ナッチャンRera

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ナッチャンRera
Natchan Rera 20131130 Hualien.JPG
花蓮港に停泊する麗娜輪(2013年11月30日撮影)
基本情報
船種 高速フェリー
船籍 日本の旗 日本(-2012)
台湾の旗 台湾(2012-)
運用者 東日本フェリー
津軽海峡フェリー(-2012)
東聯航運(2012-)
建造所 インキャットホバート造船所
母港 函館(-2012)
基隆(2012-)
姉妹船 ナッチャンWorld
建造費 約90億円
信号符字 7JBY→BIAI
IMO番号 9294238
MMSI番号 416476000
経歴
竣工 2007年
就航 2007年9月1日
運航終了 2008年11月1日
現況 2013年8月7日より台湾の旗 台湾で就航中
要目
総トン数 10,712トン
全長 112m
全幅 30.5m
デッキ数 4層
機関方式 ディーゼル×4基
主機関 9,000kW×4基
推進器 ウォータージェット推進×4基
航海速力 約36ノット(満載時)
旅客定員 1,746名(最大)
車両搭載数 普通自動車350台 または
普通自動車195台、トラック33台
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ナッチャンReraの後部
(青森港で専用岸壁に船尾接岸している様子)

ナッチャンRera(ナッチャンれら)は、東日本フェリー青森港函館港の間(青函航路)でかつて運航していた高速フェリーである。2012年台湾の企業に売却されたため(詳細は後述)、船名を麗娜輪(れいなりん)と改め、さらに現在は麗娜(れいな)と改め、台湾の蘇澳港-花蓮港の航路に就いている[1][2]

概要[編集]

船名の「ナッチャンRera」は、船体塗装のイラストをデザインした京都市在住の小学生愛称「ナッチャン」と、アイヌ語という意味の「Rera」(レラ)を合わせたもの。

2007年平成19年)9月1日に青函航路に就航し、青森港 - 函館港間をおよそ夏季1時間45分、冬季2時間15分、深夜便2時間30分(2007年10月現在休航中)で結び、カーフェリーとしては日本最速であった。

建造はオーストラリアインキャット・タスマニア社。ウォータージェット高速フェリーとしては世界最大級。建造費は約90億円。

インキャット社では本船と同様の技術・形状を用いているウェーブピアサー型高速船を多数建造しており、本船は112m型に分類される。インキャット社は建造した船舶に一連の「Hull No」を付与しているが、本船は064である。これは、姉妹船のナッチャンWorldの065と連番である。[3]

来歴[編集]

青函航路の高速化を図るため、旧・東日本フェリーは1990年から1996年までジェットフォイル、1997年から2000年までウォータージェット小型フェリー(船名はいずれも「ゆにこん」)を導入した。しかし、燃費がかさむことや波浪への弱さ、曳き波による漁業被害、およびトラックを積載できないことによる低収益性などの理由により運航が中止されていた。 ナッチャンReraの建造にあたり、新・東日本フェリーおよび親会社のリベラホールディングス(現・リベラ)では、インキャット社とともに風洞実験などを行い過去の問題点を精査し、本船の安定した運航に一定のメドを得たとしていた。しかし、運行開始後、前述の曳き波による漁業被害が再発し、漁民らは速度を落とすよう求めていた[4]

青函トンネルの開通以降、青函間の旅客輸送の多くは鉄道が担っているが、ナッチャンReraは鉄道と比して、青森-函館間において所要時間やエコノミークラスの運賃の安さの点で優位に立つことから、今後の巻き返しがなるか注目されていた。弘南バス青森上野号や一時期の十和田観光電鉄ブルースター号国際興業バス共同運行していた時期)の夜行バスとの連携も積極的に進めていた。一方で、在来船の2倍以上となる運賃や、ファーストクラスでも横になれないなど在来船との差も残った。車両輸送の運賃格差は旅客輸送以上に影響が大きく、就航直後には減便された在来船で車両航送の満車が頻繁に発生した。

2008年11月末をもって運航会社の東日本フェリーは国内フェリー事業から撤退し、これにより多くの航路が運航を休止したが、当船は同社の撤退に先立つ同年11月1日をもって、僚船のナッチャンWorldとともに定期運航を休止した[5]。こののち、ナッチャンWorldが夏期限定ながらも青函航路に復活運航を果たしたのに対し当船にはそういった動きはなかったが、東日本フェリーを吸収合併した津軽海峡フェリーによって、2010年7月に係船地変更のため室蘭港へ回航された後、船内見学会やミニクルーズが実施された[6]

その後、防衛省にて離島奪還作戦に不可欠な高速輸送艦として利用するため購入が検討される[7]などの動きもあったが、結局2012年10月に台湾の華岡集団中国語版(Wagon Group)に約54億円で売却された[8]。華岡集団では傘下の東聯航運中国語版(Uni-Wagon Marine)において、台北港中国語版福建省中部の平潭島中国語版間の航路に利用する方針を明らかにしている[9]

2013年8月7日から9月8日までの間、台湾の蘇澳港中国語版 - 花蓮港中国語版の航路に週6往復の計画で仮運航を開始した。片道料金はエコノミークラスで700台湾ドル(2013年8月現在約2,246円)で、同区間の台鉄北廻線の運賃と比べると高額であるが、観光ツアー客の乗船と災害時の緊急輸送を見込んでいた[2]。船名表記が麗娜輪と改められたが、英語表記は NATCHAN RERAのままで、船体塗装も維持されている。

2014年5月27日から、台湾の台北港と中国福建省の平潭島間を結ぶ航路に就航した。これは、台湾所属の客船で運航される史上初の台中定期航路である。就航当初は、週2往復、所要時間は片道3時間で、運賃はエコノミークラスで3,450台湾ドル、ビジネスクラスで3,950台湾ドル、ファーストクラスで4,500台湾ドルである。[10]就航当初の時点では、台湾と中国の間の車両交流に対する会談が行われていないため、旅客のみの乗船となる。今後は車両輸送も検討するが、実現にはナンバープレートと運転免許の相互認証に関する問題の解決が必要である。

2015年6月、船名の漢字表記を「麗娜輪」から「麗娜」に変更[11]

2016年4月、華岡集団と沖縄県の総合物流グループであるシンバネットワークあんしんが共同で、本船を花蓮 - 石垣航路に就航させる計画を発表した。片道の所要時間は最短4時間で試験運航の第1便は台湾の蕭美琴中国語版立法委員を代表とした経済交流視察団約100名[12]を乗せて2016年5月14日夕、石垣港に初入港した[13]。2015年内に10回のチャーター運航が予定されており、将来的に週1便程度の定期運航が構想されている[14]

船体と装置類[編集]

船内設備[編集]

TIER4
  • エグゼクティブクラス(ドリンク・ビデオサービス有)
  • バーラウンジ
  • シャワー
TIER3
  • エコノミークラス
  • ビジネスクラス
  • エントランスラウンジ
  • 売店
  • カフェ
  • キッズルーム
  • パブリックカウンター

ウェーブ・ピアーサー[編集]

ナッチャンWorldの船首形状
ナッチャンWorldの船尾形状。
センターハルは水面に接していない事が確認できる。

本船は双胴船の中でも比較的新しい船型である「ウェーブ・ピアーサー」形状をしており、水線下の2つの船体が非常に細く作られている。船長112mの船体で最大積載は1500tであり、高速船としては非常に優秀といえる。本船では船首側がわずかに1度低い船首トリムと呼ばれる状態での航行が最も抵抗が少なくなる。

下部船体は水密隔壁によって左右それぞれ10区画の水密区画に分けられており、万一の場合にも簡単には沈まないようにできている。

ウォータージェット[編集]

ナッチャンWorldの後部に4基備えられたウォータージェット
離岸のためナッチャンWorldのウォータージェットが作動する様子

一般的なスクリューではなく、ウォータージェット推進器を左右合わせて4個備えており、強力な水流の噴射によって高速航行を可能にしている。ウォータージェットでは水流の向きを左右に最大30度まで変えられるので、舵を必要とせずにすばやく船の向きを変えられる。また、ウォータージェットには後進バスケットと呼ぶ偏向板があり、後進時にはこれを噴射口へ押し上げることで水流の方向を前方下方へ変えることで推進力を180度逆の後進へと変えられる。また、後進バスケットを中間位置にすれば、エンジンを回したままで推力をかけない停止状態にもできる。

左右での水の噴射方向を逆にすることで、横方向への移動や、その場での回転がおこなえる。

41.5ノットで旋回したときの旋回円の直径は620mであり、41ノットでのクラッシュ・アスターン(Crash Astern)による停止では1分27秒後にまっすぐ721m先に停止できた。これらはいずれも、非常に優秀な成績といえる。

エンジン[編集]

中速回転のディーゼル・エンジン(MAN B&W 20RK280)を左右の下部船体後部に合計4基備えている。片側2基のエンジンは下部船体の幅が狭いために前後に互い違いに据えられている。それぞれが12,245PS(メートル馬力、9,000kW)のV型20気筒ディーゼル・エンジンは毎分1,000回転を減速機によって470回転まで落として、ウォータージェットのポンプを駆動している。

燃費は旅客と貨物を満載した1450tの状態で36ノットで航行したとき、軽油を8,625リットル/時間だけ消費して、リッターあたりでは8mとなる。

減揺装置[編集]

Tフォイル波が穏やかで減揺が不要なときは、船体側へ折り込んでおける。

高速で航行する本船は波による揺れを押さえるために減揺装置として、船首下に「Tフォイル」(T-foil)、左右の船尾にはトリムタブを備える。

Tフォイル
Tフォイル(T-foil)は船首下から海水中へ垂直に伸びる支持部とその先端部の水中翼により、フィン・スタビライザーにも似たしくみで揺れを抑える。
トリムタブ
トリムタブは必要に応じて船尾の船底部分に板を突き出すことで揚力を発生して、船尾に上向きの力を作り出す装置である。これが左右の船尾に備えられている。

ブリッジ[編集]

ナッチャンWorldの船室およびブリッジ

ブリッジ、つまり船を操船する船橋は船の中央最上部にある。他の船と異なり、機械装置を操作するためにブリッジ内を歩き回るようにはできておらず、航空機の操縦席にも少し似た「統合型ブリッジ」になっている。ブリッジの前3分の1ほどが横3人掛けのシートになっており、左から機関長/機関士席、船長席、航海士席となっている。船長席の後ろに、後ろ向きに操作する接岸用操船パネルがあり、接岸時の細かな操船のためのレバーとテレビカメラ映像パネルが備わっている。右肘掛けの端につまみのような小さな舵輪があり、文字通り手元で操作が可能になっている。

3人席のコックピットの後ろには、情報分析スペースとして海図や外部からの情報を入手・分析できるようになっている。ブリッジの後部3分の1は休憩のためのいくつかの座席が用意されていて、隅に階下への階段と後部デッキへのドアが付いている。

その他[編集]

緊急避難[編集]

ナッチャンWorldのライフラフトおよび離岸・着岸時の操船用の操縦室
ライフラフト
緊急時の避難先としての「ライフラフト」には、乗り移るための滑り台式スロープがラフトと同時に膨らむガス展張式のものが備わっている。

乗船・下船[編集]

本船の停泊時間はわずか45分であったため、200台あまりの車輌と800人ほどの乗客をこの短時間で下船させて、また乗船させなければならなかった。車輌の乗船時には、重い車が前後や左右に集中すると船が傾いてしまう(前後・左右トリム)ため、一等航海士などの船員が場所を指示して駐車させていた。特に下船や搭乗中に船が傾きすぎると、ランプウェイに角度が付きすぎて車輌の底を打つ危険があるので注意が必要であった。

脚注[編集]

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  1. ^ ナッチャンRera台湾へ - ゲストハウス 函館クロスロード・2012年10月22日
  2. ^ a b “麗娜輪首航 藍色公路啟動”. 自由時報. (2013年8月7日). http://www.libertytimes.com.tw/2013/new/aug/8/today-life16.htm 2013年8月8日閲覧。 
  3. ^ 112 Metre Wave Piercing Catamaran - Incat(2013年12月31日閲覧)
  4. ^ ホタテ漁師:押し寄せる波と砂に「困った」 青森・陸奥湾 - 毎日jp(リンク切れ)
  5. ^ 北海道新聞(2008年9月9日付、リンク切れ)
  6. ^ 高速船“美人”ナッチャンRera、室蘭港に到着 - 室蘭民報(2010年7月6日付、同月16日閲覧)
  7. ^ フェリーを高速輸送艦に 防衛省が転用検討 離島奪還で陸自輸送の切り札 - 産経新聞(2011年2月21日付)
  8. ^ 高速船「ナッチャンRera」、台湾への売却額54億円 - WEB CRUISE・2012年11月22日
  9. ^ 2012/08/20の台湾経済ニュース - ワイズコンサルティング
  10. ^ “快訊/首艘國籍船「麗娜輪」27日台北港啟航平潭”. ETToday. (2014年5月27日). http://travel.ettoday.net/article/361490.htm 2014年5月27日閲覧。 
  11. ^ 華岡集團: 麗娜輪。台北-平潭要開船嘍 - Facebook(繁体字中国語)
  12. ^ “花蓮 - 石垣間に高速貨客船”. 八重山毎日新聞 (八重山毎日新聞社). (2016年5月12日). http://www.y-mainichi.co.jp/news/29795/ 2016年5月12日閲覧。 
  13. ^ “ナッチャン・レラ 初入港”. 八重山毎日新聞 (八重山毎日新聞社). (2016年5月15日). http://www.y-mainichi.co.jp/news/29812/ 2016年5月15日閲覧。 
  14. ^ “「あんしん」がクルーズ船 石垣―台湾花蓮、5月に就航”. 琉球新報 (琉球新報社). (2016年4月15日). http://ryukyushimpo.jp/news/entry-257293.html 2016年4月17日閲覧。 

出典[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]