JR北海道731系電車

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JR北海道731系電車
JR北海道731系電車 (2016年9月9日 / 函館本線 札幌駅)
JR北海道731系電車
(2016年9月9日 / 函館本線 札幌駅
基本情報
運用者 北海道旅客鉄道
製造所 川崎重工業車両カンパニー
日立製作所笠戸事業所
製造年 1996年 - 2006年
製造数 21編成63両
運用開始 1996年12月24日
主要諸元
編成 3両編成 (1M2T
軌間 1,067 mm
電気方式 交流単相20,000V 50Hz
最高運転速度 120 km/h
設計最高速度 130 km/h
起動加速度 2.2 km/h/s
減速度(常用) 4.4 km/h/s
編成重量 100.0 t
全長 20,800 mm
全幅 2,800 mm
全高 3,620 mm
車体 ステンレス
台車 軸梁式ボルスタレス台車(N-DT731・N-TR731形)
主電動機 かご形三相誘導電動機 N-MT731形
主電動機出力 230 kW
駆動方式 中空軸平行カルダン駆動方式
歯車比 1:4.89
編成出力 920 kW
制御方式 IGBT素子VVVFインバータ制御
制動装置 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ
保安装置 ATS-SN
ATS-DN
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第37回(1997年
ローレル賞受賞車両

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731系電車(731けいでんしゃ)は、北海道旅客鉄道(JR北海道)が1996年平成8年)から運用している、通勤形交流電車である[注 1]。同時期登場のキハ201系気動車と並行して制作され、JR北海道では初の本格的な通勤形車両である。

導入の経緯[編集]

導入当時、札幌駅を発着する函館本線千歳線札沼線(学園都市線)は、札幌都市圏における人口の一極集中により、年4%の輸送量増加が続いていた。特に電化区間(当時は札沼線は全線非電化)は列車によっては朝ラッシュ時に乗車効率が250%を超える状況にあった[2]

当時電化区間の通勤・近郊輸送に用いられる電車としては、国鉄から継承した711系とJR北海道発足直後、空港アクセス用に投入した721系が用いられていたが、うち711系は1996年(平成8年)時点で試作車投入から30年を迎え、老朽化が進んでいた。加えて、711系は加速度が1.1 kmと721系の半分[注 2]であり、最高速度も110 km/hと721系(120 km/h、後年130 km/h運転も実施)より遅いことから、列車設定上の障害となっていた。また、711系は片側2扉[注 3]であり、ステップの段差も高いことから、721系の1.7倍の乗降時間を要し、朝ラッシュ時に常時4~5分の列車遅延が常態化する状態となっていた[2]

このため、711系の置換を目的とした本系列は721系並みの性能の確保に加え、オールロングシート、客室仕切りを廃止した構造など、従来の北海道仕様の車両にはない数々の新機軸が盛り込まれた、本格的通勤車両として開発された。

1996年(平成8年)12月24日に営業運転を開始し、1999年までに3両編成19本(57両)が川崎重工業日立製作所により製造され、711系初期車を置きかえた後、2006年に3両編成2本(6両)が一部仕様を変更して増備された。鉄道友の会より1997年ローレル賞を受賞している。

系列名について[編集]

日本国有鉄道→JR北海道において、711系、721系に続く通勤・近郊型電車であることから、1桁目を先代の2系列を踏襲した「1」、2桁目に「3番目」を意味する「3」を付番したとされている[2]

仕様[編集]

特記ない限り、1次車登場時の仕様を述べる。編成は中間電動車(モハ731形:M車)を制御付随車(クハ731形:Tc1、Tc2車)で挟んだ3両(Tc1-M-Tc2)を固定ユニットとして構成される[2]

また、同時期に非電化区間から札幌都市圏へ直通する列車へ対応する車両として開発されたキハ201系気動車とは共同プロジェクトで開発され、仕様を徹底して共通化している[3]

デザインは内外装ともに、苗穂工場で行われた[2]。なお、本系列およびキハ201系気動車の開発時のコンセプトは、以下の通りであった[2][3]

  1. 快適で乗り降りしやすい車両
    • 乗り降りしやすい車両
    • 快適な室内
    • 移動制約者の方も利用しやすい車両
  2. 環境にやさしい車両
    • ブレーキ力を電力に回生する省エネ電車
  3. 雪国に強い車両
    • 冬季も安定した走りをする車両
  4. 数多くの列車本数を可能にする車両
    • 気動車を電車並みの性能にする
    • 電化区間で電車と気動車を併結する

特に、4. を実現するためにキハ201系気動車とは車体・機器・性能・取り扱いなど徹底した共通化が図られ、双方の動力を同調させての協調運転を可能としている。

なお、本系列はキハ201系気動車のほか、721系電車との併結運転が可能であり[2]、後年登場した733系735系電車とも併結可能である。

エクステリア[編集]

731系電車G-104編成前面バンパー部にジャンパ栓用の切り欠きがある (2006年11月3日 / 札幌駅)

車体はビード付きの軽量ステンレス製(前頭部のみ普通鋼)で、車体傾斜装置を持つキハ201系気動車と共通の構体を用いているため、車体断面は上方窄まりの台形断面となっている。客用扉は721系同様の片開き式のものを片側3箇所に設けているが、有効幅1,150mmとし、2人が並んで乗り降りできる幅を確保しているほか、後述の低床化により、低床ホームに対応するステップは高さ18 cm(721系と同等、711系比 -15 cm)、ステップ面高さ970 mmを実現している [2]

扉間は大型の固定窓を2枚配置し、車端部は機器などを設置するため窓は設けていない。

先頭部は721系などと同様貫通式としたが、踏切事故の際に乗務員を保護する観点から高運転台構造(運転士目線位置:レール面3 m[2])とし、加えて衝撃吸収構造とした[2]。また、冬季対策として、前照灯は全6灯(腰部の2灯はHID)としたほか、スノープラウ兼用の大型スカート、高速ワイパーを装備している。正面貫通扉には、増解結時間短縮のため自動幌装置が採用された。

車体側面には、コーポレートカラーの萌黄色(ライトグリーン)と赤の帯(前面は赤のみ)を配する。

前面上部の種別表示器・側面の行先表示器はともに幕式である。

機器類[編集]

シミュレーションから、走行機器は「721系なみの性能確保[2]」が開発目標とされ、最高速度130 km/h、曲線通過速度=本則+10 km/h、起動加速度(0~60km/h)2.2 km/sを達成し、加速度については130 km/hにおいても0.8 km/hの加速余力を持つ[2]

主回路の制御方式は制御素子IGBT を採用したVVVFインバータ制御を採用し、主電動機は新開発のかご形三相誘導電動機 N-MT731形[注 4] (定格出力230kW) をM車に搭載する。

台車は721系のものをベースに、ステップ面を低床ホーム高さ(970 mm)と同一面とする必要性から、車輪を振子車両で実績のある新製時直径810 mmのものとした、軸梁式ボルスタレス台車ヨーダンパ付き)で、動台車がN-DT731形、付随台車がN-TR731形と呼称される[2]

ブレーキシステム鉄道総合技術研究所と開発した、電気指令式回生ブレーキ併用空気ブレーキを採用する。基礎ブレーキ装置は苗穂工場製の高粘着合成鋳鉄制輪子を採用した両抱き式踏面ブレーキで、これとマルチモード滑走・再粘着制御により、どのような条件においても130 km/h から十分な余裕をもって600 m 以内での停止が可能であり、試験でも自然降雪・レール面凍結の状況下で、130 km/hから470 mで停止している[2]

冷房装置は各車屋根上に集中式のもの(30000kcal/h)を搭載している[2]

パンタグラフは当初、721系と同一の下枠交差型を搭載したが、後に着雪防止対策として、全車がシングルアーム型(N-PS785形)に交換された。

室内設備・インテリア[編集]

客室[編集]

室内(跳ね上げ式座席収納時)
乗客用半自動ドアスイッチ(外・内)

インテリアは艶消しのグレーを基調としている。一方で乗降口付近は視認性向上のため黄色とした[3]。 乗降時間短縮のため、車内は全てロングシート(有効幅455mm/人)とし、3・5・3人(先頭車前位寄りのみ3・4・3人)にスタンションポールで区分される[2]。新製時点では、座席モケットは紫色(優先席は灰色)であった。

また、従来の北海道向け車両の出入り台に存在した客室仕切は廃止された。代わって暖気・寒気進入抑制の観点から、客用扉上部と左右にはエアカーテン、ボタン開閉式の半自動ドアを装備し、加えて遠赤外線暖房、温風暖房や固定遠赤外線暖房も装備している[2]。また、一部の出入り台付近は跳ね上げ式の座席を装備している[2]

このほか、ドアチャイム自動放送装置・3色LED車内案内表示装置(各乗降扉上部。左右で千鳥配置)を落成時から装備する。

便所はTc1車に和式のものを設置する[2]

その他[編集]

運転台付近の様子

運転台は721系や785系などと同様の左手操作式ワンハンドルマスコンを搭載し、モニタ装置タッチパネル式のカラー液晶ディスプレイとなった。

編成[編集]

以下、方面を示す場合、札幌駅在姿を基準とする。

編成番号は中間電動車モハ731形の車両番号に識別記号「G」を付し、「G-101」などと表記される。

クハ731形100番台(Tc1)
編成の岩見沢方制御付随車(定員:141名、うち着席50)。先頭部に自動幌装置を持つ。また、客室内後位に便所を装備する。
モハ731形100番台 (M)
中間電動車(定員:151名、うち着席52)屋根上に集電装置、床下に主変圧器主変換装置を装備する。
クハ731形200番台 (Tc2)
編成の小樽方制御付随車(定員:143名、うち着席50)。床下に電動空気圧縮機・静止型インバータによる補助電源装置を装備する。また、バリアフリー対応として、客室後位を車いすスペースとしている。

改造・仕様変更[編集]

最終増備車[編集]

2006年製の G-120・G-121編成は一部仕様が変更され、バリアフリー対応として従来の和式トイレに代わって車椅子対応の洋式トイレ(センサー式)を設置したため、クハ731形の後位客用扉が中央寄りに移された。パンタグラフは当初からシングルアーム式を搭載し、主変換装置の仕様も変更されている。

重要機器取替[編集]

最終増備車2編成6両を除く57両については、主変換装置換装を中心とした、電子機器・台車重要部品の取替工事が2017年(平成28年)から2020年度にかけての予定で実施されている[4][5]

運用[編集]

731系同士の6両併結編成
(2008年7月28日 / 苗穂 - 白石)
キハ201系との協調運転

本系列は全車両が札幌運転所に配置され、札幌都市圏およびその周辺地区を中心とした以下の区間で、普通列車区間快速(「いしかりライナー」)列車として運用されている。

基本的に相互に連結可能な721系(3両編成)・733系(0番台)・735系と共通で運用され[6]、一部の運用では2編成を併結した6両編成となる。ただしキハ201系との連結は本系列のみ対応しているため、当該列車とその前後の運用には本系列が限定運用される。

キハ201系との併結は、2018年現在日本で唯一の電車と気動車による協調運転[注 5]である。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 文献によっては近郊形電車と分類することも場合がある[1]
  2. ^ 711系の起動加速度(1.1km/h/s)は近郊型電車としては低いものであるが、駅間距離が比較的長く、それほどの高加速度を要求されなかった導入当時としては十分な性能であった。
  3. ^ 711系の一部には片側3扉に改造された車両もある。
  4. ^ 721系1000番台で試験の後、本系列から採用された。後年の721系5000番台785系500番台789系でも採用された。
  5. ^ 過去には九州旅客鉄道(JR九州)において、485系電車183系気動車(1000番台)との協調運転による特急列車が存在した。

出典[編集]

  1. ^ ネコ・パブリッシング『レイル・マガジン』No.162 p.103
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 『鉄道ファン』通巻431号 pp.55-59
  3. ^ a b c 『鉄道ファン』通巻433号 pp.74-77
  4. ^ 岩本(2017)
  5. ^ 岩本(2018)
  6. ^ “平成24年10月ダイヤ改正について” (PDF) (プレスリリース), 北海道旅客鉄道, (2012年8月3日), http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2012/120803-1.pdf 2012年8月17日閲覧。 
  7. ^ “学園都市線電化開業に伴う電車の投入(第一次)について” (PDF) (プレスリリース), 北海道旅客鉄道, (2012年3月14日), http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2012/120314-1.pdf 2014年7月21日閲覧。 

参考文献[編集]

  • 後藤明祐「JR北海道731系通勤形交流電車」、『鉄道ファン』第37巻第3号(通巻431号)、交友社1997年3月1日、 pp.55-59。
  • 後藤明祐「JR北海道キハ201系通勤形気動車」、『鉄道ファン』第37巻第5号(通巻433号)、交友社1997年5月1日、 pp.74-77。
  • 岩本隆市 (2017年5月10日). “北海道旅客鉄道株式会社 新型車両等の整備計画について”. 鉄道界 (鉄道界図書出版株式会社) 58 (5): pp.56-59. 
  • 岩本隆市 (2018年5月10日). “北海道旅客鉄道株式会社 新型車両等の整備計画について”. 鉄道界 (鉄道界図書出版株式会社) 59 (5): pp.50-53. 

関連項目[編集]