JR貨物EH500形電気機関車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
JR貨物EH500形電気機関車
28号機(2006年1月7日、恵比寿駅)
28号機(2006年1月7日、恵比寿駅
基本情報
運用者 日本貨物鉄道
製造所 東芝
製造年 1997年 -
製造数 73両 (2013年2月現在)
主要諸元
軸配置 (Bo - Bo) + (Bo - Bo)[1]
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500 V・交流20 kV (50/60 Hz)
全長 25,000 mm(連結面間長)[1]
全幅 2,950mm[1]
車体幅 2,808 mm
全高 4,280 mm
車体高 3,650mm(試作車)[1]
3,711mm(量産車)[1]
運転整備重量 134.4t[1]
台車 ボルスタレス2軸ボギー
FD7A・FD7B・FD7C・FD7D(試作車)[2]
FD7F・FD7G・FD7H・FD7I(量産車)[1]
(いずれも第1エンド側よりの並び)
台車中心間距離 6,200 mm
固定軸距 2,500 mm
車輪径 1,120 mm
動力伝達方式 吊り掛け駆動方式
主電動機 FMT4形三相かご形誘導電動機
主電動機出力 565 kW
歯車比 5.13 (82/16)
制御方式 IGBT素子VVVFインバータ制御
(1C2M)
PWMコンバータ
制動方式 発電ブレーキ併用電気指令式自動空気ブレーキ
保安装置 ATS-SF(共通)
ATS-Ps(仙台車)
ATS-PF(仙台車)
ATC-L(仙台車)
ATS-DF(門司車)
最高運転速度 110 km/h
設計最高速度 120 km/h[1]
定格出力 4,000 kW(1時間定格)
4,520 kW(30分定格)
テンプレートを表示

EH500形電気機関車(イーエイチ500かたでんききかんしゃ)は、日本貨物鉄道(JR貨物)が1997年(平成9年)から製造する三電源方式交流直流両用電気機関車である。

公式な愛称EF210形の「ECO-POWER 桃太郎」と対をなす形で「ECO-POWER 金太郎」とされており、「キンタ」「金太郎」とも呼ばれる。時に鉄道ファンからはEH10形の「マンモス」に対応して「平成のマンモス(機関車)」と呼ばれることもある。

概要[編集]

本形式は、日本国有鉄道(国鉄)時代に製造され東海道本線で使用されたEH10形以来となる2車体連結・主電動機軸8軸使用のH級機である。

従来、首都圏 - 函館五稜郭間は 直流機 - 交流機(重連または単機)- 青函用交流機(重連)と機関車の付け替えがあり、到達時間にロスが生じていた。これを解消してJR貨物の保有機関車数を削減する目的とともに、東北地方ED75形電気機関車や、津軽海峡線ED79形電気機関車老朽取替え用として開発・製造されている。

構造[編集]

ここでは量産車について述べる。901号機(試作機)については#試作機(901号機)を参照のこと。

車体[編集]

東北本線藤田 - 白石間および十三本木峠の急勾配・青函トンネルの連続勾配を走行するため、高い粘着性を軸重を増大させずに確保する必要があったことと、第二種鉄道事業者として線路保有会社に支払う線路使用料を軽減するために2車体永久固定方式のH型機関車となった[注 1]

走行機器[編集]

交流区間では、交流20kVを主変圧器から主変換装置に導き、主電動機を駆動する。直流区間では、直流1,500Vを主変換装置のインバータ部に導き、交流誘導電動機を駆動する。主変換装置1台で2台の主電動機を制御する1C2M方式を採用する[3]

主変圧器(FTM3)は送油風冷式を採用し、2,598kVAの容量を備える。1両あたり2基搭載する。

主変換装置は沸騰冷却強制風冷方式を採用し、IGBT素子を使用した3レベルPWM方式コンバータ+3レベルPWM方式インバータで構成される。

補機類や計器類の電源を供給する補助電源装置は、容量150kVAの静止形インバータ(SIV)を搭載する。主変圧器の3次巻線を電源とし、交流100Vおよび直流100Vを供給する。なお、直流区間ではインバータ部から供給される三相交流440Vを降圧・整流することで補機類の電源としている。1両に2基の補助電源装置を搭載することで、冗長性を確保している[3]

主電動機(FMT4)は、1時間定格出力565kWのかご形三相誘導電動機である。ED75形やED79形で行われていた重連運用解消のために、短時間出力を4,520kWに設定しているが[3]、地上設備などとの兼ね合いから、通常は直流区間では3,400kW程度、交流区間では4,000kW程度で運用される。

台車は、EF210形量産車と同形式の軸梁式ボルスタレス台車を装着する。台車形式は、1エンド側からFD7F、FD7G、FD7H、FD7Iである。ヨーダンパを備える。

集電装置は、PS22E形下枠交差式パンタグラフを2基搭載する。

制動方式は単機に発電ブレーキ併用電気指令式ブレーキ、編成に電磁自動空気ブレーキを採用しており、発電ブレーキを停止と抑速の際に使用する。

空気ブレーキなどで使用される圧縮空気を供給する電動空気圧縮機は、FMH3015-FTC2000形を2基搭載する。

電動機などの冷却に使用する電動送風機は、FMH3016A-FFK16形を搭載する。

形態区分[編集]

試作機(901号機)[編集]

EH500試作機(901号機)
2010年8月
東北本線 盛岡駅

1997年東芝府中工場で落成、同社が国内向けに交直流電気機関車を大量(6両以上)生産するのは初めてだった。1998年3月JR貨物に車籍編入し長町機関区(廃止)に新製配置され、各種試験に供された。1999年8月、仙台総合鉄道部完成に伴い同所に転属した。

クリーム色の前面帯は正面窓直下、形式番号表示部にあり、幅は量産車に比べ細い。前照灯は正面下部に設置され、正面窓の傾斜角も量産車とは異なる。車体側面のルーバーは量産車に比べ小型で、採光窓は片側5組(×2車体)と量産車に比べ多い。また、車体横の製造メーカーの銘板はEH500-901号機のみ英語表記で「TOSHIBA」となっており、銘板の取り付け位置も量産車と異なる。量産車は日本語で「東芝」と表記されている。

搭載機器についても量産車と差異があり、主変圧器は容量5,141kVAのものを1基、補助電源装置は140kVAのものを2基搭載する。台車は基本的に量産車と同等であるが、形式は1エンド側からFD7A、FD7B、FD7C、FD7Dとなっている。


1次形(1, 2号機)[編集]

EH500 2
2011年8月8日
東北本線 郡山駅

2000年3月に製造された。901号機の試験成績を踏まえて製造された量産先行機である。

試作機では1基のみ搭載の主変圧器を各車体に1基、計2基搭載するなど内部機器配置の変更がなされた。車体側面のルーバーは天地寸法が拡大され、採光窓は片側2組(×2車体)となった。外部塗色は赤紫寄りに変更、前面帯は形式番号直下に移され、若干太くなった。

2次形(3 - 9号機)[編集]

EH500-5
2007年3月20日
東北本線 長町駅

2000年3月 - 2001年1月に製造された。

前照灯への着雪による照度低下の対策として、これを上方(前面帯部)に移設した。製造途中に愛称・ロゴマークが一般公募により決定され、以降の新製機は「ECO-POWER 金太郎」のロゴマークを車体側面に表示して出場した。

3次形(10号機 - )[編集]

2001年8月より製造中である。

車体塗色を明るめの赤に変更、運転台周りの黒色塗装は窓枠部のみに縮小、前面帯は側面に回りこまず、前照灯外縁で切れる。

15号機から前照灯のカバーの形状が変わり白線がわずかながら細くなった。更に73号機から後尾灯が電球式からLED式に変更された。これは後尾灯の色で判別できる。また製造途中からGPS アンテナ(列車位置検知装置)が追加装備された。GPSは既存機にも順次装備された。一部の車両 (45 - 50、67-72) は関門トンネル用としてJR貨物門司機関区に配置し、ATC-LATS-PF は装備しない。

現況・動向[編集]

2013年2月現在、仙台総合鉄道部に901・1-44・51-66・73-81の70両、門司機関区に45-50・67-72の12両が所属している[4]

製造実績は2006年度が10両、2007年[5] は9両、2008年[6] は3両、2009年[7] は4両、2010年[8] は6両である。2010年度の6両は山陽・鹿児島線への追加投入用とされ、関門トンネル区間で従前から使用されてきたEF81形を順次置き換えた。

主送風機 (MMBM) ・発電ブレーキの抵抗送風機から発生する風切り音はかなり大きく、走行音だけで本形式は容易に判別できるほどで、以後製造されたEH200形などに低騒音形の送風機を採用する契機となった。

最近では各車にヘッドマークステー(取付け台)を設置していたが、2009年10月以降から撤去されている。

3電源対応の機関車であるが、日本海縦貫線は秋田以北のみの運用である。

仙台総合鉄道部

首都圏 - 北海道連絡の高速貨物列車を主体に運用されているが、運用区間の長さゆえ走行距離毎の点検頻度が増え、稼働率低下の主因となっている。一時期は故障が多発して稼動車が不足し、一度運用を外れたED75形を整備の上で復帰させて稼動車を充足した時期もあり、その後は走行距離を抑え最小限の車両数で運用するために、本形式の運用を東北本線黒磯駅以北の交流区間のみに限定させ、黒磯駅以南の直流区間は東海道山陽本線系統のEF210形などの直流電気機関車が継走する運行形態が多く、本来の首都圏 - 北海道間の主な直通運用は隅田川駅新鶴見信号場 - 五稜郭駅間と越谷貨物ターミナル駅 - 五稜郭駅間、東京貨物ターミナル駅 - 五稜郭駅(下り1本のみ)である。このほか、隅田川駅・新鶴見信号場駅 - 仙台貨物ターミナル駅間の首都圏 - 東北間の中距離直通運用がある。また、2013年3月16日ダイヤ改正ではJR東日本田端運転所所属のEF510形500番台を置き換える形で、常磐線貨物の間合い運用が設定された。

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震東日本大震災)は本形式の運用に著しい影響を及ぼした。仙台所属の試作機901号機が罹災[9] したほか、東北本線の不通に伴い被災地への物資迂回輸送対応として設定された石油輸送臨時列車(根岸駅 - 盛岡貨物ターミナル駅間、上越線信越本線羽越本線奥羽本線経由)では、同年3月18日の運転開始時から一部区間で牽引に充当された。同年4月末からは、一部車両の側面に復興メッセージをデザインした大型ステッカーを貼付している[10]

2014年頃からATS-Ps形の搭載が順次行われている。

2016年3月の改正で北海道新幹線新函館北斗駅延伸により青函トンネル区間が新幹線対応の交流25,000Vに昇圧されることや保安装置の関係から、この区間の運用はEH800形に全て変更され、EH500形運用の北限は青森まで縮小となった。それに伴い秋田貨物駅や東海道線の相模貨物駅への乗り入れを開始した。

門司機関区

2007年から本形式が配置され、関門トンネル区間(幡生操車場 - 北九州貨物ターミナル駅間)での運用を開始した。2011年には北九州貨物ターミナル駅 - 福岡貨物ターミナル駅間の輸送力増強事業が完了したことに伴い、幡生操車場 - 福岡貨物ターミナル駅間へと運用範囲も拡大されている。本形式の本格運用、およびターミナル駅の改良や鹿児島本線内の待避線増強とあわせて2011年より東京貨物ターミナル駅 - 福岡貨物ターミナル駅間で従来不可能だった 1,300 t 貨物列車の直通運行が可能となった。なお、門司機関区所属の本形式は九州内および関門トンネル区間の運用にのみ充当されており、幡生操車場以東はEF210形などが継走する形態を取る。

配置にあたっては、本格運用前に2004年4月に25号機が、6月に27号機が運用試験に供されている。これは、同区間における 1,300 t 貨物列車の運行開始と、EF81形電気機関車(300・400番台)の置換えを念頭に実施されたものであった。本来、本形式は3電源対応(直流交流 50 Hz / 60 Hz)として設計されており広汎な運用が可能であるが、東北 - 北海道連絡系統以外で本格的に運用されたのは門司機関区配置車が初めてである。

仙台総合鉄道部車と異なり、当初は保安装置はATS-SF形のみ搭載していたが、2015年頃からATS-DF形を追加搭載するようになった。

脚注[編集]

[ヘルプ]

注釈[編集]

  1. ^ 設計当時のスキームでは、線路使用料は機関車の台数分支払うことになっていた。D形機による重連運用の場合は通常2両分支払う必要があるが、H形機とすれば支払いは1両分で済むことになる。

出典[編集]

参考文献[編集]

  • 森田英嗣(日本貨物鉄道株式会社技術開発部) 「EH500形量産車」『鉄道ファン』2000年7月号、交友社、2000年、pp. 111 – 116

関連項目[編集]