嵯峨野観光鉄道DE10形ディーゼル機関車

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嵯峨野観光鉄道DE10形ディーゼル機関車
DE10 1104を先頭とするトロッコ列車大阪駅でのお披露目展示
DE10 1104を先頭とするトロッコ列車
大阪駅でのお披露目展示
基本情報
運用者 嵯峨野観光鉄道[1]
製造所 日本車輌製造[2]
種車 JR西日本DE10形[2]
製造年 1971年[3]
導入年 1991年[3]
総数 1両[4]
運用開始 1991年4月27日[5]
運用範囲 嵯峨野観光線トロッコ嵯峨駅 - トロッコ亀岡駅[5]
主要諸元
軸配置 AAA-B[6]
軌間 1,067 mm[5]
全長 14,150 mm[7]
全幅 2,950 mm[7]
全高 3,964.6 mm[7]
空車重量 60.0 t[7]
運転整備重量 65.0 t[7]
台車 特殊3軸型DT141、無心皿・内軸箱式DT131E[8]
台車中心間距離 10,380 mm[6]
固定軸距 1,700 mm(3軸台車) / 1,800 mm(2軸台車)[6]
車輪径 860 mm[6]
軸重 13.0 t[9]
燃料搭載量 2,500リットル[10]
動力伝達方式 液体式変速機[11]
機関 V型12気筒DML61ZB[12]
機関出力 993 kW(1350 PS/1,550 rpm[12]
変速機 DW6[13]
歯車比 4.48[7]
制御装置 重連総括制御[14]
制動装置 DL15B空気ブレーキ、手動ブレーキ[15][7][16]
保安装置 ATS-SW[17]
最高速度 85 km/h (高速段)
45 km/h (低速段)[11]
最大引張力 191,100 N [18]
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嵯峨野観光鉄道DE10形ディーゼル機関車(さがのかんこうてつどうDE10がたディーゼルきかんしゃ)は、1991年平成3年)に1両が西日本旅客鉄道(JR西日本)から譲渡された嵯峨野観光鉄道ディーゼル機関車である[19]

概要[編集]

1989年(平成元年)3月に西日本旅客鉄道(JR西日本)山陰本線嵯峨駅 - 馬堀駅間が電化準備及び複線化のため新線に切り替えられ、1899年明治32年)開業の旧線は廃線となった[20]。一方、JR西日本社内には経営基盤確立を目的とした線区別経営改善推進チームが1987年昭和62年)11月に設立されており、山陰本線については旧線を活用した活性化が検討されていた[21]。また、地元を中心に旧線の運転再開の要望が強く、JR西日本の子会社として設立された嵯峨野観光鉄道によって1991年(平成3年)4月に日本初の観光専用鉄道として復活した[22][23][20]。運転再開にあたり、JR西日本からDE10 1104号機を譲受し、塗装を変更の上トキ25000形貨車を改造したSK100形・SK200形客車計4両の動力車として常時嵯峨駅方に連結する運転形態が採用された[24]。予備車としてJR西日本DE10 1156号機が嵯峨野観光鉄道所属車と同じ塗装に変更されている[4]

車体[編集]

1エンジン搭載、5軸駆動、液体変速式セミセンターキャブのディーゼル機関車である[25][16]。エンジンが搭載されている側(1エンド側)と反対側(2エンド側)ではボンネットの長さが異なり、高さもわずかに異なっている[25][26]。1エンド側ボンネットにはエンジン、冷却装置変速機などが、2エンド側ボンネットには空気ダメと蒸気発生装置が搭載されている[3][16]運転席床下には蒸気発生装置用の水タンクが搭載された[16]。DE10形のB寒地仕様として製造された[12]ため、スノープラウを装備している[27]が、嵯峨野観光鉄道入線にあたってデフロスターは撤去されている[1]。嵯峨野観光鉄道では蒸気発生装置は使用されていない[1]。嵯峨野観光鉄道入線にあたり、平安ロマンをモチーフとした塗装が採用され、車体全体は平安の王朝色である緋色山吹色の塗装に変更された[28][24]

動力装置[編集]

国鉄DE10形では1970年(昭和45年)以降の製造車は出力993 kW(1350 PS/1,550 rpm)のDML61ZBエンジンを使用しており[12]1971年(昭和46年)製のDE10 1104はこれを装備する[2]。変速機はDD51形ホイト式DW2Aをもとに入換仕業を想定した低速段と、本線走行を想定した高速段の2段変速機能を備えた3ステージのDW6液体変速機が全車に搭載された[29][13]制動装置は、ブレーキ弁の角度で自動的に圧力を調整できるセルフラップ機能を備えたDL15Bである[15][16]

台車[編集]

2エンド側台車は2軸式で無心皿・内軸箱式のDT131Eが使用されている[8]。1エンド側台車は3軸式で、曲線通過時の横圧低減のため各軸が独立して懸架されており[9]、構造を簡略化したDT141を使用している[3]

車歴[編集]

嵯峨野観光鉄道DE10形車歴
車両番号 製造年 製造所 JR廃車 嵯峨野入籍 廃車
DE10 1104 1971年6月[30] 日本車輌製造[30] 1991年1月[30] 1991年4月[31] -

運用[編集]

保津川橋梁をわたる嵯峨野観光鉄道の列車
JR西日本所属の予備機DE10 1156

山陰本線嵯峨駅 - 馬堀駅間は京都鉄道の一部として1899年(明治32年)8月15日に開業した際に建設された路線を使用していたが、電化準備及び複線化のため1989年(平成元年)3月25日に新線に切り替えられ、廃線となった[20]。旧線は車窓景観が良かったことから、復活の要望が地元を中心に強く、JR西日本社内に1987年(昭和62年)11月に設立された経営基盤確立のための線区別経営改善推進チームでも山陰本線の活性化のため旧線を活用する検討が行われていた[21]ことから、JR西日本の子会社として嵯峨野観光鉄道が設立され[19]トロッコ嵯峨駅 - トロッコ亀岡駅間7.3 km[注釈 1]の運行が1991年(平成3年)4月27日に再開された[5]。運転再開にあたり、JR西日本からDE10形ディーゼル機関車1両とトキ25000形貨車4両を譲受し、機関車は塗装変更、貨車はトロッコ形客車に改造などの整備が行われた[24]。両端駅とも機回し線の設備がないため、常にトロッコ嵯峨駅寄りに機関車を連結した編成で運転され、トロッコ亀岡行きとして運転される際は先頭となる客車に設けた運転席から機関車が遠隔操作される[23][32]。予備機としてJR西日本所属のDE10 1156が嵯峨野観光鉄道所属機と同塗装に変更されている[4]。観光を主目的とした路線であることから、観光客が訪れる時間を中心に1日8往復が運転され[33][34]、冬季2か月は車両整備などのため運休となる[33]。観光シーズンには水曜日も運転され、臨時便が運転されることもある[35]。開業当初は年間輸送人員22万人程度と予想された[36]が、観光シーズンには当日券が午前中に完売するほどの人気路線[37]となり、2013年(平成25年)には年間輸送人員が100万人を超えている[38]2015年(平成27年)には年間123万人を輸送[注釈 2]、乗客の1/3を日本人以外が占めている[39]。DE10形は冬季の運休期間はJR西日本 梅小路運転区に留置されるほか、定期検査がJR西日本後藤総合車両所で行われるため、JR線上を走行する機会もある[1]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 旧線時代の嵯峨駅 – 馬堀駅間の営業キロは9.4 kmであり、7.3 kmは新線経由の営業キロにあわせて設定されたものである[19]
  2. ^ 1列車の定員304人、1日8往復、年間300日運行、うち150日で臨時便1往復が追加された場合の年間輸送力は150万人なので、乗車率は約80 %となる。

出典[編集]

  1. ^ a b c d 『鉄道ピクトリアル』通巻694号p69
  2. ^ a b c 『ローカル私鉄車輌20年』p157
  3. ^ a b c d 『鉄道ピクトリアル』通巻694号p68
  4. ^ a b c 『鉄道ピクトリアル』通巻891号p86
  5. ^ a b c d 『新車年鑑1992年版』p156
  6. ^ a b c d 『国鉄車両一覧』p483
  7. ^ a b c d e f g 『鉄道ファン』通巻66号付図
  8. ^ a b 『鉄道ピクトリアル』通巻694号p11
  9. ^ a b 『100年の国鉄車両(1)』p162
  10. ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻694号p43
  11. ^ a b 『鉄道ファン』通巻66号p6
  12. ^ a b c d 『鉄道ピクトリアル』通巻694号p12
  13. ^ a b 『鉄道ピクトリアル』通巻694号p13
  14. ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻694号p66
  15. ^ a b 『鉄道ファン』通巻66号p7
  16. ^ a b c d e 『鉄道ピクトリアル』通巻694号p14
  17. ^ 『ローカル私鉄車輌20年』p72
  18. ^ 『機関車諸元』
  19. ^ a b c 『新車年鑑1992年版』p101
  20. ^ a b c 『歴史で巡る鉄道全路線 公営鉄道・私鉄04』p17
  21. ^ a b 『鉄道ピクトリアル』通巻544号p.68
  22. ^ 『知られざる鉄道』p12
  23. ^ a b 『知られざる鉄道』p13
  24. ^ a b c 『歴史で巡る鉄道全路線 公営鉄道・私鉄04』p32
  25. ^ a b 『国鉄車両一覧』p266
  26. ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻694号p40
  27. ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻694号p15
  28. ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻544号p.80
  29. ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻694号p10
  30. ^ a b c 『鉄道ピクトリアル』通巻694号p61
  31. ^ 『新車年鑑1992年版』p191
  32. ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻694号p48
  33. ^ a b 『鉄道ピクトリアル』通巻544号p.71
  34. ^ 『新車年鑑1992年版』p130
  35. ^ 『運行スケジュール』
  36. ^ 『新車年鑑1999年版』p100
  37. ^ 『京滋乗り物図鑑 嵯峨野トロッコ列車』
  38. ^ 『外国人観光客の〝ドル箱〟ツアーになった京都・トロッコ列車 USJから流入…2年連続100万人突破の秘訣』
  39. ^ 『嵯峨野観光鉄道物語』

参考文献[編集]

書籍[編集]

  • 日本国有鉄道工作局・車両設計事務所 『100年の国鉄車両(1)』 交友社1975年
  • 『国鉄車両一覧』 ジェイティービー1986年ISBN 4533055568
    • 「DE10形・DE11形ディーゼル機関車」 pp. 266-269
    • 「国鉄車両諸元表」 pp. 328-510
  • けいてつ協會 『知られざる鉄道』 JTB1997年ISBN 4-533-02660-5
  • 寺田裕一 『ローカル私鉄車輌20年』 JTBパブリッシング2003年ISBN 4-533-04512-X
  • 『歴史で巡る鉄道全路線 公営鉄道・私鉄』通巻4号「京福電気鉄道・叡山電鉄・嵯峨野観光鉄道・京都市交通局」(2013年3月・朝日新聞出版)
    • 「嵯峨野観光鉄道」 pp. 16-17
    • 「嵯峨野観光鉄道 今を走る車両カタログ」 pp. 32

雑誌記事[編集]

  • 鉄道ファン』通巻66号(1966年12月・交友社)
    • 国鉄車両設計事務所 石井 幸孝「新車ガイド 新鋭ディーゼル機関車 DE10誕生」 pp. 6-7
    • 「RF13007 日本国有鉄道 1250PS 液体式ディーゼル機関車 形式DE10」 pp. 71
  • 鉄道ピクトリアル』通巻544号(1991年6月・電気車研究会
    • 嵯峨野観光鉄道(株)運輸課長 杉野弘幸「嵯峨野観光鉄道の概要」 pp. 68-72
    • 「嵯峨野観光鉄道車両デザイン決定」 pp. 90
  • 『鉄道ピクトリアル』通巻582号「新車年鑑1992年版」(1992年5月・電気車研究会)
    • 藤井信夫、大幡哲海、岸上明彦「各社別車両情勢」 pp. 96-110
    • 鉄道ピクトリアル編集部「嵯峨野観光鉄道SK100・200形」 pp. 130
    • 「1991年度に開業した鉄道・軌道」 pp. 156
    • 「民鉄車両諸元表」 pp. 181-184
    • 「1991年度車両動向」 pp. 184-209
  • 『鉄道ピクトリアル』通巻582号「新車年鑑1999年版」(1999年10月・電気車研究会)
    • 藤井信夫、大幡哲海、岸上明彦「各社別車両情勢」 pp. 91-107
  • 『鉄道ピクトリアル』通巻694号「【特集】DE10・11・15形」(2000年12月・電気車研究会)
    • 服部 朗宏「DE10・11・15形のあゆみとプロフィール」 pp. 10-23
    • 鉄道ピクトリアル編集部「DE10 DE11 DE15 detail file」 pp. 36-43
    • 「私鉄&専用線 DE10タイプ in action」 pp. 44-45
    • 高嶋 修一「私鉄・専用線等で活躍するDE10タイプ」 pp. 46-48
    • 鉄道ピクトリアル編集部「DE10・11・15形車歴表」 pp. 60-64
    • 高嶋 修一「私鉄・専用線等で活躍するDE10タイプ」 pp. 65-72
  • 『鉄道ピクトリアル』通巻891号「【特集】ディーゼル機関車」(2014年7月・電気車研究会)
    • 服部 朗宏「私鉄のディーゼル機関車 ここ10年の動き」 pp. 73-88

Web資料[編集]