ロンドン地下鉄

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セントラル線のランカスター・ゲート駅

ロンドン地下鉄(ロンドンちかてつ、: London Underground[※ 1])は、大ロンドン市域の地下、および地上を走る電化された世界最古の公共鉄道ネットワークである。運行開始は1863年1月10日メトロポリタン鉄道による。初期の路線の大部分は、現在[いつ?]ハマースミス&シティー線の一部として使用されている。

ロンドン地下鉄は、アメリカや日本の地下鉄のようにSubway(サブウェイ)とは呼ばれず、ロンドンの住民にはしばしば単純に"the Underground"または(より親しみをこめて)"the Tube"[※ 2]と呼ばれている。後者は、そのトンネルの形状に由来している。Subwayは専ら地下道の意に用いられる。

ロンドン地下鉄には現在[いつ?]268のが存在し、総延長距離は400km(250マイル[※ 3]におよぶ。また、廃止となった駅、および路線も数多い。2004年 - 2005年の統計では、総利用者数は年間9億7600万人、一日あたり267万人である。

2003年から、ロンドン地下鉄はロンドン交通局(Transport for London=TfL)の傘下に入った。交通局は他にも、赤い2階建てバスも含めた、ロンドンのバスの運行計画や運行会社への業務委託を行っている。それ以前は、ロンドン地方交通社(London Regional Transport)がロンドン地下鉄の持株会社として存在していた。

歴史[編集]

1861年のキングス・クロス駅付近のメトロポリタン鉄道建設工事の様子
ロンドン地下鉄の愛称"the Tube" はチューブに似たトンネルの形状が由来。トンネルの断面に合わせた大きさの車両を運用している

ロンドン地下鉄の最初の開通区間(メトロポリタン鉄道のパディントン駅 - ファリンドン駅間)は、世界初の都市内地下旅客鉄道であった。この方式が採用されることとなった1854年以降、財政上その他の障害による遅れはあったが、1863年1月10日に運用が開始された。列車は10分毎に運転され、初日には4万人の利用客があった。このメトロポリタン鉄道は延伸され、1880年には年間4000万人を輸送するまでに成長した。他の鉄道会社もその機会をみて参入、1884年サークル線が完成した。これらの路線は全て蒸気機関牽引の列車であり、地上との換気を行う必要があった。よって煤煙によって駅は煤だらけとなり、当時のホームは木造だったのでしばしば小火も出すなど、評判は必ずしも良好ではなかった。後には電気動力方式が発展、また初期用いられた開削工法から、シールド工法など、より深いトンネルを掘削する技術が進歩したこともあり、地下鉄はより深く位置することになった。そういった深い地下鉄の最初の例は1890年のシティー&サウス・ロンドン鉄道線、現在のノーザン線の一部である。

20世紀に入ると、6つの異なった鉄道会社が別の地下鉄路線を運営するようになり、利用者に不便を与えた。多くの駅で、乗換客は地上まで出て歩くことを強いられたからである。またこうした運営方式はコスト面からも効率が悪かった。どの鉄道会社も、より収益性の高い郊外への延伸を目指し、それには資本家からの資金が必要とされた。そのような資本家としてもっとも有名なのはアメリカ人、チャールズ・ヤーキスである。彼は1900年から1902年にかけて、メトロポリタン・ディストリクト鉄道、未完成のチャリングクロス・ユーストン・アンド・ハムステッド鉄道(後にノーザン線の一部となる)、グレード・ノーザン・アンド・ストランド鉄道、ブロンプトン・アンド・ピカデリー・サーカス鉄道(ピカデリー線の中核をなす)、そしてベーカーストリート・アンド・ウォータールー鉄道(後にベーカールー線となる)を次々に買収、1902年4月9日にロンドン地下電気鉄道会社(Underground Electric Railways of London Company Ltd)を創設する。この会社はまた多くの路面鉄道を所有、更にロンドン・ジェネラル・オムニバス会社を買収して、「コンバイン」と称される企業組織となった。

1924年5月13日、デイジー・ハモンドなる女性がベイカールー線エレファント&キャッスル駅で出産した。新聞はその生まれた女児がテルマ・ウルスラ・ベアトリス・エレノア (Thelma Ursula Beatrice Eleanor=TUBE) と命名されたと報じた。成人したその女児が2000年のテレビ・インタビューに出演し、当時の地下鉄総裁アシュフォード卿を名付け親に、Mary Ashfield Eleanorと命名されたという事実が判明するまで、その誤報は見過ごされていた。

1933年、公共機関としてロンドン旅客輸送委員会(London Passenger Transport Board; LPTB)が創設され、上記ロンドン地下電気鉄道会社、メトロポリタン鉄道、独立のバス、路面電車会社はすべてこの委員会の傘下に入った。今日のロンドン交通局と大体共通する業務範囲である。委員会は「1935年40新規事業計画」という路線網拡張計画を策定したが、第二次世界大戦の開戦により計画は凍結される。ドイツによるロンドン空襲が開始されると、地下鉄駅は防空シェルターとして利用されるようになる。これは一時しのぎの対策として始まり、当局は当初シェルターとしての利用に反対していたが、後には適切な寝台、便所、食事施設なども備えられるようになった。

戦後は旅客の混雑が悪化した。戦後の人口膨張に伴う交通量増加を受け、1968年に北西―南東方向を結ぶヴィクトリア線が開通した。1977年にはピカデリー線ヒースロー空港まで延伸され、また1979年にはジュビリー線が開通した。

2005年7月7日および7月21日、ロンドン地下鉄の各所で連続爆破が発生した。これに関してはロンドン同時爆破事件を参照のこと。

地下鉄を用いて棺が移送されたのはウィリアム・グラッドストンとトーマス・ジョン・バーナード(慈善家)の2人である。

2013年1月13日、150周年を祝う行事が行われた。その行事にはSLが使われモーゲートからケンジントン・オリンピアまで走行した。この列車にはロンドン市長なども乗車した。

概要[編集]

路線一覧[編集]

[※ 4] 路線名 開業年 区間 キロ程 主な形式 駅数
  ベーカールー線
(Bakerloo Line)
1906年 ハローウ& ウィルドストーン - エレファント&キャッスル 23 km シールド 25
  セントラル線
(Central Line)
1900年 ウェスト・ライスリップ、イーリング・ブロードウェイ - エピング、ヘインオルト、ニューブリーパーク 74 km シールド 49
  サークル線
(Circle Line)
1884年 サウス・ケンジントン - ベーカーストリート - リヴァプール・ストリート -タワー・ヒル - ヴィクトリア - サウス・ケンジントン 22 km 開削 27
  ディストリクト線
(District Line)
1868年 イーリング・ブロードウェイ、リッチモンド、ウィンブルドン - アップミンスター 64 km 開削 60
  ハマースミス&シティー線
(Hammersmith & City Line)
1863年 ハマースミス - バーキング 26 km 開削 28
  ジュビリー線
(Jubilee Line)
1979年 スタンモア - ストラトフォード 36 km シールド 27
  メトロポリタン線
(Metropolitan Line)
1863年 アマーシャム - オールドゲート 67 km 開削 34
  ノーザン線
(Northern Line)
1890年 ハイ・バーネット、 エッジウェアー - モーデン 58 km シールド 50
  ピカデリー線
(Piccadilly Line)
1906年 ヒースロー・ターミナル1,2,3 、アックスブリッジ- コックフォスターズ 71 km シールド 52
  ヴィクトリア線
(Victoria Line)
1968年 ブリクストン - ウォルサムストウ・セントラル 21 km シールド 16
  ウォータールー&シティー線
(Waterloo & City Line)
1898年 ウォータールー - バンク 2 km シールド 2
 
  イースト・ロンドン線
(East London Line)

現在はロンドン・オーバーグラウンド

1869年 ニュー・クロス - ホワイトチャペル 8 km 開削 8

路線[編集]

大きさの異なる2つの車両。
大きい方が地下鉄初期に開設された直径の大きな線を走るA系 (左)、小さな方が経費削減のため直径を小さくして掘削費用を節減して開設された新線の1938 Stock (右)

路線は大きく2種類に分けられる。開削工法で作られた地表下6mほどの比較的浅い路線と、シールド工法で作られた地表下20mほどの路線がある(上の "the Tube" の写真参照)。前者は比較的初期にできた路線で、車両限界もイギリスの標準的なサイズである。しかし、後者はトンネル直径が3.56mしかないため、車輌も小断面である。これは、建設された20世紀初頭には、大断面のシールドマシンが存在しなかったためである。 全般的に地上区間が多く、地下区間は全体の45%ほどである。

旧線・新線の両者ともにアンダーグラウンドもしくはチューブと呼ばれており、旧来の線をアンダーグラウンド、新線をチューブと呼び分ける、というのは間違いである。あえて言えばアンダーグラウンドが正式名称、チューブが愛称である。

ジュビリー線は他の全ての線と接続する唯一の路線である。ディストリクト線はこれに次ぐが、メトロポリタン線にあと約20mのところで接続しそこなっている。

アーセナル駅はロンドンのサッカークラブから名前をとった唯一の駅である(以前はジレスピー・ロード駅と称した)。ウェスト・ハム駅もこれに近いが、チーム名はウェストハム・ユナイテッドである。

イギリスの人気テレビドラマサンダーバードでは地下に眠る忘れ去られた遺構のような設定でロンドン地下鉄駅が登場する。廃墟と化したピカデリーサーカス駅とバンク駅のプラットホームの描写がある。

275の駅すべてを最短で周る記録は18時間35分43秒。これはジェフ・マーシャルとニール・ブレイクが保持している。

運賃[編集]

2013年1月2日に運賃が改定された。

ロンドン地下鉄では、運賃体系にゾーン制および時間帯別運賃を採用している。ゾーンは、市内中心部からの距離に応じて9つに分けられていて、中心部がゾーン1、外側がゾーン9である。なを、現在の外側はゾーン・スペシャルである。ゾーン制であるため、コヴェント・ガーデン駅 - レスター・スクウェア駅のように 250 m しかない区間でも、ゾーン1いっぱい乗っても同額である。ピーク時運賃は平日の6時半から9時半まで、16時30分から19時までに適用される。

運賃は紙の切符を購入して乗車する場合、乗車区間にゾーン1を含む場合時間帯にかかわらず4.50、乗車区間にゾーン1を含まない場合は最低£4.40である。

オイスターカードというICカードでは、紙の切符より安い運賃が適用される。オイスターの使用促進のために、あえて紙の切符の運賃を高くしているためである。 オイスターでは、時間別運賃が適用される。オイスターカードで乗車する場合は、ゾーン1の場合£2.10に、その他のゾーンの場合はその距離や時間帯によって変わるが、最低でも£1.10(ゾーン1-9をピーク時に利用した場合)は割引される。また、「どんな場合でもオイスターカードを利用する方が割安になる」原則に基づき、1日(午前4時 - 翌午前4時)の利用料金の合計が、利用したゾーンに応じた上限額(CAP, ゾーン1、オフピークの場合£7.00)に達した場合、それ以上は差し引かれないようになっている。1日用のトラベルカードよりもオイスターカードの上限のほうが安価である。

トラベルカードと呼ばれる乗り放題の切符もあり、例えばオフピ-ク用トラベルカード1日券の場合、ゾーン1 - 2有効のものは£7.30、ゾーン1 - 9で有効なものは£12.10、複数日有効のものもある。このトラベルカードで有効なゾーン内であればバス、ナショナル・レイルDLRトラムリンクロンドン・オーバーグラウンドにも追加料金無しで乗ることが出来る。また、テムズ川を航行するリバー・サービスの3分の1割引される。

パリの地下鉄の運賃が€1.7均一[※ 5]であることと比較し、ロンドン地下鉄は高額であると言われることもある[※ 5]

運賃
オイスターカード利用時 現金
ピーク時 オフピーク時
ゾーン1を含む場合の運賃
ゾーン1のみ £2.10 £2.10 £4.50
ゾーン1-2 £2.80 £2.10 £4.50
ゾーン1-3 £3.20 £2.70 £4.50
ゾーン1-4 £3.80 £2.70 £5.50
ゾーン1-5 £4.60 £3.00 £5.50
ゾーン1-9 £6.70 £3.90 £7.80
ゾーン1を含まない場合の運賃
1つまたは2つのゾーン £1.60 £1.50 £4.50
3つから5つのゾーン £2.70 £1.50 £4.50
トラベルカードまたはオイスターカード利用時の価格上限
オイスターカード利用時の価格上限 トラベルカード
ピーク時 オフピーク時 終日利用可 オフピーク時
利用範囲
ゾーン1-2 £8.40 £7.00 £8.80 £7.30
ゾーン1-3 £10.60 £7.70 £11.00 £8.00
ゾーン1-4 £10.60 £7.70 £11.00 £8.00
ゾーン1-5 £15.80 £8.50 £16.40 £8.90
ゾーン1-6 £15.80 £8.50 £16.40 £8.90
ゾーン2 £8.40 £7.00 £8.80 £7.30
ゾーン2-3 £10.60 £7.70 £11.00 £8.00
ゾーン2-6 £15.80 £8.50 £16.40 £8.90

車両・軌道・電化方式[編集]

2010年運用開始のS形電車

軌間(ゲージ)は標準軌 (1435 mm) である。

ロンドン地下鉄の電化方式は世界的にも珍しい、「4レールシステム」(Four-rail system)を採用している。通常、架線あるいは、走行レールの横にある電力供給用のレール(第三軌条)に電圧がかかっており、電圧がかかっていない走行レールに電流を流す。ロンドン地下鉄では電源用に、走行レールとは別の2本のレールがある。走行レール外側のレールには直流+420Vの電圧、走行レールの間のレールには直流-210Vの電圧が掛けられている。それらの差の直流630Vの電圧で走行する。

設備[編集]

リージェント・パーク駅ピカデリー・サーカス駅ハイド・パーク・コーナー駅ウェストミンスター駅およびバンク駅の5駅は出入り口の階段以外に一切の地上構造物を持たない完全地下駅である。

古い駅の通路は、長身の人は屈んで歩かないと天井の電灯に頭をぶつけるような、天井が低く狭いものがある。コヴェント・ガーデン駅ハムステッド駅のように地上とホームとの連絡に通常はエレベーターを使い、通路は非常用に限定している駅もある。各駅のエスカレータはすべてが専用に設計されたものである。最長のエスカレータはエンジェル駅のもので、長さ 60 m (197 ft) 、高低差 27.5 m (90 ft) である[※ 3]。これはヨーロッパ最長である。エスカレータは1日20時間、1年364日、平均稼働率 95% で1時間当たり13,000人の乗客を運んでいる。エスカレータでは右側に立ち、追い越す人のために左側をあけることは、もともとは習慣的なものだったが、今[いつ?]ではそのように案内がなされている。

ウェストミンスター駅など、ジュビリー線の一部でホームドアを設置している駅もある。

ロンドンでは 30 を超える日が年数日しかないため、基本的に地下鉄施設や列車には冷房装置がなかった。そのため、記録的な猛暑に襲われた2006年の夏はホームや列車内の温度が 50℃ 近くに達し、大量の熱中症による死者が発生した。そのため、体が弱い人は出来るだけ地下鉄を使わないように、という通達が出た。2010年8月からメトロポリタン線に冷房車が登場しその後サークル線などに投入予定である[1]

50万匹のネズミが地下鉄に生息していると推測されており、しばしば線路やプラットフォーム上を走るのが目撃される。テレビ・パーソナリティーのアンセア・ターナーは「ロンドンの地下鉄ネズミ」の一連の童話シリーズを著した。

ロンドン地下鉄およびバスの路線図や時刻表、駅名などで使用されている書体ジョンストン・サンズ(Johnston Sans)は、最初1916年エドワード・ジョンストン(Edward Johnston)がデザインした。小文字の「i(アイ)」や「j(ジェイ)」の点が菱形で、「l(エル)」にはカギ状のシッポがついているなど、特徴的なサンセリフ書体である。また、ジョンストンは1919年にロンドン地下鉄のロゴタイプであるブルズアイ(bullseye)もデザインしている。円形マーク(roundel)に駅名などのラベルを交差させたもので、ロンドンの至るところで目にすることができる。なお、現在[いつ?]ロンドン地下鉄で使われている書体ニュー・ジョンストン(New Johnston)は、1979年から80年代にかけて、バンクス・アンド・マイルズ社に加わっていた日本人デザイナー河野英一がジョンストン・サンズを元にリデザインしたものである。

2005年1月、ロンドン地下鉄は駅構内が若者に荒らされるのを防止する目的でクラシック音楽を流す計画を発表した。ニューカッスルのタイン・アンド・ウェア地下鉄での試行では駅員に対する暴行行為が33%減少したからである。

「マデレーン」という名前の香水を用いて、悪臭漂う地下鉄をより快適なものにするという実験が2001年3月23日から、セント・ジェームズ・パーク駅ユーストン駅ピカデリー・サーカス駅で開始された。実験は気分が悪くなる乗客が続出したため、翌3月24日に中断された。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ イギリス英語発音:/ˈlʌndən ˌʌndəˈɡraʊnd/ ンドゥン・アンダグウンドゥ (ンドゥナンダグウンドゥ)
  2. ^ イギリス英語発音:/tjuːb/ テューブ
  3. ^ a b "Key facts”. Transport for London. 2008年2月5日閲覧。"によると、路線全長は 253 mi (407 km) である。しかし、2007年7月付の同じ資料には同じ路線長だが、より多い駅数が記されている。これはイーストロンドン線、全長約 7 km 、休止の反映が不完全であるためとおもわれる。
  4. ^ 色は London Underground を参照
  5. ^ a b 2012年1月19日の為替相場によると、£1≒145円、€1≒120円である。ただし、1990年には£1=270円、2008年8月1日には£1=198円、€1=160円であり、ロンドン地下鉄のパリ地下鉄に比較した割高感はより大きかった。

出典[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]