アンペア

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アンペア
ampère
ampere
雷光
記号 A
国際単位系
電流
組立 基本単位
定義 真空中に 1 メートルの間隔で平行に置かれた無限に小さい円形の断面を有する無限に長い 2 本の直線状導体のそれぞれを流れ、これらの導体の 1 メートルにつき千万分の 2 ニュートンの力を及ぼし合う直流の電流
語源 アンドレ=マリ・アンペール
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アンペア: ampere [ˈæmpɛər]、記号 : A)、は電流(量の記号、直流I[1][2] , 交流i )の単位であり[3][4]国際単位系(SI)の7つの基本単位の一つである。

アンペアはフランス語のアンペール(ampère)に由来するが、これは電流と磁界との関係を示した「アンペールの法則」に名を残すアンドレ=マリ・アンペールに因んだ命名である[5]

SIで定められた単位記号は"A"であるが、英語圏ではampと略記されることがある[6]

なお、起磁力(量記号: F , Fm )や磁位差(量記号: Um )の単位も同じ「アンペア」という名称であるが、これは電流の単位アンペアから組み立てられた組立単位であり、定義が異なる(アンペア回数を参照)。

クーロンとの関係[編集]

1アンペアは1クーロン毎秒に等しい[7]。アンペアは電荷の流量を表すのにも用いられる。電流を経験している全ての点について、通過する荷電粒子の数または粒子の電荷が増加するならば、その点における電流のアンペアの値も増加する。

アンペアをクーロン(アンペア秒)やアンペア時と混同してはならない。アンペアは電流の単位であり、クーロンは電荷の単位である。国際単位系においては、定電流・瞬時電流・平均電流はアンペアで表され、蓄えられるか、時間にわたって回路に通された電荷は、クーロンで表される。クーロンとアンペアの関係は、ジュールワットメートル毎時メートルの関係と同様である。

定義[編集]

アンペアの定義の説明

アンペールの力の法則英語版[8][9]によれば、電流が流れている2本の平行した針金の間には、電流の向きに応じて引き付けあうまたは反発する力が働く。この力がアンペアの正式な定義に用いられている。現行のアンペアの定義は以下の通りである。

アンペアは, 真空中に 1 メートルの間隔で平行に配置された無限に小さい円形断面積を有する無限に長い二本の直線状導体のそれぞれを流れ, これらの導体の長さ 1 メートルにつき 2 × 10−7ニュートンの力を及ぼし合う一定の電流である。

[3][10]

この定義は、1948年の第9回国際度量衡総会(CGPM)で採択されたものであり[11]1954年の第10回 CGPM で電流の基本単位として正式に承認された[12]。この定義により、結果的に真空の透磁率 μ0 の値が正確に 4π × 10−7 H/m に固定されることになる[11]

なお、上記の定義では直流電流のみについて言及しているが、日本における計量単位令では、「又はこれで定義したアンペアで表した瞬時値の二乗の一周期平均の平方根が一である交流の電流」と、交流電流についても定義している(計量単位令・平成4年政令第357号)[13]

電荷の単位クーロンはアンペアに基づいて定義されている。すなわち、1 クーロンは 1 秒間に 1 アンペアの電流により流れる電荷である[14][15]。電流は電荷が流れる率のことであるので、1 アンペアは導体の断面を 1 秒間に 1 クーロンの電荷が流れる場合の電流 (A = C/s) と定義することができる。

1 クーロンは約6.24×1018 個荷電粒子と等しいので、1 アンペアは 1 秒間に約6.24×1018 個の荷電粒子が導体中を流れる状態と定義することもできる。

歴史[編集]

電磁気学が発展した当時用いられていたのはCGS単位系であり、その電流の単位は、「真空中に1センチメートルの間隔で同じ大きさの電流が流れているとき、両者の間に働く力が1センチメートルにつき2ダインであるときの電流」[16]と定義されていた。この単位は「電磁単位」(emu)と呼ばれ、今日ではアブアンペアとも呼ばれる。元々のアンペアは、電磁単位の10分の1の大きさとして定義された。このアンペアが、MKSA単位系において基本単位として選ばれた。

1948年以前は、の電解析出率に基づく国際アンペア (international ampere) と呼ばれる定義が用いられていた。国際アンペアは1893年の国際電気会議で発表された後、1908年の万国電気単位会議によって追認された国際電気単位の一つで[17]硝酸銀水溶液中を通過する電気が 1 秒間当たり0.001118000 gの銀を析出させる電流として定義されていた[5][18]。現在の定義によるアンペアは国際アンペアと対比する際には絶対アンペアと呼ばれ、これら 2 つのアンペアの値は 1 国際アンペア = 0.99985 絶対アンペアとなる[5]

現示[編集]

現行の定義によるアンペアの値は、電流天秤英語版またはワット天秤によって現示することができるが、実用上は電圧電気抵抗の単位、すなわちボルトオームからオームの法則によって測定する方が容易である。ボルトはジョセフソン効果によって、オームは量子ホール効果によってアンペアよりも容易に現示することができる[19]

現在のアンペアを現示する技術は、1×107相対不確かさを持つ[19]

提案中の定義[編集]

現行の2つの電線の間に働く力に基づく定義に代わる、電気素量に基づくアンペアの定義が提案されている[9]。1クーロンは電気素量(電子が持つ電荷)の約6.2415093×1018倍であるので、1アンペアは電気素量の約6.2415093×1018倍(=1クーロン)の電荷が1秒間に通過する電流に等しい[20]。提案された定義では、電気素量の値を定義値とし、1秒間に特定の数の電荷が通過する電流を1アンペアと定義する。2005年に国際度量衡委員会(CIPM)は提案された定義について調査することに同意した。2014年の第25回国際度量衡総会(CGPM)でこの定義について議論されたが、この時には採択されなかった。

脚注[編集]

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出典[編集]

  1. ^ 国際文書 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 (2006) p. 15。
  2. ^ “2. SI base units”, SI brochure (8th ed.), BIPM, http://www.bipm.org/en/si/si_brochure/chapter2/2-1/ 2011年11月19日閲覧。 
  3. ^ a b “2.1. Unit of electric current (ampere)”, SI brochure (8th ed.), BIPM, http://www.bipm.org/en/si/si_brochure/chapter2/2-1/ampere.html 2011年11月19日閲覧。 
  4. ^ Base unit definitions: Ampere. Physics.nist.gov. Retrieved on 2010-09-28.
  5. ^ a b c 共立化学大辞典第 26 版 (1981)
  6. ^ SI supports only the use of symbols and deprecates the use of abbreviations for units.Bureau International des Poids et Mesures (PDF)”. p. 130 (2006年). 2011年11月21日閲覧。
  7. ^ Bodanis, David (2005), Electric Universe, New York: Three Rivers Press, ISBN 978-0-307-33598-2 
  8. ^ Serway, Raymond A; Jewett, JW (2006). Serway's principles of physics: a calculus based text (Fourth ed.). Belmont, CA: Thompson Brooks/Cole. p. 746. ISBN 0-53449143-X. https://books.google.com/books?id=1DZz341Pp50C&pg=RA1-PA746&dq=wire+%22magnetic+force%22&lr=&as_brr=0&sig=4vMV_CH6Nm8ZkgjtDJFlupekYoA#PRA1-PA746,M1. 
  9. ^ a b Beyond the Kilogram: Redefining the International System of Units, USA: アメリカ国立標準技術研究所, (2006), オリジナルの21 March 2008時点によるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20080321221139/http://www.nist.gov/public_affairs/newsfromnist_beyond_the_kilogram.htm 2008年3月閲覧。 .
  10. ^ Monk, Paul MS (2004), Physical Chemistry: Understanding our Chemical World, John Wiley & Sons, ISBN 0-471-49180-2, https://books.google.com/books?vid=ISBN0471491802&id=LupAi35QjhoC&pg=PA16&lpg=PA16&ots=IMiGyIL-67&dq=ampere+definition+si&sig=9Y0k0wgvymmLNYFMcXodwJZwvAM .
  11. ^ a b 国際文書 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 (2006) p. 24。
  12. ^ 国際文書 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 (2006) p. 20。
  13. ^ 計量単位令(平成四年十一月十八日政令第三百五十七号)
  14. ^ 国際文書 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 (2006) p. 56。
  15. ^ (PDF) The International System of Units (SI) (8th ed.), 国際度量衡局, (2006), p. 144, http://www.bipm.org/utils/common/pdf/si_brochure_8_en.pdf .
  16. ^ Kowalski, L, A short history of the SI units in electricity, Montclair, http://alpha.montclair.edu/~kowalskiL/SI/SI_PAGE.HTML .
  17. ^ 国際文書 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 (2006) pp. 23–24。
  18. ^ History of the ampere, Sizes, http://www.sizes.com/units/ampHist.htm 
  19. ^ a b “Appendix 2: Practical realization of unit definitions: Electrical quantities”, SI brochure, BIPM, http://www.bipm.org/en/publications/mises-en-pratique/electrical-units.html 2016年5月9日閲覧。 .
  20. ^ “Value”, Physics, USA: NIST, http://physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?e .

参考文献[編集]

関連項目[編集]

国際単位系(SI)の電磁気の単位
名称 記号 次元 組立 物理量
アンペアSI基本単位 A I A 電流
クーロン C TI A·s 電荷(電気量)
ボルト V L2T−3MI−1 J/C = kg·m2·s−3·A−1 電圧電位
オーム Ω L2T−3MI−2 V/A = kg·m2·s−3·A−2 電気抵抗インピーダンスリアクタンス
オーム・メートル Ω·m L3T−3MI−2 kg·m3·s−3·A−2 電気抵抗率
ワット W L2T−3M V·A = kg·m2·s−3 電力放射束
ファラド F L−2T4M−1I2 C/V = kg−1·m−2·A2·s4 静電容量
ファラド毎メートル F/m L−3T4I2M−1 kg−1·m−3·A2·s4 誘電率
ファラドダラフ英語版 F−1 L2T−4MI−2 kg1·m2·A−2·s−4 エラスタンス英語版
ボルト毎メートル V/m LT−3MI−1 kg·m·s−3·A−1 電場(電界)の強さ
クーロン毎平方メートル C/m2 L−2TI C/m2= m−2·A·s 電束密度
ジーメンス S L−2T3M−1I2 Ω−1 = kg−1·m−2·s3·A2 コンダクタンスアドミタンスサセプタンス
ジーメンス毎メートル S/m L−3T3M−1I2 kg−1·m−3·s3·A2 電気伝導率(電気伝導度・導電率)
ウェーバ Wb L2T−2MI−1 V·s = kg·m2·s−2·A−1 磁束
テスラ T T−2MI−1 Wb/m2 = kg·s−2·A−1 磁束密度
アンペア回数 A I A 起磁力
アンペア毎メートル A/m L−1I m−1·A 磁場(磁界)の強さ
アンペアウェーバ A/Wb L−2T2M−1I2 kg−1·m−2·s2·A2 磁気抵抗(リラクタンス、: reluctance
ヘンリー H L2T−2MI−2 Wb/A = V·s/A = kg·m2·s−2·A−2 インダクタンスパーミアンス
ヘンリー毎メートル H/m LT−2MI−2 kg·m·s−2·A−2 透磁率