マンボウ

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マンボウ
マンボウ
マンボウ Mola sp. B
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: フグ目 Tetraodontiformes
亜目 : フグ亜目 Tetraodontoidei
: マンボウ科 Molidae
: マンボウ属 Mola
: マンボウ Mola mola[1]
和名
マンボウ

マンボウは、フグ目マンボウ科マンボウ属に分類される魚類。

ウオノタユウ(瀬戸内海)、ウキ、ウキギ、ウキキ(浮木)、バンガ(以上東北地方)、マンザイラク(神奈川)、マンボウザメなど多数の地方名で呼ばれる。

マンボウ属の魚は、2017年の時点で「マンボウ」「ウシマンボウ」「カクレマンボウ」の3種類存在することがわかっており、日本近海で見られるのはマンボウとウシマンボウである。形態の似るヤリマンボウはマンボウ属ではない。

マンボウ(Mola mola)[編集]

Mola mola
保全状況評価[2]
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 VU.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: フグ目 Tetraodontiformes
亜目 : フグ亜目 Tetraodontoidei
: マンボウ科 Molidae
: マンボウ属 Mola
: M. mola
学名
Mola mola (Linnaeus, 1758)
英名
Ocean sunfish

後述の通りマンボウの分類は2010年以降急激に変化しており、下記のみならず参考文献においても、マンボウ(Mola mola)についての記述とされるものにウシマンボウやカクレマンボウのものが含まれる可能性がある。

形態[編集]

最大で全長333センチメートル、体重2.3トン[2]。現在生息している世界最大級の硬骨魚のひとつである。ただし、後述のとおり、大型の個体はウシマンボウである可能性がある。

体は側面から見ると円盤型、正面から見ると紡錘形をしている。背びれと尻びれは長く発達し、体の後部から上下に突き出しているが、多くの魚が持つ尾びれと腹びれは持たない。体の後端にある尾びれのような部分は、背びれと尻びれの一部が変形したもので、舵びれあるいは橋尾とも呼ばれる[3][4]。泳ぐときは背びれと尻びれの動きを同調させて羽ばたくように対称に動かすことで推進力を生み[5]、舵びれあるいは橋尾で舵をとる。

フグ目に属し、同目に特徴的な丸い目、小さな口、鳥のくちばしのような板状の歯、小さな穴状のエラ穴を持つ。腹びれと肋骨を持たないのも同目の特徴である。

皮膚は厚く粘液で覆われるとともに、おびただしい量の寄生虫が付着している[6]

生態[編集]

水面下に体を横たえるマンボウ
マンボウの稚魚。体に多数のとげを持つ

岸辺や近海に生息するフグが外洋に進出して適応進化したものであり、全世界の熱帯温帯の海に広く分布する。外洋の表層で浮遊生活をしていると考えられてきたが、近年[いつ?]の研究により生息の場は深海にまで及んでおり、海上で見せる姿は生態の一部にすぎないことがわかってきた。発信機をつけた追跡調査で、生息水深を一定させず、表層から水深800m程度までの間を往復していることが明らかにされている[7]。25%程度の時間を表層で過ごす個体がいる一方、別の個体は水深200m以深の深海にいる時間が長かった。水温の変化に影響を受けている可能性が考えられているが、外洋に生息する魚だけに生態はまだ謎が多く、詳しい調査が待たれる。

クラゲ動物プランクトンを食べるということは知られているが、胃内容物からは深海性のイカエビなどの残骸も発見されている。これまで海中を受動的に漂っているだけと考えられることが多かったが、これらの捕食するにはある程度の遊泳力が必要となる。近年[いつ?]、音響遠隔測定による調査で、海流に逆らって移動し得るだけの遊泳力を持つことが示されている[6]

時折海面にからだを横たえた姿が観察されることがあり、丸い体が浮かんでいる様が太陽のようであることから sunfish という英名がついた。この行動は、小型の魚やカモメなどの海鳥に寄生虫を取ってもらうため[8]、深海に潜ることによって冷えた体を暖めるため[9]、あるいは日光浴による殺菌が目的ではないかと考えられている。マンボウは勢いをつけて海面からジャンプすることもあり[10][注釈 1]、これも寄生虫を振り落とすためである可能性がある[6]

繁殖・産卵様式は定かでない(後述する通り、3億の卵を産むという情報があるが肯定されていない)が、卵巣内にさまざまな成熟段階の卵細胞があるため、複数回産卵すると考えられている[11]。稚魚は全身にとげがあり、成魚とは似つかない金平糖のような姿をしている[12]。一時的にとげが長くなりハリセンボンのようにもなるが、成長するにつれとげは短くなり、独特の姿に変わってゆく。

また、全長40cm程度の若い個体が群れを作ることも報告されている[13]

人間との関わり[編集]

刺し網・流し網・トロール漁などによる混獲により生息数が減少している[2][10]。特にアイルランドポルトガルでは網にかかる個体の減少が著しい[10]

ヨーロッパ(大西洋中東部・地中海北東部・黒海)個体群、地中海個体群
DATA DEFICIENT (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[2]
Status none DD.svg
メキシコ湾個体群
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[2]
Status iucn3.1 LC.svg
水揚げされたマンボウ

商業的に食用とされることは少ない[2]。一方でアジア、特に日本の一部と台湾で食用とされる[2][14]。日本では主に定置網で混獲され、専門的に狙う漁師は少ない[10]

美味とされるが鮮度が落ちやすく[10]、冷蔵冷凍技術の普及以前は市場流通は限られていた。鮮度が落ちると特有臭を放ち、水っぽくなる[10]現在[いつ?]は全国的に不定期入荷しているが、特に宮城県から千葉県にかけてと東伊豆三重県紀北町尾鷲市などは比較的流通が多い。紀北町には道の駅があり、フライ定食を提供している[10]

肉は白身で[10]非常に柔らかく、調理法は刺身や湯引きして肝臓(キモ)と和えて、あるいはから揚げ、天ぷらなどで利用される。味はあっさりとしており、食感は鶏肉のささみに似ている[10]はマン腸またはクジラと同様に百尋と呼ばれる。紀北町ではコワタと呼ばれる[10]。食感はミノに似て、他の部位より日持ちすることもあり、流通量が多い。 皮や目も食用となるが、ほとんど流通していない。

台湾では、5月ごろ海流に乗って東海岸に現れるため、定置網で捕り、食用にすることが盛んである。台湾のほとんどの水揚げが集中する花蓮市では日本語からの借用語曼波魚中国語 マンボーユー、台湾語 マンボーヒー)と呼び、5月に「花蓮曼波季」という食のイベントを行い、観光客に紹介している。この時期は台北の高級店でも料理を出す例がある。肉、軟骨、皮などをセロリなどの野菜炒めたり、フライスープにしたり、腸を「龍腸」と称して炒め物にしたりすることが多い。

「マンダイ」として切り身などが販売されるアカマンボウは、外観が似ているだけで別の魚である。

モントレー湾水族館

大きな体に愛嬌のある風貌で、水中を悠然とただよう姿はスクーバダイビングなどで人気が高い。水族館での飼育は一般的に困難であるが、日本では海遊館鴨川シーワールド名古屋港水族館などいくつかの水族館で飼育展示が行われている。飼育が難しい主な理由は泳ぎが下手なため自ら水槽の壁に体をぶつけて弱ってしまうこと、寄生虫が多いことなどである[15]。餌は、水面に顔を出したときにエビのミンチなどを直接口に入れてやる方式がよい結果を残しており、さらに水槽内にビニールやネットの壁をめぐらせてマンボウを守るなどの対策が取られるようになった[10][15]。ただし、飼育に適した小型の個体は手で触るだけで手の跡がそのまま付くほど皮膚が弱く、飼育が難しい事は変わらない。また飼育下で大きく成長した個体は施設に限界があるため、標識をつけて大洋に再び放される事が多い。国内での飼育記録としてはマリンピア松島水族館で飼育されていた「ユーユー」が1379日の記録を残している。

マンボウ属の分類史[編集]

マンボウ属にはかつて33種類のマンボウが報告されていたが、1951年に分類の見直しにより「マンボウ(Mola mola)」と「ゴウシュウマンボウ(Mola ramsayi)」の2種類まで絞られ、日本近海にいるのは「マンボウ」のみとされていた[16]

2009年、日本近海の標本も多く含めた世界中のマンボウ属の標本122頭のミトコンドリアDNAのD-loop領域の分子系統解析から、マンボウ属は少なくとも3種(group A/B/C)に分かれるという解析結果が得られた[17]。 日本近海ではgroup AとB(Mola sp. AとB)が見られ、group Bの形態がMola molaと一致するとされた[17][18]。これら分子系統解析の結果と用いられた標本の形態比較が並行して行われておらず、各グループの学名は特定できず更なる研究・比較検討が必要とされていたものの、2010年にM. sp. Bの標準和名を「マンボウ」とすることが提唱された[18]。その後、B種(マンボウ)の未確定だった学名は2017年末にMola molaに確定されている[1]

group Aも2010年よりウシマンボウという和名がつけられたが、これは従来日本にいないとされていたMola ramsayi(ゴウシュウマンボウ)と考えられていた[19]。2017年にゴウシュウマンボウと同種であると確認したうえで、和名はウシマンボウで、学名は別のシノニムMola alexandriniを正式な学名として確定されている[1][20]

南半球にのみ見られるgroup Cは、2017年に新種「カクレマンボウ(Mola tecta)」として記載された[21][22]

最弱ミームと反論[編集]

マンボウは異常に死にやすい生物というインターネット・ミームがあるが、多くが虚偽か、特別弱いというわけではない[23][24]。マンボウの研究家である澤井悦郎は、このミームについても研究しており、ネット上に書き込まれたのはWikipedia:マンボウ(本記事)に2010年より約3年間記述されていた『マンボウはこの時、着水の衝撃で死に至る事がある。』が最初だと断定している。ジャンプする様子は目撃されているが死ぬわけではなく、理由も含めて詳しい研究はない[25]

メスが一度に産むの数は3億個に達するという話[10]についても、澤井は「卵巣に3億の未成熟卵を持つ」という1921年の論文の記述が誤って伝えられたことを指摘している。実際は一度に生むわけではないと考えられ、またそもそも元論文が3億と推定した根拠自体も定かでないという。加えて、生き残る個体数が2匹という話もあるが情報源自体がわかっていない。すなわち産卵数も生き残る数も確かな知見がない[26][27]

マンボウにちなんだ命名など[編集]

出典[編集]

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  1. ^ a b c 日本魚類学会 シノニム・学名の変更 2017.12.5 [1]2017.12.5
  2. ^ a b c d e f g Liu, J., Zapfe, G., Shao, K.-T., Leis, J.L., Matsuura, K., Hardy, G., Liu, M., Robertson, R. & Tyler, J. 2015. Mola mola. (errata version published in 2016) The IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T190422A97667070. Downloaded on 20 December 2017.
    Rijnsdorp, A.D. & Papakonstantinou, C. 2015. Mola mola. The IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T190422A45141101. . Downloaded on 20 December 2017.
    Di Natale, A., Massuti, E., Oral, M., Kada, O., Golani, D. & Bilecenoglu, M. 2011. Mola mola. The IUCN Red List of Threatened Species 2011: e.T190422A8793012. . Downloaded on 20 December 2017.
    Tyler, J., Perez-Espana, H., Robertson, R. & Vega-Cendejas, M. 2015. Mola mola. The IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T190422A77281263. . Downloaded on 20 December 2017.
  3. ^ 『日本の海水魚』、p.718。
  4. ^ 矢野衛 「魚類の多様性と系統分類」『脊椎動物の多様性と系統』、p.52。
  5. ^ Watanabe, Y; Sato, K (2008). “Functional dorsoventral symmetry in relation to lift-based swimming in the ocean sunfish Mola mola. PloS ONE 3 (10): e3446. doi:10.1371/journal.pone.0003446. http://www.plosone.org/article/info:doi/10.1371/journal.pone.0003446. 
  6. ^ a b c Mola mola program: life history”. Large Pelagics Research Lab. 2011年8月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年1月28日閲覧。
  7. ^ Mola mola program: research results”. Large Pelagics Research Lab. 2011年7月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年1月28日閲覧。
  8. ^ Takuzo Abe and Keiko Sekiguchi (2012). “Why does the ocean sunfish bask?”. Commun Integr Biol. 5 (4): 395–398. doi:10.4161/cib.20376. 
  9. ^ Cartamil, Daniel P., and Christopher G. Lowe. (2004). “Diel movement patterns of ocean sunfish Mola mola off southern California”. Marine Ecology Progress Series 266: 245-253. doi:10.3354/meps266245. 
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n 藤原啓嗣「なるほどランド 謎多いマンボウ」中日新聞2016年4月3日付朝刊、ジュニア中日20ページ
  11. ^ 『マンボウのひみつ』138頁
  12. ^ 『動物分類学』、p.27。
  13. ^ Abe, Takuzo and Sekiguchi, Keiko and Onishi, Hiroji and Muramatsu, Kota and Kamito, Takehiko (2012). “Observations on a school of ocean sunfish and evidence for a symbiotic cleaning association with albatrosses”. Marine biology 159 (5): 1173-1176. http://www.oceansunfish.org/fulltext.pdf. 
  14. ^ Mola mola program: fishery”. Large Pelagics Research Lab. 2011年7月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年1月28日閲覧。
  15. ^ a b 村井貴史 「マンボウの飼育展示」『以布利 黒潮の魚』、pp.36-37。
  16. ^ 澤井悦郎 『マンボウのひみつ』ISBN 4-005-00859-3 岩波ジュニア新書、2017年、58頁
  17. ^ a b Yukiko Yoshita, Yusuke Yamanoue, Kotaro Sagara, Kenji Gushima, Hisato Kuniyoshi, Tetsuya Umino, Yoichi Sakai, Hiroaki Hashimoto, Kenji Gushima, "Phylogenetic relationship of two Mola sunfishes (Tetraodontiformes: Molidae) occurring around the coast of Japan, with notes on their geographical distribution and morphological characteristics," Ichthyological Research, Volume 56, 2009, Pages 232-244.
  18. ^ a b 山野上祐介・馬渕浩司・澤井悦郎・坂井陽一・橋本博明・西田 睦 「マルチプレックスPCR 法を用いた日本産マンボウ属2種のミトコンドリアDNAの簡易識別法」 『魚類学雑誌』 57巻 1号、日本魚類学会、2010年、27-34頁。
  19. ^ 『マンボウのひみつ』98頁
  20. ^ マンボウを襲った「バブル崩壊」 学名連発の挙げ句、10分の1に…[2]
  21. ^ マンボウの新種発見、125年ぶり、カクレマンボウ[3]
  22. ^ 記載論文に携わった澤井自身の解説も参照[4]
  23. ^ 「ジャンプして着水するとマンボウは死ぬ」って本当!? 水族館に聞いてみた”. 2015年11月24日閲覧。
  24. ^ https://withnews.jp/article/f0140903000qq000000000000000W00o0401qq000010767A
  25. ^ 『マンボウのひみつ』172-173頁
  26. ^ 野口みな子 「教えてマンボウ博士! 「3億個の卵→生き残るのは2匹」説はウソ? - withnews(ウィズニュース)」『』。2018年8月18日閲覧。
  27. ^ 『マンボウのひみつ』178頁
  • 中坊徹次・町田吉彦・山岡耕作・西田清徳編 『以布利 黒潮の魚』 大阪海遊館、2001年。ISBN 493141804X
  • 岡村収・尼岡邦夫監修 『日本の海水魚』 山と溪谷社、1997年。ISBN 4635090272
  • 松井正文編 『脊椎動物の多様性と系統』 裳華房、2006年。ISBN 4785358300
  • 松浦啓一 『動物分類学』 東京大学出版会、2009年。ISBN 9784130622165

注釈[編集]

  1. ^ 学者によれば「大きなマンボウなら確実に1m以上はジャンプできる」という[要出典]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]