JR東日本キハE120形気動車

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JR東日本キハE120形気動車
JR East Kiha E120-6 Touhoku Coler DSC 00441.jpg
米沢駅停車中のキハE120-6ほか(米坂線撤退前)
基本情報
運用者 東日本旅客鉄道
製造所 新潟トランシス
製造年 2008年
製造数 8両
運用開始 2008年11月1日
投入先 白新線羽越本線米坂線信越本線磐越西線只見線
主要諸元
編成 両運転台付単行車
軌間 1,067 mm
最高速度 100 km/h
起動加速度 1.58 km/h/s(0 - 60km/hまでの平均加速度)[1]
減速度(常用) 3.5 km/h/s[1]
減速度(非常) 3.5 km/h/s[1]
車両定員 114名(座席39人)
自重 38.5 t
全長 20,000 mm
車体長 19,500 mm
全幅 2,920 mm
全高 冷房キセ高さ:4,036 mm
屋根高さ:3,620 mm
車体 ステンレス
台車 軸梁式ボルスタレス台車
DT74形/TR259形
動力伝達方式 液体式
機関 DMF15HZ (SA6D140HE-2)
機関出力 331kW (450PS) ×1
変速機 DW22形(日立ニコトランスミッション[1]製)
変速段 変速1段、直結4段[1]
制動装置 電気指令式空気ブレーキ直通予備ブレーキ・耐雪ブレーキ・抑速ブレーキ機関ブレーキ排気ブレーキ
保安装置 ATS-Ps
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キハE120形気動車(キハE120がたきどうしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の一般形気動車2008年(平成20年)11月1日から営業運転を開始した。

2020年(令和2年)からは仙台支社管内の只見線でのみ運用している。

概要[編集]

2008年4月16日、新潟支社の公式サイトにおいて米坂線磐越西線会津若松以西)・白新線(快速べにばなのみ)・羽越本線酒田以南)向けに投入・運行されることが発表された[2]。導入数は8両[3]

2006年のキハE130系導入の際に、同系列の起動用アルカリ蓄電池を納品した古河電池がそのトピックスで「キハE130系とキハE120系47両に採用された」と発表した[4][注 1]

2008年6月に黒山駅 - 新潟駅 - 新津駅甲種輸送され、新津運輸区に納入され、同15日午後に新潟駅1番線にて報道公開ののち一般公開された[3][5]

2008年11月1日に営業運転を開始し、当初は羽越本線3本、磐越西線・信越本線4本、米坂線4本の計11本の普通列車に充当された。その後、2009年3月14日改正でキハ110系と共に米坂線でのキハ40・47・48形キハ52形キハ58系の運用を置き換えた[6]。これによりキハ52形・キハ58系は新潟支社管内の定期運用から撤退し、キハ47形非冷房車のごく一部が廃車された[7]

新潟県北蒲原郡聖籠町に製造拠点を置く新潟トランシスが全車両の製造を手掛けた。新潟トランシスの前身の新潟鐵工所は、1997年(平成9年)に開業した北越急行の一般型車両・HK100形を製造した例があるが、この車両は新潟トランシス発足後初めてJR東日本新潟支社管内へ納入した新型の一般型車両となった。

構造[編集]

新津運輸区時の旧カラー(キハE120-7 (今泉駅にて))
(米坂線今泉 - 羽前小松間、2016年10月6日)

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車体はE231系電車の構造を踏襲したステンレス製軽量構体で、混雑緩和を定員増で対応するためキハ110系よりも広い幅2,900mmの広幅車体とし、客用扉は幅1,300mmの両開き扉を片側2か所に設けている[8] 。基本的には3扉のキハE130系から中央部の客用扉を省略した構造である。

車体腰部から裾部にかけて車体幅を絞った「裾絞り構造」であり、側出入口部のクツズリを延長して車体とホームとの間隙を小さくしている[8]。構造は寒冷地仕様(耐寒耐雪構造)となっている[9] 。床面高さはキハ110系より 45 ㎜ 下げた 1,130 ㎜ であり、出入り口部においてもステップを 45 ㎜ 下げることで、ホームとの段差を縮小した[8]

空調装置集中式のAU732形で能力 38.37 kW(33,000kcal/h)を屋根上に搭載する[9]

当初の車体カラーリングは、福島県山形県新潟県にまたがる「飯豊連峰ブナ林」をイメージしたオレンジ色をメインカラーとし、「荒川渓谷のナナカマド紅葉)」をイメージした赤色の細帯をアクセントカラーとして配色した[8]。客用ドア部分は目立つよう車外・車内とも黄色とした。またSLばんえつ物語の客車側面にもあるオコジョが描かれているのが特徴であった[3]

只見線への転用に伴い、キハ40系の東北地域本社色である「只見川と残雪、冬の厳しさに負けじと萌える新緑の山々」をイメージする緑色と黄緑色の2色の帯が入るカラーリングに変更された。

車内[編集]

座席配置はキハ110系同様にセミクロスシート構造で、ロングシートとクロスシートがあり、クロスシートは片持ち式で2人掛け+1人掛けである構造[10][11]。基本的な車内構成はキハE130系とほぼ同じである。

本系列は各部にバリアフリーに配慮した設計が施されている。車椅子スペースや車椅子対応の洋式トイレを設けている[8]。車椅子スペースには車椅子に座ったまま使用できる高さに対話型の車内非常通報装置を設置する。トイレは車椅子スペースの向かい側に設置し、JIS規格に適合する電動・手動の車椅子で使用可能な空間を確保し、客室内の見通しを妨げないように枕木方向の寸法を可能な限り切り詰めている[8]。汚物処理装置は真空吸引式で臭気対策を図り、トイレ出入口はボタン操作による自動開閉式である。

戸閉装置は半自動対応で、車内・車外に押しボタン式スイッチを備えている[9]優先席部分にはオレンジ色のつり革を低い位置に設け、客用扉にはドアチャイムや開閉時に赤色で点滅するドア開閉表示灯が設置された[8]

側窓は上下分割上部下降窓と固定窓を組み合わせた大面積の仕様で、ガラス素材は光線透過率の低い乗用車用汎用強化ガラスを用いる。熱線吸収率も強化され、赤外線を 100 % 遮断する IR カットガラスである[9]

行先表示器は前面・側面ともにLED式で、側面のものは日本語英語を交互に表示する[9]。乗務員室背面仕切り部中央にはデジタル式運賃表示器およびLED式車内案内表示器を設置している[9]自動放送装置を搭載してるほか、車外案内放送用スピーカーを設置している。

運転設備[編集]

運転室はキハ110系に準じた半室構造で、非貫通時は客室との間に設けた引戸により、運転室および助士側の空間を客室と完全に仕切る構造である。引戸には傾斜式戸閉装置を取り付け、貫通時には扉が開いたままにならないように自動で閉とする構造である。貫通時は運転室を開戸により完全に仕切ることができる。

主幹制御器は左手操作式ワンハンドルマスコンが採用されている。保安機器では緊急停止装置(EB装置)と緊急列車防護装置(TE装置)を標準装備している。乗務員支援用にDICS(ディーゼル車情報制御装置)を搭載している。

各番台とも乗務員室内には異常時に、非常用ハシゴとしても使用可能な補助腰掛が設置されている。またワンマン運転時は下部の運賃箱と上部に回転式の仕切りで客室と区切る構造である。運賃箱は助士側背面に完全収納できる。運転室背面仕切り部には非常用脱出口が設置されている。

駆動系・台車[編集]

駆動用のディーゼルエンジン環境負荷に配慮し、北海道旅客鉄道(JR北海道)のキハ150形が搭載しているN-KDMF15HZをベースとしつつ、排気中の窒素酸化物 (NOx) や粒子状物質 (PM) を低減できる「コモンレール式燃料噴射装置」などを採用したコマツ製の新型ディーゼルエンジン SA6D140HE-2(JR形式 DMF15HZ、定格出力 450PS/2,000rpm)を採用している。車体重量は増加したが、変速機の性能向上によりキハ110系とほぼ同等の駆動性能を確保し、同系列との併結運転も可能である[8]

このため電気連結器が上下2段式となっており、本系列同士では上下段とも連結、キハ110系との連結時は上段のみ連結する[9]。これにより、DICSにて車両の併結機能の切り替えを行っている。最大で8両編成まで連結することが可能である[8]

変速機はCSU(発電機駆動定速回転装置)付きDW22形直結4段液体変速機(変速1段、直結4段)である。CSUにより、富士電機システムズ製60kVA電動発電機を使用して車両電源(三相交流 440V)を出力している[12]

台車は軸梁式のボルスタレス台車 DT74形(動力台車)・ TR259形(付随台車)である[9]。基礎ブレーキ装置は、片押し式のユニットブレーキを使用している。

運用[編集]

2020年3月以降、8両全車が郡山総合車両センター会津若松派出所に配置されており、只見線会津若松 - 会津川口間で2両編成または3両編成で運用されている。

只見線ではワンマン運転は行われていない。また、車掌乗務時の停車駅案内は自動放送ではなく肉声放送で行われる。

過去の運用[編集]

2014年7月改正時点での新潟支社管内の運用車両
キハ110系との併結運用 (2020年3月以降は行われていない。)
磐越西線での運用(2009年、五泉駅

新製時から2020年3月までは8両全車が新津運輸区に配置されており、キハ110系と共通運用で新潟支社管内の非電化区間で広範囲に運用されていた。

新製当初から新潟駅が高架化される2018年3月までは運用範囲に支障がなく、キハ110系と本形式の運用は分かれておらず、常に共通運用されていた。そのため中間・先頭にかかわらず併結運用も多く見られ[13]、1-5両編成で運用されていた。2018年3月ダイヤ改正までの運用線区は以下の通り。

  • 白新線(快速べにばな及び間合いの新崎 - 新潟上り1本)
  • 羽越本線(新津 - 酒田)
  • 米坂線(全線)
  • 信越本線(新潟 - 新津)
  • 磐越西線(新津 - 会津若松)

2018年に新潟駅高架化に伴ってATS-Pが導入され、搭載していない本形式は乗り入れ不可となって以降は、キハ110系と本形式の運用が分離された。羽越本線と米坂線の下記区間において本形式同士の2両編成[注 2]での運用があったほか、磐越西線の会津若松 - 新潟間1往復及び信越本線の新潟 - 新津上り1本においては、キハ110系1両と2両を先頭車にして本形式2両[注 2]を中間車として連結された5両編成[14]の運用があった。2018年3月から2020年3月までの運用線区は以下の通り。

  • 羽越本線(新津 - 坂町
  • 米坂線(全線)
  • 信越本線(新潟 - 新津)
  • 磐越西線(新津 - 会津若松)

2018年3月以降の運用では、羽越本線(新津 - 新発田)と米坂線(全線)でワンマン運転を行っていた。なお、車内運賃表示には米坂線各駅・羽越本線新津駅 - 坂町駅間/鶴岡駅 - 酒田駅間・信越本線新潟駅 - 新津駅間・磐越西線新津駅 - 五泉駅間・白新線豊栄駅の表示がされていた。

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ キハE130系は39両導入であることから、本形式の導入数は8両であることが間接的に判明したことになる。
  2. ^ a b 本形式の車両数よりも運用数の方が多いため、キハ110系2両編成も本形式の運用に交代で入る。稀に、キハ110系1両と本形式1両の組み合わせになることもある。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e 日本鉄道車輌工業会「車両技術」236号(2008年9月)「JR東日本 キハE120形一般形気動車」
  2. ^ “米坂線・磐越西線等に新型気動車を投入します” (プレスリリース), 東日本旅客鉄道新潟支社, (2008年4月16日), https://web.archive.org/web/20101031091130/http://jrniigata.co.jp/080416kihae120.pdf  - WayBack Machineによるアーカイブ
  3. ^ a b c “15年ぶりの新型気動車 キハE120形公開”. 交通新聞: p. 3. (2008年6月18日) 
  4. ^ 機関始動用アルカリ蓄電池 東日本旅客鉄道株式会社殿 キハE120系、130系へ採用 - 古河電池
  5. ^ 【鉄道ファン必見】ブナ色の気動車「キハE120形」飯豊連峰望み進行! - 産経新聞 2008年6月22日(インターネットアーカイブ
  6. ^ “2009年3月ダイヤ改正について” (プレスリリース), 東日本旅客鉄道新潟支社, (2008年12月19日), https://web.archive.org/web/20101102003140/http://jrniigata.co.jp/press/2009daikaipuress.pdf 
  7. ^ “キハ47 187+キハ58 677郡山総合車両センターへ回送される”. 鉄道ファンrailf.jp. (2009年6月21日). https://railf.jp/news/2009/06/21/234600.html 
  8. ^ a b c d e f g h i 日本鉄道運転協会「運転協会誌」2009年2月号新型車両プロフィールガイド「東日本旅客鉄道キハE120形気動車の概要」33-34P記事。
  9. ^ a b c d e f g h 日本鉄道運転協会「運転協会誌」2009年2月号新型車両プロフィールガイド「東日本旅客鉄道キハE120形気動車の概要」35-37P記事。
  10. ^ “「キハE120形」の一般公開のお知らせ!” (プレスリリース), 東日本旅客鉄道新潟支社, (2008年6月3日), https://web.archive.org/web/20101101042324/http://jrniigata.co.jp/press/080603kiha120.pdf  - WayBack Machineによるアーカイブ
  11. ^ 編集長敬白アーカイブ:キハE120形誕生。(インターネットアーカイブ)”. 鉄道ホビダス (2008年6月19日). 2020年1月4日閲覧。
  12. ^ 富士時報 2008年Vol.81 (PDF)
  13. ^ “キハE120形5連で走る”. 鉄道ファンrailf.jp. (2009年6月23日). https://railf.jp/news/2009/06/23/155500.html 
  14. ^ “磐越西線の5連運用に2色のキハE120形が連結される”. 鉄道ファンrailf.jp. (2019年12月23日). https://railf.jp/news/2019/12/23/173500.html 

参考文献[編集]

  • 日本鉄道車輌工業会「車両技術」236号(2008年9月)「JR東日本 キハE120形一般形気動車」pp.16 - 27(東日本旅客鉄道(株)新津車両製作所計画部(前:鉄道事業本部運輸車両部) 秋田 宏)
  • 日本鉄道運転協会「運転協会誌」2009年2月号新型車両プロフィールガイド「東日本旅客鉄道キハE120形気動車の概要」pp.33 - 37(東日本旅客鉄道(株)鉄道事業本部運輸車両部 車両技術センター 中神 匡人)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]