対面乗り換え

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ロンドンストラトフォード駅での地下鉄と近郊列車の対面乗り換え
台北古亭駅でのMRT新店線中和新蘆線の対面乗り換え

対面乗り換え(たいめんのりかえ)とは、鉄道乗り換えの形態の一つで、島式ホームの両側に止まった列車相互で乗り換えるものである。同一ホーム乗り換え平面乗り換えなどと呼ばれることもあるが、これらの場合必ずしも島式ホームの対面ではなく、切欠きホームのように離れた場所に停車した列車との乗り換えを指すこともある。和製英語でホームタッチと呼ぶ時もある。

利点と欠点[編集]

対面乗り換えは、乗り換えのための移動距離・時間が最小になるほか、ホーム間の移動のための上下移動が不要になり、階段や連絡通路などのボトルネックが生じることもない。また、乗り換え先の列車がすぐ隣に見えているため、迷う心配もない。

一般に旅客は乗り換えに対し抵抗感を抱くが、対面乗り換えでは上記の利点があるためその抵抗を最小にすることができる。また、上下移動がないためバリアフリーの観点からも推奨されている。

一方、対面乗り換えを実現するためにはの構造やダイヤを工夫しなければならず、建設費や用地が余分に必要になる。すべての乗り換えの組合わせに対して対面乗り換えができるわけではなく、一部の組合わせに対して対面乗り換えを行うようにすると他の組合せではかえって不便になることがある。

事例[編集]

同一方向の対面乗り換え[編集]

モスクワ地下鉄 Каширская 駅

待避駅方向別複々線、路線の分岐駅や交差駅では、同方向の線路の間に島式ホームを設けることで対面乗り換えが可能になる。対面乗り換えによって、効率的な緩急接続を行うことができる。

西日本旅客鉄道(JR西日本)では、JR京都線JR神戸線京都駅高槻駅新大阪駅大阪駅尼崎駅芦屋駅三ノ宮駅神戸駅)において新快速・快速と普通の対面乗り換えを行っている。山手線と京浜東北線は、田端田町間で対面乗り換えができる。このほか、東急東横線東急目黒線東急田園都市線東急大井町線名鉄名古屋本線名鉄常滑線東武伊勢崎線東武東上本線京阪本線西武池袋線京成本線京成押上線京急本線京急逗子線小田急小田原線南海本線南海高野線の例がある。

線路別複々線の路線では対面乗り換えはできないが、特定の駅の前後に立体交差を設けてその駅の構内を方向別複々線状にすることにより、対面乗り換えを可能にすることがある。このような駅の例には、御茶ノ水駅中央線快速中央・総武緩行線)や戸塚駅東海道線横須賀線湘南新宿ライン)、表参道駅新今宮駅、近鉄鶴橋駅小竹向原駅笹塚駅、阪神尼崎駅新宿駅の例がある。

逆方向の対面乗り換え[編集]

南千歳駅での対面乗り換え
香港MTRの対面乗り換え
台北MRTの対面乗り換え

路線の分岐駅や交差駅で、逆方向に進む列車相互の対面乗り換えができるようになっている例が存在する。

南千歳駅では、通常左側通行の列車を快速エアポートに限っては右側通行にすることにより、新千歳空港発の快速エアポート(左図赤の列車)から札幌函館室蘭帯広方面行きの特急(左図赤枠白抜き)へ、またその逆向きの対面乗り換えを可能にしている。これにより、直通列車のない新千歳空港道南道東の連絡をスムーズにしている。なお、このために駅の札幌側で平面交差が生じており、ダイヤ編成の上での制約となっている。

列車本数の多い路線では、平面交差で対面乗り換えを実現することは困難なため、巧妙な立体交差を設けて対面乗り換えを行っている。このような例は香港MTRシンガポールMRTで見られ、複数の駅を組み合わせることにより同一方向・逆方向とも対面乗り換えができるようになっている例もある。右図は香港MTR觀塘線(緑)・将軍澳線(紫)の油塘駅(左上)、調景嶺駅(右下)の配線略図である。觀塘線の九龍方面(上)と将軍澳線の香港島方面(左)の相互間は油塘駅で、九龍方面と将軍澳線の将軍澳方面(右下)は調景嶺駅で対面乗り換えが可能である。

日本でも東日本旅客鉄道(JR東日本)山手線・中央・総武緩行線代々木駅においては、両駅間で山手線と中央線西行の線路を立体交差させることで、中央線西行から山手線内回りへは代々木駅で対面乗り換えができる。ただし、山手線外回りと中央線東行は対面乗り換えができないなど、香港などの例に比べると不完全である。このほか、所沢駅九段下駅の例がある。

列車の起終点での対面乗り換え[編集]

新八代駅での対面乗り換え

列車の終点となる駅において、さらに先に進む列車を対面に停車させて対面乗り換えを行うことがある。これにより軌間電化方式の違いにより直通運転ができない場合でも、乗り継ぎを容易にし2本の列車をあたかも1本の列車であるかのように扱うことが可能になる。

これの典型的な例が九州新幹線鹿児島本線新八代駅であった。九州新幹線全通前日の2011年3月11日までは新幹線ホームの対面に鹿児島本線の特急「リレーつばめ」を停車させ、新幹線「つばめ」と対面乗り換えで乗り継げるようになっており、九州旅客鉄道(JR九州)では両列車を乗り継ぐ場合指定席の位置をできるだけ同じにする・特急券を一枚にするなど(一部例外あり。詳細は九州新幹線の乗り継ぎ料金制度を参照)、ソフト面でも乗り継ぎやすくしていた。これらの措置によりJR九州・鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)・鉄道情報システムの3者は国土交通省の第3回日本鉄道賞(「便利で魅力ある鉄道をめざして」部門)を、またJR九州とJRTTは平成16年度バリアフリー化推進功労者表彰(内閣官房長官表彰)を受けている。新潟駅においても同様の方式で、上越新幹線と特急「いなほ」の対面乗り換えを可能にする計画がある。

姫路駅 - 岡山駅間にかかる対面乗り換えは、上郡駅経由の場合は相生駅赤穂線経由の場合は播州赤穂駅において対面乗り換えを行っている。

異系統特急列車同士の事例:ドイツの「インターシティ」や近鉄特急の場合[編集]

ドイツ鉄道の都市間特急列車網「インターシティ」では、主要な駅で、異なる運転系統のインターシティを、ホームの両側に停車させ、対面乗り換えを行う場合が多い。また、切符の発券でも、乗換えに要する距離を極力短くするように、乗車する車両を指定できるようなシステムが構築されている。

この方式により、直通列車が少ない都市間の移動でも、直通列車と同等の利便性や乗車チャンスを確保できる。

1971年に「インターシティ」の制度が登場して以来、ICEの運行開始後も、基本的にこの思想が引き継がれている。

同様の思想は、日本においても、近鉄特急で実施されており、特急料金の通算(乗換え3回まで)と併せて、大和西大寺駅大和八木駅伊勢中川駅などでの対面乗換えが実施されている。乗換え時の徒歩移動を極力少なくするような車両指定・座席指定も実現されている。

特急の座席指定までを含めた対面乗り換えを実現するためには、それに対応した列車ダイヤの構築のみならず、発券システムの対応も重要な要素である。近鉄の場合、「ASKAシステム」と呼ばれる特急券予約システムが、異系統特急列車同士の対面乗り換えを支える要素の一つとして、重要な役割を担っている。

異種交通機関との対面乗り換え[編集]

岩瀬浜駅でのバスと路面電車の対面乗り換え

単式ホームの線路に接しない側を利用して、バスなど鉄道以外の交通機関と対面(同一平面)で乗り換えられるようにした例も存在する。

広島電鉄宮島線廿日市市役所前駅富山ライトレール岩瀬浜駅では、ホーム(廿日市市役所前駅では下りホーム)の向かい側にロータリーを設け、ホームとバス停のあるロータリーの歩道部分の段差をなくして、鉄道からバスにスムーズに乗り換えられるようにしている。

また近鉄宇治山田駅にも1番ホームの向かい側にバス乗り場が設けられ、鳥羽線開業以前は鳥羽賢島行のバスが乗り入れて当駅発着の特急列車と接続していた。宇治山田駅は高架駅のためバス乗り場と地平との間はスロープで結ばれていたが、スロープは伊勢中川方にのみ設置され、乗り入れたバスは転車台で方向転換していた。鳥羽線開業以降も定期観光バスが乗り入れ、現在も設備は残されているがバス乗り場は閉鎖されている。

郊外鉄道と地下鉄の対面乗り換え[編集]

郊外鉄道と地下鉄が対面乗り換えできるような駅の場合は、その駅を境に相互直通運転を行っている場合が多い。日本における例としては上小田井駅中目黒駅和光市駅代々木上原駅竹田駅大崎駅などがある。また地下鉄の駅に郊外鉄道が乗り入れる形となっている泉岳寺駅や、地下鉄へ乗り入れる支線と本線が接続している淡路駅などもある。

評価[編集]

交通工学の分野では、新しい路線や駅の計画やダイヤの改善などの目的で、乗客にとっての利便性を定量的に評価しようとすることがある。その際にしばしば鉄道を利用する時間1分を金額に換算して評価することがあり、乗車している時間と乗り換え中の時間を異なる係数で金額に換算することで、乗客の乗り換えに対する抵抗感を表現する。乗り換え1回を定数で換算することもあれば、乗り換えに要する時間に係数を掛けて換算することもあるが、こうした換算方法ではホームの異なる乗り換えと対面乗り換えは区別されない。

これに対して、より詳細な研究では乗り換え中の歩行や階段使用を区別したものがある。ある研究では、鉄道乗車時間1分は42.0円としているのに対して、上り階段では69.1円/分、下り階段では64.1円/分、水平歩行では52.3円/分、エスカレーターでは37.3円/分などと計算している[1]。これによれば、対面乗り換えはそうでない乗り換えに比べて水平歩行だけで済むことと所要時間が短いことの両面で、乗客にとっての利便性が大幅に高いことが定量的に示されている。ただし、こうした換算係数は研究によっても大きく異なることがあり、使用には注意を要する。

さらに、乗り換え経路上の案内の有無、待合室やトイレ、売店といった設備、乗り換え改札など、様々な要素を考慮した研究も存在しており[2]、モデル化の仕方によって評価は複雑なものとなる。

脚注[編集]

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  1. ^ 国土交通省鉄道局監修「鉄道プロジェクトの評価手法マニュアル2005」 p.73 財団法人運輸政策研究機構 2005年 ISBN 4-900209-86-4
  2. ^ 黒瀬 信弘・内田 雅洋・梶田 覚「幹線鉄道の乗換改善効果に関する調査」第14回鉄道技術連合シンポジウム S6-1-3、2007年

関連項目[編集]