JR四国8600系電車

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JR四国8600系電車
8600系E11編成 8751+8601
8600系E11編成 8751+8601
営業最高速度 130[1] km/h
設計最高速度 140[1] km/h
起動加速度 2.0 km/h/s
減速度 5.2[1] km/h/s(常用最大)
編成定員 101名
全長 20,800 mm
全幅 2,840 mm
全高 3,560 mm
車体材質 ステンレス
編成質量 空車79.9t
積車86.1t
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500V
架空電車線方式
編成出力 220kW×4=880kW
主電動機 全閉外扇式三相交流誘導電動機
駆動装置 TD平行カルダン駆動方式[2]
制御装置 VVVFインバータ制御
台車 空気ばね式車体傾斜制御付き軸はり式軽量ボルスタレス台車ヨーダンパ付
S-DT66・S-TR66
制動方式 回生・発電ブレーキ併用電気指令式ブレーキ
抑速ブレーキ
直通予備ブレーキ
保安装置 ATS-SSⅡ
製造メーカー 川崎重工業

8600系電車(8600けいでんしゃ)は、四国旅客鉄道(JR四国)が2014年平成26年)6月に営業運転を開始した直流特急形電車

概要[編集]

試運転中の8600系(2014年3月 / 高松駅)

予讃線で使用されている2000系気動車の老朽化に伴い、その置換え用として登場した特急形電車である [3]。JR四国における特急形電車の新製は8000系電車以来21年ぶりである。キャッチコピーは「SETOUCHI STREAM EXPRESS」で、8000系電車のキャッチコピー「瀬戸の疾風」を踏襲したものである[4]

曲線での速度向上のため、8000系電車では制御付き自然振子方式を使用しているが、本形式では台車構造の簡素化による省メンテナンス化と、到達時分の短縮の両立を図るために台車枠と車体の間にある左右の空気ばねの内圧を制御して、車体を傾斜させる空気ばね式車体傾斜方式を採用している。

本形式の開発は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の特例業務勘定の利益剰余金を利用した費用支援によって行われている[5]

2014年に量産先行車となる2両編成2本(8601 + 8751, 8602 + 8752)が川崎重工業で落成し、同年2月27日から28日にかけて高松貨物ターミナル駅まで甲種輸送された[6][7]後、3月5日に高松運転所で報道公開された。

構造[編集]

車体[編集]

車体はステンレス鋼を用いた溶接組立構造のステンレス車体を採用しており、車体の側面の側構体には、溶接歪による凹凸が少ないレーザ溶接が使用されているが、先頭部分の先頭鋼体部は普通鋼製を用いた溶接組立構造である。内外装や調度デザインの製作は建築デザインの経験があるJR四国の社員と車両メーカーが共同で行っている。

乗務員室は、列車の分割・併合が容易に行われる貫通運転台構造となっており、運転席は8000系と同じく高床構造とし、高速走行時の視界確保と乗務員の安全を確保している。前面窓の運転席側と助士席側にはワイパーが装備されているが、運転席側に補助のワイパーを装備しており、主ワイパーが故障した際にはバックアップとして使用される。また、乗務員室は衝撃吸収構造を採用しており、前面から運転席の乗務員腰掛背面までは、サバイバルゾーンとし、運転席の乗務員腰掛背面から客室扉があるデッキまでは、クラッシャブルゾーンとして構成されている。また、制御車8750形の後位側には衝撃エネルギーの吸収要素が装備されており、それを確実に機能させるため、車端にアンチクライマを設置している。

客用扉は各車片側に2つずつ、車端側に設置されている。半自動機能付きで、そのためのドア開閉用ボタンも設置されている。また、車掌や客室乗務員が使用する放送装置は、車外放送が可能となっており、無人駅での集札業務が多いJR四国での地域事情を考慮している。

外観[編集]

外観のデザインは「レトロフューチャー」をコンセプトに、ノスタルジックな未来特急としている。また、円形の先頭形状は蒸気機関車をモチーフにしたもので、列車の力強さ・ダイナミズムを表現している。

車体色はオレンジとグリーンが用いられ、「瀬戸内の温暖な風土」と「穏やかで美しい四国の自然」、「愛媛」と「香川」をイメージし、特急のスピード感を流線(ストリームライン)でなぞらえている。

各客用扉付近には「SHIOKAZE EXPRESS OKAYAMA / MATSUYAMA」・「ISHIZUCHI EXPRESS TAKAMATSU / MATSUYAMA」と描かれたステッカーが貼られており、各車側面窓上には「SHIKOKU RAILWAY COMPANY」、8750形の3位・4位側側面には「SS」・「SETOUCHI STREAM EXPRESS SS8000」のロゴマークがそれぞれ描かれている。

主要機器[編集]

制御電動車(8600形)と制御車(8750形)の2両に主要機器を分散搭載しており、制御電動車にはVVVFインバータなどの主回路機器が、制御車には集電装置や補助電源装置、空気圧縮機などの補機類が搭載される。

電源・制御機器[編集]

主回路制御方式は架線からの直流1,500 VをVVVFインバータで三相交流に変換して交流誘導電動機を制御するVVVFインバータ制御を採用する。

VVVFインバータ装置は S-CS63 と呼称される[2]IGBT素子を使用した2レベル電圧形PWMインバータ1基で1基の電動機を制御する、いわゆる1C1M構成とすることで故障時に1群ごとの開放が可能となる冗長性の高い設計である[1]。ブレーキ方式は回生・発電ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキを採用しており、抑速ブレーキと直通予備ブレーキのほかに、滑走制御機能付きのブレーキ制御装置を台車近傍に装備して車輪のフラット防止を行う。電気ブレーキにはチョッパ制御を使用した回生・発電ブレーキが採用されており、架線への回生負荷がある場合には回生ブレーキを優先させ、常用ブレーキ使用時では0km/h付近まで回生ブレーキを使用することができる[8]そのため、制御電動車8600形の床下にあるVVVFインバータ制御装置の隣りにS-CH63形ブレーキチョッパ装置とS-MR63形ブレーキ抵抗器を装備している。

主電動機は東洋電機製造製の全閉外扇形三相かご形誘導電動機 S-MT63(1時間定格出力220kW)を採用する[2][* 1]。固定子コイルや回転子周辺への塵埃の侵入を防ぐ事ができ、従来の開放形主電動機と比較して保守性に優れた構造となっている[2]。さらに、外扇ファンによる冷却風が固定子鉄心を直接冷却することで冷却性能に優れている[2]

補機用・制御用電源として、静止形インバータ S-SIV150M を2基搭載する。そのうちの1基を待機予備とする待機2重系とすることで、冗長性を確保する設計である。

空気圧縮機はSIV出力の三相交流440V 60Hzを電源とする S-MH13-SC1600 を採用し、空気ブレーキや空気ばね式車体傾斜などへの圧縮空気の供給を行う。

集電装置[編集]

集電装置は、JR四国の車両としては初めてとなるシングルアーム型パンタグラフ S-PS61 が採用され、8750形後位寄りに搭載する[9]。バネ上昇式・空気下降式であり、電磁カギ外し装置を備える[9]。側面にアーク保護板を取り付けたメタライズドカーボンすり板を採用し、高速走行での追従性向上のためにオイルダンパーを搭載する[9]

車体の傾斜によってパンタグラフが架線から離線するのを防ぐため、車体側部を通してパンタグラフの取り付け台と台車の間をワイヤーで連結して、その取り付け台が屋根上の枕木方向に設置されたガイドレール上を移動することで、常にパンタグラフが真上を向く架線追従装置を装備する[9]。車体取付寸法は、S-PS59(8000系電車)と共通とすることで互換性を持たせている[9]

車体傾斜装置[編集]

空気ばね式車体傾斜方式を採用しており、床下に車体傾斜電磁弁箱を各車に2台ずつ装備して、最大で2度の車体傾斜が可能である。車体傾斜制御には、地上の路線データなどをTC装置に記録しておき、ATS地上子により自車の位置を検知して曲線区間の手前から車体を傾斜させるマップ式とジャイロと加速度計から曲率を求めて車体を傾斜させるセンサ式の2つの方式を使用している。目標としている曲線通過速度は、2000系気動車、8000系電車と同じ曲線半径R≧600mにおいては、本則+30Km/h、曲線半径600m>R≧400mおいては、本則+25Km/h、曲線半径400m>Rにおいては、本則+20Km/hである。

台車[編集]

台車は、空気ばね式車体傾斜制御付き軽量ボルスタレス台車で上下動・左右動ダンパとヨーダンパを装備しており、動力台車がS-DT66形、付随台車がS-TR66形となっている。軸箱支持装置は軸はり式を採用しており、軸ばねのあるふくらみの外側には軸ダンパーが取付られている。基礎ブレーキは、付随台車では空圧式のキャリパー式車軸ディスクブレーキ、動力台車では短編成時のブレーキ性能の向上を図るため、油圧式のキャリパー式車輪ディスクブレーキが採用されている。制御電動車8600形の前位側の台車と制御車8750形の前位側の台車には端梁を設けて、前者にはATS車上子を、後者にはATS車上子と車体傾斜用の地点検知用車上子を取付けているほか、制御車8750形の後位側の台車には、車体の傾斜角度に関わらず、パンタグラフの位置を一定に保つことができる架線追従装置の機構の一部である、ワイヤーが取付けられている。

客室内装[編集]

8601車内(2014年12月) 8751車内(2014年12月)
8601車内(2014年12月)
8751車内(2014年12月)

客室にはバリアフリー整備ガイドラインを考慮した設備を導入しており、内装は未来を想起させる明るく洗練された空間に、外観に用いられているアクセントカラーのオレンジとグリーンを採用して、先進感と自然なぬくもりを感じるものとなっている。腰掛は2+2配置の回転式リクライニングシートを980mm間隔で設置して、肘掛には交流100V用の電源コンセントを備えている。

客室照明にはLED照明を採用しており、各車3台ずつ設置されている車内表示器にはフルカラータイプを採用している。


形式解説[編集]

8602(2014年5月 / 高松駅付近) 8752(2014年5月 / 高松駅付近)
8602(2014年5月 / 高松駅付近)
8752(2014年5月 / 高松駅付近)

量産先行車は制御電動車の8600形と制御車8750形があり、2両編成を組む[10]

8600形 (Mc, 8601, 8602)
編成の岡山高松方に組成される制御電動車で、全席普通席。定員56名。
後位車端側には、車内に自動販売機・洋式便所・男性便所が設置されている。
8750形 (Tc, 8751, 8752)
編成の松山方に組成される制御車で、全席普通席。定員45名。
後位車端側の屋根上にシングルアーム式のパンタグラフ、車内に男性便所・車椅子対応の多機能便所・洗面台・フリースペースのほか、車椅子に対応する幅900mmの客室扉を設置しており、客室には車椅子スペースを設置している。それに合わせて、客室扉があるデッキと客室との間にある妻扉の幅も900mmとなっている。

運用[編集]

試運転中の8600系E12編成(2014年6月22日 / 観音寺駅付近)

2015年3月14日ダイヤ改正現在、高松駅 - 松山駅間の特急「いしづち」1往復(103・104号)に4両編成で運用されている[11]。ただし、お盆や年末年始などの最繁忙期には充当列車や編成が変更されることがある。

2016年3月までに2両編成2本と半室グリーン室付きの3両編成2本の10両が製造され、計14両とし、「いしづち」と「しおかぜ」に使用されている2000系気動車がすべて本系列に置き換えられる予定となっている。8000系電車との併結はできない。

推移

2014年3月に量産先行車の2両編成2本(E11・E12編成)が松山運転所に配置されている。各路線において基本性能の確認のための走行試験や曲線通過性能の確認とブレーキ試験のための走行試験が実施されている[12]。2014年6月23日から、高松駅 - 松山駅間の特急「いしづち」1往復(103・104号)で営業運転を開始した[13]。ただし、車両の試験や検査等の関係から、7月1日以降は原則として水曜・木曜の「いしづち103号」と、火曜・水曜の「いしづち104号」は2000系が代走することとした[11]。車両試験でデータの取得が完了したことから、9月末からは運休日をなくして平日4両編成、土休日2両編成で運用されるようになったが、2両編成では輸送力が不足する場合もあった[11]。そのため、2015年3月14日ダイヤ改正では曜日に関係なく4両編成で運用されている[11]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 全閉外扇形三相かご形誘導電動機は、東洋電機製造製としては初の量産型である。

出典[編集]

  1. ^ a b c d 『東洋電機技報』通巻130号、p.22
  2. ^ a b c d e 『東洋電機技報』通巻130号、p.24
  3. ^ “特急形直流電車の新製について” (プレスリリース), 四国旅客鉄道, (2013年11月25日), http://www.jr-shikoku.co.jp/03_news/press/13-11-25/01.htm 2014年5月23日閲覧。 
  4. ^ “JR四国8600系特急型直流電車(量産先行車)を公開。”. 鉄道ホビダス 編集長敬白 (ネコ・パブリッシング). (2014年3月7日). http://rail.hobidas.com/blog/natori/archives/2014/03/post_435.html 2014年11月7日閲覧。 
  5. ^ 『鉄道ジャーナル』通巻585号、p.33
  6. ^ “JR四国8600系の量産先行車が甲種輸送される”. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2014年2月28日). http://railf.jp/news/2014/02/28/140000.html 2014年11月7日閲覧。 
  7. ^ “【JR貨+JR四】新型特急車輌8600系甲種輸送される”. 鉄道ホビダス RMニュース (ネコ・パブリッシング). (2014年2月27日). http://rail.hobidas.com/rmn/archives/2014/02/jrjr8600.html 2014年11月7日閲覧。 
  8. ^ 『東洋電機技報』通巻130号、p.23
  9. ^ a b c d e 『東洋電機技報』通巻130号、p.25
  10. ^ “新型特急形直流電車のデザイン及び主な仕様” (PDF) (プレスリリース), 四国旅客鉄道, (2013年11月25日), http://www.jr-shikoku.co.jp/03_news/press/13-11-25/01/bessi.pdf 2014年3月22日閲覧。 
  11. ^ a b c d 『鉄道ジャーナル』通巻585号、p.31
  12. ^ “JR四国8600系の試運転が始まる”. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2014年3月7日). http://railf.jp/news/2014/03/07/120000.html 2014年11月7日閲覧。 
  13. ^ “新型特急電車「8600系」の営業運転開始、試乗会並びに展示会の実施について” (プレスリリース), 四国旅客鉄道, (2014年5月21日), http://www.jr-shikoku.co.jp/03_news/press/14-05-21/01.htm 2014年5月23日閲覧。 

参考文献[編集]

  • 「8600系量産先行車」、『鉄道ファン』第637号、交友社、2014年5月、 57 - 59頁。
  • 明比博文・大平信哉「8600系量産先行車」、『鉄道ファン』第638号、交友社、2014年6月、 60 - 66頁。
  • 鶴通孝「瀬戸内を駆ける期待の星」、『鉄道ジャーナル』第585号、鉄道ジャーナル社、2015年7月、 24 - 35頁。
  • 「特集 車体傾斜システムの変遷」『鉄道車両のテクノロジー』Vol18、 三栄書房、2015年、pp.108
  • 四国旅客鉄道株式会社8600系特急形直流電車用電機品」 (pdf) 、『東洋電機技報』第130号、東洋電機製造、2014年10月、 22 - 25頁。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]