鉄道車両のモニタ装置

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相鉄11000系電車の運転台。LCD3画面のグラスコックピットで、右側2面がモニタ装置操作用(TIMS)、左側1面が速度計などの計器表示用。

鉄道車両のモニタ装置(てつどうしゃりょうのモニタそうち)とは、鉄道車両に装備されている各種機器の状態などを表示し、監視・制御するものである。

概要[編集]

モニタ装置[編集]

東武20000系の運転台モニター表示器。9000系とほぼ同じもので、故障はランプで表示する
東京メトロ10000系電車の床下共通機器箱内に設置されたTIS中央装置制御部

日本で初めてモニタ装置を鉄道車両に装備したのは京阪電気鉄道2600系電車の第21編成である。また、同時期の小田急7000形 (LSE) でも2階運転席のため乗務員が床下点検の負荷軽減のためにモニタ装置が装備された。

最初期の「モニタ装置」は極めて簡易的なもので、東武鉄道9000系電車を例にすると、「号車毎のドアの開閉状態・トジメ表示・MG故障表示・MM過電圧表示」といったものをランプの点灯で表示盤上に表すものであった。この東武鉄道などでは1980年代からこれらの簡易的なモニタ装置を採用していたが、この方式では表示内容が限られる。解決策として新幹線200系電車横浜市交通局2000形電車ではプラズマディスプレイ(PDP)を採用していたが、現在のようなフルカラーではなくモノクロだったうえ表示できる文字が限られていた(たとえば200系では漢字が表示できなかった)。

その後液晶ディスプレイタッチパネルが普及し、コンピュータの性能向上でさまざまな文字やグラフが表示できるようになった。冷房や照明といったサービス機器をモニタ装置で操作することもできるようになり、モニタ装置は単なる「表示器」から脱皮した。

制御伝送装置[編集]

1988年には営団地下鉄(当時)の03系で初めてモニタ情報の表示だけではなく、マスター・コントローラーを通じた力行ブレーキなどの運転操作も直列伝送で送信する「制御伝送装置」として、三菱電機製のTIS(Train-control Information Management System・車両制御情報管理装置)が搭載されてその後の標準装備となったほか、JRでも1992年以降同様の装置をJR東日本209系などが搭載したほか、大手私鉄でもTISが1999年東急3000系などから搭載され始めるなど、車両の各種制御伝送情報系統を統合しシステム化することにより、電気配線の大幅な削減による軽量化、メンテナンスの省力化に寄与している。

その後の発展型はTIMSDICS (Train Integrated Management System) などとも称されているほか、日立製作所製の制御伝送装置がATIという名称で東京地下鉄07系(ただし、営団名称のためTISと呼ぶ)や西武20000系などに搭載されている。並行して表示・操作デバイスもPDPからLCDに進化、制御引き通し線を従来の銅線から光ケーブルとした車両も現れている。ユニークなものではJR東日本相模線用の205系電車に汎用パソコン (NEC FC-9800) を使用したシステム(MON5型)も存在した(現在はMONを改良したものに更新(MON3型))。

機能[編集]

東急5050系電車のTISモニタ画面
東葉高速2000系のTISモニタ画面(車掌モード)。車内の空調・温度などが詳細表示されている

大きく分けると乗務員モードと検車モードに分かれる。モードの切替は、運転台内の論理部にあるスイッチによって行う。

乗務員モード[編集]

運行時に必要な機能を表示・設定する。車両によっては運転士用モードと車掌用モードに分かれる。

  • 列車情報(列車種別・列車番号または運行番号・行先・列車の現在位置・次停車駅)
  • 乗務行路表(乗務員用の時刻表 : メモリーカードが使用できる場合)
  • 主要機器の動作状態
  • 力行・制動状態(『加速』『回生』、主幹制御器のノッチ位置などを表示)
  • ドアの開閉状態(ドア挟み・戸袋引き込み・ドア制御機器故障)
  • 車内環境(温度・湿度・乗車率)
  • 空調設定(冷房・除湿・暖房・送風の切替えと風量の強弱)
  • 自動放送・車内案内表示装置の設定
  • 緊急時・故障時の操作支援、機器の遠隔操作

検修モード[編集]

車両基地等での点検・整備時に使用する。基本的に整備を担当する検修担当社員しか使えないが、仕様を熟知した乗務員が使用することもある。

  • 機器動作状況の履歴
  • 積算走行距離・電力量の記録
  • 機器動作試験(ドア開閉や放送試験など)
  • 試運転時のランカーブ出力・記録

メリット・デメリット[編集]

導入することによる主なメリット・デメリットは以下のとおり。

メリット[編集]

  • 従来NFBの入切や指令器により行っていたサービス機器(電灯・空調・表示器類)の制御を、モニタで一括して行うことができる(空調については、外気温・乗車率などの各センサーのデータを考慮して制御を行うことができ、全自動制御にすることも可能)。
  • モニタから機器の動作状況が得られることで、検査の時間短縮や故障時の応急処置、原因究明が行いやすくなる。(パソコンを接続したり、ICカードにデータを記録し故障記録を読み出すことも可能)
  • 制御伝送化により力行やブレーキなどの電気指令信号配線を集約できるため、製造時の工程減と車体の軽量化に繋がる。

デメリット[編集]

  • 機器の制御をモニタに集約すると、モニタに不具合が発生した場合に制御が出来なくなる(制御伝送装置以降のシステムは対策として伝送線と中央装置の論理部などが二重化されている)。

主なメーカー[編集]

脚注[編集]

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参考文献[編集]

  • 鉄道ジャーナル社「鉄道ジャーナル」2004年9月号「JR東日本における車両情報システム」(東日本旅客鉄道(株) 運輸車両部車両開発プロジェクト 菅谷誠 著)

関連項目[編集]