鮮魚列車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
近鉄の「鮮魚列車」
(2007年8月8日 松阪駅付近)

鮮魚列車(せんぎょれっしゃ)とは、近畿日本鉄道(近鉄)が運行する、行商のための団体専用列車行商専用列車)。

概要[編集]

近鉄では、魚介類を一般列車に持ち込むと魚臭など他の客の迷惑になるため、「伊勢志摩魚行商組合連合会」のための専用車両・列車を仕立てることになり[1]1963年9月21日ダイヤ変更より「鮮魚列車」として魚介類行商人のための団体専用列車の運行を開始した(駅ホームの案内や車両の表示は「鮮魚」「貸切」)[1]。連合会の会員以外の一般客は乗車することはできない[1]。連合会はこの鮮魚列車を運行開始した1963年に結成されたもので、入会金・会費を払い入会した会員は、利用時に乗車券(定期券)とともに近鉄から承認された会員証を所持するほか、鮮魚を運ぶための手回り品切符も必要になる[1]

車内には関係者数名を除いて、乗客はほとんど乗っていないが、伊勢・志摩の新鮮な魚介類が入った発泡スチロール段ボールの箱などが積み込まれている。連合会の規約で車内や座席を汚損しないように、魚介は「カン」と呼ばれるブリキの箱に入れることになっていたが、現在では発泡スチロールが使われるようになった[2]

早朝に宇治山田駅を出発して、およそ2時間半をかけて大阪へとやってくる。なお、朝は鮮魚列車より早い時間に運行される始発列車を乗り継いで伊勢地方から大阪へ向かう会員もいる(この場合も指定された列車・車両に乗る)[3]

停車駅[編集]

宇治山田駅 - 伊勢市駅 - 松阪駅 - 伊勢中川駅 - 榊原温泉口駅 - 伊賀神戸駅 - 桔梗が丘駅 - 名張駅 - 榛原駅 - 桜井駅 - 大和八木駅 - 大和高田駅 - 布施駅 - 鶴橋駅 - 大阪上本町駅[4][5]

1976年3月18日ダイヤ変更以前の急行の停車駅と同じである。 なお、特急快速急行などの通過待避のため、東青山駅河内国分駅などの待避可能な駅に停車することがある。その場合は運転停車扱いで、ドアは開かない[4]

車両変遷[編集]

1481系 2代目鮮魚列車

専用車両指定後を示す。初期には2200系初代1400系など一般車両や、それらを用途変更・改番した荷物電車が使用されていた[6]。1970年代後半から下記の初代車両が使用されるようになり、1983年に専用車両として改番された。

  1. 600系(2代目)[7](計6両改造・1983年(改番) - 1989年) - 吊り掛け駆動方式。下記カッコ内に各車両の改番歴を示す。
    • モ601(参急2200系デ2204→モ2204→事故復旧で車体新製しモ1421
    • モ602(元大阪線名古屋線特急車2250系モ2253)
    • モ603(元大阪線・名古屋線特急車2250系モ2257)
    • ク501(大軌1300系デボ1308→モ1308→事故復旧で車体新製しモ1321→電装解除によりク1321)
    • ク502(奈良電デハボ1350形デハボ1351→近鉄への合併でモ690形モ691→京都線橿原線特急車改装により683系モ683→電装解除によりク1322) - 本車両のみクロスシート
    • ク503(元大阪線・名古屋線特急車2250系ク3125)
  2. 1481系(通勤用1480系を専用車化改造・1989年3月 - 2001年11月11日[6]
  3. 2680系(元急行用通勤車を専用車化改造・2001年11月19日[8](または11月17日[6]) -)
    • モ2684 - モ2683 - ク2782 の3両編成1本。もとはクロスシート車であったがロングシートに改造済[6]

現状[編集]

近鉄以外の私鉄や国鉄で運行されていた行商人専用列車も、地方私鉄の相次ぐ廃線や合理化、行商人の減少で縮小し、2017年現在日本国内で運転されている鮮魚列車・行商専用列車は近鉄のみとなっている。

近鉄の「鮮魚列車」は、現在でも平日・土曜の朝に近鉄大阪線近鉄山田線の宇治山田駅→大阪上本町駅間で、夕方に大阪上本町駅→松阪駅間で運行が行われている。2015年現在のダイヤでは、上りは宇治山田6:09発→大阪上本町8:57着。下りは大阪上本町17:15発→松阪19:33着[9]

全盛期は200人を超える利用客がいたが[10]自動車の普及や行商人の高齢化(後継者不足)などにより、2008年度の時点では50名ほどに減少している[10]。「伊勢志摩魚行商組合連合会」の会員も2009年(平成21年)現在115名で、2000年(平成12年)の239名に比べて半減している[11]

車両は、2001年以降は上記の通り2680系3両編成が使用されており、専用車として赤茶色一色の塗装(先頭部は一部白帯あり。先代の1481系は車体側面にも白帯が巻かれていた[9])がなされている。先代の1481系までは「鮮魚列車」と行先を記載した鉄製の行先板(1970年代までは荷物列車を示す丸囲みの「荷」の表示であった)を用いていたが[6]、2680系では方向幕を装備し表示は単に「鮮 魚」となっている[6][9]。また、同車の定期検査中は座席にビニールシートで養生を施した2610系ロングシート車が代走することもある(この場合は行先板を用いる)[12]車両基地については、大阪では高安検車区(車両の所属も当区[13])、三重では明星検車区でそれぞれ待機する。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 山本(2015) P.40 - 41
  2. ^ 山本(2015) P.42
  3. ^ 山本(2015) P.27、31、42
  4. ^ a b 「鮮魚列車」知られざる全貌…ドアの開閉わずか1秒、大阪へひた走る - iza 産経デジタル 2014.1.13
  5. ^ 布施駅の停車については、山本(2015) P.44 - 45 参照。
  6. ^ a b c d e f g 『鉄道ピクトリアル』No.727 p.184-185
  7. ^ 初代は奈良線系で運用していた小型車
  8. ^ 山本(2015) P.46 - 47
  9. ^ a b c 山本(2015) P.44 - 45
  10. ^ a b 水産白書 > 平成20年度 水産白書 全文 > 平成20年度 水産の動向 > 第1部 平成20年度 水産の動向 > 第2章 平成19年度以降の我が国水産の動向 > 第2節 我が国水産業をめぐる動向 > (4)加工・流通業をめぐる動向 イ 水産物流通における動向 - 水産庁 2017年12月14日閲覧
  11. ^ 山本(2015) P.48
  12. ^ 近鉄「鮮魚列車」を一般車が代走railf.jp 2015年6月11日掲載
  13. ^ 交友社鉄道ファン』2017年8月号付録 大手私鉄車両ファイル車両配置表 平成29年4月1日現在

関連文献[編集]

  • 鉄道ピクトリアル電気車研究会 No.727 2003年1月臨時増刊号 p.184 - 185 小林庄三「鮮魚列車について」
  • 山本志乃『行商列車 <カンカン部隊>を追いかけて』創元社、2015年 - 同乗ルポと資料による詳細な歴史の説明がある。

外部リンク[編集]