新幹線総合車両センター

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新幹線総合車両センター
新幹線総合車両センター
基本情報
日本の旗 日本
鉄道事業者 東日本旅客鉄道
帰属組織 新幹線統括本部
所属略号 幹セシ[1]
整備済み車両略号 SD
車両基地概要
敷地面積 477,880 m2
配置両数
電車 608両
合計 608両
備考 2022年4月1日現在のデータ
敷地面積は有価証券報告書の値[2]
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利府JCT付近から望むセンター外観

新幹線総合車両センター(しんかんせんそうごうしゃりょうセンター)は、宮城県宮城郡利府町に位置する東日本旅客鉄道(JR東日本)の新幹線車両基地。敷地そのものは利府町および仙台市宮城野区多賀城市にまたがっている。

主に東北新幹線で運用される車両が所属し、仕業交番検査といった日常的な整備から、当センター以外に在籍する車両も含む全般検査などの重整備、改造工事や新製車両の搬入・廃車解体に至るまで、JR東日本が保有する新幹線車両に関する総合的な業務が行われている。

概要[編集]

新幹線総合車両センター周辺の空中写真(2015年7月撮影の合成写真)
国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成

1982年昭和57年)の東北新幹線開業と同時に開設された。当初は車両の整備を行う仙台新幹線第一運転所と検査・修繕を行う仙台工場に分かれていたが、のちに統合され仙台総合車両所に改組。2004年平成16年)4月より現在の名称になった。JR東日本本体の従業員が約500名、関連・協力会社を含めると1,100名を超えるスタッフがこの車両基地に勤務し、新幹線の定時輸送・安全運行を支えている。勤務者が多いことから利便性を考慮し新利府駅が併設された。

全長3.7km、幅260mの広大な敷地を有し、仙台レールセンター・仙台新幹線保線技術センター・総合訓練センター等を併設している。砂押川が敷地中央を横切るため、堤防の高さをクリアする関係や地盤が軟弱である事を考慮して、車両検修建屋の大半はコンクリートパイル上に載る人工地盤に建設されている。

JR東日本が保有するすべての新幹線車両が、検査や修繕を受けるために定期的に当センターに入場する。また、標準軌改軌された在来線ミニ新幹線)区間で普通列車として運用される719系電車5000番台および701系電車5000・5500番台については、当初は当センターで全般検査などを受ける計画だったが、その後所属基地または重要機器のみ郡山総合車両センターで検査が行われることとなったため、当センターへ入場した実績はない。

山形新幹線福島 - 新庄間が運休となった場合は、山形・新庄行きの「つばさ」は仙台行きに変更し、仙台駅着後当センターまで臨時回送される。

設備[編集]

計画当初は全国新幹線鉄道網に基づいて建設され、国鉄が運営する東北・上越・北陸北海道新幹線オイルショック前の計画であり、実際は北陸・北海道新幹線の着工は当時は見送られた)で運用される車両 最大約2,500両の検修を想定し、仙台基地発足当初は約1,500両の検修規模を計画した[3]。しかし、オイルショックなどによる社会情勢の変化など(北陸新幹線など当時は建設見送り)から、仙台基地は最大約1,500両の検修規模に修正され、仙台基地発足当初は約1,000両の検修規模とした[3]

構内は砂押川を挟んだ南側に着発収容線群、ロングレールセンターや保線車両基地を、北側に仕業・交番検査庫や工場設備を設けている[3]

  • 着発収容線 - 21線→27線に増強
  • 仕業・交番検査線 6線(7 - 12番線。7・8番線は交番検査線、9番線は仕業検査線、10・11番線は仕業検査・交番検査兼用線、12番線は融雪専用線)
    • 建屋内、検査庫幅 47 m、16両編成に対応した延長435 m[3]

歴史[編集]

  • 1979年昭和54年)
    • 9月 - 仙台試験線管理所開設。
  • 1981年(昭和56年)
    • 4月1日 - 仙台工場発足。
    • 8月10日 - 仙台試験線管理所を改組し、仙台新幹線第一運転所発足。
  • 1987年(昭和62年)
  • 1990年平成2年)
    • 4月1日 - 仙台工場と仙台第一運転所を統合し、仙台総合車両所に改称。
  • 2003年(平成15年)
  • 2004年(平成16年)
    • 4月1日 - 新幹線総合車両センターに改称。
  • 2019年(平成31年)
    • 4月1日 - 新幹線統括本部の発足に伴い、仙台支社から同本部へ移管。

配置車両[編集]

2022年令和4年)4月1日現在の配置車両は以下の通り[1]

E2系

E2系電車(100両)

1000番台の10両編成10本(J66 - J75編成)が配置されている。
東北新幹線の臨時「はやて」(東京〜新青森、2021年を最後に運行されていない)・「やまびこ」(東京〜仙台)・「なすの」(東京〜那須塩原)に使用される。2023年3月のダイヤ改正まで運行していた上越新幹線とき」・「たにがわ」では原則として新潟新幹線車両センター所属の編成が使用されていた。
E5系

E5系電車(510両)

10両編成51本(U1 - U51編成)が配置されている。
東北・北海道新幹線はやぶさ」の大半の列車と、一部の「はやて」(盛岡・新青森 - 新函館北斗間)・「やまびこ」・「なすの」に使用される。
E926形

E926形電車(6両)

6両編成1本(S51編成)が配置されている。
新幹線電気軌道総合試験車「East i」。
軌道検測車E926-13が配置されていたが、2015年(平成27年)2月4日に廃車された。
E956形

E956形(10両)

10両編成1本(S13編成)が配置されている[4]
2019年(令和元年)5月に落成した高速運転試験車両。愛称は「ALFA-X」(アルファエックス)。
360km/h運転を目指して2019年5月から2022年(令和4年)3月にかけて、試験を実施する。

過去の配置車両[編集]

200系

200系電車

2階建て車2両連結の東北新幹線限定運用の16連H編成や新在直通併結向け10連K編成が配置されていた。2005年(平成17年)までにすべて廃車された。その後、敷地内に7両が解体されずに残されていたが、後に2両が再整備されて構内に保存されたほか、1両が2007年(平成19年)10月に開館した鉄道博物館さいたま市)に移設された。残る4両はしばらく留置されていたが、2010年(平成22年)3月にすべて解体された。
400系

400系電車

S4編成(L1編成)が配置されていた。のちに山形電車区(現・山形新幹線車両センター)へ移籍した。

E1系電車

2004年に新潟新幹線車両センターに移籍した。

E2系電車

S6編成(現・N1編成)、S7編成(J1→N21編成)が配置されていた。のちに長野新幹線運転所(現・長野新幹線車両センター)へ移籍した。
その他配置されていた0番台は、2016年(平成28年)3月までに新潟新幹線車両センターへ移籍し、その後2019年までにすべて廃車。一部編成の解体は仙台で行われた。
E3系

E3系電車

2019年(平成31年)3月16日付で0番台の6両編成2本(R21・R22編成)が秋田車両センター(現・秋田新幹線車両センター)より転入した。
東北新幹線やまびこ」・「なすの」として E5系電車と併結運転を行っていた。臨時列車として「はやて」として東京駅-盛岡駅間で運行されることもあった。
2020年10月以降、定期運用から離脱し[5]、2021年11月までにすべて廃車された[6]
E4系

E4系電車

P1 - P22編成が配置されていた。P9 - P19編成は2006年(平成18年)までに、P8, P20 - P22編成は2012年(平成24年)3月までに、P1 - P7編成は同年10月までに新潟新幹線車両センターへ移籍した。
E6系

E6系電車

量産先行車のS12編成が配置されていた。2014年(平成26年)2月27日に量産化改造と同時にZ1編成に改名され、秋田車両センターへ移籍した。
925形

925形電車

新幹線電気軌道総合試験車「ドクターイエロー」。6両編成2本(S1・S2編成)と軌道検測車1両が配置されており、軌道検測車については2編成が共用する形であった。E926形電車にその役目を譲り、2001年(平成13年)に全車廃車された。

952形・953形電車

フル規格用高速試験電車「STAR21」。952形(東京方4両)と953形(盛岡方5両)を連結した9両編成1本(S5編成)の形で配置されていた。1998年(平成10年)に廃車されたが、構内に2両が保存されている。
961形

961形電車

フル規格用高速試験電車。6両編成1本(S3編成)が配置されていた。1990年(平成2年)に廃車されたが、構内に両先頭車が保存されている。
E954形

E954形電車

フル規格用高速試験電車「FASTECH 360 S」。8両編成1本(S9編成)が配置されていたが、2009年(平成21年)9月7日に廃車された[7][8]
E955形

E955形電車

ミニ新幹線用高速試験電車「FASTECH 360 Z」。6両編成1本(S10編成)が配置されていたが、2008年(平成20年)12月12日に廃車された[9][8]

構内専用[編集]

912形ディーゼル機関車

当センター内での車両の入換に使用されるディーゼル機関車。912-4が配置されていた[10]

入換動車

当センター内での車両の入換に使用される小型ディーゼル機関車。機械扱いのため無車籍である。北陸重機工業製で、アント工業を経て納入されたもの[11]
1981年(昭和56年)から2005年までは協三工業製15t機を使用していた[11]

上記の他、建屋内専用の車両移動機(アント工業製など)が数機存在する。

新幹線車両基地まつり[編集]

1985年(昭和60年)から仙台工場の工場公開として始まり、翌年から新幹線車両基地祭りとして毎年夏季に開催されていたが、2019年には10月末に開催された。1985年に開催してから、東日本大震災が発生した2011年(平成23年)と新型コロナウイルス感染症が流行していた2020年 - 2022年を除き毎年開催されている。特に構内を走行する「体験列車」には多くの乗車希望者が列を作りさばききれなくなったため、2004年からは往復はがきによる事前申し込み制になった。PRコーナー等の年間来場者は約7万人[12]。開催期間中は、車両基地まつりの際に人数を限定して「シミュレーター室」を開放している。これは仙台地区在来線の乗務員訓練のために使われるもので、当センターではなく総合訓練センター管轄である。

新利府駅と当センターは新利府門を介し専用通路で直結しているが、通勤時間帯のみ開門し開門時間帯は守衛が常駐するため関係者以外は通路を利用できない。ただし、「新幹線車両基地まつり」の際は、来場者向けに一般開放され新利府門より当センターへの入出場が可能となる。基地まつり以外の日に来所し見学する場合は利府門の守衛詰所で受付をする必要があり、列車利用で行くには利府駅からの方が近い。

保存車両[編集]

構内に次の鉄道車両静態保存されている。

以下の車両も保存されていたが、解体または移送された。

脚注[編集]

  1. ^ a b ジェー・アール・アール編『JR電車編成表』2022夏 交通新聞社、2022年、p.12-15。ISBN 9784330028224
  2. ^ 第36期有価証券報告書 48頁 (PDF) - 東日本旅客鉄道
  3. ^ a b c d 日本鉄道運転協会『運転協会誌』1982年12月号東北・上越新幹線特集号「車両基地」pp.19 - 22。
  4. ^ JR東日本,E956形「ALFA-X」を報道陣に公開”. railf 鉄道ニュース (2019年5月10日). 2019年5月10日閲覧。
  5. ^ “さらば「初代こまちカラー」 定期運用廃止の元・秋田新幹線E3系 今後どうなる?”. 乗りものニュース. (2020年11月10日). https://trafficnews.jp/post/101639 2020年12月5日閲覧。 
  6. ^ 『JR列車編成表 2022夏』交通新聞社、2022、358頁。 
  7. ^ 『JR電車編成表2010冬』(交通新聞社)335頁。ISBN 9784330116099
  8. ^ a b ジェー・アール・アール編『JR電車編成表』2021夏 交通新聞社、2021年、p.12-15。ISBN 9784330025216
  9. ^ 「JRグループ 車両のデータバンク 2008/2009」『鉄道ファン』2009年7月号(通巻579号)特別付録 p.36、交友社、2009年
  10. ^ 「シリーズ 東北新幹線・2 新幹線の車両基地」鉄道ファン No.256(1982年8月号) p.67。
  11. ^ a b 「新幹線総合車両センターの入換動車」『トワイライトゾーン・マニュアル 14』 ネコ・パブリッシング、2005年、pp.46 - 51。
  12. ^ 南の玄関口 富合町 合併1年「(下)都市基盤の整備 新幹線基地…観光にも期待」熊本日日新聞 2009年10月5日) Archived 2009年10月18日, at the Wayback Machine.
  13. ^ 修復を終えたED78 1が『さつきまつり』で展示される”. 鉄道ファン (2016年6月6日). 2020年7月15日閲覧。

参考文献[編集]

  • 日本鉄道運転協会「運転協会誌」1982年12月号東北・上越新幹線特集号「車両基地」(鳥取 彰・国鉄 運転局計画課補佐)

関連項目[編集]

  • 日本の車両基地一覧
  • JR東日本テクノロジー - JR東日本グループに属する子会社で、旧社名は東北交通機械。当センター内に車両メンテナンス(主に全般検査関係)を担当する新幹線事業本部新幹線事業所と、当センターを含めた仙台地区各車両基地の機械設備メンテナンスを担当する設備機械事業本部仙台設備支店を置いている。
  • JR東日本テクノサービス - JR東日本グループに属する子会社で、当センター内に新幹線営業所を置き車両メンテナンス(主に仕業・交番検査関係)を担当する。