ロンドン地下鉄A60・A62形電車

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ロンドン地下鉄A60・A62形電車
A60 stock at Baker Street.JPG
編成 4・8両
設計最高速度 112 km/h
最高速度 80 km/h
編成定員 1424人
全幅 2,946 mm
全高 3,696 mm
車体長 16,167 mm
車両質量 21.8 - 32.1t
電気方式 直流630V 4線軌条式
制御装置 抵抗制御
製造メーカー クラヴェンス
備考 メトロポリタン線
イーストロンドン線

ロンドン地下鉄A60電車(London Underground A60 Stock)は1960年に製造されたロンドン地下鉄の電車。ロンドン地下鉄の2種類ある車両サイズのうち、大きいほうのサイズの車両群に属する。本項では本形式のあとに製造されたほぼ同一形態・用途のロンドン地下鉄A62形電車についても同時に述べる。

概要[編集]

A60形は1960年にシェフィールドのクラヴェンス社でアマーシャム電化開業用に製造された。形式名の「A」は「アマーシャム(Amersham)」電化にちなんだものである。A62形はこれに続いてアクスブリッジ方面の電車化用に製造された。両者は区別無く運用され、識別の必要がないため、1903年に製造された初代A形電車と識別する場合以外はA形電車と総称して呼ばれる。空気圧縮機がA60形とA62形の唯一の相違点で、A60形にはウェスチングハウス製レシプロ式DHC 5A形、A62形にはリーヴェル製レシプロ式TBC 38Z形が使用され、両者は運転時の音で識別することが出来る。 A60形の設計は1930年代に完了していた[1]が、第二次世界大戦とそれに続く緊縮財政のため導入が大幅に遅れた。 A60・A62形はメトロポリタン線イーストロンドン線で使用されたが、イーストロンドン線用はロンドン・オーバーグラウンドへの転換に伴う運休によりメトロポリタン線に転用され、メトロポリタン線用についても2010年から2012年にかけてS形電車に置き換えられた。本文中の車両形式の略号はロンドン地下鉄の車両形式および車両番号の付与方法を参照のこと。

外観[編集]

車体はアルミ合金製。4両編成を1ユニットとし、中間車は両開き3扉、先頭車は両開き2扉+車端部片開き1扉である。ワンマン運転開始以前はDM車の車端部扉は車掌用だった。ロンドン地下鉄標準の青・白・赤の3色に塗装され、先頭部は赤く塗られているが、ワンマン運転装備がない先頭車は営業線で先頭に出ることが無いため、側面と同じ青・白に塗装されている。2,921mm(9フィート7インチ)の全幅はロンドン地下鉄最大である[2]

内装[編集]

メトロポリタン線用A60形電車の車内 2007年撮影
A60形電車の荷棚と傘掛け

1時間超の乗車が想定されるため、1区画6人と4人のボックスシートを採用している[3]。8両編成での座席定員は448人[4]で、本形式の前に使用されていた機関車牽引のT形より少なくなっている。2009年から本形式を置き換える予定のS形の座席定員は本形式よりも少なくなると予想されている。長距離旅客のために荷棚と傘掛けが設けられているが、これも他の車両には見られない特徴である。本形式には2008年末現在、ロンドン地下鉄で唯一自動放送装置が装備されていない。これ以降の全形式がワンハンドルマスコンになったため、主幹制御とブレーキが別のハンドルとなったロンドン地下鉄最後の車両である[3]。1994年から1997年にかけてアドトランツ(現ボンバルディア)で更新工事が行われた[4]

編成[編集]

DM-T-T-DMの4両ユニットを組み、DMは5000番台、Tは6000番台、隣り合うDMとTの下3桁の番号は同一、同ユニット中の下1桁偶数の番号に1を加えた番号が反対側のユニットの番号となる(例:5002-6002-6003-5003)[2]。8両編成はこの4両ユニットを2組連結したもので、ワンマン運転開始時に約半数のDMには関連機器を取り付けなかったため、以降このDMは本線で先頭に出ることが出来なくなった。イーストロンドン線用、支線用、運用の自由度を増すためなどの目的で一部両側の先頭車がワンマン運転対応となっているユニットもある[3]

運用[編集]

本形式は8両編成でメトロポリタン線用として、4両編成が2007年12月22日の運転休止までイーストロンドン線用として使用された。4両編成はチェシャム - チャルフォント&ラティマー間の区間運用で使用されている。 製造時から1990年代後半/2000年代初頭にかけては112km/h(70mph)運転が行われ、世界最速の4線軌道式電車だったが、信頼性向上のため以降は80km/h(50mph)が最高となった。この速度は2008年現在ロンドン地下鉄では最速である。

置換計画[編集]

2010年からS形電車への置き換えが行われている。イーストロンドン線はロンドン・オーバーグラウンド: London Overground)に転換され、ボンバルディア・トランスポーテーション社のクラス378: British Rail Class 378)が運用されている[5]

S形電車はすべての大断面車両を置き換える予定だが、他線が6両編成である一方メトロポリタン線は8両編成であるため、別運用となる予定。

脚注[編集]

  1. ^ Classics of everyday design No 33”. The Guardian. 2009年5月11日閲覧。
  2. ^ a b London Underground Rolling Stock Dimensions”. London Underground. 2008年4月3日閲覧。
  3. ^ a b c A60/62 stock”. SQUAREWHEELS.org.uk. 2009年5月11日閲覧。
  4. ^ a b A' Stock”. Transport for London. 2009年5月11日閲覧。
  5. ^ New London Overground Class 378s take shape at Derby (PDF)”. The Railway Herald (2008年9月22日発行). 2009年5月11日閲覧。