特定都区市内
特定都区市内(とくていとくしない)とは、JRの旅客営業規則(旅規)第86条に規定する、東京都区内、横浜市内、名古屋市内、京都市内、大阪市内、神戸市内、広島市内、北九州市内、福岡市内、仙台市内、札幌市内の11の都区市内をいう。
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[編集] 概要
特定都区市内制度は、特定都区市内の駅を発着する場合で、定められた中心駅から営業キロが200kmを超える駅までの運賃について、中心駅からの運賃として計算する制度である。特定都区市内制度が導入された当時、乗車券は発着駅ごとに常備券を用意するか、運賃を手計算の上、補充券に手書きで発着駅を記入しなければならなかった。制度は、高度経済成長期にあって長距離移動するビジネス・観光旅客が増大する中で、大都市の駅での混雑回避を目的とする発券業務の簡素化のため導入された。また、大都市での制度導入は、国鉄にとっても人件費削減になった[要出典]。
国鉄がJRに民営化された後は、「一部区間で運賃値上げが生じる」との理由で、実施されていない[要出典]。
[編集] 適用の詳細と具体例
特定都区市内に関わる旅客営業規則(旅規)及び旅客営業取扱基準規程(規程)の規定は以下のとおり。
- 特定都区市内にある駅と、当該特定都区市内の中心駅から片道の営業キロが200kmを超える駅との相互間の鉄道の片道普通旅客運賃は、当該中心駅を起点または終点とした営業キロまたは運賃計算キロによって計算する(旅規86条)。
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- この規定は、「特定都区市内にある駅」から「その特定都区市内の中心駅から200kmを超える鉄道区間内にある駅」までの運賃計算に用いる営業キロ(または運賃計算キロ)の起点(または終点)を当該中心駅とみなす、という意味である。すなわち、まず発駅から見て運賃計算上の終点駅を確定させた後、着駅から見て運賃計算上の起点駅を確定させた上で、運賃が計算される。このため、中心駅間が200kmを超える特定都区市内間の運賃は、必ず中心駅同士の営業キロで計算される。
- 例えば、大阪市内駅である杉本町駅から、名古屋市内駅である大高駅まで(阪和、大阪環状、東海道経由220.4km)は、中心駅同士が200km以下(190.4km)だが、杉本町 - 名古屋間は208.0km、大阪 - 大高間は202.8kmといずれも200km超なので、乗車券は「杉本町(単駅)⇒名古屋市内」か「大阪市内⇒大高(単駅)」のいずれかとなる。このような場合、乗客から特に求めがない限り、乗車後の予定変更に対応できるよう、着駅側に特定都区市内制度が適用される。
- 上記の規定により、旅客運賃を計算する普通乗車券の有効期間は、その旅客運賃の計算に用いる中心駅から(または中心駅まで)の営業キロによる(旅規154条2項)。
- この規定により発売した乗車券を使用する場合は、当該乗車券の券面に表示された特定都区市内駅では途中下車できない(旅規156条)。ただし、大阪市内発着の乗車券で大阪駅 - 北新地駅間の乗り継ぎ、神戸市内発着の乗車券で新神戸駅と三ノ宮駅、元町駅、神戸駅、新長田駅の間を乗り継ぐための一時出場が認められている(規程145条2項)。
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- このように、特定都区市内制度は一部の例外を除き、原則としてゾーン内で途中下車はできない。発駅ゾーン内の別駅で下車する場合は、当該乗車券は未使用扱いで、別途発駅から当該下車駅までの運賃を支払うことになる。着駅ゾーンの場合も、着駅ゾーン内の駅で下車した時点で旅行終了となり、乗車券は回収される。
- 特定都区市内発着となる普通乗車券を所持する旅客が、列車に乗り継ぐため同区間内の一部が複乗となる場合は、旅客運賃を収受しないで当該区間の乗車を認める(規程150条)。
- 大阪市内発着となる普通乗車券を所持する旅客は、別途運賃不要で以下の区間を区間外乗車することができる(規程150条2項)。
- 中心駅からの営業キロによる特定都区市内適用の有無を原因として、適用非対象駅までの運賃がそれより遠方にある適用対象駅までの運賃より高額になる場合は、適用非対象駅までの運賃を適用対象駅までの運賃と同額にすることができる(規程114条)。
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- 実際の発駅(または着駅)と運賃計算上の起点駅(または終点駅)が異なり、中心駅から200km前後の場合にこうした矛盾が生じることがある。例えば、北九州市内駅(中心駅は小倉駅)である若松駅(筑豊本線)から、佐伯駅(日豊本線)までの運賃について、小倉・佐伯間の営業キロが200km以下(197.8km)のため特定都区市内を適用せず、若松・佐伯間の運賃計算キロ227.2kmに対応させると4200円となる。しかし、佐伯駅よりも一つ遠い上岡駅までは、小倉・上岡間の営業キロが200km超(202.4km)のため特定都区市内が適用され3880円となり、「近い駅までの運賃の方が高くなる」という矛盾が生じる。こうした場合、「若松(単駅)⇒佐伯」の3880円とすることができる。
- 2008年4月1日、規程(旧)115条が廃止され、旅規86条(特定都区市内)及び87条(東京山手線内)に次のような「ただし書き」が追加される改正が施行された。すなわち、特定都区市内にある駅を発駅とする場合で、普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内の外を経て、再び同じ特定都区市内を「通過」するとき、または特定都区市内にある駅を着駅とする場合で、発駅からの普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内を「通過」して、その特定都区市内の外を経るとき、改正前は特定都区市内制度の適用の有無を旅客が選択できたが、改正後は特定都区市内制度を適用しなくなった。(東京山手線内の「ただし書き」も同様の趣旨)
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- 例えば、東京駅から、新幹線、東海道線、身延線、中央東線、総武線を経由する(乗り換え駅は三島駅、富士駅、甲府駅)千葉駅までの乗車券は、特定都区市内制度が適用されず、「東京(単駅)⇒千葉(経由:新幹線・東海道・身延・中央東・総武)」となる。この場合、特定都区市内制度が適用されないので、すべての途中駅で途中下車できる。
- 2009年3月14日、規程(新)115条が制定された。これにより、東京近郊区間内では、中心駅からの経路が最短でない経路のうち200km超となる経路の運賃について、中心駅からの最短経路が200km以下になる場合は、特定都区市内を適用しないで運賃を計算することができる。
- 山手線内(山手線の内側にある中央本線、総武本線の駅を含む)の駅と東京山手線内の中心駅(東京駅)から片道の営業キロが100km超200km以下(1km未満は切り上げ)の中距離区間の駅との相互間についても、特定都区市内と同様の取扱いが行われている(旅規87条:東京山手線内を参照)。営業キロ200km以下での適用のため、「東京山手線内 - ○○都区市内」という乗車券はあり得ない。
- 東京都区内に葛西臨海公園駅経由で出入りする場合でも、東京都区内発着の乗車券と小岩駅発着の乗車券を併用することで乗車できる。同じく、横浜市内発着の乗車券+本郷台駅発着の乗車券を使って戸塚駅経由で乗車することや、大阪市内発着の乗車券+加島駅発着の乗車券を使って塚本駅経由で乗車することもできる(規程155条)。
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- 例えば、住吉駅から乗車して塚本駅経由で大阪市内発の乗車券を使う場合にも、住吉駅から大阪市内までは塚本駅までの380円の乗車券ではなく、加島駅までの290円の乗車券を使うことができる。
東京都区内の駅のうち、1本で山手線に乗り継ぐことのできない常磐線の金町駅・亀有駅・綾瀬駅からの乗降客に対しては、東京地下鉄千代田線の北千住駅 - 西日暮里駅間を乗車することを、同区間の運賃160円を支払うことにより便宜上認めている(ちなみに、全区間東京地下鉄線扱いとなる綾瀬駅から西日暮里駅まで乗車する場合は190円)。
なお、新幹線回数券や早特きっぷ、あずさ回数券、ひたち往復きっぷ、ひたち回数券など、いわゆる「企画きっぷ」においては、利便性を考慮して、中心駅から200km以下の区間であっても100km超の中距離区間であれば、特定都区市内制度を適用させている場合がある。そのため、区間によっては、通常の乗車券ではあり得ない券面表示になることもある。例えば、「名古屋(市内)⇔新大阪(市内)」(名古屋 - 大阪間190.4km)、「仙台(市内)⇔盛岡」(仙台 - 盛岡間183.5km)、「新宿(都区内)⇔竜王 - 甲府」(東京 - 甲府間134.1km)、「新横浜(市内)⇔静岡 - 新富士」(横浜 - 新富士間:経由新横浜125.3km)、「東京(都区内)⇔安中榛名」(東京 - 安中榛名間123.5km)、「東京(都区内)⇔宇都宮」(東京 - 宇都宮間109.5km)、「東京(都区内)⇔高崎 - 前橋」(東京 - 高崎間105.0km)、「上野(都区内)⇔友部 - 勝田」(東京 - 友部間104.6km)、「東京(都区内)⇔静岡 - 熱海」(東京 - 熱海間104.6km)、などがある。
逆に、株主優待割引券を利用する際は、特定都区市内の在来線が他社管轄の場合は特定市内制度は適用されずに単駅指定となり、特定都区市内の在来線が自社管轄の場合は特定市内制度は適用される(例:JR東海の場合、東京・品川・新横浜・京都・新大阪は単駅指定、名古屋市内は適用。JR西日本の場合、小倉・博多は単駅指定、京都市内・大阪市内・神戸市内・広島市内は適用。よって、JR東海の株主優待割引券を使って名古屋から東京まで東海道新幹線を利用する場合の乗車券は「名古屋市内⇒東京(単駅)」となる)。
上記長距離乗車券以外では、他社私鉄や地下鉄などとの連絡普通乗車券、連絡定期乗車券の販売対象区間駅に、東京都区内や東京山手線内といった表現が見られる場合がある。この場合、東京都区内や東京山手線内に所属する駅という意味であって、長距離乗車券のような東京都区内や東京山手線内という区間ではない。
[編集] 沿革
特定都区市内制度の沿革は以下のとおり。
- 1939年10月15日 - 東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸から300kmを超える駅について、各都市中心駅までの運賃で当該市内各駅に有効とする六大都市制度を制定
- 1942年4月1日 - 六大都市制度を151km以上に変更
- 1944年4月1日 - 六大都市制度を廃止。二大都市制度を東京と大阪に適用。101km以上に変更。東京電車環状線内制度を東京駅から51km以上の駅に設定
- 1957年4月1日 - 二大都市制度を151km以上に変更
- 1961年4月6日 - 二大都市制度を201km以上に変更
- 1969年5月10日 - 二大都市制度に横浜、名古屋、京都、神戸各市内を追加、特定都区市内制度に変更(旧六大都市制度の事実上の復活)
- 1972年9月1日 - 特定都区市内制度に札幌、仙台、広島、北九州、福岡各市を追加。東京電車環状線内を「東京山手線内」に変更
[編集] 設定区域一覧
- 現在設定されているのは、東京23区・大阪市・京都市・名古屋市・横浜市・神戸市・札幌市・仙台市・広島市・北九州市・福岡市の計11都市。
- 駅の設定は基本的に各市の市域内。ただし、(JRが定める)中心駅へJR線だけで行くためにいったん市外に出なければならない駅は除外され(山陽新幹線の新神戸駅を除く)、同一線内に特定都区市内に指定された市以外の市町を挟む場合などには、便宜上他市町の駅も含める場合がある。この場合、乗車券の券面にこれら除外駅や含まれる駅を表記(横浜市内の場合は、「横浜市内・川崎・鶴見線内」、または「横浜市内・川崎」と表記)する場合がある(旅規183条3項)。
- 当該都区市内における新線開業や新駅開業、市町村合併による市域拡大の場合は、当該する新駅が既存のJR線内に当該都区市内のみで接続する場合のみ、当該都区市内ゾーンへの組入れが行われる。
- 例えば京葉線の新木場・葛西臨海公園両駅の場合は、開業当初は新木場止まりで都区内では「独立」したJR線のため東京都区内ゾーンに組み入れられなかったが、その後1990年に東京駅へ延伸開業した際に、同時に開業した八丁堀駅などの途中駅とともに東京都区内ゾーンに組み入れられた。
- 仙台市内に属する仙山線の駅(仙台駅を除く)は、設定当初は北仙台駅1駅のみであったが、市域拡大と新駅開業に伴い2010年現在は下図の14駅(臨時駅を含む)と大幅に増加している。
- 1983年の筑肥線 博多駅 - 姪浜駅間廃止までは、廃止区間の中間駅に加えて姪浜・今宿・周船寺の各駅も福岡市内の駅に入っていたが、廃止に伴い3駅は除外された。
- 当該都区市内における新線開業や新駅開業、市町村合併による市域拡大の場合は、当該する新駅が既存のJR線内に当該都区市内のみで接続する場合のみ、当該都区市内ゾーンへの組入れが行われる。
- 当該都区市内にある各駅では、各ホームの駅名標の右上または左上にそれを示すマーク(以下の各カテゴリの先頭の四角)が付いている。
| 設定名称 (中心駅) |
路線・区間 | 路線図 オレンジ色の線は新幹線を表す |
|---|---|---|
(札幌駅) |
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(仙台駅) |
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(東京駅) |
(緑線の部分が東京山手線内) |
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(東京駅) |
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(横浜駅) |
便宜上、川崎市内の一部駅(川崎区・幸区)と鶴見線内の全駅を含む。 | |
(名古屋駅) |
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(京都駅) |
便宜上、京都市内と市外にまたがり所在地表記が京都市外(亀岡市)となる位置に移転した保津峡駅を含む。 | |
(大阪駅) |
大阪市平野区にあるおおさか東線新加美駅を除く。 大阪市内発着の乗車券の特例がある。 |
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(神戸駅) |
神戸市北区にある福知山線(JR宝塚線)道場駅を除く。 新神戸駅と在来線との乗り継ぎの特例がある。 |
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(広島駅) |
便宜上、広島市外である海田市駅・向洋駅(安芸郡)を含む。 | |
(小倉駅) |
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(博多駅) |
福岡市西区にある筑肥線の姪浜駅 - 周船寺駅間の各駅を除く。 |
[編集] その他
[編集] 類例
通常の乗車券制度とは別の規定による特別企画乗車券に於いて、現行の11都区市内以外に「市内」発着が設定された例がかつて見られた。現在は設定がなく周遊きっぷに移行している周遊きっぷ「周遊券」(「ミニ周遊券」「ワイド周遊券」「ニューワイド周遊券」)などの企画乗車券において、当時国鉄と提携していた日本交通公社(現・JTB)により「函館市内」「新潟市内」「千葉市内」「高松市内」発着の券が発売されていた。また、「千葉市内」発着の東海道新幹線の回数券も設定されていたが、現在は発売されていない。