要な役職につけず、後継者に外部の人物を指名し、同族経営からの脱却をはかる企業もある(任天堂など)。

同族経営の主体となるのは大抵は創業家または創業家と閨閥で繋がった一族であるが、経営権が創業家とは血縁のない一族により握られている場合もある(大日本印刷など)。

主な同族企業

ここでは、創業者やその一族が会社経営の中心にある著名企業を挙げる。

日本(上場企業)

機械・家具・自動車

不動産

  • 穴吹興産 - 社長が創業家(穴吹家(分家))出身。また、上場関連企業のクリエアナブキも会長職を同社社長が兼任している。
  • パーク24 - 社長が創業家(西川家)出身。

建設

金融

出版・印刷・マスコミ

飲料・酒類

  • 伊藤園 - 社長・副社長が創業家(本庄家)出身。財団法人本庄国際奨学財団5.70%、本庄八郎3.24%。
  • キーコーヒー - 社長が創業家(柴田家)出身。

菓子・調味料

その他食品

医薬品・化粧品・化学

  • 大正製薬 - 社長が創業家(田中家)を引き継いだ上原家の出身。財団法人上原記念生命科学財団14.12%、上原昭二12.02%、財団法人上原近代美術館3.28%、上原明2.35%。但し、近年は提携先である住友化学が第3位株主とやや接近している状況。
  • エーザイ - 社長が創業家(内藤家)出身。
  • ロート製薬 - 会長兼社長が創業家(山田家)出身(社長は2009年6月25日より2018年7月31日まで創業家ではない吉野俊昭が就いていた)。
  • 久光製薬 - 社長・会長が創業家(久光家、分家の中冨家)出身。
  • 小林製薬 - 社長とその息子たちが創業家(小林家)出身。
  • 塩野義製薬 - 会長が創業家(塩野家)出身。
  • 大幸薬品 - 会長が創業家(柴田家)出身。
  • コーセー - 社長・会長が創業家(小林家)出身。
  • マンダム - 社長が創業家(西村家)出身。
  • ノエビア - 持株会社社長・会長が創業家(大倉家)出身。一時は子会社・常盤薬品工業も創業家出身だったが、社長が元交際相手に対する脅迫容疑で逮捕され、創業家ではない中野正隆が引き継いだ。
  • ポーラ - 社長が創業家(鈴木家)。
  • 三菱鉛筆 - 創業家は眞崎家。その後近藤家から社長を輩出した後、数原家による同族経営が始まり現在に至る。
  • エステー - 2013年4月より創業家(鈴木家)。※創業家以外が社長を務めていた時期もある(2007-2008年度は小林寛三取締役が、2012年度は米田幸正顧問が務める)が、2013年4月からは会長が鈴木喬、社長は姪で元日産自動車社員の鈴木貴子。
  • 多木化学 - 社長が創業家(多木家)出身。

運輸

小売

外食

  • ジョイフル - 社長が創業者の息子。ジョイ開発有限会社(穴見家の資産管理会社で株主は全員穴見家、元ビジネスホテル経営)30.77%、穴見陽一(社長)・穴見賢一(社長の実弟)各4.97%、アナミアセット有限会社(社長個人の資産管理会社)4.57%、穴見加代(創業者穴見保雄の夫人)1.44%。
  • 東天紅 - 社長が創業家(小泉家)出身。筆頭株主の小泉グループ(小泉家の資産管理・グループ統括会社)では富士サファリパーク静岡裾野の大型動物園)などもグループで経営。
  • プレナス - 社長・会長が創業家(塩井家)出身。

サービス

  • ソフトバンク - 社長が創業者、社長の実弟が子会社の取締役(孫家)。
  • 歌舞伎座 - 社長が筆頭株主(松竹)の創業家(大谷家)出身。
  • コナミ - 社長・会長が創業家(上月氏)出身。
  • カプコン - 社長・会長が創業家(辻本家)出身。
  • サンリオ - 社長・会長・取締役が創業家(辻家)出身。
  • シダックス - 創業家(志太家)によって経営権を掌握。
  • 長瀬産業 - 社長・会長が創業家(長瀬家)出身。子会社である林原(後述)も創業家が社長。
  • 大塚商会 - 社長・会長が創業家(大塚家)出身。
  • 楽天 - 会長兼社長が創業者(三木谷家)。他の大株主も同一人物の資産管理会社及び創業者の家族が保有。
  • TAC - 社長・斎藤博明が創業。他の大株主も斎藤の資産管理会社が保有。
  • タカラトミー - 社長が旧トミー創業家出身(富山家)・副社長が旧タカラ創業家(佐藤家)出身。
  • TKC - 社長が創業家(飯塚家)出身。常務に社長の義兄が就いている。
  • コーエーテクモホールディングス - 会長と社長にコーエー創業家(襟川家)の夫婦が就いている。

日本(上場していない企業)

機械・家具・自動車

  • パロマ - 社長が創業家(小林家)出身。
  • YKK - 会長が創業家(吉田家)出身。社名は前身の吉田工業株式会社Yoshida Kogyo Kaisha)から。ちなみに兄弟会社であり現在完全子会社であるYKK AP(旧YKKアーキテクチュアルプロダクツ)も会長が創業家。
  • ヤマザキマザック(MAZAK) - 社長が創業家(山崎家)出身。
  • ヤンマーホールディングス(ヤンマー) - 社長が創業家(山岡家)出身。
  • 村田機械 - 社長が創業家(村田家)出身。村田製作所と同姓なのは全くの偶然で一切無関係。
  • タイガー魔法瓶 - 社長が創業家(菊池家)出身。
  • テスコ
  • 関水金属 - 社長が創業家(加藤家)出身。
  • タミヤ - 社長・会長が創業家(田宮家)出身。
  • タニタ - 社長が創業家(谷田家)出身。
  • 今治造船 - 創業から現在まで創業家(檜垣家)が支配し、本体、関連会社の役員の大半は一族が占める。
  • 矢崎総業 - 社長・会長が創業家(矢崎家)出身。
  • アイリスオーヤマ - 社長・会長が創業家(大山家)出身。

不動産

  • アパグループ - 社長が創業家(元谷家)出身。系列各社も元谷一家の家族が社長を務める。
  • 森ビル - 社長・会長が創業家(森家(本家))出身。
  • 森トラスト - 社長が創業家(森家(分家))出身。社長は兄弟同士だが、不仲であったことから分社したのは有名。
  • 野村殖産 - 野村財閥の本家で、現在も同家関係者により経営支配。
  • 寿不動産 - 後述・サントリーHDの親会社で実質的な資産管理会社。
  • 鉄鋼ビル - 社長が創業家(増岡家)。後述の増岡組も同一。

建設

金融

出版・印刷・マスコミ

コミュニティ放送局

飲料・酒類

  • サントリーホールディングス(サントリー) - 歴代社長が外部招聘の現職(新浪剛史)を除いて創業家(鳥井家・佐治家)出身。また株式についても、事実上創業家の資産管理会社としての役割を担っているとされる寿不動産が9割近い株式を保有する。
  • UCC上島珈琲 - 社長・副社長が創業家(上島家)出身。
  • 月桂冠 - 社長・会長が創業家(大倉家)出身。エノキアン協会会員社。
  • 小西酒造 - 社長・会長が創業家(小西家)出身。
  • 菊正宗酒造 - 社長が創業家(嘉納家(本家))出身。
  • 白鶴酒造 - 社長・会長が創業家(嘉納家(分家))出身。
  • 辰馬本家酒造 - 社長が創業家(辰馬家)出身。
  • 黄桜 - 社長が創業家(松本家)出身。
  • 日本盛 - 社長が創業家(森本家)出身。
  • 盛田 - 社長が創業家(盛田家(本家))。
  • 本坊酒造 - 社長・会長が創業家(本坊家)。
  • 薩摩酒造 - 社長・会長が創業家(本坊家)。
  • 霧島酒造 - 社長が創業家(江夏家)。出身。
  • チョーヤ梅酒 - 会長・社長が創業家(金銅家)出身。

菓子・調味料

その他食品

医薬品・化粧品・化学

  • 大日本除虫菊(金鳥) - 社長が創業家(上山家)出身。
  • ホーユー - 社長・会長が創業家(水野家)出身。但し、兄弟会社であるクラシエHDは、社長も会長も創業家出身ではない。
  • 日本メナード化粧品 - 社長・会長が創業家(野々川家)出身。
  • サクラクレパス - 創業家は佐竹家。その後佐々木家から社長を輩出した後、西村家による同族経営が始まり現在に至る。
  • 桃谷順天館 - 社長が創業家(桃谷家)。
  • 再春館製薬所 - 社長・会長が創業家(西川家)。
  • 牛乳石鹸共進社 - 社長が創業家(宮崎家)。
  • 日亜化学工業 - 社長・会長が創業家(小川家)。また、その家族も同社の要職に就任。日亜持株組合(社員持株組織)と協同医薬研究所で発行済み株式の4分の1を超す。
  • サンスター - 会長が創業家(金田家)。元大証(現・東証)1部上場。
  • 日本香堂 - 社長・会長が創業家(小仲家)。
  • カメヤマ - 社長・会長が創業家(谷川家)。但し、社長は1993年7月から1999年6月までは小田部猛、1999年7月から2008年6月までは新庄哲三と、15年間にわたって創業家でない社長が就任している。
  • 浅田飴 - 社長が創業家(堀内家)出身。
  • オッペン化粧品 - 会長が創業家(山下家)。社長は創業家の甥で松田直大
  • トンボ鉛筆 - 社長が創業家(小川家)。
  • ダリヤ - 社長・会長が創業家(野々川家)出身。
  • 龍角散 - 社長が創業家(藤井家)出身。久光製薬と龍角散と小林製薬とは遠い親戚にあたるという。

運輸

小売

外食

  • 吉兆 - 創業者一族の湯木家が務める。不祥事のあった「船場吉兆」(2008年廃業が決定)の経営元。
  • モンテローザ - 社長が創業者(大神家)。

サービス

世界各国の事例

欧米

中国・韓国

インド

東南アジア

中近東

過去の主な事例

日本の事例

機械・家具・自動車

  • 京セラドキュメントソリューションズ - 旧・三田工業時代は創業家(三田家)が社長を務めていたが1998年(平成10年)に経営破綻。2000年(平成12年)以降は京セラの完全子会社となり、三田家は経営から追放。
  • ブリヂストン - 創業家(石橋家)が会長・社長を務めた。また源流の日本ゴム(現アサヒシューズ)や旭興産などの会長・社長も石橋正二郎の兄徳次郎や弟進一、甥慶一が務めたことがある。なお、石橋財団はブリヂストンの筆頭株主であり、現在も一族やそれに関係する会社も大株主として名を連ねる。また、石橋家は政財界とも強いつながりを持ち、血縁の鳩山家からは国会議員や内閣総理大臣を輩出した。
  • マツダ - 創業間もない1921年の東洋工業時代に松田重次郎が社長に就任して同族経営となったが、1977年12月のマツダ再建の過程で孫の松田耕平が業績不振による会社の大幅な赤字の責任を外部より取らされる形で社長を退任し、その後継は山崎芳樹となったことで55年以上続いていた同族経営は終焉した。一方、松田家はプロ野球球団・広島東洋カープ(引き続きマツダが筆頭株主)や広島マツダ(マツダが直接出資していない独立資本)など一部関係企業の経営を継続している。
  • 三洋電機 - 長らく社長・会長が創業家(井植家)出身であり、一族の数多くの人物が社員を務めていた。それを表す言葉として「社員が4人集まるところで井植家の悪口を言ってはいけない。1人は血族者だから」というものが存在した。だが、経営が悪化し2005年(平成17年)に井植敏会長が辞任、更に2006年(平成18年)には、度重なる不祥事の責任をとり井植敏雅社長が辞任(のちにリクシルに幹部として移籍)。その後は創業家同士が縁戚関係だったパナソニックに完全子会社化された。
  • パナソニック - 創業者を始め、社長が創業家(松下家)出身だったが、現在は実権のない名誉会長・副会長としてのみ残り、会長・社長は同族外からの登用。
  • 横河電機 - 初代から第5代、第7代の社長が、創業者・横河民輔の子息や親族がつとめた。第7代社長・横河正三が名誉会長を退いて以降、横河一族からは同社の経営陣に加わっている者はいない。
  • 住友精密工業 - 財閥解体後に設立された住友金属工業の子会社で、住友グループに属する。住友財閥の創業家・住友家から会長が輩出されたことがある(会長を務めた住友元夫は住友財閥の15代目総帥・住友友純の四男で元住友金属専務)。
  • ダイキン工業 - 当初はかつて創業家(山田家)が社長・会長を務めていた。筆頭株主が住友金属、主要株主の2~3割が住友系資本に異動して以降は住友グループ寄りに。なお、2000年代初頭まで創業家出身者の山田靖が副社長職を務めていたのを最後に創業家はダイキンの経営を退いた。
  • ヤマハヤマハ発動機 - 創業家(山葉家)や川上家が社長と会長を歴任している。なお、会社名および商標(ブランド名)は、創業家の姓より由来。
  • 小糸製作所小糸工業 - 社長・会長が創業家(小糸家)出身であったが、のちに麻布自動車ブーン・ピケンズの手に渡り、現在はトヨタ自動車が筆頭株主となり、事実上傘下に入った。
  • 古河電気工業 - 古河系の電線メーカー。財閥解体後に古河財閥の創業家・古河家から社長が輩出されたことがある(社長を務めた古河潤之助は古河財閥の4代目総帥・古河従純の長男)。

建設

食料品

  • カルビー
  • 不二家 - 長らく社長が創業家(藤井家)出身だったが、賞味期限切れなどの不祥事の多発で藤井林太郎社長が辞任。同社では生え抜き人事で桜井康文が社長に就任し、同族支配が事実上終息。現在の経営権は山崎製パンが掌握。
  • 日本ハム - 社長・会長が創業家(大社家)出身であったが、牛肉偽装事件等により大社家が経営権を返上。その後の人事により大社家は経営陣から追放される。なお、日本ハムもダイエーや後述のロッテ同様プロ野球球団(日本ハムファイターズ→北海道日本ハムファイターズ)を保有しているが、追放後も、しばらくの間オーナーは大社家から出ていた。
  • 相模ハム - 社長・会長が創業家(程島家)出身であったが、経営環境の変化等に対応しきれず、エア・ウォーターの支援を受け経営再建中。
  • 伊藤ハム - 社長・会長が創業家(伊藤家)出身であったが、豚肉偽装や千葉県にある同社東京工場の水質汚染が相次ぎ発覚。この結果、伊藤家は経営権を返上し、三菱商事第三者割当増資により同社の支配株主となった。
  • 東ハト - 旧会社の倒産前は社長・会長が創業家(小林家)が経営を支配していたが、倒産後はユニゾン・キャピタルバンダイ(のちバンナムHD)丸紅の共同支援を経て、現在は山崎製パンに経営権が異動している。
  • 美濃屋吉兵衛商店 - 社長・会長が創業家(鈴木家)出身であった。450年以上の歴史を持つ老舗企業だったが、2019年(令和元年)に経営破綻。

金融・保険

  • 富山第一銀行
  • スルガ銀行 - 社長・副社長が創業家(岡野家)だったが、2018年のスマートデイズ不正融資事件で、金融庁からの業務停止命令を受け、創業家が経営から追放され、資産管理会社が所有していた株券も買収された。
  • 清水銀行 - 社長・会長が創業家(杉山家)出身であった。また、設立母体でもあり現在筆頭株主である鈴与からも頭取など(鈴与創業家の鈴木家など)を輩出したことがある。
  • 福岡シティ銀行 - 西日本シティ銀行誕生直前の優先株無配による引責辞任までは、社長・頭取を創業者とその息子が務めていた(四島家)。現在は元頭取の娘婿が西日本シティ銀行の会長(旧福岡シティ銀行の最後の頭取)である。
  • 日本生命保険 - 過去数代にわたり、社長が創業家(弘世家)とその親族の出身だった。

出版・印刷・マスコミ

パルプ・紙

  • 三菱製紙 - 三菱系の製紙会社。財閥解体後に三菱財閥の創業家・岩崎家から会長が輩出されたことがある(会長を務めた岩崎隆弥は三菱財閥の3代目総帥・岩崎久弥の次男で戦前にも三菱製紙の会長を務めていた)。
  • 大王製紙 - 社長・会長が創業家(井川家)出身であったが、2011年(平成23年)10月、会長がグループ企業から数十億円もの不明瞭な借入をしていた「大王製紙事件」が発覚。一族の役員は辞任・取締役へ降格し、主要経営陣から一掃された。

医薬品・化粧品・化学

ガラス・土石製品

  • 日本板硝子 - 住友系のガラスメーカー。財閥解体後に住友財閥の創業家・住友家の娘婿が社長に就任したことがある(社長を務めた岩尾正の妻は住友家の一員で住友精密工業の会長を務めた住友元夫の次女)。

運輸

  • 西武鉄道 - 長らくオーナーだった堤家による支配が続いたが、不祥事発覚(ヤミ献金疑惑・総会屋利益供与事件・オーナー企業からの出資比率に関する金融商品取引法違反)により、堤義明会長は辞任し、東京地方検察庁特別捜査部逮捕、経営から追放された。堤家支配は崩れ、東京証券取引所から有価証券報告書違反で上場廃止された。ただし、2016年(平成28年)2月まで、堤自身が堤家の資産管理会社である「NWコーポレーション」の大株主であり、そのNWコーポレーションが、西武ホールディングスの大株主であった。
  • 東京急行電鉄 - 創業家(五島家)が実質的なオーナー一族となっていたが(株主構成から見るとオーナーではないため純然たるファミリー企業ではない)、その後清水仁社長が創業者の孫・五島哲を退任させ、五島家はグループから一掃された。
  • 高松琴平電気鉄道 - 社長が旧琴平電鉄の創業家(大西家)出身であったが、2001年(平成13年)12月に経営破綻、翌2002年(平成14年)8月の新体制発足により一掃された。
  • 小田急電鉄 - 利光家が創業家であり、東急からの分離独立後も、利光達三、利光国夫が社長もしくは会長を務めたが、不祥事により利光国夫が会長職を引責辞任した後は、利光家出身の経営陣はいない。
  • アルピコグループアルピコ交通(旧松本電気鉄道)- 1950年(昭和25年)から瀧澤家による経営が続いていたが、2007年(平成19年)から始まった経営再建に従い一掃された。
  • ヤマトホールディングスヤマト運輸 - ヤマトホールディングスが事業会社だった時代には、創業家(小倉家)が歴任。ヤマト運輸の現法人の初代社長も創業家出身の小倉康嗣だったが、現在は、メインバンクであるみずほコーポレート銀行(旧富士銀行)出身の木川眞が社長を務めている(HDの代表取締役を兼任)。ただしヤマトの場合、同族でなければ『宅急便は誕生しなかった』と言われている。

小売

  • カネスエ - 2001年には主要株主が社長の牛田彰ほか10名と創業家(牛田家)中心となっていた。
  • いなげや - 創業以来創業家(猿渡家)が社長を務めていたが、2001年2月に初となる非創業家出身の遠藤正敏が就任し、同族経営が終焉。
  • ライフコーポレーション -創業者の清水信次、2代目社長で信次の弟となる三夫の代まで同族経営であったが、三夫の投資の失敗を受けて1988年3月15日に役員会の特別決議の結果三夫を解任し、自身を会長兼務の形で社長に再任させた。2006年3月のトップ人事で岩崎高治を代表取締役社長兼COO(最高執行責任者)とし、自身は代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)となった。これにより、同族経営は終焉[12][13][14]
  • マイカル - 社長・会長が創業家(小林家)出身であったが、倒産前は主力行第一勧業銀行(当時))や警察庁から社長が派遣されていたこともある。現在のマイカルは社長がイオン(完全親会社)の出身。
  • コジマ - 社長・会長が小島家出身だったが、ビックカメラ傘下となり、2013年(平成25年)までに一掃された。
  • イエローハット - 創業家(鍵山家)による支配が続いていたが2008年(平成20年)に終結。
  • ダイエー - 創業家(中内家)が相当数の株を所有していた。創業者・中内㓛が長男で副社長の中内潤を後継に据えようとしたこともある。系列だった福岡ダイエーホークス(現福岡ソフトバンクホークス)のオーナーは中内家だった。経営悪化に伴い、2013年(平成25年)にイオングループが連結子会社化。中内家は事実上追放される。

外食

  • すかいらーく - 社長・会長が創業家(横川家)出身だったが、株主の野村プリンシパルとCVCキャピタルパートナーズによって追放されたため、同族経営は終息。
  • 銀座コージーコーナー

サービス

  • 吉本興業 - 社長・会長が創業家(吉本家)およびその親族(林家)で、創業家関連の不動産管理会社(大成土地)が筆頭株主だった。一時期は経営主導権争いでたびたび社長・会長が交代していたこともある。なお、出井伸之率いる投資コンサルタント会社・クオンタムリープを母体に設立した特定目的会社によるTOBが2009年(平成21年)9月中に決定・基本合意し、のち非上場化。翌年9月に、特定目的会社が旧社を合併して新社(新生“吉本興業”)となった。
  • 円谷プロダクション - 社長・会長が創業家(円谷家)出身であった。2007年(平成19年)に経営危機に見舞われ、TYOとバンダイへ株式譲渡し、後に円谷家は経営から追放。現在はフィールズが筆頭株主。現在の社長は円谷プロダクション出身。
  • 石原プロモーション
  • バンダイ(旧社) - 社長・会長が創業家(山科家)であった。のちに当時の三和銀行(主力行)出身である高須武男が、入社3年目にして社長就任してからは創業家は次第に経営を退くようになった。統合後の同社は経営陣がほぼ生え抜き人事で構成されている。
  • ナムコ(旧社) - バンダイ(旧社)と経営統合する前は長らく、創業家(中村家)が経営の主導権を握っていた。しかし、統合後はバンダイ(旧社)の主要株主と経営陣が主導権を実質掌握。
  • 任天堂 - 一世紀に渡り創業家(山内家)による経営が続いていたが、3代目社長の山内溥が2002年(平成14年)に4代目社長として岩田聡を指名し、同族経営解消。
  • ゼンリン

その他

  • ヤナセ - 創業家(梁瀬家)が歴代社長を務めていたが、業績悪化により後に親族以外の同社出身者が社長に就任し現在に至る。
  • 出光興産 - 創業家(出光家)が数代に渡り社長を務めた。また非上場・過小資本金であったが、2006年(平成18年)に上場。ただし現在も出光家および同族関係企業・団体が筆頭株主である。
  • 三菱商事 - 三菱系の総合商社。財閥解体後に三菱財閥の創業家・岩崎家の娘婿が社長・会長を歴任したことがある(社長・会長を歴任した槙原稔の妻は岩崎家の一員で三菱製紙の会長を務めた岩崎隆弥の三女)。
  • セシール - 香川発祥の有力婦人服通販会社。かつては創業家(正岡家)が経営権を掌握していた。しかし経営悪化から、2004年(平成16年)に創業家出身の社長が退任し、みずほフィナンシャルグループ出身の猪瀬具夫が初の非創業家出身の社長に就任した。2005年(平成17年)にライブドア(日本・2代目)が買収、同年末に新CI導入で新社章・新商標(英単語表記:Cecile→CECILE)を制定。2006年(平成18年)には、猪瀬社長が退任し、ライブドアグループ出身の佐谷聡太が社長に就任。2007年(平成19年)には、ライブドアが株主総会に提出した修正動議により、前アメリカンホーム保険会社会長の上田昌孝が会長兼CEOに就任した。しかし、前述の“ライブドア・ショック”に伴い、同グループの解体が決定すると、もとから事業の関連性が希薄であったライブドアとの関係がより一層疎遠になっていき、2008年(平成20年)には、ライブドアグループ出身の佐谷社長が退任し、上田が唯一の代表取締役となる。2009年(平成21年)夏にはフジ・メディア・サービス(前述のフジ・メディア・ホールディングス(FMHD)子会社)による同社のTOBに同社が賛同した(この時点ですでに、現在のLDHグループから持株譲渡の契約がFMSとの間で交わされていた)。この結果、前述のFMHDグループの同業中堅・ディノスと2010年(平成22年)に株式移転による経営統合を行う予定となり、それに伴い発行済み株式の75%を上位10位以内の大株主で握られるため、TOB成立後に監理ポストに入り。2010年(平成22年)2月24日で上場廃止。現在はFMHDにより設立した同業準大手のディノスと連携・共同持株会社の傘下に入った。
  • 読売ジャイアンツ - オーナーは正力家だった。
  • 全日本女子プロレス - 創業家(松永家)による経営を支配していたが、1997年(平成9年)10月に経営破綻。経営破綻後も松永家による経営支配が続いたが、2005年(平成17年)4月に解散。
  • 滝乃川学園 - 創立時より、学園長を石井亮一とその妻筆子とその一族(石井家・渡辺家・関家・高木家)がつとめたが、1962年(昭和37年)に宮崎申郎が学園長に就任して以降、創業家一族以外の者が理事長・学園長を務めている。ただし、非常勤理事には創業家一族出身者が就任している。

世界各国の事例

医療法人

学校法人

私学法によって同族役員は3親等以内2名までに制限され公的法人としての透明性が求められている。学校法人は公的な私学経常費補助金の関係もあり一般企業以上に公の性格が強く特定の役員の同族が事務の要職に多いと不正のリスクが高まると考えられているが、総合大学を始め経営が特定の一族中心に行われているところは多い。

宗教法人

宗教法人においても、教主が代々開祖の子孫によって占められるなど同族によって経営されているものが新宗教を中心に多々見られる。

その他

脚注

  1. ^ a b c ファミリービジネス研究所 WEBページより。
  2. ^ 2019年版「世界同族企業500社」、中国は恒大集団の25位が最高位”. AFP (2019年4月2日). 2019年4月1日閲覧。
  3. ^ a b プライスウォーターハウスクーパース株式会社調査より
  4. ^ 「オーナー系企業は宣伝上手か?」『日経広告研究所報』45(6), 10-17, 2012-12”. 2020年1月27日閲覧。 - CiNii
  5. ^ 伊藤隆監修・百瀬孝著「事典昭和戦前期の日本-制度と実態」吉川弘文館
  6. ^ 創業当初は取締役としての参加だったが、経営危機に陥った際自らの傘下に収めた。
  7. ^ a b 旧加ト吉(現テーブルマーク)創業者・加藤吉次郎の出身母体。瀬戸内海放送については、加藤汽船グループ保有株式の大半を大洋商事に売却した後も経営を引き続き掌握。
  8. ^ 会長の現夫人(2人目)は日本人であり、その実家(竹森家)も大株主である。
  9. ^ 但し中小型スーパー運営の系列会社・天満屋ストアは株式上場。
  10. ^ “米フェイスブック、無議決権株発行へ 創業者の支配力維持”. 日本経済新聞. (2016年4月28日). https://www.nikkei.com/article/DGXLASGN28H18_Y6A420C1000000/ 2020年10月13日閲覧。 
  11. ^ “ファーウェイに同族会社の名残、一族が関連会社経営”. REUTERS ロイター. (2019年10月11日). https://jp.reuters.com/article/huawei-tech-family-idJPKBN1WQ0F4/ 2020年10月14日閲覧。 
  12. ^ スーパー「ライフ」を救った清水会長の「身内切り」 断腸の思いで弟を解任し非同族経営へ(1/4ページ) Business Journal 2015.01.29 00:05(2020年4月13日閲覧)
  13. ^ スーパー「ライフ」を救った清水会長の「身内切り」 断腸の思いで弟を解任し非同族経営へ(2/4ページ) Business Journal 2015.01.29 00:05(2020年4月13日閲覧)
  14. ^ スーパー「ライフ」を救った清水会長の「身内切り」 断腸の思いで弟を解任し非同族経営へ(4/4ページ) Business Journal 2015.01.29 00:05(2020年4月13日閲覧)
  15. ^ Dyson keeps it all in the family”. Financial Times. 2019年7月31日閲覧。
  16. ^ それ以前は、マツダの前身・東洋工業を含む地元財界の複数企業(広島電鉄中国新聞社など)による共同経営で、役員も共同経営企業から派遣されていた。

関連項目