国鉄トキ25000形貨車
国鉄トキ25000形貨車 | |
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![]() トキ25000形、オトキ29441 2009年8月8日、越中島貨物駅 | |
基本情報 | |
車種 | 無蓋車 |
運用者 |
日本国有鉄道 日本貨物鉄道 |
製造所 | 汽車製造、日本車輌製造、川崎車輛、舞鶴重工業、三菱重工業、日立製作所、若松車輛、東急車輛製造 |
製造年 | 1966年(昭和41年) - 1974年(昭和49年) |
製造数 | 4,500両 |
主要諸元 | |
車体色 | 赤3号、淡緑色 |
軌間 | 1,067 mm |
全長 | 14,186 mm |
全幅 | 2,835 mm |
全高 | 2,851 mm |
荷重 | 36 t |
実容積 | 79.6 m3 |
自重 | 16.2 t - 17.0 t |
換算両数 積車 | 4.0 |
換算両数 空車 | 1.6 |
台車 | TR209、TR209A、TR213、TR213B-1 |
車輪径 | 860 mm |
軸距 | 1,650 mm |
台車中心間距離 | 9,386 mm |
最高速度 | 75 km/h |
国鉄トキ25000形貨車(こくてつトキ25000がたかしゃ)は、1966年(昭和41年)から1976年(昭和51年)にかけて製造された、日本国有鉄道(国鉄)の無蓋貨車である。
概要[編集]
第二次世界大戦終結直後から量産された大型無蓋車トキ15000形の廃車補充を目的として製作された。4,500両が製造され各地で汎用的に使用されたものの、1980年代以降は輸送形態の変化で用途は漸次縮小し、JR移行では約800両が承継されたが、1991年(平成3年)度から淘汰が始まり、現在ではコンテナへの移行や輸送自体の廃止が進行し、特定品目に使用される少数が残存するのみである。 各年度による製造会社と両数は次のとおりである。
- 1966年(昭和41年度) - 2,250両
- 本予算車
- 第二次債務車
- 川崎車輛 85両 (トキ26300 - トキ26384)
- 日本車輌製造 150両 (トキ26385 - トキ26534)
- 舞鶴重工業 120両 (トキ26535 - トキ26654)
- 三菱重工業 40両 (トキ26655 - トキ26694)
- 日立製作所 225両 (トキ26695 - トキ26919)
- 若松車輛 80両 (トキ26920 - トキ26999)
- 第三次債務車
- 舞鶴重工業 70両 (トキ27000 - トキ27069)
- 三菱重工業 115両 (トキ27070 - トキ27184)
- 若松車輛 65両 (トキ27185 - トキ27249)
- 1967年(昭和42年度) - 1,250両
- 本予算車
- 三菱重工業 190両 (トキ27250 - トキ27439)
- 若松車輛 60両 (トキ27440 - トキ27499)
- 第一次債務車
- 川崎車輛 255両 (トキ27500 - トキ27754)
- 三菱重工業 250両 (トキ27755 - トキ28004)
- 日立製作所 300両 (トキ28005 - トキ28304)
- 若松車輛 195両 (トキ28305 - トキ28499)
- 本予算車
- 1968年(昭和43年度) - 150両
- 第四次債務車
- 日立製作所 150両 (トキ28500 - トキ28649)
- 第四次債務車
- 1969年(昭和44年度) - 500両
- 1970年(昭和45年度) - 250両
- 民有車
- 三菱重工業 75両 (トキ29150 - トキ29224)
- 舞鶴重工業 35両 (トキ29225 - トキ29259)
- 日立製作所 115両 (トキ29260 - トキ29374)
- 若松車輛 150両 (トキ29375 - トキ29399)
- 民有車
- 1974年(昭和49年度) - 100両
- 第三次債務車
- 川崎重工業 100両 (トキ29400 - トキ29499)
- 第三次債務車
構造[編集]
妻板と「あおり戸」はプレス成型された耐候性鋼板、床板に平鋼板を用いた全鋼製車体である。1967年(昭和42年)製以降の車両には床板に転動防止用の埋木を設ける。自重はトキ15000形より僅かに軽い約 16.2 t で、荷重は 1 t 増加した 36 t である。これを識別するため、車体に表示する形式称号には 「オ」を記号の左上に小書きし、 「オトキ」 と標記される。外部塗色は赤3号である。
台車は重ね板ばねの枕ばね および 密封コロ軸受の軸箱装置を採用したベッテンドルフ式のTR209形(トキ25000 - トキ26299)TR209A形(トキ26300 - トキ28649)を用いた。後期製作の車両は、枕ばねをコイルばねに変更したTR213形(トキ28650 - トキ29399)TR213B-1形(トキ29400 - )を用いる。
1976年(昭和51年)製の車両(トキ29400 - )は車体の仕様を変更し、外板のプレス鋼板を廃し平板組立としている。従来車にも平板仕様に改造された車両が存在するが、後期車とは板の振り分け位置が違うため形態が異なる。
改造[編集]
- トキ23000形
- 35 t 積厚鋼板輸送用車で、1969年(昭和44年)に45両が改造された。
- 車体内部に鋼板の固定具を8基備えるがあおり戸は残されているため外見上は種車とほとんど変わらない。台車・台枠は種車のままである。
- 1986年(昭和61年)までに全車廃車。
- トキ23800形
- 35 t 積原木輸送用車で、1970年(昭和45年)に35両が改造された。
- 側面のあおり戸はそのままに折り畳みが出来る側柱が6本追加され、妻板も縦方向に延長されている。台車・台枠は種車のままである。
- 1983年(昭和58年)までに全車廃車。
- トキ23900形
- 36 t 積亜鉛塊専用車で、1979年(昭和54年)から1981年(昭和56年)にかけて30両(トキ23900 - トキ23929)が改造された。
- 側面のあおり戸を撤去し、側面一体型の4分割スライド屋根を追加した。台枠・ブレーキ装置は種車のものを使用し、台車もTR209形のままである。最高速度は 75 km/h で、外部塗色は赤3号である。
- 1987年(昭和62年)のJR移行では全車がJR貨物に承継されたが、1995年(平成7年)までに全車が淘汰された。
- ヤ550形
- 除草剤散布車で、線路敷内の雑草防除に用いられる事業用貨車である。1976年(昭和51年)から18両(ヤ550 - ヤ567)が改造された。
- あおり戸・妻板・あおり戸受けを撤去し、新規製作したタンク体を台枠上に設置した。車両の外観はタンク車に類似する。台枠・ブレーキ装置・台車は種車のものを用いる。補機類として薬剤散布用のポンプ・動力源のディーゼル発電機・夜間作業に用いるための作業灯を搭載する。外部塗色は黒色である。
- 各地に分散配置されて使用されたが、17両はJR移行直前に除籍された。1両(ヤ562)のみ九州旅客鉄道(JR九州)に承継され、鹿児島車両所(現在の鹿児島車両センター)に配置し、桜島から噴出する火山灰の除去に用いられていたが、晩年は動くこともなく長期にわたって留置された末、2014年(平成26年)3月15日付で廃車され、廃形式となった。
派生形式[編集]
- トキ80000形
- 30 t 積大型板ガラス専用車。日本板硝子所有の私有貨車でトキ22000形の増備車として1973年(昭和48年)に2両(トキ80000 - トキ80001)が製作された。トキ25000形と同形の妻板・あおり戸を持つが、塗装は黒で両端にデッキがあり、台車はTR211形である。輸送中に破損事故を度々起こし、休車となり1984年(昭和59年)4月27日に廃車となった。
- JR貨物トキ25000形
私鉄の同型車[編集]
- 東武鉄道トキ1形
- 後期型は妻板以外がほぼ同型とされる。ときには国鉄線内にも乗り入れていた。1991年(平成3年)形式消滅。
- 秩父鉄道トキ500形貨車
- 1968年(昭和43年)製の本形式の同形車。一部は関東鉄道へ譲渡された。
運用の変遷・現況[編集]
かつて淡緑色に塗られた花王専用車(小型コンテナ輸送用)が存在し、川崎貨物駅から梶ヶ谷貨物ターミナル駅および八王子駅へ小売店向け洗剤類を輸送していた。用途廃止後も塗装は存続されている。標記作業省力化のため、塗装変更時に記号番号標記板をマスキングし、当該箇所のみ赤3号で存置された車両も一部に存在した。
近年は定期運用を持たず、不定期に鉄道車両の車輪等を機関区間で輸送していたが順次コンテナ輸送に切り替わり、運用を失い、それからの運用は不明である。
譲渡車[編集]
本形式の譲渡車は観光用のトロッコ車両の種車として改造されたほか、事業用車となった車両も存在する。
- 天竜浜名湖鉄道
- 2両(トキ28963、トキ28692)が2000年(平成12年)に譲渡されTHT100形・THT200形となり、トロッコ列車「トロッコそよかぜ号」用として使用されていた[1]。2007年(平成19年)廃車。
- 長良川鉄道
- 1両(トキ26026)が1992年(平成4年)にながら7形7001となった[2]。2005年(平成17年)廃車。
- 樽見鉄道
- 2両(トキ29102、トキ29107)が1989年(平成元年)の全線開通の際にうすずみ1形として譲渡され、展望車両「うすずみファンタジア」とされた[3]。2005年(平成17年)廃車[4]。
- 嵯峨野観光鉄道
- 1991年(平成3年)にSK100形3両(トキ28370、トキ28266、トキ28360)とSK200形1両(トキ27541)が登場し、1998年(平成10年)にSK300形1両(トキ25833)が増備された[2]。5両編成のトロッコ嵯峨方にDE10形を連結、トロッコ亀岡方はSK200-1の運転台で機関車を遠隔制御する。
- 神戸電鉄
- 1両(トキ29484)が1989年(平成元年)に譲渡され事業用車として使用された。登場当初はトキ501形であったが、1990年(平成2年)には770形771に改番されている。1998年(平成10年)10月31日付で廃車[5]。
出典[編集]
- ^ 『ローカル私鉄車輌20年』p152
- ^ a b 『鉄道ピクトリアル』通巻678号p66
- ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻678号p65
- ^ 『鉄道車両年鑑2006年版』p216
- ^ 米倉裕一郎「私鉄車両めぐり〔168〕 神戸電鉄」『鉄道ピクトリアル』2001年12月臨時増刊号、電気車研究会。194頁。
参考文献[編集]
- 鉄道公報
- 『日本の貨車-技術発達史-』(貨車技術発達史編纂委員会編著、社団法人 日本鉄道車輌工業会刊、2008年)
- 『鉄道ピクトリアル』通巻678号「特集 譲渡車両」(1999年12月・電気車研究会)
- 鉄道ピクトリアル編集部「現有旅客用譲渡車両一覧」 pp. 62-68
- 寺田 祐一『私鉄気動車30年』JTBパブリッシング、2006年。ISBN 4-533-06532-5。
- 『鉄道ピクトリアル』通巻767号「鉄道車両年鑑2006年版」(2006年10月・電気車研究会)
- 「各社別新造・改造・廃車一覧」 pp. 205-220