戸井線
戸井線(といせん)は、北海道函館市の函館本線五稜郭駅から亀田郡戸井町(現函館市)の戸井駅までを結ぶ計画だった未成の鉄道路線である。
概要[編集]
函館 - 戸井 - 椴法華 - 川汲 - 砂原間の鉄道敷設運動の結果、改正鉄道敷設法別表第128号に「渡島國凾館ヨリ戸井ニ至ル鐵道」として規定された予定線だった。
津軽海峡を隔てて渡島半島(函館要塞、のちの津軽要塞がある)と下北半島(軍港の大湊港がある)は軍事上重要であり、軍当局より輸送力確保の整備を要請されていた。軍当局と鉄道院は1920年(大正9年)に調査を行い、同院調整の鉄道線路網表に函館-釜谷間13マイル(約20.8km)を予定線として載せたことが始まりである。このため函館釜谷鉄道とも呼ばれた[1]。その後、1924年(大正13年)7月、戸井村を津軽要塞地帯に編入、汐首岬砲台の建設が計画されて、その軍事物資及び兵員輸送目的で、1944年(昭和19年)完成を予定して[2]、戦時中の1936年(昭和11年)に建設が開始された軍用鉄道[3]である。
9割方の路盤が完成していた[4]ものの、戦時中ということもあり資材不足のため1943年(昭和18年)に工事を中断[2]。完成していた一部区間(五稜郭駅から湯の川地区までレールが敷かれ車両が走行していた[2] )は1945年(昭和20年)4月から、軍の命令によって進められた赤川飛行場の造成のための砂利(湯川町方面の松倉川から赤川通りのガードまで運んだ)などの輸送に利用された[5]が、結局戦後建設は再開されないまま中止となった。駅は終点の戸井駅を含めて9駅が予定されていた。
その後青函隧道計画が持ち上がった際、東ルート案では戸井線区間を通ることになっていたが、1968年(昭和43年)、西ルート(津軽線・江差線)で建設することに決定し、戸井線開通の可能性は消えた。
大間側でも連絡する鉄道(大間線)が計画されており、その一部として大畑線が建設されていたが、結局大間までは至らず、既開業区間の下北駅 - 大畑駅間も1985年(昭和60年)に下北交通に転換、2001年(平成13年)に廃止された。
歴史 [編集]
- 1920年(大正9年) 軍当局と鉄道院が調査を行い、同院調整の鉄道線路網表に函館-釜谷間13マイル(約20.8km)を予定線として載せた
- 戸井村を津軽要塞地帯に編入
- 1927年(昭和2年) 要塞名を津軽要塞と変える
- 1936年(昭和11年)10月 第一工区着工
- 1938年(昭和13年)4月 第二工区着工
- 1938年(昭和13年)7月 第三工区着工
- 湯川町を函館市に編入
- 1939年(昭和14年)6月 第一工区竣工
- 1940年(昭和15年)3月 第三工区竣工
- 1940年(昭和15年)4月 第二工区竣工
- 1940年(昭和15年)5月 第四工区甲および乙着工
- 1941年(昭和16年)11月 第四工区甲竣工
- 太平洋戦争開戦
- 1942年(昭和17年)9月 第四工区乙建設休止
- 1945年(昭和20年)4月 赤川飛行場建設の物資輸送に活用
- 太平洋戦争終戦
- 1968年(昭和43年) 青函トンネルは西ルートにて建設されることが決定される
- 1971年(昭和49年)9月 函館市が全線の用地を購入、また全線の土木施設の譲渡を受ける
- 亀田市が函館市に編入
- 戸井町が函館市に編入
- 2014年(平成16年)3月28日 蓬内川橋梁を解体し蓬内橋が建設される
工事概要 [編集]
区間を5つに分け工事を進めた[6]。
- 第一工区 - 請負は今井組で1936年(昭和11年)10月に着手し、1939年(昭和14年)6月に竣工した。大きな工事は深堀切通しで現在の緑園通りに当たる。これを施工するためにレールを設け、小型蒸気機関車牽引の土砂運搬列車を走らせている。他には跨線橋を3箇所設けた。現在は1箇所残っている[7]。昭和-富岡町区間は盛土で、その土を取る土地を富岡町に確保した(のちに農業用水の捨て水が貯まる土方沼になる)[8]。
- 第二工区 - 請負は堀内組で1938年(昭和13年)4月に着手し、1940年(昭和15年)4月に竣工した。主な工事は松倉川橋脚および汐泊川橋脚5基である。鋼材不足により橋桁は架けられることはなかった[9]。
- 第三工区 - 請負は堀内組で1938年(昭和13年)7月に着手し、1940年(昭和15年)3月に竣工した[10]。
- 第四工区甲 - 請負は地崎組で、1940年(昭和15年)5月着手、1941年(昭和16年)11月竣工、汐首岬第1陸橋をコンクリートアーチ橋で建設した。他トンネル1ヵ所[11]。
- 第四工区乙 - 請負は瀬崎組で、1940年(昭和15年)5月着手、1942年(昭和17年)9月に建設休止。トンネル2ヵ所、瀬田来第1陸橋、瀬田来第2陸橋、蓬内川橋梁をコンクリートアーチ橋で建設した[12]。
跡地・遺構[編集]
戸井線用地は1971年(昭和49年)9月、一括で函館市が購入した(土木遺構は無償譲渡を受けた)。その後旧戸井町区間は函館市から旧戸井町に用地や土木遺構全てを無償譲渡された。
旧亀田市エリアに当たる昭和 - 本通間は函館市道本通富岡線に転用された。
東五稜郭駅予定地は本通遊園地として、駅員宿舎予定地は本通青少年会館として利用された[13]。
旧湯川町エリアに当たる深堀町 - 湯川町3丁目間を結ぶ1.8kmの歩行者自転車専用道路「緑園通り」は、1978年(昭和53年)に函館市が遊歩道にしたものである。また、本通-川原町の区間は「川原緑道」として同様に整備されている[14]。
旧戸井町エリアに当たる瀬田来町内の区間は函館市道瀬田来7号線に転用されている。また、国道278号戸井バイパスの路盤の大半は戸井線の路盤が転用されている。
函館市汐首町の汐首岬灯台直下の山腹に建設されたコンクリートアーチ橋や、汐泊川河口の橋脚、トンネル等多くの遺構が残されている。これらは戦時中の粗悪なコンクリートが使用されていることに加え、長年放置されたことで老朽化が激しく、崩落の危険があるものも出てきている。 瀬田来町の「蓬内橋」は戸井線のコンクリートアーチ橋を市道瀬田来7号線の橋梁に転用していたが、建設当時、鉄不足のために鉄筋の代わりに竹筋が使われた可能性も指摘され、老朽化による安全面での不安に加え、津波が到達した際の避難路整備の観点から、解体され新橋に架け替えられることが決まり[15]、2013年2月4日から解体工事が開始された[16][17]。解体作業は同年3月19日までに完了。内部には竹や木といった補強材は見られず、補強材を使用しない無筋コンクリートであることが判明した。内部には締固め不足が原因とみられる空洞があった一方で、コンクリートの圧縮強度は現行の基準を上回っていたこともわかった[18]。跡地には新しい蓬内橋が建設され、2014年(平成16年)3月28日に開通した[19]。
路線データ[編集]
- 管轄:日本国有鉄道
- 路線距離(営業キロ):五稜郭 - 戸井 29.2km(着工区間 26.4km)
- 駅数:10(起終点駅を含む)
- 軌間:1067mm
- 全線単線
- 電化方式:全線非電化
- 閉塞方式:タブレット閉塞式
予定駅一覧[編集]
予定駅は下記の通り。括弧内は左側の駅との駅間距離。
五稜郭駅 - 東五稜郭駅(3.3km) - 湯の川駅(3.9km) - 銭亀沢駅(3.5km) - 渡島古川駅(2.8km) - 石崎駅(3.3km) - 小安駅(3.2km) - 汐首駅(3.4km) - 弁財駅(2.6km) - 戸井駅(3.0km)
並行する交通[編集]
五稜郭 - 湯の川間を除き、ほぼ全線にわたって国道278号が並行している。また、函館 - 戸井間には函館バスにより路線バスが運行されている。
脚注[編集]
- ^ 函館市史 別巻 亀田市編 1978年 p492-494
- ^ a b c 図解 函館·渡島·檜山の歴史 佐々木馨監修 郷土出版社 2008年 p198-199
- ^ 恵山町史 函館市恵山支所編 2007年 p1078-1083
- ^ 椴法華村史 椴法華村編 1989年 p785-786
- ^ 函館市史 別巻 亀田市編 1978年 p494-496
- ^ 恵山町史 函館市恵山支所編 2007年 p1078-1083
- ^ 恵山町史 函館市恵山支所編 2007年 p1078-1083
- ^ 函館市史 別巻 亀田市編 p494-496
- ^ 恵山町史 函館市恵山支所編 2007年 p1078-1083
- ^ 恵山町史 函館市恵山支所編 2007年 p1078-1083
- ^ 恵山町史 函館市恵山支所編 2007年 p1078-1083
- ^ 恵山町史 函館市恵山支所編 2007年 p1078-1083
- ^ 函館市史 別巻 亀田市編 p494
- ^ “川原緑道〔緑園通り〕”. 函館タウンなび. 2014年11月15日閲覧。
- ^ 函新トピック 2012年8月14日 (火) 掲載
- ^ 函館:幻の旧戸井線鉄橋 解体始まる - 毎日新聞、2013年2月4日
- ^ “旧国鉄戸井線の遺構「アーチ橋」解体工事本格化”. 函館新聞社 (2013年2月5日). 2014年11月15日閲覧。
- ^ “旧戸井線遺構「蓬内橋」、無筋コンクリ製だった”. 函館新聞社 (2013年3月27日). 2014年11月15日閲覧。
- ^ “戸井支所 News&Topics 市道瀬田来7号線蓬内橋 渡橋式”. 函館市. 2014年11月15日閲覧。
参考文献[編集]
- 書籍
- 「注解 鉄道六法」平成20年版 国土交通省鉄道局監修 第一法規出版 2008年10月発行
- 旧法 鉄道敷設法
- 「旅」1999年11月号 特集:鉄道新時代 21世紀への序曲(JTB1999-11 No.874)
- 別冊付録:改正「鉄道敷設法」別表を読む 三宅俊彦
- 図解 函館·渡島·檜山の歴史 佐々木馨監修 郷土出版社 2008年
- 恵山町史 函館市恵山支所編 2007年
- 椴法華村史 椴法華村編 1989年
- 函館市史 別巻 亀田市編 1978年
- 「注解 鉄道六法」平成20年版 国土交通省鉄道局監修 第一法規出版 2008年10月発行
- Webサイト
- “旧戸井線 函館市公式観光情報はこぶら”. 函館市観光部. 2014年11月13日閲覧。
- “市史余話 84 未完に終わった「戸井線」 不急の鉄道として突然中止に”. 函館市. 2014年11月13日閲覧。
- “土木遺産シリーズ 戸井線アーチ橋”. 函館開発建設部. 2014年11月13日閲覧。