シリーズ21

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第41回(2001年
ローレル賞受賞車両

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シリーズ21(Series-21)は、近畿日本鉄道の次世代一般車両(通勤形電車)。「人に優しい、地球に優しい」と「コストダウン」をコンセプトに開発された[1][2][3][4]

3220系
3220系
3220系(ペイント車)現在は一般塗装となっている
3220系(ペイント車)
現在は一般塗装となっている
5820系(L/Cカー・奈良・京都線系)
5820系(L/Cカー・奈良・京都線系)
5820系(L/Cカー・大阪線系)
5820系(L/Cカー・大阪線系)
9020系(奈良・京都線系)
9020系(奈良・京都線系)
9020系(大阪線系)
9020系(大阪線系)
9820系
9820系
6820系
6820系
7020系
7020系
らくらくコーナー
らくらくコーナー
阪神線で試運転中の9020系(EE32 近鉄・阪神相直ラッピング車)
阪神線で試運転中の9020系(EE32 近鉄・阪神相直ラッピング車)
9820系 阪神直通対応車は運転台側の窓の下と乗務員室入口ドアの横に相互直通対応車を示す蝶をあしらったマークが付いている。
9820系 阪神直通対応車は運転台側の窓の下と乗務員室入口ドアの横に相互直通対応車を示す蝶をあしらったマークが付いている。
日立製作所製VVVFインバータ
(2012年1月 出来島 - 福間)

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三菱電機製VVVFインバータ
(2012年1月 芦屋 - 西宮間)

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概要[編集]

近鉄用の一般車両は1986年に登場した6400系で確立されたVVVFインバータ制御装置に前面貫通型アルミニウム合金製車体を基本とする設計で1998年まで製造され[1]、その居住性や1981年に登場した界磁チョッパ制御車の8810系で確立されて1997年登場の5800系まで継承されていた斬新な車体デザインは利用者やファンの間で好評を博していたが[1]、2000年代を迎えるにあたって、一般車両のフルモデルチェンジを行なうことになった[1]
設計の基本方針としては以下の5項目が掲げられた[1]

  • 高齢化社会に対応出来る「人にやさしい」車両[1]
  • 環境負荷の少ない「地球にやさしい」車両[1]
  • 製造、保守面で「コストダウン」した車両[1]
  • 係員に「扱いやすい車両」[1]
  • 通勤車両として「21世紀のスタンダード」となる車両[1]

この設計方針を踏襲した車両は21世紀における理想像を目指した近鉄一般車両の標準型としてシリーズ21と総称された[1][2][3]

第一陣として製造された3220系は、2000年3月15日近鉄奈良線難波線京都線橿原線天理線および京都線と直通運転を行う京都市営地下鉄烏丸線で営業運転を開始した[1]。以後、5820系9020系・9820系といった系列が幅広い線区で導入された[1][3]。ただし、2017年4月時点では名古屋線区には1編成も導入されていない[5][* 1]

けいはんな線の開業の際に導入された7020系は車体構造や台車設計こそ全くの別設計であるが座席構造などがシリーズ21に準じた設計で、主要機器もシリーズ21の設計を一部踏襲している。ただし、近鉄では公式には「シリーズ21」の一形式とはされていない[1][2][3]

これらの形式は下二桁を20とし、番号は21(大阪線は51)からスタートしている。

「シリーズ21」として2000年グッドデザイン賞・2001年鉄道友の会ローレル賞受賞[1][2][3]。5820系は5800系に続き、L/Cカーとしては2代続けてのローレル賞受賞となっている[1][2][3]

車体デザイン[編集]

車体材質は7020系を除いてアルミニウムダブルスキン構造を採用しており[3][4]、車体の塗装は1986年の3200系以降で採用されていたシルキーホワイトにマルーンレッドのツートンカラーから、車体上部をアースブラウン[1][4]、車体下部をクリスタルホワイトのツートンカラーに[1][4]、サンフラワーイエローの帯[1][4]を巻いた「シリーズ21」専用色となり、車体前面はブラックフェイスとなった[1][4]

車体前面部の行き先案内表示機と車両編成番号は車体洗浄時を考慮して大型ガラスの中に収めており[1][4]、前面側面共に種別表示は従来からの幕式表示機、行き先表示にLED式表示機を採用している[1][4]

この他にも、全車両が製造時から連結部に転落防止幌を標準装備している[1][4]

車内インテリア[編集]

内装面では5800系で採用された明るいグレーを基調とした内装材を一部改良の上で本格採用し、車内空間に落ち着きを持たせた。乗降扉の窓ガラスには複層ガラスを採用し車内の保温性を高め、扉間の側窓には固定式で大型1枚のものを採用したほか、高さを3段階としたつり革や、扉間の6人掛けのバケットシートを採用した[1][3]。また、5820系の車端部以外では戸袋部分の1人掛け優先座席が「らくらくコーナー」とされ、両側に肘掛が設置されている[1][3]。これらの座席は全て赤系を基調としたモケットで[4]、製造メーカーはロングシートが住江工業[6]、デュアルシートが天龍工業[7]となっている。

座席定員は従来車では扉間7人掛け・車端部5人掛けとされていたものを、長さはほぼそのままで6人掛けまたは4人掛けと変更された[1]。1人あたりの座席幅も430mmから485mmと、従来よりも格段に広くなった反面、座席定員は1両あたり10 - 18名減となった。

移動制約者対応として各車両1箇所に車椅子スペースを整備し、通常は立席スペースにも使用可能なように背もたれ用の「パーチ」が取り付けられている[1]

主要機器[編集]

従前の近鉄では、同一仕様の主電動機を搭載しても制御装置のメーカーで車両形式を分けることがあったが、シリーズ21では特に区別していない[3]。そのため、同一形式に三菱電機製の制御装置と日立製作所製の制御装置が混在する[* 2]。また、最高速度も従来では110km/hまでであることが多かったが、シリーズ21からは120km/hに統一されている[* 3][2][3][4]起動加速度も従来車の2.6km/h/s(MT比や車両形式により前後する)から3.0km/h/sに向上した[4]。ただし、在来車との併結時の際には2.3km/h/s - 2.6km/h/sに落とされる。台車は22000系以降の近鉄車両では一般的な積層ゴムブッシュ片側軸箱支持式のボルスタレス台車を標準としている[3][4]。 ブレーキ方式は電気指令式を採用しており、3220系以外は電磁直通ブレーキ式の従来車と連結可能とするため、ブレーキ指令読替装置を装備している[4]

集電装置は、下枠交差式とシングルアーム式が編成ごとに混在しており、下枠交差式のものは、廃車になった車両のものを再利用しているものもある。3220系のモ3220形、9020系、6820系はパンタグラフを2基装備し、シングルアーム式の配置は他社でよく見られる「< >」ではなく、「< <」の配置とされ、22600系以降の特急車両にも踏襲された。

奈良・京都線用の5820系・9020系・9820系については阪神電鉄直通運転対応工事を行い、同社用のATS列車種類選別装置の取り付けを完了した[1][3][4]。これにより狭軌用の6820系以外の形式は他社線に乗り入れることとなった[1][3][4]

シリーズ21投入の影響[編集]

車齢が高く、老朽化の進んだ扇風機装備車・ラインデリア装備車の代替という位置づけで投入されたが[2]、上記の阪神との直通運転を行うため、奈良線系統に大部分が投入されている[3][4]。その結果、奈良線系統で余剰となった界磁チョッパ制御装置車が大阪線系統や名古屋線系統に転属する車両が発生している。

車両[編集]

標準軌線
  • 3220系(京都市営地下鉄烏丸線直通運転に対応)[1]
  • 5820系(L/Cカー、奈良線所属車両は阪神電気鉄道直通運転に対応、大阪線所属車両はサ5550形・ク5750形に車椅子対応トイレ装備)[1][4]
  • 9020系(奈良線所属車両は阪神電気鉄道直通運転に対応)[1]
  • 9820系(阪神電気鉄道乗入対応)[1]
狭軌線
第三軌条方式

運用路線[編集]

標準軌線
狭軌線
第三軌条線
備考

なお、2016年時点では名古屋線での定期運用はないが、2003年4月のイベント「きんてつ鉄道まつり」での展示で5820系5852Fが名古屋線塩浜駅まで入線したことがある。志摩線信貴線には定期運用での入線実績が無いが、5820系のみ団体運用で志摩線に入線する事がある。

脚注[編集]

出典
  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai 『近鉄時刻表 2009年3月20日ダイヤ変更号 』「The Densha 30 」p.46・p.47(著者・編者 近畿日本鉄道、出版・発行 同左)
  2. ^ a b c d e f g h 近畿日本鉄道のひみつ p.114・p.115(発行者 小林成彦、編者・発行所 PHP研究所 2013年)ISBN 978-4-569-81142-0
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 『近畿日本鉄道完全データ』 (発行 メディアックス 2012年)p.52・p.53・p.59・p.63・p.66・p.70 ISBN 9784862013934
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 『私鉄車両年鑑2012 大手15社 営業用車両完全網羅』(発行 イカロス出版 2012年)p.25・p.28・p.32・p.36 ISBN 978-4-86320-549-9
  5. ^ 鉄道ファン』2017年8月号 交友社 「大手私鉄車両ファイル2017 車両配置表」
  6. ^ 住江工業公式ホームページ「鉄道部門」
  7. ^ 天龍工業公式ホームページ「沿革」
注釈
  1. ^ 試験走行や乗務員訓練、塩浜検修車庫でのイベント開催の回送による入線実績はある。
  2. ^ 3220系・6820系は現時点で日立に統一されている。
  3. ^ 運転最高速度は6820系が100km/hの他は、105km/hおよび110km/hで運転。

参考文献[編集]

  • 『近鉄時刻表 2009年3月20日ダイヤ変更号 』「The Densha 30 」p.46・p.47(著者・編者 近畿日本鉄道、出版・発行 同左)
  • 『近畿日本鉄道のひみつ』 p.114・p.115(発行者 小林成彦、編者・発行所 PHP研究所 2013年)ISBN 978-4-569-81142-0
  • 『近畿日本鉄道完全データ』 (発行 メディアックス 2012年)p.52・p.53・p.59・p.63・p.66・p.70 ISBN 9784862013934
  • 『私鉄車両年鑑2012 大手15社 営業用車両完全網羅』(発行 イカロス出版 2012年)p.25・p.28・p.32・p.36 ISBN 978-4-86320-549-9

関連項目[編集]

外部リンク[編集]