青函トンネル

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青函トンネル
Seikantunnel - Tsugaru street detail.PNG
青函トンネルの位置[注釈 1]
概要
路線 北海道新幹線海峡線
位置 津軽海峡
現況 使用中
起点 青森県東津軽郡今別町浜名(地図
終点 北海道渡島総合振興局上磯郡知内町湯の里(地図
運用
建設開始 1961年昭和36年)3月23日
開通 1988年(昭和63年)3月13日
所有 鉄道建設・運輸施設整備支援機構[1]
管理 JR logo (hokkaido).svg 北海道旅客鉄道(JR北海道)
用途 鉄道トンネル
技術情報
軌道長 53.85 km (33.5 mi) (全長)
23.30 km (14.5 mi) (海底部)
軌間 海峡線:1,067 mm (3 ft 6 in)
北海道新幹線:
1,435 mm (4 ft 8 12 in)
三線式スラブ軌道
電化の有無 有(交流25,000V・50Hz
設計速度 最高140 km/h (87 mph)
高さ -240 m
勾配 12
最小曲線半径 6,500 m
青函トンネル入口広場より撮影した本州側入口部分(青森県今別町
789系電車使用特急「スーパー白鳥」先頭車両展望窓より撮影した本州側入口部分[注釈 2]
海底部標準断面図
1.本坑 2.作業坑 3.先進導坑 4.連絡誘導路
縦断図
海底よりも深い地下に駅があった(竜飛海底駅

青函トンネル(せいかんトンネル)[注釈 3]は、本州青森県東津軽郡今別町浜名と北海道渡島総合振興局上磯郡知内町湯の里を結ぶ北海道旅客鉄道(JR北海道)の鉄道トンネルである。

概要[編集]

津軽海峡の海底下約100mの地中を穿って設けられたトンネルで、全長は53.85 kmにも及ぶ。これは交通機関用のトンネルとしては日本一である[3]。全長は約53.9kmであることからゾーン539の愛称があった。

海底トンネルとしては世界一の長さと深さを持つ交通機関用トンネルである。海底部の総距離では英仏海峡トンネルが世界一の長さを持つ。 1988年昭和63年)3月13日に開通してから2016年平成28年)6月1日スイスゴッタルドベーストンネルが開通するまでは、世界一の長さを持つ交通機関用トンネルでもあった[新聞 1]

青函トンネルの木古内駅方には、非常に短いシェルターで覆われたコモナイ川橋梁、さらに長さ約1.2kmの第1湯の里トンネルが続き青函トンネルに一体化しており、これらを含めたトンネル状構造物の総延長は約55kmになる。なお、トンネルの最深地点には青色と緑色の蛍光灯による目印があった(北海道新幹線開業時期に撤去済み)。

青函トンネルを含む区間は当初在来線「海峡線」として開業したが、当初より新幹線規格で建設されており、2016年(平成28年)3月26日から三線軌条北海道新幹線が走行している。

また、青函トンネルは通信の大動脈でもある。青函トンネルの中には開通当時の日本テレコム(のちソフトバンクテレコム、ソフトバンクモバイルを経て、現在のソフトバンク)が光ファイバーケーブルを敷設しており、北海道と本州を結ぶ電信電話の重要な管路となっている。

日本鉄道建設公団により建設工事が行われ、公団を引き継いだ独立行政法人である鉄道建設・運輸施設整備支援機構がトンネルを所有している。トンネルを走行する列車を運行しているJR北海道は、機構に対してトンネルの使用料を払っている。その額は租税および管理費程度とされており、年額4億円である。また、トンネル内の鉄道敷設部分についてはJR北海道所有として整備されており、この部分の維持管理費は年間約8億円となっている。1999年度(平成11年度)から改修事業が行われており、事業費のうち3分の2を国の補助金でまかない、3分の1をJR北海道が負担している[1][4]。海底にあるため施設の老朽化が早く、線区を管轄するJR北海道にとって、青函トンネルの保守管理は大きな問題になっている[新聞 2][4]

また、開業当初は、乗車券のみで乗れた青函連絡船の代替という意味もあり、主たる輸送が快速海峡」にて行われ、特急はつかり」は一部速達性を要する時間帯のみであったが、2002年(平成14年)12月1日東北新幹線八戸開業に伴い列車体系が大幅に変更され、特急・急行列車のみとなった[報道 1]2016年(平成28年)3月26日の北海道新幹線開業以降は、定期旅客列車は北海道新幹線のみとなっている。

ちなみに、青函トンネルの中央部は、公海下の建造物ということで、開業前にその帰属および固定資産税の課税の可否が問題となったが、トンネル内には領土と同様に日本主権が及ぶものと判断された。それに伴い各自治体へ編入され、固定資産税もそれに応じて課税されることとなった[注釈 4]

全工程においての殉職者は34名。竜飛崎に殉職者の碑が建っている。

防災設備[編集]

青函トンネルは「世界最長の海底トンネル」[注釈 5]という特殊条件であることから、万が一の事故・災害防止のために厳重な安全対策が施されており、トンネル内は終日禁煙・火気使用厳禁となっている。トンネル内には一般建物用より高感度の煙・熱感知器が多数設置されているので、微量な煙を感知しただけでも列車の運行が止まってしまう。なお、開業初日には3か所の火災検知器が誤作動を起こし、快速「海峡」などが最大39分遅れるトラブルが発生している。

なお、2015年4月に発生した特急列車の発煙トラブル(後述)を踏まえ、JR北海道は青函トンネルにおける乗客の避難方法や避難所設備などを改善していく考えを示している[新聞 3]。定点など陸底部にある施設を拡充し、定点のケーブルカー(定員15名)の荷台に座席を取り付け、定員を増やすほか、待避所のベンチやトイレなども増設する。また、トンネルの陸底部に4つある資材運搬用の斜坑を新たに避難路として活用する[新聞 4]

斜坑・作業坑・先進導坑[報道 2]
作業坑・先進導坑には、連絡誘導路が約600mおきに設置されている。陸底部には算用師(さんようし)、袰内(ほろない)、白符(しらふ)、三岳(みたけ)の4つの斜坑があり、階段の他、自動車の通行が可能な斜路が設置されている。
青函トンネル内を移動する事態となった場合、身体に障害のある人、体調不良の人をトンネル内にある保守作業用自動車等に乗車させることも検討している。
定点[報道 2]
万一、列車火災事故などが発生した場合に列車を停止させ、乗客の避難誘導及び消火作業を行うため、青森県東津軽郡外ヶ浜町竜飛(地図)および北海道松前郡福島町館崎(地図)の陸底部2箇所(海岸直下から僅かに海底寄り)に設置された施設。1972年(昭和47年)11月6日日本国有鉄道(国鉄)北陸本線北陸トンネル内で発生した列車火災事故を教訓にしたもので、これによりトンネルは3分割され、防災上からみればトンネルの長さは従来の最長の鉄道トンネルと同程度のトンネルが間をおかず、連続していると考えることができる。
開業後はこの定点をトンネル施設の見学ルートとしても利用する事になり、それぞれ「竜飛海底駅」、「吉岡海底駅」と命名された。この2つの駅は、見学を行う一部の列車の乗客に限り乗降できる特殊な駅であったが、吉岡海底駅は2006年8月28日に長期休止となった[報道 3][報道 4]ほか、竜飛海底駅も2013年11月10日をもって休止となった[報道 5]。なお、この両海底駅は2014年3月15日に駅としては廃止され[報道 6]、現在は「竜飛定点」、「吉岡定点」となっている。
ホーム、消火栓及び乗客を一時避難させる避難所(ベンチ、トイレ設備)が設置され、指令所から遠隔操作する一斉照明設備(100ルクス程度)、消防用設備(水噴霧設備、ITVカメラ及び非常放送設備等)を備えている。また非常発電機が備えてあり、72時間稼働できる様に備えている。
また、竜飛・吉岡定点はそれぞれ竜飛・吉岡斜坑を通じて地上に脱出できるようになっており、これらの斜坑にはケーブルカーの他、階段(段数1,317段)が設置されている[注釈 6]。健脚の場合、階段の歩行時間は25分程度である。
列車火災対策[報道 2]
火災検知設備
赤外線温度式火災検知器
赤外線カメラを利用して、両側から列車表面の温度を測定することにより火災を検知する設備であり、トンネルの前後および内部の上下線4箇所ずつ、合計8箇所に設置されている。車軸検知器と連動させてデータ処理を行うことにより、火災発生位置(両数、部位)も検知できる。
煙検知器
赤外線温度式火災検知器では、熱が車両表面に現れずに煙の発生するいわゆる煙火災に対応することができないため、補完設備としてトンネル内に煙検知器を5箇所設置した。
火災時の列車制御設備
火災列車停止装置
火災を検知すると、ブレーキ開始表示灯と停止位置目標灯を点灯させ、それを目標に運転士がマニュアルブレーキで停車する。なお、新幹線開業後は、ATC信号により自動的に減速し、最後の停止位置合わせのみ運転士がマニュアルブレーキを操作する。
支障列車停止装置
列車火災が発生したときに、他列車への波及を食い止めるため、火災検知器と連動して自動的に設定したブロック単位に送信し、後続列車及び対向列車を停めるべき地点の軌道回路に停止信号を現示する。
消火設備
列車火災が発見された場合、その列車は最寄りの定点かトンネル前後の停車場まで走行して、そこで消火救援活動を行うことを基本としており、定点及び停車場に消火設備を設けている。
換気設備
列車からの発熱の蓄積による坑内温度の上昇の抑制、及び保守用車からの排気ガスの排出のため、縦流式の換気方法としている。これは斜坑口付近に送風機を設けて空気を送り込み、先進導坑を通って海底中央部の連絡横坑から本坑に入り、各々の坑口に向かって換気する方式である。
排煙設備
列車火災が発生し、列車が定点に停止したときに、避難する乗客が煙にまかれることのないような排煙方式としている。列車停止位置に応じて指令が排煙装置を遠隔制御で調整し、斜坑から定点への短絡ルートにある風門を開くことにより、換気流を斜坑から直接定点に送り込むと同時に、立坑口に設けた排煙機を運転して煙を立坑から吸い出すものである。これにより本坑の風向きが調整され、作業坑、先進導坑へ本坑の煙が流入しないようしている。
避難誘導設備
火災列車が定点に停止した場合、一時旅客を避難させ避難所から坑外に脱出させる必要がある場合に、安全に誘導するためにITVカメラ、非常放送などの避難誘導設備を設置している。
情報連絡設備
列車火災時には旅客の避難誘導、関係列車の抑止、消火栓、排煙、換気等の手配を緊急に行う必要があるため、トンネル内乗務員と函館指令センターの指令員との情報連絡が、迅速かつ効率よく又確実に行われる体制にしておく必要がある。情報連絡設備として、できるだけ多くの通信手段を設けることによりトンネル内と指令センター等との連絡を密にするため列車無線、乗務員無線等を設置している。
地震対策[報道 2]
列車抑止の方式は地震計からの警報によってATCで列車を停止させる方式を採用した。120ガル以上の場合、一旦停止後に徐行でトンネル外まで運転する。
なお、青函トンネル部は、十分な耐震構造になっているが、長大でかつ海底トンネルという特殊性から、地震が発生して列車が停止した後の応急的な運転再開については、長時間を要する徒歩巡回点検方式はとらず、警報地震計(トンネルの前後および内部に合計8箇所)とモニタリングシステム(地震早期検知システム、トンネル覆工歪計(トンネル内に4箇所)、湧水量検知装置)による迅速な情報処理判断を活用している。
異常出水対策[報道 2]
トンネル内に湧水量検知装置を27箇所設置し、地震時の異常はもちろんのこと経年によるトンネル及びトンネル周辺地山の劣化を監視して函館指令センターでその状況に応じて応急処置がとれるよう万全を期している。
くみ上げポンプ用非常発電設備が設置されており、ポンプの排水能力を超えた場合、本坑下部にある先進導坑に貯水する仕組みになっている。
防災監視体制[報道 2]
青函トンネルにおいて災害が発生した場合に迅速に対処するため、トンネル内の各種防災情報を函館指令センターに表示して、常時監視できる設備になっている。また、異常時には各種防災機器を、函館指令センターから遠隔制御により直接操作できる。このように、青函トンネルにおいては、万一、災害が発生した場合でも、迅速に対応するために、情報を函館指令センターに表示して指令員が常時監視するとともに、異常時には各種防止機器を遠隔制御により直接操作するよう総合システムを構成している。

送電線設備[編集]

青函トンネルを利用し本州と北海道を結ぶ送電線の建設が進められている。2019年3月の稼働開始を予定とし、30万kW分の送電を行える直流送電線の建設が行われている。従来北海道と本州を結ぶ送電線は海底ケーブルによってまかなわれていたが、船舶のいかりが引っかかって損傷するなどのトラブルが起こっており、青函トンネルを利用すれば安全性が確保され、敷設費用も抑えられる利点もあるとされ、従来の海底ケーブルでのルートと合わせて90万kW相当の電力の送電が可能となる。[5][6]

経緯[編集]

かつて青森駅函館駅を結ぶ鉄道連絡船として、日本国有鉄道(国鉄)により青函航路青函連絡船が運航されていた。しかし、1950年代には、朝鮮戦争によるものと見られる浮流機雷がしばしば津軽海峡に流入、また1954年(昭和29年)9月26日台風接近下に誤った気象判断によって出航し、暴風雨の中、函館港外で遭難した洞爺丸他4隻の事故(洞爺丸事故)など、航路の安全が脅かされる事態が相次いで発生した。

これらを受けて、太平洋戦争前からあった本州と北海道をトンネルで結ぶ構想が一気に具体化し、船舶輸送の代替手段として、長期間の工期と巨額の工費を費やして建設されることとなった。

青森県東津軽郡三厩村(現在の外ヶ浜町)と北海道松前郡福島町を結ぶ西ルート、青森県下北郡大間町と北海道亀田郡戸井町(現在の函館市)を結ぶ東ルートが検討され、当初は距離が短い東ルートが有力視されたが、東ルートは西ルートよりも水深が深い上、海底の地質調査で掘削に適さない部分が多いと判定されたため、西ルートでの建設と決定した。なお、もし東ルートに決定していれば、かつて青函連絡船代替航路として建設されていた未成線大間線戸井線)の建設が再開され、開通していたとも言われている。

当初は在来線規格での設計であったが、整備新幹線計画に合わせて新幹線規格に変更され建設された。整備新幹線計画が凍結された後、暫定的に在来線として開業することになったものの、軌間や架線電圧の違いを除けば、保安装置(ATC-L型)も含めて新幹線規格を踏襲しており、のちに考案されるスーパー特急方式の原型となった。

トンネルは在来工法(一部TBM工法新オーストリアトンネル工法)により建設された。トンネル本体の建設費は計画段階で5,384億円であったが、実際には7,455億円を要している[新聞 5]。取り付け線を含めた海峡線としての建設費は計画段階で6,890億円、実際には9,000億円に上る。

しかし、完成時には北海道新幹線の建設が凍結になっており、また関東以西と北海道が鉄道と青函航路で結ばれていた着工当時と打って変わり関東から北海道への旅客輸送は既に航空機が9割を占めており、さらに完成後も大量の湧水を汲み上げる必要があるなど維持コストも大きいことから、巨額な投資といえども埋没費用とみなし放棄した方が経済的であるとされた。そのため「昭和三大馬鹿査定」発言において言及され、「無用の長物」、「泥沼トンネル」などと揶揄されたこともあった。

トンネルの有効活用としては「道路用に転用すべきだ」、「キノコの栽培をすべきだ」、「石油の貯蔵庫にすべきだ」などのアイデアも報じられたが、結局は在来線で暫定使用を行うことになった。なおこの時、「青函トンネルカートレイン構想」としてカートレインの運行を行うことも定められていたが、実現には至っていない。

しかし、開通後は北海道と本州の貨物輸送に重要な役割を果たしており、一日に21往復(定期列車。臨時列車も含めると上下合わせて約50本)もの貨物列車が設定されている。天候に影響されない安定した安全輸送が可能となったことの効果は大きい。特に北海道の基幹産業である農産物の輸送量が飛躍的に増加したとされる。また首都圏で印刷された雑誌類の北海道での発売日のタイムラグが短縮されるなど、JR北海道にとっては赤字事業であるものの外部効果は高いといえる。平成22年度では年間貨物輸送は450万トンでシェアは42%に達しており、フェリー輸送とほぼ同等となった。対照的に、旅客は航空輸送の高度化・価格破壊などから減少が進んでいる。2007年(平成19年)9月1日には青森・函館間を1時間45分で結ぶ高速船ナッチャンReraが、2008年(平成20年)5月2日にはナッチャンWorldが就航し、青函トンネル旅客輸送における新たな競合相手となっていたが、これらは2008年(平成20年)11月1日で運航休止[注釈 7]となった。このような状況ではあるが、今後は北海道新幹線開業による輸送量増加が期待される。

歴史[編集]

着工から完成[編集]

供用開始後[編集]

技術[編集]

先進導坑[編集]

当初はTBM(トンネルボーリングマシン)を使用して掘削していけば、ほぼ計画通りの工期で完成すると考えていたが、実際には軟弱な地層に進むにつれ多発した異常出水や、機械の自重で坑道の下へ沈み込み前進も後退もできなくなり、やむなくTBMの前方まで迂回坑道を掘って前から押し出さざるを得なくなるなどあまり役に立たず、早々にTBMでの掘削を諦めた。そこで、本坑に先駆けて先進ボーリングで先進導坑を掘り進み、それにより先の地質や湧水の状況を調査しながら本坑が後を追うという方式で掘り進むことになった。しかし、先進ボーリングは水平方向でボーリング調査を行うため水平を維持するのが難しく、ボーリングした孔内の圧力を維持できずに孔壁が崩れたり湧水が噴出したりしたため、最初の頃は月に100mも進まなかった。そこで、従来はボーリングのロッド管内から送った水を先端のビットから管外に出してビットを冷却しつつ、その水で孔を開く際に出る粘土や泥をロッド管と孔壁の間から取り除いていたのに対して、ロッド管と孔壁の間から送った水で孔を開く際に出る粘土や泥をロッド管内に回収する「リバース工法」を考案した。これにより、ボーリングの掘進速度は月に数100mに向上した[13]

海底にさしかかるに従い次第に地質が軟弱になり、出水も増えてきた。そのため青函トンネルで培われた技術が、「注入」と「吹付コンクリート」と呼ばれるものである。注入とは、セメントミルクと水ガラス混合物である注入材を注入用高圧ポンプを用いて超高圧で岩盤へ注入し、注入材が固まった後そこを掘っていく工法であり、坑道の太さ以上にセメントで硬い岩盤をあらかじめ作っておき、そこを掘り進む理屈である。しかし、注入材は強度を上げようすると流動性を保つ時間が短くなり注入できなくなる問題があった。そこで、竜飛岬にある試験場において、最適な水ガラスの種類や配合物を解明するとともに、流動性を保つ時間帯をストップウォッチを使用して計測した。吹付コンクリートとは、掘削直後にコンクリートを岩盤に吹き付けて緩みや崩落を防ぐ工法であり、1950年代にヨーロッパで開発されていたのだが、吹き付け圧による跳ね上がり・剥落・管詰まりなどのトラブルが多かったため、トンネル内に模擬トンネルを造って試行錯誤の繰り返し行い、急結剤の改良や耐圧ホース・吹き付け用自動アームなどを開発した。それでもなお大量の出水を防ぐ事ができず、坑道の途中で進む事を断念し坑口を塞いだうえでその坑道を避けて掘った箇所が先進導坑に数カ所存在する[13]

掘削が終わり、鉄道が開通した後も湧水(塩水)が常に出続けている。そのため竜飛側と吉岡側のそれぞれ先進導坑最下部にポンプが備えられており(竜飛側はさらにもう1か所)、常時ポンプで湧水を汲み出すことでトンネルが維持されている[注釈 11]

本坑[編集]

全長53.85kmの本坑は9つの工区に分けて掘削が行われた。そのうち、本州寄りの4つの工区と北海道寄りの3つの工区は陸上部の地下を掘り進めるもの、残る2つの工区が津軽海峡の海底下を掘り進めるものであった。各工区の長さ及び施工業者を以下に示す[14]

工区名 地域 陸海の別 長さ 施工業者
浜名 本州側 陸上部 1470m フジタ工業
増川 438m 錢高組
算用師 5492m 飛島建設三井建設JV
袰内 3500m 佐藤工業
竜飛 海底部 13000m 鹿島建設熊谷組鉄建建設JV
吉岡 北海道側 14700m 大成建設間組前田建設工業JV
白符 陸上部 3900m 奥村組五洋建設JV
三岳 6400m 大林組清水建設JV
千軒 4950m 西松建設青木建設JV

北海道新幹線[編集]

2005年(平成17年)に北海道新幹線新青森 - 新函館北斗間が着工され、青函トンネルについては貨物・夜行列車なども引き続き通れるように三線軌条とし、上下線の間に遮風壁を設ける事、トンネル両側の奥津軽いまべつ駅[注釈 12]湯の里知内信号場[注釈 13][新聞 15]に待避施設を建設する事になっている。2007年(平成19年)には保安装置の動作確認などの試験目的で、上下線6kmの三線軌条化工事が行われた。また、これらの工事のために吉岡海底駅は休止されていた。

また、速度が大きく異なる貨物列車と新幹線を同時に走らせることによるダイヤへの負荷などを解消すべく、狭軌用の貨物列車を列車ごと標準軌用列車に乗せ、新幹線用レール上を高速で走行させるトレイン・オン・トレイン技術がJR北海道によって研究されている。

これとは別に、当初の予定通り青森側・北海道側にそれぞれターミナルを建設してカートレインを運行させようという構想もあるが、実現の目処は立っていない。

2014年(平成26年)3月15日に北海道新幹線の開業工事に伴い、2つの海底駅(竜飛海底駅吉岡海底駅)が廃止された[注釈 14]

走行車両[編集]

50系客車に設置されていた列車位置表示装置

青函トンネルは海底の長大トンネルであるため、走行する車両には運輸省(現在の国土交通省)が省令で定めた防災基準を満たす構造であることが要求されている。なお明示された条件ではないが、本トンネルは海底を通ることから湿度が常に100%であるため、これに耐えうる構造であることも重要である。

火災事故防止のため、トンネルを通行する営業用列車が電車または電気機関車牽引の客車貨車のみに制限されており、内燃機関を用いる車両(気動車ディーゼル機関車)は救援目的のディーゼル機関車を除き、当線内は自走・牽引は出来ない。さらに青函トンネルを通る冷凍コンテナは、熱感知機の反応で列車が足止めされないよう、機関車の運転席からの遠隔操作によりコンプレッサーの動力となるディーゼルエンジンを切るための専用回路を搭載したタイプに限られている[注釈 15]

本州と北海道間で車両を輸送する際は、内燃機関を停止した上で基本的に電気機関車の牽引により甲種輸送される[注釈 16]

なお、1988年(昭和63年)10月にはオリエント急行の車両が本トンネルを通行している[15]が、オリエント急行に使用される車両は内装に木材を使用している[15]上、食堂車では石炭レンジを使用しており[15]、火災対策上通行が認められない車両であった[15]。しかし、この時には各車両に車内放送装置と火災報知器を設置した上[15]、防火専任の保安要員を乗務させるという条件[15]で特別に通行が認められている[15]

北海道新幹線開業時に、青函トンネルを含む海峡線の架線電圧を新幹線にあわせて25,000V (50Hz)に昇圧し[16]、保安装置もそれ以前のATC-LからDS-ATCに変更された[17]

現在運用中の車両[編集]

運行予定車両[編集]

過去の車両[編集]

電車
気動車
電気機関車
  • ED76形(550番台)
  • ED79形:客車列車・貨物列車を牽引。青函専用機。
  • EH500形:貨物専用機。
ディーゼル機関車
  • DE10形:救援用にそれぞれ2両が常時待機していた。
客車
  • マヤ34形:軌道検測車。「はまなす」に連結されて走行し、レールを検測していた。
  • 12系客車:急行「八甲田」の間合い運用として臨時快速「海峡」として運行。※折戸ドアのため夏季のみ使用されていた。
  • 50系客車(5000番台):快速「海峡」。2002年以降は救援用として残存している。
  • 14系急行はまなす」。緩急電源車は消火装置等の対策済みのものが限定使用されていた。かつては「はまなす」の間合い運用として快速海峡」にも充当されたほか、ジョイフルトレインとしても入線していた。
  • 24系寝台特急北斗星」「日本海」「トワイライトエクスプレス」および急行「はまなす」。電源車は消火装置等の対策済みのものが限定使用される。客車も耐寒耐雪構造を強化した車両に限られていた。「日本海」の函館乗り入れ中止を皮切りに2015年3月に「トワイライトエクスプレス」、8月に「北斗星」が廃止され、残る「はまなす」も2016年3月をもって廃止となった。

新幹線開業直前1年間の青函トンネル内での関連事故・トラブル[編集]

北海道新幹線の新青森駅 - 新函館北斗駅間開業を1年後に控えた2015年4月3日には、青函トンネル内を走行していた特急「スーパー白鳥34号」の車両下で発煙する事故が発生し、青函トンネル開業後初めて乗客・乗員が竜飛定点を経由して地上へ避難する事態になった[報道 9][報道 2][新聞 10]ほか、2日後の4月5日には江差線札苅 - 木古内間の「き電線」の吊り下げ絶縁碍子が、老朽化や塩害での腐食が原因で破損したために送電トラブルが起き、青函トンネル内で停電が発生した。これにより特急「スーパー白鳥」など4本が運休し、6本に最大で4時間15分の遅れが発生した[新聞 12][新聞 13]。北海道新幹線が経由予定である青函トンネルにおいて管理面での事故が1週間以内に連続して発生し、北海道新幹線の安全性に疑問の声が上がった[新聞 11]。それに対し、JR北海道は4月7日から8日にかけて、江差線の停電に対する説明および青函トンネルに関する防災設備・避難に関する説明と車両状況の報告を行った[報道 17][報道 2]。また、4月10日には記者会見で避難誘導マニュアルの改定を実施する旨と、4月7日に社内委員会を設置したことを発表した[新聞 16]

その一方、JR貨物側にも問題が起きた。青函トンネルで貨物列車を牽引するEH800形電気機関車の故障が2015年8月21日に起きていたことが判明した。大阪貨物ターミナル駅札幌貨物ターミナル駅行きの貨物列車(20両編成)牽引時において、8月21日17時半頃に運転士が故障告知ランプが点灯を確認したため、知内町側の出口まで約5kmのトンネル内に緊急停車し、電圧変換装置に電流が流れないよう応急処置の後に運転再開。木古内駅に到着後に社員が故障を確認した。電気系統の異常によるもので、電圧変換装置のボルトの締め付け不足が原因で過大な電流が流れ絶縁体の樹脂が溶結したという経緯で故障に至った。この障害を国土交通省北海道運輸局に報告したものの、「単なる車両故障と認識し、発表する内容ではないと考えた」(広報室)として公表していなかった。JR北海道の発表では、この障害の影響で特急列車4本が最大53分遅延した[新聞 14]

2016年2月9日にも竜飛定点での合同異常時訓練中に停電が発生し、救援列車が緊急停止するトラブルがあった[新聞 17][報道 11]

扁額[編集]

本州側扁額

扁額揮毫は、本州側が開通当時の内閣総理大臣中曽根康弘、北海道側(正確には第1湯の里トンネル)が同じく運輸大臣橋本龍太郎である。扁額には「青函トンネル」ではなく「青函隧道」と書かれている。

揮毫した中曽根康弘は三公社民営化を悲願とし、橋本龍太郎は国鉄分割民営化時の運輸大臣であったことから、国鉄の介錯役と言える両政治家が揮毫した事となった。

記念発行物[編集]

映画[編集]

テレビ番組[編集]

開業当日は民放各局が開業式典から生放送した。その中継は函館駅青森駅[注釈 17]だけではなく吉岡海底駅竜飛海底駅からも行われた。さらには旅客一番列車[注釈 18]の函館発盛岡行き特急「はつかり」10号がトンネルに入った様子を車内からも生放送した。

列車内からの中継はNHKが代表取材し、その映像を運転席に設置したFPUから地上に送信し、地上ではその電波を受信し再度中継した。開業一番列車の写真を見ると運転席に「NHK」と書かれたパラボラアンテナが映っているのはそのためである。民放各局はこのNHKの映像を受信し再送信したため、なんの前振りもなく突然NHKの木原秋好アナウンサーが民放の画面に現れた。

また、海底駅からの中継には当時やっと実用化され始めていた放送中継用の光ファイバー伝送装置が使用された。

本中継の番組ではないが、NHKで開通前の1983年(昭和58年)1月21日NHK特集「検証・青函トンネル」を、2000年(平成12年)4月11日に『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』で「友の死を越えて〜青函トンネル・24年の大工事〜」を放送。2016年(平成28年)2月28日には北海道新幹線開業を前に、この2番組を再編集したNHKアーカイブス「北海道新幹線 開業へ〜青函トンネルに懸けた情熱〜」が放送された[18]。また、青森放送でも1988年(昭和63年)に『竜飛の二人』という青函トンネルをテーマにしたドキュメンタリー番組も制作、放送した。

開通直後の1988年(昭和63年)4月4日には月曜・女のサスペンス初回拡大スペシャル「青函特急から消えた男」(夏樹静子原作のトラベルサスペンス)がテレビ東京系列で放送されている。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 海峡線のうち、青函トンネル以外の区間は描かれていない。また、既に廃止されているJR北海道松前線江差線木古内駅 - 江差駅間)、下北交通大畑線南部縦貫鉄道南部縦貫鉄道線なども描かれている。
  2. ^ 2010年(平成22年)1月29日函館本線 深川 - 妹背牛間で発生した踏切傷害事故を受けて、同年JR北海道が特急形車両の先頭車運転台側の貫通路への立ち入りを禁止したため、以後はこのアングルでの撮影は不可能となっている。
  3. ^ 青函ずい道と表記されていたこともある[2]ほか、トンネル出入口の扁額には青函隧道と表記されている。
  4. ^ 1988年(昭和63年)3月13日に事務次官会議において自治体境界を定め、公海下部分のうち、約4.7kmを青森県東津軽郡三厩村(現:同郡外ヶ浜町)、約5kmを北海道松前郡福島町に編入することとなり、同月16日の政府閣議で決定し、同月24日に告示された。
  5. ^ 他のトンネルに比べ長大であり、トンネル中央部に向けて下り勾配が長く続いていることが大きな特徴である。
  6. ^ 竜飛斜坑は外ヶ浜町の道の駅みんまや(青函トンネル記念館)、吉岡斜坑は福島町吉岡地区のトンネルメモリアルパーク付近が出口となっている。なお、竜飛斜坑のケーブルカーは青函トンネル竜飛斜坑線として営業運転を行っている。
  7. ^ ナッチャンWorldについては、道南自動車フェリー2009年(平成21年)7月から9月にかけて期間限定で運航している。
  8. ^ 発破ボタンの押下は、中曽根康弘(当時・内閣総理大臣)が総理官邸から電話回線を使用して行った。
  9. ^ 下り一番列車「海峡1号」の機関車には、石原慎太郎(当時・運輸大臣)が添乗した。
  10. ^ ゴッタルドベーストンネルはアルプス山脈を突貫する山岳トンネルであるために海峡間の水底トンネルとしては未だに世界一の長さとなる。
  11. ^ その影響で坑内は常に湿度100%であり、通過車両や施設には塩害対策が欠かせない。
  12. ^ 新幹線開業前は津軽今別駅。
  13. ^ 旧・知内駅。2014年(平成26年)3月14日営業終了。新幹線開業前は知内信号場。
  14. ^ 駅機能はなくなったが定点となり、2015年(平成27年)4月3日の事故の様に避難口として利用される事もある。
  15. ^ 東海道山陽本線系統の貨物列車に積まれる冷凍コンテナの一部には、この回路が非搭載のタイプがあり、「青函トンネル通過禁止」と書かれている。
  16. ^ 21世紀初頭に青函トンネル経由で行われた甲種輸送は、2008年(平成20年)11月ミャンマー譲渡車両、2009年(平成21年)3月24日DF200形ディーゼル機関車などがある。
  17. ^ この日放送のTBSテレビ「サンデーモーニング」では、「はつかり10号」が停車した蟹田駅からも中継を行った。
  18. ^ 営業運転最初の列車は貨物列車であった。

出典[編集]

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  11. ^ 北海道新幹線開業に向けた「地上設備最終切替」の「事前確認」に伴う元日にかけての津軽海峡線の全面運休について - JR北海道 2015年7月17日
  12. ^ 北海道新幹線設備切替に伴う 列車運休等のお知らせ JR北海道
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  14. ^ “青函トンネル建設の組織論的研究”. 小島廣光. (1984年3月)
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新聞記事[編集]

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参考文献[編集]

書籍[編集]

雑誌[編集]

関連項目[編集]

トンネル内部にある竜飛海底駅に列車が接近する様子。

外部リンク[編集]