JR貨物コキ71形貨車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
JR貨物コキ71形貨車
カーラックコンテナを積載したコキ71形
カーラックコンテナを積載したコキ71形
基本情報
車種 コンテナ車
運用者 日本貨物鉄道(JR貨物)
所有者 日本貨物鉄道(JR貨物)
製造所 川崎重工業
製造年 1994年(平成6年)
製造数 8両
主要諸元
車体色 コンテナレッド(赤紫)
軌間 1,067 mm
全長 21,300 mm
全幅 2,789 mm
全高 1,947 mm
荷重 39.2 t
自重 20.7 t
換算両数 積車 5.5
換算両数 空車 2.0
台車 FT12A
車輪径 610 mm
軸距 1,800 mm
台車中心間距離 14,800 mm
最高速度 110 km/h
第36回(1996年
ローレル賞受賞車両
テンプレートを表示

JR貨物コキ71形貨車(JRかもつコキ71がたかしゃ)は、日本貨物鉄道(JR貨物)が乗用車との複合輸送用として1994年(平成6年)から製作した貨車コンテナ車)である。

概要[編集]

乗用車の鉄道輸送は、国鉄時代から車運車ク5000形などによる車扱貨物として対応されてきたが、輸送の高速化、および制輪子集電装置から発生する鉄粉や粉塵、動物などとの衝突に伴う飛散物による積荷汚損防止の観点から、JR移行直前には乗用車専用コンテナが開発され、自動車メーカー各社は種々の専用コンテナを投入してきた。

乗用車などの物資別適合輸送は、車扱・コンテナのいずれにおいても、輸送設備が特定貨物に特化するため復路は空荷[注釈 1]とせざるを得ない欠点が解消されずにいた。

これを受け、先に「低床式多目的車両」として試作されたコキ70形の構造を基本に、低床化で得られる大きな積載可能空間を生かし、往路は乗用車・復路は汎用12 ftコンテナを一両あたり最大4個まで積載可能とした専用コンテナ「カーラック」システムにより、復路の空車を解消した複合輸送対応車両が開発された。これがコキ71形である。

本形式は1994年(平成6年)9月22日試作車2両 (901,902) 、1997年(平成9年)までに量産車6両 (1 - 6) が川崎重工業で製作された。1996年(平成8年)には貨車としては初めて鉄道友の会よりローレル賞を受賞している。

構造[編集]

台枠はコンテナ車標準の魚腹形側梁で、コキ70形と同様の低床平床構造である。床面高さは700 mm、車体長は20,350 mmで、車体はコキ70形より若干長い。中間の連結器はボルト留めの半永久連結器とされ、奇数番号車+偶数番号車の2両を1ユニットとして運用する。

作業員が操作している緑色の箱型機械は、カーラックトレインのウイングトップ式外壁を作動させる為の専用油圧ポンプ装置。

乗用車の汚損防止のため、車体中央で2分割されたウィングトップ式のアルミ製ラックカバーが2組装備され、荷役時には外部から専用の移動式小型油圧ポンプ接続により、上方に開く総開き構造である。専用の30フィート (30 ft) コンテナUM20A形30000番台(カーラック)を2個積載でき、専用のツイストロック式緊締装置を2組装備する。専用コンテナ以外の直接積載は考慮されていない。外部塗色は、車体・ラックカバー上部がコンテナレッド、ラックカバー下部は無塗装である。ラックカバー上部側面に「CAR RACK」のロゴマークを付す。

荷重は39.2 tで、1両あたりの積載能力は、JR 12 ftコンテナが4個、乗用車は8 - 10台である。

台車はコキ70形のFT11形を基本に、軸距を1,800 mmに拡大したボルスタレス式空気ばね台車FT12A形で、シェブロンゴム支持の軸箱装置、ディスクブレーキ装備の基礎ブレーキ機構は共通の仕様である。車体を低床化させるために車輪は一般的に使用されている直径860 mmより若干小さい610 mmが採用された。

ブレーキ装置コキ100系と同様なCLE方式(応荷重式電磁自動空気ブレーキ)を装備し、電磁弁は奇数車に装備する。手ブレーキは留置専用で、ハンドルは台枠側面にある。最高速度は110 km/hである。

運用[編集]

運用廃止となり外壁を全て撤去されて、独特の雰囲気が無くなった笠寺駅に留置中のコキ71形。(2008年)

本形式の専用無蓋コンテナ「カーラック」は1個に乗用車4 ~ 5台を積載する他、JRコンテナ用の緊締装置を装備し、乗用車の積載装置を格納してJR 12 ftコンテナを2個積載できる。

往路は、乗用車を積載した専用の「カーラック ・ コンテナ」を本形式1両につき2個積載し、積荷の汚損防止のためラックカバーを閉じて輸送する。復路は「カーラック ・ コンテナ」内の乗用車を積載する上下二段積み積載装置を底辺床面へ降下して、12 ftコンテナを1両に4個(2個×2個)積載して輸送する。ただし、両端の支柱は固定されているので、海上コンテナのフラット ・ ラック ・ コンテナのように折りたたむ事は一切出来ない。

名古屋貨物ターミナル駅を基点とし、1運用につき1ユニット2両を新潟貨物ターミナル駅米子駅へのトヨタ自動車製の乗用車輸送に使用していたものの、晩年はカーラックコンテナの構造が複雑で保守費用が嵩むこと、MPVCUVの普及など積載する乗用車の大型化が進み積載効率が悪化したこと[注釈 2]など、複数の問題が発生した。運用終了後は外壁を全て撤去した状態で笠寺稲沢の各構内で留置された後、2020年11月から同年12月に笠寺駅構内で4両ずつ解体[要出典]されたため、現存しない。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ ただし、乗用車輸送に特化した私有コンテナ(屋根がヴォールト形の複数形式)では、輸送効率の観点から殆どの場合は往復で車種の違う車両を積載(大型車小型車・乗用車⇔農業用トラクターなど)できるように工夫されていたので、もっぱら20 ft形無蓋コンテナ(平形)を使用した小型トラックの輸送が片道輸送となっていた。
  2. ^ 当然のことだが、すべてのコンテナは積載容量が決まっているので、積載する自動車の大型化が進めばコンテナ1個あたりの積載台数は減少する

出典[編集]

参考文献[編集]

  • 電気車研究会『鉄道ピクトリアル2000年1月号 No.680 特集:貨物輸送
  • 交友社『鉄道ファン2002年7月号 No.495 特集:コンテナ特急
  • ネコ・パブリッシング『車を運ぶ貨車(上)』 RM LIBRARY No.83 2006年
  • ネコ・パブリッシング『車を運ぶ貨車(下)』 RM LIBRARY No.84 2006年
  • 『日本の貨車-技術発達史-』(貨車技術発達史編纂委員会編著、社団法人 日本鉄道車輌工業会刊、2008年)

関連項目[編集]