JR東海383系電車

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JR東海383系電車
特急「しなの」クロ383形先頭車
特急「しなの」
クロ383形先頭車
編成 6両(標準編成)
4両・2両(増結編成)
MT比はいずれも1:1)
営業最高速度 130(曲線通過+35km/h) km/h
起動加速度 2.1 km/h/s
減速度 (非増圧)3.8km/h/s
(増圧時)5.1 km/h/s(常用最大)
編成定員 6両:44(グ)+311(普)=355名
4両:44(グ)+183(普)=227名
2両:112名(普通車のみ)
最大寸法
(長・幅・高)
21,300×2,850×3,3700 (mm)
(先頭車は22,200、貫通型は21,450)
車体材質 ステンレス
編成質量 6両:213.5t
4両:141.0t
2両:75.0t
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500V
架空電車線方式
編成出力 155kW×12= 1,860kW(6両編成)
主電動機 C-MT65形
歯車比 5.57
制御装置 VVVFインバータ制御 C-SC35形
GTOサイリスタ素子
台車 自己操舵機能付き制御振子ボルスタレス台車
ヨーダンパ付
C-DT61・C-TR245A
制動方式 回生発電併用電気指令式ブレーキ
抑速ブレーキ付き
保安装置 ATS-ST
ATS-PT
製造メーカー 日本車輌製造
川崎重工業
日立製作所
備考
Wikipedia laurier W.png
第36回(1996年
ローレル賞受賞車両

カテゴリ / テンプレート

383系電車(383けいでんしゃ)は、1994年平成6年)に登場した東海旅客鉄道(JR東海)の直流特急形車両

概要[編集]

中央西線 - 篠ノ井線系統の特急列車用として、1972年(昭和47年)から使用され、老朽化が進んだ381系電車を置き換える目的で開発された振子式電車である。曲線通過時の車体傾斜にコンピュータ制御を採り入れた制御付自然振子方式を採用し、自然振子方式の381系に比べ曲線通過性能や乗り心地[1]を改善させた。

1994年(平成6年)8月に試作車両が落成し、各種試験走行の後1995年(平成7年)ゴールデンウィークより臨時特急「しなの」で営業運転を開始した。1996年(平成8年)12月より量産車が落成し、定期列車で本格的に運用を開始した。1995年通商産業省(現・経済産業省)グッドデザイン商品(現・日本産業デザイン振興会グッドデザイン賞)選定、1996年鉄道友の会ローレル賞受賞。製造は日本車輌製造川崎重工業日立製作所

仕様・構造[編集]

車種体系[編集]

編成中の電動車と付随車が同数となるMT比 1:1 の列車組成とし、電動車は全て偶数向き(東海道本線上での下り神戸寄り)に連結される。主回路を構成する電装機器をすべて1両の電動車に搭載する 1M 方式を採用し、各車両の形式はすべて「383」である。偶数形式(382形)は存在しない。

車体[編集]

ステンレス製の軽量構体を採用し、運転台を含む前頭部のみ普通鋼製である。外部塗色はステンレス地肌の無塗装で、車体側面中位にピンストライプ様の意匠としたダークグレーの帯を、正面 および 客室窓直下の車体全周にオレンジ色の帯を配する。客室窓および正面窓枠周囲は黒色である。客用扉は、主に自由席として使用する車両には片側2か所、他の車両は片側1か所に設ける。車体断面は客窓部分のみが垂直で、屋根肩と窓下裾部を車体傾斜に備えて大きく絞っている。

輸送状況の変化に応じ複数の編成を併結・切り離しする運用方をとるため、中間に連結する必要のある運転台付車両の前頭部には貫通路[2]が設けられ、貫通扉として両開き式のプラグドアを備える。常に長野寄り先頭に連結される運転台付グリーン車クロ383形(基本番台)のみは貫通扉を設けず、先頭部には前面展望に配慮したパノラマ様式の座席を設ける。

内装は、グリーン車は青色基調、普通車はグレー基調の配色である。従来車両に比べ居住空間の拡張がなされ、座席は前後の間隔(シートピッチ)をグリーン車で 1,200 mm 、普通車で 1,000 mm に拡大したほか、座面の幅もグリーン車で 460 mm 、普通車で 455 mm を確保している[3]。側窓は天地寸法を 950 mm に拡大している。

バリアフリー対応として、モハ383形(基本番台)に車椅子対応設備を設けるほか、客用扉にドアチャイムを設置する。

制御系・電装系[編集]

振子機構動作中

主回路制御はVVVFインバータ方式を採用し、整流素子GTOサイリスタを用いた主変換装置は東芝製である。集電装置はシングルアーム式パンタグラフのC-PS27形で、いずれもJR東海の在来線用車両では初の採用である。

曲線通過対策として搭載された本系列の車体傾斜機能は、台車に搭載したベアリングガイド式の車体傾斜機構をコンピュータ制御の空気シリンダで動作させる制御付き自然振子方式[4]である。車体傾斜を曲線走行時の超過遠心力のみに依存する381系の自然振子方式にみられた「振り遅れ」「揺り戻し」を解消し、乗り心地を改善して曲線通過速度の向上を図った。最高速度は 130 km/h 、曲線通過速度は最大で本則+35 km/h(半径600 m 以上)である。

パンタグラフは車体の屋根に直接搭載され、制御付き振子機能の使用は架線の対策がなされた名古屋 - 長野[5]に限られる。パンタグラフ折りたたみ高さは 3,890 mm まで下げられ、建築限界が中央本線中津川駅以東より小さい身延線への入線も振子機能を停止した条件下で可能である[6]

台車[編集]

C-DT61形台車
C-DT61形台車
C-TR245形台車
C-TR245形台車

枕バネに空気バネを用いたボルスタレス台車 C-DT61 形(動力台車)C-TR245 形(付随台車)で、軸箱支持は円錐ゴム支持、振子装置としてベアリングガイド式の車体傾斜機構をもつ。曲線通過時に線路への横圧を抑えるための機構として、片側の軸箱(車体端側)の支持剛性を柔らかい設定として車軸を常に線路と直角に保つ自己操舵機構を搭載する。

ブレーキ装置[編集]

回生発電ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキである。発電ブレーキを搭載するのは、列車本数の少ない区間では回生ブレーキが機能しないこと(回生失効)があるためである。

その他設備[編集]

保安装置ATS-STとATS-PT形を搭載する。

補助電源装置は静止形インバータ (SIV) のC-SC36形、電動空気圧縮機 (CP) は静粛性に優れるスクロール式を採用する[3]

形式別概説[編集]

クロ383形
運転台をもつグリーン車で、設備の差異で以下の区分がある。
  • 基本番台 (Tsc1)
    前頭部にパノラマタイプの客室を備え、貫通扉は装備しない。定員は44名である。6両編成の長野方先頭に組成される。
  • 100番台 (Tsc2)
    併結運用に対応するため前頭部に貫通扉を備える。4両編成の長野方先頭に連結される。
クモハ383形 (Mc)
運転台をもつ制御電動車で、前頭部に貫通扉を備え、客用扉は片側2か所に設ける。定員は60名である。各編成の名古屋方先頭に連結される。
モハ383形
運転台のない中間電動車で、6両および4両編成に組成される。設備の差異で以下の区分がある。
  • 基本番台 (M1)
    車椅子対応設備を有し、定員は59名、客用扉は片側2か所である。
  • 100番台 (M2)
    一般の座席設備のみを有し、定員は68名、客用扉は片側1か所である。6両編成にのみ組成される。
クハ383形 (Tc)
運転台をもつ制御車で、2両編成の長野方に組成される。車端部にトイレを設ける。
サハ383形
付随車で、6両および4両編成に組成される。設備の差異で以下の区分がある。
  • 基本番台 (T1)
    客用扉は片側1か所で、車端部に和式トイレを設ける。定員は64名である。6両編成にのみ組成される。
  • 100番台 (T2)
    客用扉は片側2か所で、車端部に洋式トイレを設ける。定員は60名である。

編成・運用[編集]

貫通型先頭車

神領車両区に本系列全車76両を配置し、以下の列車で使用する。

  • 「しなの」(大阪 ・名古屋 - 長野)
  • ホームライナー中津川」
  • 「ホームライナー多治見」
  • 「ホームライナー瑞浪」

編成の内訳は以下のとおりである。

383系 編成表
 
← 長野
名古屋・大阪 →
6両編成 A0編成 9本(54両) クロ383
-0
(Tsc1)
モハ383
-0
(M1)
サハ383
-0
(T1)
モハ383
-100
(M2)
サハ383
-100
(T2)
クモハ383
-0
(Mc)
4両編成 A100編成 3本(12両) クロ383
-100
(Tsc2)
モハ383
-0
(M1)
サハ383
-100
(T2)
クモハ383
-0
(Mc)
 
2両編成 A200編成 5本(10両) クハ383
-0
(Tc)
クモハ383
-0
(Mc)
 


カーブを曲がる(中央本線 恵那 - 美乃坂本)

編成組成の例を以下に示す。

383系 編成表
 
← 長野
名古屋・大阪 →
6両で運転 6両(単独)  
4両 + 2両
8両で運転 6両 + 2両  
4両 + 2両 + 2両
10両で運転 6両 + 4両
6両 + 2両 + 2両
4両 + 2両 + 4両

基本編成である6両編成と増結用編成である4両編成・2両編成の走行距離を極力均等化するため、4両編成+2両編成で組成された定期運用が存在する。かつては季節列車格下げ以前の夜行急行ちくま」での運用があったほか、「セントラルライナー」の輸送力不足対応として、専用の313系8000番台を追加製作するまでの短期間、373系とともに使用された例がある。

2007年に臨時・波動用として残存していた381系が廃車されたため、繁忙期に大糸線白馬駅まで乗り入れる臨時「しなの」81・84号も383系A101 - A103編成での運行に変更された。

脚注[編集]

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  1. ^ 381系は日本国有鉄道(国鉄)設計・製造の唯一の営業用振り子式車両であったが、車体傾斜を遠心力のみに依存する自然振子式は曲線に進入してから車体が傾くまでに時間差があり、車両による傾斜のタイミングや角度の差異との相乗効果で乗り物酔いを誘発しやすいとの評価があった。
  2. ^ の連結・解放は手動で行う。
  3. ^ a b 鉄道ジャーナル』1994年11月号、鉄道ジャーナル社、1994年、 86-87頁。
  4. ^ 予め走行する路線の線形データを車上装置に記録させ、速度発電機からの速度信号と地上のATS地上子の電波信号を受信して、車上装置に記録した情報を元に距離演算して列車が路線のどの地点にいるかを判断し、カーブ前後で車体傾斜角を制御する方式。カーブ内では自然振子方式と同様に、超過遠心力により傾斜を維持する。本系式のみならず、制御付き自然振り子方式を採用している他の系式もほぼ同じである。
  5. ^ 381系と同一の区間設定である。時系列的に見れば架線への対策が「既になされた」区間に用いる車両であるから、8000系などのような車体傾斜時にパンタグラフを架線に追従させる装備は不要である。
  6. ^ 皇族の御乗用列車として、身延線で使用された事例がある

外部リンク[編集]