静止形インバータ

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東急1000系東芝製補助電源用静止形インバータ

静止形インバータ静止型インバータ(せいしがたインバータ)は、直流インバータ(=Inverter : インバーターとも)により、100V - 440Vの交流に変換する電源装置である。

概要[編集]

固定電圧・固定周波数を出力するインバータ装置の一つであるが、鉄道車両における補助電源装置として用いられる場合、走行用のVVVFインバータと区別すること、旧来の電動発電機と異なり駆動部を持たないことから、あえて「静止形」と称することが多い。略称としてSIV (Static InVerter) とも呼ばれるが、"Static InVerter"は和製英語であるため、日本国外では通用せず、APU (Auxiliary Power Unit) と呼ばれる。

鉄道車両においては、架線から供給される高圧電源を低圧電源に変換し、必要とする機器(車内蛍光灯冷暖房装置・制御装置など)の電源として使用される。1970年代以前は電動発電機が主流であったが、回転機構を有するために発生する騒音や定期的の保守を要する整流子やブラシの存在がネックであった[1]。そこで、パワーエレクトロニクス技術の進展に伴い、半導体を用いた電源装置として開発されたのが静止形インバータである[1]

歴史[編集]

サイリスタ素子を利用した静止形インバータが1968年(昭和43年)に都営地下鉄6号線に導入された6000形にて初めて採用(東洋電機製造製)され、その後名古屋市営地下鉄300形(三菱電機製)、大阪市営地下鉄60系(東洋電機製造製)にも採用された。 1980年代では半導体がGTO素子によるものであったが、1990年代以降はIGBT (Insulated Gate Bipolar Transistor) を主素子とした構成としている[1]。進歩により高耐圧の素子が開発される状況になってきたことから、時期により、3分圧・2分圧・2レベルインバータに分けられる。

サイリスタを用いた装置の場合、2 - 3組のインバータの位相をずらしで運転し、出力変圧器(中間タップ付き)に入力して任意の電圧を得ていた。

IGBT素子が使われ始めるとPWM周波数をより高く設定できることから小型の交流フィルタで実用上問題の無い正弦波交流を得ることが可能となり、機器も小型化された。

原理[編集]

横浜高速Y000系のVVVFインバータと静止形インバータが一体化されたインバータ装置。
JR東日本E217系電車の待機2重系インバータ

原理的にはスイッチング電源とほぼ同じもので、直流にて入力された電圧を、PWMにより高速にスイッチングし、大容量のリアクトル(コイル)、コンデンサにより平滑化、商用60ヘルツ(実際は商用周波数との区別から設計上59.5ヘルツが多い)に近い交流を出力する。それを、変圧器(絶縁を兼ねる)を通し、440V・200V・100Vなどの電圧に変換され、冷房・列車制御装置などの主電動機以外の電源として供給される。交流電車の場合、主変圧器の三次巻線を電源とすることが多いことから、整流器とチョッパ器を通して直流に変換し、インバータに入力して各種電源を出力する[2]

SIVが停止すると電車が運行不能になってしまうことから、編成中のSIVを2台以上とするか、もしくは非常時にVVVFインバータをSIVとして動作させる設計(デュアルモードインバータという)とするのが一般的である。さらに複数のSIVを並列につないで制御するもの、IGBTなどの素子を2組にし、冗長性を持たせた「待機二重系インバータ」も登場している。

なお、AMラジオなどにノイズが乗るのは、VVVF/SIVによるIGBTのスイッチング周波数がAMラジオの周波数帯に極めて近く大電流を流すことから電磁誘導現象により必然的に電磁波電波)となってしまい妨害されるものである。信号機器などは単純な変調により制御を行っているため妨害し誤動作を起こすことがある。これを誘導障害と呼ぶが、安全上問題が生じるため各メーカー・鉄道事業者にて念入りな試験が行われる。

主な製造メーカー[編集]

脚注[編集]

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出典[編集]

参考文献[編集]

関連項目[編集]