JR東海311系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search
JR東海311系電車
311系(G15編成・2006年)
311系
(G15編成・2006年)
基本情報
運用者 東海旅客鉄道
製造所 日本車輌製造(1編成)
日立製作所(2編成)
近畿車輛(4編成)
川崎重工業(8編成)
製造年 1989年 - 1990年
製造数 15編成60両
主要諸元
編成 4両 (2M2T)
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500V
最高運転速度 120 km/h
設計最高速度 120 km/h
起動加速度 2.0 km/h/s
編成定員 314人(立)+236人(席)=550人(新造時)
編成重量 122.7 t (新造時)
全長 20,000 mm
(先頭車: 20,100 mm)
全幅 2,966 mm
全高 3,970 mm
車体 ステンレス
台車 円錐積層ゴム式ボルスタレス台車ヨーダンパ付
C-DT56・C-TR241
主電動機 直流直巻電動機
C-MT61A形
主電動機出力 120 kW / 基
駆動方式 中空軸平行カルダン駆動方式
歯車比 16 : 83 (1 : 5.19)
編成出力 960 kW (2M2T)
制御方式 直並列組合せ抵抗制御
界磁添加励磁制御
制動装置 回生ブレーキ併用電気指令式ブレーキ
抑速ブレーキ
保安装置 ATS-ST形
ATS-PT形
EB装置
TE装置
テンプレートを表示

311系電車(311けいでんしゃ)は、東海旅客鉄道(JR東海)の直流近郊形電車。同社の新快速用車両として1989年から翌1990年にかけて製造された。

概要[編集]

1989年7月9日ダイヤ改正にあわせて登場した車両で、211系5000番台213系5000番台に続きJR東海が3番目に製造した電車形式である。本系列が登場したダイヤ改正では新しくターミナル駅として金山総合駅が開業し、東海道本線では豊橋駅 - 大垣駅間で新快速・快速が増発された。本系列はこれらの列車にあてるために新製されたものである[1]

構成はクモハ311形モハ310形サハ311形クハ310形の4形式からなる4両編成である。車体やシステムは211系電車5000番台に準じているが、前頭部の形状など一部に変更が加えられている。製造は日本車輌製造日立製作所近畿車輛川崎重工業の4社が担当した。

311系電車の編成
クモハ
311

Mc
モハ
310

M'
サハ
311

T
クハ
310

Tc'

  • Mc - 制御電動車 / M' - 中間電動車 / T - 中間付随車 / Tc' - 制御車

性能・仕様[編集]

車体構造[編集]

車体は211系と同様の軽量ステンレス鋼製である。先頭部は繊維強化プラスチック (FRP) 製で、前面に大形の曲面ガラスを使用、また曲面を強調したデザインとしたため100mm車体が長くなっている[1]

出入口は片側3か所ずつで、両開きとしている。客室の側窓は、戸袋窓を除き1段下降式の2連窓という形態が通常だが、一部編成では2連窓も固定式とされている(後述)。

車体に巻かれた帯の色はコーポレートカラーがベースになっており、前面はアイボリーのFRPにオレンジ色の帯で、側面にも窓下および幕板部にオレンジ色の帯を配している。前面および側面窓下の帯は白色の縁取りがある。

主電動機・制御装置・台車[編集]

(東海道本線大垣-岐阜間、1996年3月29日)

この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。
C-DT56形台車(モハ310形)
C-DT56形台車(モハ310形)
C-TR241形台車(クハ310形)
C-TR241形台車(クハ310形)

搭載する主電動機は211系と同型の直流直巻整流子電動機(120kW、社内形式C-MT61A形)で、電動車1両あたり4基搭載する[2]。最高速度は120km/hである[1]

制御方式直並列組合せ抵抗制御界磁添加励磁制御[1]、制御装置の形式はC-CS57A形である[3]。補助電源装置はブースタ式コンバータ (SCV) 方式で、制御方式とともに211系5000番台で実績のある方式を採用している[1]

台車空気バネ式の軽量ボルスタレス台車[2]、形式は電動車用がC-DT56形、付随車用がC-TR241形である。いずれも高速運転に対応するためヨーダンパが取り付けられている[1]

ブレーキ方式は、電気指令式である[1]回生ブレーキ抑速ブレーキを搭載するほか、110km/h以上のブレーキ初速度で作用する増圧システム(15%増圧)も付加されている[1]。その他にも保安ブレーキとして直通予備ブレーキを搭載し、滑走検知ブレーキ・耐雪ブレーキの準備工事が新造時より行われている[1]。基礎ブレーキ装置は、C-DT56形が片押し式踏面ブレーキを、C-TR241形が片押し式踏面ブレーキとディスクブレーキを装備する[4]

車内仕様・サービス設備[編集]

座席

内装はグレー系の色調で統一されている[1]。客室の座席はすべてクロスシートで、出入口脇と車端部は固定式、それ以外の中央部は転換式のクロスシートが配置されている[1]。座席間隔(シートピッチ)は910mmで、ドア間に6列、車端部に2列のクロスシートが並ぶ。転換式クロスシートは213系5000番台に使用されたものを基本にシートバックの高さを約30mm高くし、座り心地の向上を図っている[1]。車内照明も、117系と同様にカバー付きで客室全長に亘るものとされた。

クハ310形には和式トイレが設置されている。このトイレの外側壁面にはJRの普通車両では初めてとなるテレホンカード公衆電話が設置されたが[1]2007年3月ダイヤ改正で使用停止とされ撤去された(屋上のアンテナは撤去されていない)。

車内の情報サービスを充実させるため、発光ダイオード (LED) 式の車内情報案内装置が各車両の妻仕切壁に取り付けられている。この装置には、列車種別・行先・停車駅名・乗り換え案内・営業案内が表示され、デジタル時計と一体化されている[1]

先頭車両の前面貫通扉上方には列車種別表示器が、その右側には行先表示器が設置されている。また、側面にも左側が列車種別・右側が行先と独立して動く表示器が設置されている。

冷房装置は当初、全車が集約分散式のC-AU711D形 (18,000kcal/h) 2基を搭載したが[3]、先頭車についてはより能力の大きいC-AU713形に交換された。工事は1996年度までに完了している[3]

その他の設備[編集]

集電装置
集電装置はクモハ311形に取り付けられている。製造時は、折りたたみ高さの低い菱形パンタグラフ(C-PS24A形)を搭載するとともに、取り付け部の屋根を20mm切り下げた低屋根構造とし、身延線を含むJR東海の全ての電化在来線で運用可能な仕様とされた[1]
連結器貫通幌
先頭車の先頭部に、自動解結装置電気連結器が付属する密着連結器を装備する[1]。中間部の連結器はすべて半永久連結器で、軽量化とコストの削減を図っている[1]。貫通幌はクモハ311形の先頭部に取り付けられている[3]
保安装置
保安装置として、自動列車停止装置ATS-ST形)・緊急列車停止装置(EB装置)・緊急列車防護装置(TE装置)を装備する。

編成と形式[編集]

編成[編集]

列車番号表示器があるG1編成

本系列は1989年から1990年にかけて製造された。G1 - G5編成、G6 - G13編成、G14・G15編成で形態が異なる。

1989年7月のダイヤ改正にあわせてG5編成までの20両が登場。1989年後期製のG6編成からは、先頭車前面の列車番号表示器が省略され、車外放送用のスピーカーの取付位置が車体吹寄せ部から屋根上の冷房装置カバー内に移り、カバー側面のスリット形状が変更された。列車番号表示器は車両番号を表しているだけで、列車番号表示器としては機能していない。

1990年製の最終増備車2本(G14・15編成)は、中央部ドア付近の8か所と車端部の窓が当初から固定式とされた。窓構造を除いた形態変更は、同時期製造の211系5000・6000番台や213系5000番台にも踏襲されている。なお、1990年製の2本と同様にその他の編成も中央部ドア付近の8か所と車端部の窓は固定式に変更されている。ただし、落成時点の構造を生かしていることもあり、外観からは隣の開閉可能な窓との区別がつかない。

311系 編成表
 
(名古屋駅基準)
← 浜松・武豊・多治見
米原 →
形式 クモハ311
(Mc)
モハ310
(M')
サハ311
(T)
クハ310
(Tc')
編成 G1 1 1 1 1
G15 15 15 15 15

個別形式[編集]

本系列に該当する形式には、以下の4つがある。

クモハ311形
上り方(名古屋駅基準で浜松駅武豊駅方)の制御電動車 (Mc) である。パンタグラフと主制御装置を搭載する[1]
最大寸法は長さ20,100mm、幅2,966mm、高さ3,970mmで、自重は35.3t(いずれも新造時、以下同じ)[1]。定員は133人、座席定員は56人である。
モハ310形
クモハ311形とユニットを組む中間電動車 (M') である。コンバータ装置 (SCV) や電動空気圧縮機 (CP)、蓄電池を搭載する[1]
最大寸法は長さ20,000mm、幅2,966mm、高さ3,970mmで、自重は33.6t[1]。定員は143人、座席定員は64人である。
サハ311形
中間付随車 (T) である。
最大寸法および定員・座席定員はモハ310形と同一。自重は24.2t[1]である。
クハ310形
下り方(名古屋駅基準で米原駅方)の制御付随車 (T'c) である。トイレがある。
最大寸法は長さ20,100mm、幅2,966mm、高さ3,977mmで、自重は27.2t[1]。新造時の定員は131人、座席定員は52人である[1]

2018年4月現在、4両編成15本の60両全車が大垣車両区に配置されている[5]

改造[編集]

車椅子スペース整備工事[編集]

車椅子スペース(クハ310形)

2003年8月から2005年12月にかけて、クハ310形全車に車椅子対応設備(車椅子スペース)の整備工事が実施された[3]。改造の対象は車両の1位側(乗務員室次位の山側)で、改造内容は以下のとおりである。

  • 転換式クロスシート2脚を撤去し、扉脇の固定シートを移設。合わせて荷物棚を短縮。
  • 生じたスペースは普段立ち席となるので、これまではドア付近だけに設置されていたつり革を増設。
  • 壁に手すりとヒーターを新設。
  • この部分の側窓を固定式に変更[※ 1]

バリアフリー対応改造[編集]

313系登場後は本系列全車を対象に、2001年から転落防止幌が、2004年10月から2007年7月までにドアチャイムの新設工事が施工された[3]

313系4次車登場後には一部の編成において、同区分からのフィードバックで優先席のヘッドカバーとつり革の黄色のものへの交換・靴ずり部への黄着色追加が行われている。

その他改造[編集]

シングルアーム式パンタグラフに交換されたクモハ311-8

2006年6月から2008年7月にかけて[3]、パンタグラフを従来のひし形からシングルアーム式パンタグラフ(社内形式 C-PS27A形)へ交換された。2007年11月以降、一部の車両ではATS-PT形の取り付けが行われている[6]

運用[編集]

東海道本線

登場当初から東海道本線の新快速を中心とした運用で使用されていたが、1999年に後継車種の313系が投入されると主として浜松駅 - 岐阜駅間の普通列車が中心となったほか、113系に代わり静岡駅までの運用を開始した。また、313系との併結運用も多数組まれていた。313系の増備車両として5000番台が大量投入された2006年10月1日のダイヤ改正以降は、普通列車の運用にほぼ限定された形となっていたが、大垣車両区への出入庫および米原地区と浜松地区への送り込み回送兼用として2008年3月15日改正から1運用のみであるが新快速の運用が復活し[※ 2]、2016年3月26日ダイヤ改正からは一部に特別快速の運用が復活した。

静岡地区では豊橋駅 - 浜松駅・掛川駅間の区間運転列車を中心に運用されており、1999年12月ダイヤ改正からは静岡駅までの運用を開始したが、ダイヤ改正毎に運用の増加と減少および廃止と再度の運用設定を繰り返している。

岐阜駅以西においても米原駅 - 大垣駅間の区間運転列車を中心に運用されており、通常は313系2両を使用する美濃赤坂線では夜の最終のみ使用していたが、2012年3月改正で313系3000番台によるワンマン運転開始に伴い運用は消滅した。2016年3月26日のダイヤ改正では、JR西日本の221系6両と223・225系4両を使用した運用が本系列の運用に全て置き換えられた。

313系との併結はダイヤ改正毎に番台単位で消滅と復活を繰り返しており、2013年3月改正以降は本系列のみの単独運用の他に、飯田線車両の送り込み回送を兼ねて313系3000番台と併結した上り新快速の運用を開始している。2011年10月に神領車両区へ転属するまでは211系0番台との併結や、『ナイスホリデー天竜・奥三河』運用時のみ213系5000番台との併結もあった。なお、回送列車も含めて313系5000番台の6両固定編成や、313系でも神領区および静岡区所属車との併結は存在しない。

その他の路線

2015年3月に電化された武豊線でも、名古屋駅直通の区間快速を中心に使用されている。

2015年3月改正までは中央本線でも使用されており、2009年3月改正以降では平日は8両で多治見駅まで、土休日は313系300番台との併結で中津川駅までの快速を中心に、期間によっては「ナイスホリデー木曽路」として塩尻駅まで運転されることがあった。2012年3月改正で、313系300番台との併結運用は313系0番台に置き換えられたため、中央本線の運用は平日の多治見駅までとなり、2015年3月改正で消滅している。

臨時列車

定期運用がない飯田線関西本線には臨時列車としての入線実績があるが、身延線や愛知環状鉄道線への入線実績はない。

北陸本線田村 - 長浜間直流化直後の1991年から、臨時列車扱いで西日本旅客鉄道(JR西日本)管内の北陸本線琵琶湖線長浜駅まで乗入れたこともあった(列車名は「ナイスホリデー近江路」)。また、1989年からの一時期、静岡駅 - 浜松駅間の「花の木金号」にも一時期使用されたことがあった[7]

脚注[編集]

[ヘルプ]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x 『鉄道ファン』通巻341号
  2. ^ a b 『東海旅客鉄道20年史』 東海旅客鉄道、2007年、778頁。 
  3. ^ a b c d e f g 『JR電車編成表 2009冬』
  4. ^ 台車近影 C-DT56 C-TR241 / JR東海311系(鉄道ホビダス)
  5. ^ 交友社鉄道ファン』2018年7月号 「JR車両ファイル2018 JR旅客会社の車両配置表」 p.18 - p.21
  6. ^ 『鉄道ファン』通巻579号
  7. ^ 「「通勤ライナー」その生い立ちと現状」、『鉄道ピクトリアル』第747号、電気車研究会、2004年6月、 44-51頁。

注釈[編集]

  1. ^ 第14・15編成のように完全な固定窓の構造になった。
  2. ^ 2008年3月時点で快速としての運用は、平日3本・土休日に1本のみ。前者のうち2本は朝、一部区間(豊橋駅・大府駅 → 名古屋駅)のみ快速(区間快速)として運転し、名古屋駅から普通列車となるもの。残り1本は、深夜の豊橋駅 → 大垣駅間の新快速である。後者は中央本線の土休日快速(季節により「ナイスホリデー木曽路」)の送り込み運用(大垣駅 → 名古屋駅間運転)であった。

参考文献[編集]

  • 鉄道ファン』、交友社
    • 東海旅客鉄道株式会社車両部車両課「新車ガイド3 311系直流近郊形電車」、通巻341号(1989年9月号)、1989年
    • 付録小冊子「JR車両ファイル2018 JR旅客会社の車両配置表」2018年7月発行号
    • 「JRグループ 車両のデータバンク 2008/2009」、通巻579号(2009年7月号)、2009年
  • 東海旅客鉄道 『東海旅客鉄道20年史』 東海旅客鉄道、2007年
  • 『JR電車編成表 2009冬』、ジェー・アール・アール、2009年

関連項目[編集]

外部リンク[編集]