JR北海道H100形気動車

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JR東日本GV-E400系気動車 > JR北海道H100形気動車
JR北海道H100形気動車
DECMO
JRHokkaido SeriesH100 TestRan photo1.jpg
基本情報
運用者 北海道旅客鉄道
製造所 川崎重工業
製造年 2018年 -
主要諸元
軌間 1,067 mm
最高速度 100 km/h[1]
起動加速度 1.1km/h/s (0→60km/h)[1]
車両定員 36(席)+63(立)=99名[1]
自重 42.7 t[1]
全長 20,000 mm[1]
全幅 2,800 mm[1]
全高 3,635 mm[1]
車体 軽量ステンレス(efACE)
台車 軸梁式ボルスタレス台車
N-DT100(動台車)
N-TR100(従台車)
制御方式 コンバータ+VVVFインバータ制御
制動装置 電気指令空気ブレーキ
直通予備ブレーキ
耐雪ブレーキ
留置ブレーキ
保安装置 ATS-DN
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H100形気動車(H100がたきどうしゃ)は、北海道旅客鉄道(JR北海道)の一般形気動車である。

概要[編集]

製造から30年を超え老朽化したキハ40形などの一般型気動車の置換えを目的に開発された車両であり、JR北海道の電気式気動車では初めての、ディーゼル・エレクトリック車である[注 1]。同時期に製作された東日本旅客鉄道(JR東日本)GV-E400系気動車と基本設計を共通とし、酷寒地対策などの仕様変更を施している[2]。製造もGV-E400系と同様川崎重工業が担当した。

DECMO(デクモ)[注 2][1]」の愛称を持つ。

開発の経緯[編集]

JR北海道の一般型気動車は、1995年(平成7年)までにキハ22形の淘汰などを目的にキハ150形27両を投入した後、1997年(平成9年)に日高本線向けのキハ160形1両[注 3]、札幌圏輸送に特化したキハ201系4編成12両を投入したのみで[注 4]、以降一般型気動車については、ライフサイクルに基づく新造車の量産・投入が行われなかったが[JR 1][JR 2][注 5]、2015年(平成27年)3月に策定・公表した「安全投資と修繕に関する5年間の計画[注 6]」に2017年(平成29年)度に一般型気動車の量産先行車2両の製作が盛り込まれた[JR 1]

その後、2015年(平成27年)6月には同時期に制作されることとなったJR東日本の電気式気動車(→GV-E400系)と仕様を同一とすることが発表され[JR 3]、2017年(平成29年)7月に形式名と詳細な仕様が発表された[JR 2]

なお、ディーゼル・エレクトリック車採用の理由はGV-E400系との共通化のほか、以下の理由によるものである[2][JR 2]

  • 推進軸・自在接手など落失が懸念される機械的な駆動部品・回転部品省略による運行時・保守時の安全性向上[注 7]
  • 変速機・減速機など機械的部品の減少による信頼性向上
  • 電車と同様な機器の採用によるメンテナンスコスト削減
  • ハイブリッド車両のような走行用バッテリー搭載を省略することによるメンテナンス軽減・コスト抑制

形式名について[編集]

従来のJR北海道の気動車形式は国鉄気動車の付番規則をおおむね踏襲していたが、本系列は既存車両と大きくシステムが異なることから、気動車を表す「キ」、普通車を表す「ハ」の用途記号は省略し、H5系新幹線電車で用いられた「北海道(Hokkaido)」のHを冠した形式名とした[2]

車体[編集]

以下、特記ない限り量産先行車について述べる。

GV-E400系の両運転台車GV-E400形と基本的に同一であるが、酷寒地対策がなされる[2]。なお、GV-E400系には片運転台車が設定されているが、本系列は北海道のローカル線における運行形態を踏まえ片運転台車は予定されていない[3]

エクステリアデザイン[編集]

「新しさ・北海道らしさを表現した」デザインが指向されている[JR 2]

形状はGV-E400系を踏襲した。この形状は踏切事故によるオフセット衝突(前面の片側だけが衝撃を受ける正面衝突の仕方)を考慮しており、上から見た時に運転士側と助士側をそれぞれ後部に傾斜させることで、衝撃を枕木方向に分散させる[1]

側面は「自然の多い北海道の大地を走行する車両[1]」を想起させるデザインとしている。帯色は「夏の植物を表す[1]」濃いグリーン、「冬の雪を表す[1]」白の2色の平行四辺形を重ね、重なり合う部分をコーポレートカラーのもえぎ色とし、「自然との調和を表現[1]」している。なお、帯の途中には「H100」の文字が切り抜かれている[1]

前面は黒色基調とし、もえぎ色と警戒色の黄色の帯を配している[1]

構造[編集]

側面表示
前面表示

車体長は20 m 級(19500 mm)であり、車体下部の台枠を除き、ステンレス鋼(前面の一部のみFRP)を使用し、外板と骨組みの溶接にレーザー溶接を使用している。車体幅は2800 mmの裾絞りのないストレート車体としている[1]

床面高さは1150 mm であり、客室扉は片開き・片側2扉としステップ(レール面高さ970 mm)を設けている。扉は車内外の温度差で変形した場合でも開閉不良が生じないよう、戸袋との隙間を十分確保する一方で、戸袋部への雪の吹込みを防止するため、ゴムで隙間を塞いでいる。また、デッキ・エアカーテンは装備しないが、押しボタンにより開閉する半自動機能を持つ[1][4]。戸閉装置はJR北海道では初めてスライドレール式が採用され、乗降口下部・戸袋部にはヒーターが設けられている[4]

灯火類は全てLEDとした。配置はGV-E400系とほぼ同一であるが、前部標識灯については降雪時の視界確保を目的に前面窓上部に加え前面窓下部にも増設している[4][JR 2]

行先表示器は、貫通路上部と側面に3色LED式のものを設置している。側面には車外放送用のスピーカーを装備している[4]

窓についてはJR北海道の他の車両と同様、冬季の破損防止のため、運転台窓[注 8]を除きポリカーボネートを用いる。側面窓はポリカーボネート板(厚さ8 mm)とガラス(厚さ4 mm)の複層構造として[注 9]、併せて断熱性を向上させている[1]。また、助士席窓については表面に透明な導電体を仕込んだ発熱ポリカーボネートとしている[4]

この他、外観上のGV-E400形との差異として、側扉横の「編成順位標(号車札)差し」「急行列車標差し」設置、出入口表示器省略、台車上部の台枠下部へのステンレス製ふさぎ板設置が挙げられる[1][5]

主要機器[編集]

以下、特記ない限り量産先行車について述べる。また、基本的にGV-E400系と同一であるため、主要な点、相違点を中心に述べる。最大で4両編成を組成可能であるが、JR北海道の既存車両とは連結不可能である[2]

動力・電源関係[編集]

主回路の大まかな見取り図

本形式は前述するようにディーゼル・エレクトリック方式の電気式気動車であり、動力はディーゼルエンジンで主発電機を駆動して得られた三相交流電源をPWM(パルス幅変調方式)コンバータで一旦直流に変換し、それをVVVFインバータで三相可変電圧可変周波数交流に変換して主電動機の三相誘導電動機を駆動させている[6]。主電動機の制御は1C2M方式[注 10]を採用した[6]

機関・主発電機[編集]

機関は燃料直接噴射式の4サイクル直列6気筒横形(定格出力331kW≒450PS/2000rpm、総排気量15.24リットル)で、噴射装置はコモンレールを採用している[4]

主発電機は開放形強制通風方式の定格出力305kWのものを搭載し、機関とは直結駆動され、車両に必要な電力を供給している。機関始動には主発電機を用いるため、スターターは省略されている[6]

主変換装置[編集]

主変換装置はPWMコンバータ・VVVFインバータ・補助電源装置が一体で構成され、主回路に半導体にダイオード側素子にSiCを採用した三相2レベル方式電圧形PWM方式を採用している[6]。補助電源装置部は変換した直流を三相または単相一定電圧一定周波数に変換して車両の補助回路機器に電力を供給する[6]

台車[編集]

動台車を車体後位、付随台車を車体前位に配置する。いずれも軸梁式ボルスタレス台車で、軸距離は2100mmである。車軸軸受は円錐ころ軸受を採用した。基礎ブレーキは踏面片押し式のユニットブレーキとし、付随台車はこれにディスクブレーキが加わる。制輪子にはJR北海道車両の特徴である合金鋳鉄制輪子を用いている。また、空転防止のためのミュージェット噴射装置を装備している。形式は電動台車がN-DT100形、付随台車がN-TR100形である[1][JR 2]

主電動機[編集]

全閉形自己通風方式の三相誘導電動機(出力105kw)を動台車に2基搭載する[2][6]

制動装置の制御[編集]

電気指令式空気ブレーキ方式を採用しており、常用ブレーキ・非常ブレーキ・直通予備ブレーキ・耐雪ブレーキの4つのブレーキ系統を有する[6]

また、冬季にディスクブレーキとブレーキパッドが凍結することによりブレーキ不緩解となることを防止するため、車両が停止し、ブレーキが「B7」段に投入されている条件で、運転台のスイッチを扱うと、従台車のブレーキ圧力が開放される機能を持つ[6]

また、各軸ごとの滑走再粘着制御を行い、エゾシカなどとの接触回避のため急ブレーキを扱った際の踏面損傷を防止している[6][JR 2]

電動空気圧縮機[編集]

空気圧縮機は、潤滑油が不要なオイルフリータイプのスクロール式を各車1台設置する[1]

その他装置[編集]

空調装置[編集]

屋根上に集中形空調装置(冷房能力38.4kW、暖房能力16kW[注 11])を搭載する[1]。また、空調装置側面寄りには歩み板が設置されている。別途設置の室内電気暖房機は24.85kWの容量を持つ[注 12][1]

車内設備[編集]

基本的にGV-E400形と同一であるため、主要な点、相違点を中心に述べる。

インテリアデザイン[編集]

座席は一般席モケットに「北海道の豊かな草原をイメージした[1]」グリーン、優先席部にオレンジを用いた。また、乗降ドア室内側はコーポレートカラーのもえぎ色、ドア横のパーティーションは「海や青空を想起させる[1]」ブルーとしている[1]

客室設備[編集]

座席[編集]

車内はワンマン運転や通学・通勤時間帯の混雑を考慮し、車内中央部をクロスシート(2+1列)3区画、その他をロングシートとしたセミクロスシートである。ロングシート部は中間にスタンションポールを設置した。吊り手高さは733系電車を踏襲した1,810 mm・1,630 mm・1,590 mmの3種類とした[1][注 13]

その他[編集]

便所は電動車椅子対応のもの(洋式)を設置し[4]、おむつ交換台なども設けている[JR 2]。移動制約者対応として、各客室扉引戸鴨居部に扉開閉表示灯、便所向かいに車椅子スペースを設けている。また、客室中央の前位寄りに機器室を配置している[5]

運賃表示器は液晶型とし、運賃のほか次駅案内も行い、英語にも対応する[JR 4][注 14]。また、車内にはGV-E400系にはないゴミ箱が設置されている[4]。室内の灯具はすべてLEDである[JR 2]

乗務員室[編集]

半室仕様の貫通構造となっており、運転士の安全向上を図るために、サバイバルゾーンを確保した構造となっている。

運転台は、モニタ装置(前述)と接続された表示設定器を設置した、また、ワンマン運転のために計器台上に乗降ドア開閉用スイッチを設けている。主幹制御器は左手操作のワンハンドル式とした[4]

配置と今後の予定[編集]

量産先行車2両(H100-1,2)は2018年(平成30年)2月19日付で落成し、苗穂運転所に配置された[5]。落成後、各機器の基本性能の確認と冬季の検証を行い、量産化に向けた検討を実施している[3]

量産車は2019年(令和元年)9月に6両、2020年(令和2年)1月に7両が納車(予定)であり[JR 4]、2020年(令和2年)春のダイヤ改正より量産先行車を含めた15両体制で、函館本線小樽駅 - 長万部駅間(いわゆる「山線」)のワンマン列車全列車[注 15]および、札幌駅 - 小樽駅の上り1本[注 16]に投入し、営業運転を開始することが計画されている[JR 4]

最終的な導入両数・期間[編集]

前述の15両に加え、2019年(令和元年)9月11日付プレスリリースの時点で、2020年(令和2年)度から2021年(令和3年)度にかけて、60両の投入が計画されている[JR 4]

最終的な両数については、2019年(令和元年)5月時点での「主要プロジェクトの内容」として、2019年度から2022年(令和4年)度までの量産車127両[注 17]の新製を挙げているが、完了予定は明言されていない[JR 6]

脚注[編集]

[編集]

  1. ^ 「JR北海道初の電気式気動車[2]」と紹介されることもあるが、本系列以前にエンジンの動力と蓄電池で駆動するモーターの動力を変速機で混合して駆動する「パラレルハイブリッド方式」の試験・試作車として、キハ160形(2007年改造、2013年廃車)やキハ285系(2014年に試作車のみ製作され2015年廃車)が製作されている。
  2. ^ Diesel Electric Car with MOtors の略
  3. ^ キハ130形に発生した事故廃車の補充用。2007年にパラレルハイブリッド試験車に改造され、2013年廃車。
  4. ^ このほか、JR北海道発足初期に日高本線キハ130形が新造・投入されていたが、老朽化が著しく2002年(平成14年)までに全車廃車された。また、改造車として50系51形客車からキハ141系が計44両改造されていたが、苫小牧地区で用いる10両を残し、2012年(平成24年)までに営業を終了した。
  5. ^ 量産先行車が登場した2017年(平成29年)3月時点で保有する一般型気動車(205両)の経年は平均33年に達し[JR 2]、経年30年以上の車両が166両存在した[2]。うち、大多数を占める国鉄時代製造のキハ40系(キハ40形)に絞ると経年は平均36年、初期車13両は40年に達していた。また、一部の部品が生産中止となるなど、メンテナンス上の課題も生じていた[JR 2]
  6. ^ 2014年(平成26年)に国土交通大臣から「輸送の安全に関する事業改善命令及び事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令」を受けたことによるもの。受けた理由としては2011年の石勝線特急列車脱線火災事故、以降に続いた車両トラブルや軌道データ改ざん等の不祥事が挙げられている。
  7. ^ 2011年(平成23年)に発生した石勝線特急列車脱線火災事故の主な原因も推進軸の落失であった。
  8. ^ 運転台窓のみポリカーボネートは採用せず、熱線ガラスにデフロスタを付けたもの[4]
  9. ^ キハ261系1000番台以降登場の車両と同構造。
  10. ^ 制御装置1台で2台の主電動機を駆動させる方式
  11. ^ GV-E400系は12kW。
  12. ^ GV-E400系は約13kW。
  13. ^ GV-E400系はロングシート部1,630mm、車端部1,580mm。
  14. ^ 2019年度末よりH100形による「ワンマン装置の他言語化」が計画されている[JR 5]
  15. ^ ワンマン運転を行わない201系気動車による列車については、引き続き同形式を利用する予定としている。
  16. ^ 早朝に設定されている札幌駅然別駅行きの列車。
  17. ^ 量産先行車の製作が発表された2015年(平成27年)時点で、最終的な制作両数は「従来型気動車」(キハ40形)の当時の在籍数「140両よりは下回る予定」とされていた[JR 3]

出典[編集]

JR北海道[編集]

  1. ^ a b “安全投資と修繕に関する5年間の計画について” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 北海道旅客鉄道, (2015年3月20日), オリジナルの2018年12月8日時点によるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20181208065533/http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2015/150325-3.pdf 2018年12月8日閲覧。 
  2. ^ a b c d e f g h i j k “新型一般気動車の試作車(量産先行車)について” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 北海道旅客鉄道, (2017年7月12日), オリジナルの2018年12月8日時点によるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20181208071547/https://www.jrhokkaido.co.jp/press/2017/170712-2.pdf 2018年12月8日閲覧。 
  3. ^ a b “新型一般気動車(量産先行車)の製作について” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 北海道旅客鉄道, (2015年6月10日), オリジナルの2018年12月8日時点によるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20181208070922/https://www.jrhokkaido.co.jp/press/2015/150610-2.pdf 2018年12月8日閲覧。 
  4. ^ a b c d H100形電気式気動車(DECMO)の投入線区について”. 北海道旅客鉄道 (2019年9月11日). 2019年9月12日閲覧。
  5. ^ “JR北海道グループ中期経営計画2023” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 北海道旅客鉄道, (2019年4月9日), オリジナルの2019年4月9日時点によるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20190409130455/http://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/mi/vision/20190409-03.pdf 2019年4月9日閲覧。 
  6. ^ “運賃・料金改定の申請について” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 北海道旅客鉄道, (2019年5月10日), オリジナルの2019年5月25日時点によるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20190525075058/http://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20190510_KO_Revision.pdf 2019年5月25日閲覧。 

参考文献[編集]

  • 水上幸治・清水敬太 (2018-07-01). “JR北海道 H100形電気式気動車”. 鉄道ファン (交友社) 58 (7(通巻687)): pp.74-77. 
  • 編集部「『2018年上半期 JR旅客会社 車両のデータバンク』」『鉄道ファン』第59巻第2号(通巻694号)、交友社、2019年2月1日。