JR東日本E657系電車
JR東日本E657系電車 | |
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![]() 常磐線を走行するE657系 | |
基本情報 | |
運用者 | 東日本旅客鉄道 |
製造所 |
近畿車輛 日立製作所笠戸事業所 総合車両製作所横浜事業所 |
製造年 | 2011年 - 2019年 |
製造数 | 19編成190両 |
運用開始 | 2012年3月3日 |
主要諸元 | |
編成 | 10両編成 |
軌間 | 1,067 mm |
電気方式 |
直流1,500V 交流20,000V 50Hz (架空電車線方式) |
最高運転速度 | 130 km/h |
起動加速度 | 2.0 km/h/s |
減速度 | 5.2 km/h/s |
編成定員 | 570名(普)+30名(グ)=600名 |
編成重量 | 380.3 t |
編成長 | 207 m |
全長 |
20,500 mm 21,500 mm(先頭車) |
車体長 |
20,000 mm 21,100 mm(先頭車) |
全幅 | 2,946 mm |
車体幅 | 2,946 mm |
車体高 |
4,080 mm 4,249 mm(集電装置搭載車) |
車体 | アルミニウム合金 |
台車 |
軸梁式ボルスタレス台車 DT78(電動車) TR263・TR263A・TR263B(付随車) |
主電動機 | かご形三相誘導電動機 (MT75B) |
駆動方式 | TD平行カルダン駆動方式 |
制御方式 | IGBT素子VVVFインバータ制御(1C4M) |
制動装置 | 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ、抑速ブレーキ |
保安装置 | ATS-P, ATS-Ps |
出典:『鉄道のテクノロジー 11』三栄書房、『鉄道ファン2011年9月号』交友社 |
E657系電車(E657けいでんしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の交直流特急形車両。2012年(平成24年)3月に営業運転を開始した。
概要
常磐線の特急用車両である651系電車およびE653系電車の置き換え用として導入され、10両編成19本の計190両(当初の導入は16本160両)が日立製作所、近畿車輛、総合車両製作所横浜事業所にて製造された[1][2] 。新製以来、全編成が勝田車両センターに所属している。
運用
常磐線の特急列車「ひたち」「ときわ」を中心に運用され、常磐線のすべての特急列車が本系列で運転されている。
2015年3月14日のダイヤ改正より常磐線の特急列車は速達タイプの列車が「ひたち」、停車タイプの列車が「ときわ」に改称された。また、同日の上野東京ライン開業に伴い、日中の列車を中心に品川駅発着となった[3][4]。また、この運転区間延長に備えて、2014年11月に本系列10両編成1本(K17編成)が総合車両製作所横浜事業所にて新製・増備されている[5] 。
運用区間は品川駅・上野駅 - 土浦駅・勝田駅・高萩駅・いわき駅・仙台駅間を主とする。
2012年3月3日に臨時特急「復興いわきフラガール号」で営業運転を開始[6][7][8]、2012年3月17日実施のダイヤ改正から上野 - いわき間の「スーパーひたち」10往復と、上野 - 勝田間の「フレッシュひたち」4往復、上野 - 土浦間の「フレッシュひたち」下り1本[9]で定期列車として運転を開始した。2013年3月15日に常磐線での651系・E653系の定期運用が終了したことで、「スーパーひたち」「フレッシュひたち」は本系列での運行に統一された[9]。それに伴い1列車あたりの両数および座席数が減少するため、朝の上りと夜の下りで増発され、既存の列車も夜間の下り列車を中心に停車駅が追加された。その後、同年10月から改造工事(後述)を行うことになり、本系列の車両数が不足することになったため、2015年3月まで651系による運用が復活していた[10]。
2020年3月14日から常磐線全線運転再開に伴い、品川・上野~仙台間3往復の運用が始まった。これにより新たに、2編成(K18、K19編成)が増備された。
構造
車体
アルミニウム合金によるダブルスキン構造を採用した。E259系電車の構体をベースに、交流区間用の高圧機器を屋根上に搭載するため屋根高さを105mm低下させてE653系電車と同じ高さとしている[11]。
先頭構体は、近畿車輛によってデザインされたクラッシャブルゾーンを設けたFRP製で、歴代の常磐線特急型電車と同様に階上に運転席を上げた高運転台構造をとる。651系のような前面愛称表示機は備えていない。
塗装は、赤みを帯びた白をベースに、窓回りに黒を、窓下に紅梅色の帯を配し、「白梅・赤梅」を表現している。裾部と前面スカートには薄紫を配する。
側面の行先表示機にはフルカラーLEDが採用され、列車名・行先・座席種別・号車番号のほか、E233系と同様に次の停車駅も表示する。
約1年半の短期間における大量増備だったため増備中の大きな変更点はないが、外観で認識できる差異として前面スカートの分割方式の変更がある。これは現場の意見を取り入れたもので、事故発生時の早期復旧や救援時の処置時間短縮を目指し、スカートの交換を容易にするため一体型から三分割方式に変更し、蓋の固定方式をねじ止め方式からパッキン錠に変更。第9編成からは新製時から施工されている。
両方の先頭車では当初からスカート形状に違いがあり、連結器下に蓋があるのがいわき方先頭車で、現在は付属編成はないが、図面によればこちらに電気連結器が描かれ、将来の併結を考慮したものとされる。
走行機器
モハE657形とモハE656形で電動車ユニットを組み、先頭車2両・中間車2両の4両の付随車を含んだ6M4Tの10両で編成を構成する。制御方式は、コンバータ装置とVVVFインバータ装置を1つにまとめた主変換装置を搭載しており、日立製作所[12][13] 製の低損失IGBT素子を用いたVVVFインバータ制御により、VVVFインバータ装置1基で4基の電動機を制御する1C4M構成となっている。交流区間では、変圧器で降圧された後にコンバータ装置で直流に整流されVVVFインバータ装置に送られるが、直流区間では、変圧器とコンバータ装置を介さず、架線からの電力がVVVFインバータ装置に直接に送られる。
補助電源装置は三相交流440V、260kVAの容量を有する三菱電機製[12]IGBT素子使用の静止形インバータ (SIV) SC95形をM2車に搭載し、編成全体で同期運転をさせることで、冗長性を確保している[11]。また、サロE657形を除く付随車にはスクリュー式電動空気圧縮機 (MH3130-C1600S1) を装備している。
台車は軸梁式ボルスタレス台車を採用する。電動車はDT78、付随車はTR263を使用する。耐寒耐雪性能を向上させ、ヨーダンパを装着する。
集電装置は、シングルアーム式パンタグラフ (PS37A) をモハE657形(M1車)の前位(いわき寄り)に搭載し、編成で3台搭載とする。屋根上機器が多いため予備パンタグラフはない。
電動車の屋根上には抵抗器が搭載できるように準備工事がなされている。これは将来において閑散線区への転用を想定し、現在使用している回生制動が使用できない場合でも電気制動を使用できるようにするため。
空調装置 (AU734) は集中式で各車両の屋根中央に1基設置される。冷房時の能力は41.9kW (36,000kcal/h)である。
最高速度は130km/hで、先頭車とグリーン車には新幹線E2系や「成田エクスプレス」用E259系で採用されているフルアクティブサスペンションを搭載し、車体間ダンパを全車に装備することで乗り心地の改善を図った。
将来の耐寒耐雪構造強化のため床下機器にカバーが付けられるよう取り付け台座があり、カバーが付けやすいように機器を配置している。
内装・設備
各座席にはノートパソコンを置くことが可能なテーブルとコンセント(100V/60Hz)を設置し、WiMAX(モバイルWiMAX)を利用したブロードバンド環境が整備される[14]。車内自動放送装置が搭載されている。また車内案内表示器にはフルカラーLED式を採用し、行き先・停車駅案内等のほか、列車運行情報やニュースなどを配信する。
編成定員は600人(グリーン車30人、普通車570人)。シートピッチは普通車960mm、グリーン車1,160mm。
奇数号車にはトイレ(男性用小便器+洋式便器)・洗面所を備え、5号車は電動車椅子対応となっている。
普通車の座席は霞ヶ浦のおおらかなうねりをイメージした模様になっていて、グリーン車の座席には梅の柄が入っている。
現在では、座席上の荷物棚に縦に配置された赤・黄・緑の3色のLEDランプで指定席の発売状況が確認できる座席上方ランプが設置されている。この座席上方ランプは、2015年3月14日のダイヤ改正での新たな着席サービス用に設置されたもので、2013年10月から2015年3月にかけて順次改造工事が行われた(K17編成以降の編成は当初より設置)。
編成・形式
← 品川・東京・上野 水戸・いわき・仙台 →
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号車 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
K編成 | クハE656 - 0 (T'c) |
モハE657 - 200 (M1) |
モハE656 - 200 (M2) |
サハE657 - 0 (T1) |
サロE657 - 0 (Ts) |
モハE657 - 100 (M1) |
モハE656 - 100 (M2) |
モハE657 - 0 (M1) |
モハE656 - 0 (M2) |
クハE657 - 0 (Tc) |
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- モハE657形 (M1)
- 普通席を備える中間電動車。モハE656形とユニットを組んで使用される。主変圧器・交直補助制御箱・主変換装置・集電装置などを搭載する。
- モハE656形 (M2)
- 普通席を備える中間電動車。モハE657形とユニットを組んで使用される。トイレ・洗面所を備え、主変換装置・静止形インバータ装置 (SIV) などを搭載する。
- クハE657形 (Tc)
- 普通席を備える制御付随車。いわき向き運転台を備え、空気圧縮機などを搭載する。
- クハE656形 (T'c)
- 普通席を備える制御付随車。上野向き運転台・トイレ・洗面所を備え、空気圧縮機などを搭載する。
- サロE657形 (Ts)
- グリーン席を備える中間付随車。便所・トイレ・車椅子対応設備・多目的室・飲食店営業許可にも対応した車内販売準備室を備える。
- サハE657形 (T1)
- 普通席を備える中間付随車。空気圧縮機を搭載する。
E655-1(TR)組込み仕様
(2011年9月28日 大崎駅)
付記
当初の計画では、2012年春のダイヤ改正で輸送体系を変更し、いわき駅で特急の系統を分割するとしていた。当初は上野駅 - いわき駅間の特急列車は本系列と651系での運転とし、2012年秋ごろに本系列に統一される予定であった。また、いわき駅 - 仙台駅間は新設する特急列車(いわき駅同一ホームで接続)をE653系で運転する予定であった。
しかし、2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)による津波被害や東京電力福島第一原子力発電所事故による放射能汚染の影響により常磐線自体の復旧のめどが立たなくなったため、一部復旧したいわき駅以北の区間においても特急列車の運転も休止、計画自体も未定となった。このため、転出予定だったE653系は当初の予定から変更され、引き続き上野駅 - 勝田駅・いわき駅間で「フレッシュひたち」の運用に就くことになった。E657系への置換完了時期は、「2012年秋」から「2012年度中」に変更となり、最終的には2013年3月16日のダイヤ改正で実施された。後に、E653系は常磐線内での波動用車両を経て、新潟県内を中心とした運用(「いなほ」・「しらゆき」で使用)に方針転換された。
一方、上野駅 - いわき駅間における輸送体系はほぼ同じで、2013年3月16日の改正後も列車名は「スーパーひたち」・「フレッシュひたち」のままであった。なお、E657系がいわき駅より先に乗り入れないのは、震災発生以前に決定した計画通りであったが、2019年7月5日、JR東日本は不通となっていた富岡駅から浪江駅間が2020年3月14日ダイヤ改正に復旧し、常磐線全線で運転再開することに合わせて本系列の10両編成を2編成増備し、品川・上野駅~仙台駅間を常磐線経由で直通する特急「ひたち」を運行する計画であることが公表された[15][16][17]。これに合わせて、2019年秋から冬にかけて総合車両製作所横浜事業所にてK18・K19編成が新たに製造された。2020年3月14日ダイヤ改正より、特急「ひたち」3往復が仙台駅に乗り入れを再開し、同時にいわき駅以北での運用が開始され、震災以前の従来の計画であったいわき駅での特急列車の系統分割はされずに全列車10両編成のひたち号として運転を開始した。
脚注
- ^ 『鉄道のテクノロジー 11』 三栄書房、2011年、pp.2 - 7。ISBN 9784779612527。
- ^ 交通新聞社「JR電車編成表2015夏」記事。
- ^ “「上野東京ライン」開業により、南北の大動脈が動き出します” (PDF) (プレスリリース), 東日本旅客鉄道, (2014年10月30日) 2014年10月30日閲覧。
- ^ “「上野東京ライン」開業により、南北の大動脈が動き出します” (PDF) (プレスリリース), 東日本旅客鉄道水戸支社, (2014年10月30日) 2014年10月30日閲覧。
- ^ 交友社「鉄道ファン」2015年5月号「平成27年3月14日ダイヤ改正にともなうJR東日本車両の動き」記事。[要ページ番号]
- ^ “春の増発列車のお知らせ” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 東日本旅客鉄道, (2012年1月20日) 2018年7月30日閲覧。
- ^ “常磐線新型特急列車E657系で特急「復興いわきフラガール号」運転!” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 東日本旅客鉄道水戸支社, (2012年1月20日), オリジナルの2012年12月22日時点におけるアーカイブ。 2018年7月30日閲覧。
- ^ “14年ぶりに新型特急導入 JR常磐線で試乗会”. 産経新聞. MSN産経ニュース (産経新聞社). (2012年2月10日). オリジナルの2012年2月11日時点におけるアーカイブ。 2018年7月30日閲覧。
- ^ a b “2012年3月ダイヤ改正について” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 東日本旅客鉄道水戸支社, (2011年12月16日), オリジナルの2011年12月23日時点におけるアーカイブ。 2018年7月30日閲覧。
- ^ “常磐線特急ひたち号の編成変更について” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 東日本旅客鉄道水戸支社, (2013年8月8日), オリジナルの2014年10月30日時点におけるアーカイブ。 2018年7月30日閲覧。
- ^ a b 『鉄道ファン2011年9月号』交友社、2011年、p.80。
- ^ a b エリエイ「とれいん」2011年8月号MODELERS FILE「東日本旅客鉄道 E657系交直流両用特急電車」記事。
- ^ 日立評論 2012年1月号「交通」 (PDF)
- ^ WiMAX、スーパーひたち新型車両内で利用可能に──3月17日より - ITmedia +Dモバイル 2012年3月14日閲覧
- ^ 常磐線全線運転再開にあわせた特急列車の直通運転について (PDF) - JR東日本ニュース(東日本旅客鉄道株式会社) 2019年7月5日
- ^ “<常磐線>仙台-東京に直通特急 年度内全線再開”. 河北新報社 (2019年7月6日). 2019年7月8日閲覧。
- ^ “常磐線特急、東京都区内〜仙台間で再開へ 全線再開にあわせE657系で直通運転 JR東日本”. 乗りものニュース (2019年7月5日). 2019年7月14日閲覧。
参考文献
- 『鉄道のテクノロジー 11』三栄書房、2011年、pp.2 - 7。ISBN 9784779612527。
- 益山義裕(東日本旅客鉄道株式会社運輸車両部車両技術センター) 「E657系特急形交直流電車」『鉄道ファン』2011年9月号、交友社、2011年、pp.78 - 85
- 鉄道友の会発行の会誌「RAILFAN」2013年10月号
外部リンク
- 常磐線特急に新型車両を導入! (PDF) - 東日本旅客鉄道 プレスリリース 2010年12月7日
- JR東日本車輌図鑑 E657系
- 編集長敬白:常磐線新型特急E657系が完成。 - 鉄道ホビダス
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