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新幹線955形電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
新幹線955形電車
カスプ型(博多方面先頭車)
ラウンドウェッジ型(東京方面先頭車)
基本情報
運用者 東海旅客鉄道
製造所 三菱重工業日本車輌製造川崎重工業日立製作所
製造年 1994年
製造数 1編成6両
運用終了 2002年1月
廃車 2002年2月1日
主要諸元
編成 6両編成(全電動車
軌間 1,435 mm
電気方式 交流25,000 V・60 Hz
最高速度 443.0 km/h(記録)
自重 36 t (955-4を除く)
32 t (955-4)
編成重量 212 t
全長 25,000 mm
全幅 3,100 mm
全高 3,300 mm
台車 ボルスタレス台車
主電動機 かご形三相誘導電動機
主電動機出力 405 kW (連続定格)
500 kW (15分間)
歯車比 2.265
編成出力 9,720 kW (連続)
12,000 kW(15分間)
制御方式 GTO-VVVFインバータ制御
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955-6形 ラウンドウェッジ型先頭車の速度記録エンブレム(2006年7月23日)
955-6形 ラウンドウェッジ型先頭車の側面エンブレム(2006年7月23日)

新幹線955形電車(しんかんせん955がたでんしゃ)は、1995年に登場した東海旅客鉄道(JR東海)の高速試験電車である。愛称は300X

リニアモーターカーを除く鉄道では日本最速の最高時速443.0kmを記録した。

背景

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国鉄分割民営化から間もない1992年(平成4年)3月に東海道新幹線で最高速度を270 km/hに向上させた300系が「のぞみ」として営業運転を開始し、翌年には営業区間を山陽新幹線博多駅まで延伸させた。この300系の開発の源流は国鉄時代から行われていたボルスタレス台車やVVVFインバータ制御の開発にまでさかのぼることができ、新しい車両の開発には膨大な時間が必要となる[1]

そこで300系試作車が落成したばかりである1990年(平成2年)に、より良い鉄道サービスを提供する上で間断のない技術開発が必要であるとの考えから、レール・車輪方式による理想的な高速鉄道の開発を行うために製作されたのが本形式である[1]

営業運転に供することは当初から考えられていない、純然たる試験車(JR東海では唯一)として設計され、曲線や勾配で高速試験走行に向いていない東海道新幹線区間で高速走行試験を行うことから、加速力を増加させている[1]

構造

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車体はアルミニウム合金製のボディーマウント構造を採用しているが、次世代の車両製造時のデータ収集のため車両ごとに製造方法を変えて製作された。また、先頭車形状が東京方と博多方で異なり、それぞれラウンドウエッジ型、カスプ型と呼ばれ、比較のため入れ替えることができるようになっていた。

力行主回路はVVVFインバータ制御で、素子GTOサイリスタを採用し連続定格出力405 kW主電動機を駆動する。主変圧器は軽量化のためアルミニウム製のコイルを使用。6両編成で全車両電動車である。電機品は三菱電機東芝富士電機の3社が製作している[2][3][4]

台車セミアクティブサスペンション付きのボルスタレス台車を採用する。3・6号車の台車には鉄道総合技術研究所(鉄道総研)によって開発された油圧シリンダ式の車体傾斜装置(最大傾斜:3度)を搭載する[5]。なお、台車支持位置が高い(空気ばね支持高さ:レール面上1,700 mm)ため車内床の一部が盛り上がっていた[1]軸距は300系比500 mm延長である3,000 mmとした[1]。これは、鉄道総研による台上試験の結果、蛇行動限界速度が大幅に拡大されたことを確認できたためである[1]

なお、パンタグラフから発生する騒音を低減するため、ワイングラス型の大型のパンタグラフカバーが装着されていた。このタイプのパンタグラフカバーは、700系9000番台で、「300X」で試作されたタイプから脚部を省いたタイプのカバーを採用したが、カバーが逆に騒音源となっていたことが試験の過程で判明し、量産車では不採用となった。955形の試験走行の過程ではシングルアームパンタグラフなども試され、その他様々な形状のカバーが試されている。

編成

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編成記号はAであった。

955-1
1号車。博多方の制御電動車。空気抵抗を減少させるため、風洞実験とCFDによって先頭形状はカスプ型とされた[6]。車体は航空機の技術をベースとし、ジュラルミンリベット結合で製作した[6]。製造は三菱重工業名古屋航空宇宙システム製作所が担当した[6]
955-2
2号車。中間電動車でパンタグラフを搭載。車体はアルミ中空大型押出形材を使用(後に700系に採用)。ダブルスキン構造。4号車955-4とともに日本車輌製造が製造を担当。窓が他の号車よりも大きいのが特徴
955-3
3号車。中間電動車。車体はアルミ大型押出形材をスポット溶接で製作(=300系と同じ)。シングルスキン構造。製造担当は川崎重工業
955-4
4号車。中間電動車。車体はアルミ中空大型押出形材を使用。ダブルスキン構造。(後年にパンタグラフを搭載)
955-5
5号車。中間電動車でパンタグラフを搭載。車体はアルミハニカムパネルを使用(=500系と同じ)。955-6とともに日立製作所が製造。(後年に新型パンタグラフを2回にわたって搭載)
955-6
6号車。東京方の制御電動車。先頭形状はラウンドウェッジ型。車体はろう付けアルミハニカムパネルを使用。

運用実績

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1996年(平成8年)7月26日未明、東海道新幹線米原駅 - 京都駅間で日本国内最速記録(超電導リニアを除く)443.0km/hを記録している[7][8](速度試験当時、東京方955-6形ラウンドウェッジ型が先頭だった)。その後廃車予定だったが、700系やN700系関連の技術開発、デジタルATCの試験などに使用され2002年(平成14年)1月に運用を終了し、同年2月1日付で廃車となった。

スラブ軌道の走行試験を行うため、山陽新幹線に乗り入れたことがある。また分岐器通過時の評価試験を主目的として、新横浜 - 東京間の往復運行や、営業時間中に静岡駅で折り返す特殊な運用を実施したこともあった。

保存状況

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中間車はすべて解体され現存しないが、先頭車2両が以下で静態保存されている。

脚注

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  1. ^ a b c d e f 『レイルマガジン』通巻138号、p.46
  2. ^ 三菱電機『三菱電機技報』1996年1月号トピックス「新幹線電車用電機品」 (PDF) 」p.16。
  3. ^ 東芝「東芝レビュー」 1995年3月号「新幹線用主回路システム」p.230。主変換装置、主変圧器、主電動機を製作した。
  4. ^ 富士電機「富士時報」1995年1月号「東海旅客鉄道(株)300X系新幹線試験車両用電気機器」 (PDF) 」p.42。
  5. ^ 『レイルマガジン』通巻138号、p.47
  6. ^ a b c 300X試験車両 (PDF) 三菱重工技報 第32巻第4号(1995年)、三菱重工業
  7. ^ “JR7社14年のあゆみ”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 9. (2001年4月2日) 
  8. ^ “JR東海300X 国内最高速再び更新”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 1. (1996年7月29日) 
  9. ^ 「JR年表」『JR気動車客車編成表 '03年版』ジェー・アール・アール、2003年7月1日、188頁。ISBN 4-88283-124-4 

参考文献

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専門記事
  1. ^ 地球環境保全への貢献”. 東海旅客鉄道. 2023年11月29日閲覧。