入換機関車

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北米でよく見られる入換機、EMD MP15DC
電気・ディーゼル両用の入換機関車、スイス国鉄TemIII形。

入換機関車(いれかえきかんしゃ)は、入換作業時[1]に使用される機関車である。他用途(本線走行など)との兼用のものと、入換業務専用のものとがある。

日本では他に日本語で入換機(いれかえき)、入機(いれき)などの呼称がある。英語の場合、北米ではスイッチャー (Switcher)、イギリスではシャンター(Shunter)、オーストラリアではシャンターまたはヤード・パイロット(Yard Pilot)と、他にもスイッチ・エンジン(Switch engine)等とも呼ばれる(「エンジン」は機関車の意)。

概要[編集]

特性[編集]

入換業務を主用途とする機関車を入換専用機関車(いれかえせんようきかんしゃ)、入換用機関車(いれかえようきかんしゃ)、入換専用機(いれかえせんようき)などとも呼ぶが、本線走行用機関車と兼用にすることも多く、旧式の機関車が入替作業を行うことも多い。この方法のメリットは資産運用の面から見ると節約になるが、旧式機がいつまでも残っているため保守面や部品の確保などにコストがかかるというデメリットがあるため、場合によっては新造の入換専用機を作って充てることも多い。

また現在ではそのほとんどはディーゼル機関車であり、電気機関車は少ない。

充当される作業の内容から、前後双方に見通しがよい形状で、搭載するエンジンは小出力ながらも、重い列車を迅速に移動するために、発進時から高粘着を発揮してスリップしないよう高トルクを発揮するようにできている。最高速度はさほど必要ないので動輪径は小さく、この面でもトルクよりである他、長距離を走らないので燃料タンク(内燃機関車)や燃料や水を積むところ(蒸気機関車)は小さい。

蒸気機関車[編集]

入換作業は前述のように低速走行でこまめに向きを変えるので、基本的にタンク機関車を用いるが、タンク式が嫌われたアメリカや大規模な入換作業のあった鉄道などではテンダー機関車を使うことも多く、この場合炭水車を後方視界確保のため小型にして背や幅を小さくしたり後方に傾斜をつける。

また、ヘッドライトも前後の見通しのため前後につけるか、あるいは本線を走らないので不要と最初から両方つけない場合[2]のどちらかになる。

また、長時間走行しないので専用に設計する場合は大量に蒸気を発生できるより、すぐに蒸気が上がる方がよいため火室などが同クラスの機関車に比べて小さく、速度を出さないため動輪粘着力の確保と急カーブ通過のため先輪が存在せず、ホイールベースも短いものが多い。アメリカなど大規模な入換作業のある所では入換機関車も大型化し、基本は動輪が3軸・4軸で後部が下がった2軸ボギーの炭水車をつけたものだったが、一部では5軸動輪でテンダーにもブースターをつけて1マイル以上もの全長のある貨物列車を引くものもあり、極端な例ではユニオン鉄道の0-10-2形のように、炭水車込みの総重量が300t近くになる超大型機が作られた例もある[3]

ただし、低速の入換作業は蒸気機関車の運用としては一番非効率的だったので、早いうちからディーゼル機関車に置き換えられた[4]

ディーゼル機関車[編集]

ディーゼル機関車の場合、背の高い運転台と背の低いボンネットが組み合わせられ、全周視界を確保している。より強力な粘着力を得るために、モータと走行装置のみを備え、電力は親機から供給されるスラッグも用いられる。ほぼすべてのスラッグは全高が低く、運転台のないものが多い。いずれにしろ、視界を犠牲にせずに前後方向に走行できることが重要である。

1930年代から1950年代に製造された初期のスイッチャーは、より強力な牽引力を得るために、カウ・カーフとよばれる、運転台のある車両とない車両を半永久的に連結したものがあった。スラッグとは異なり、運転台のない車両にもエンジンを搭載していた。

もうひとつ重要なのが、ディーゼル機関車は荷役線での入換が可能であるということである。これは荷役設備や機械が架線に接触する恐れがあるために荷役線に架線が張られていないためで、このようなシーンではディーゼル機関車が欠かせないものとなる。ただし、日本では1986年日本国有鉄道(現:日本貨物鉄道(JR貨物))の一部貨物駅に「着発線荷役方式」(「E&S方式」ないしは「架線下荷役方式」とも呼ばれる)を導入し始めたため、この方式を施工したコンテナホームでの荷役の際にはディーゼル機関車の使用を省略することができるようになった。

電気機関車・無火機関車[編集]

今日、ほとんどのスイッチャーはディーゼル機関車であるが、スイスのようにほぼ全線の電化が完了している国では電気機関車も用いられ、TemITemIIといった電気/電気式ディーゼル兼用機も多く使用されている。小さな工場などや、火気や酸素の消費を避ける必要がある場所では圧縮空気などで駆動する無火機関車が用いられることがあり、現在もドイツで見ることができる。

国・地域による違い[編集]

ヨーロッパ[編集]

イギリスとヨーロッパの入換機関車は、概してアメリカのものより小さい。現在のイギリス一般鉄道では、08形09形が主流である。

イギリスではステーション・パイロットとよばれるスイッチャーがあり、規模の大きなにおいて入換作業を行うものであった。旅客列車の多くが、電車などの分散動力形の車両で運転されるようになったため、ほとんど使用されていない。わずかに残った機関車牽引列車の入換は、その列車を引く本線用機関車が行うことが多い。

日本[編集]

入換機関車の一例:本巣駅から分岐する専用線で運用されていた日立製作所製35tディーゼル機関車D102

日本国有鉄道およびJRでは、入換作業には蒸気機関車の時代から汎用機関車や本線用機関車が使用されることが多いため、入換専用に開発された形式は多くないが、国鉄B20形は、戦中の生産性向上のためのブレーキ機構が簡略化され、貫通ブレーキが効かないため絶対に国鉄本線を走行できない唯一の制式機となっている。

これ以外はDB10形DD11形DD12形DE11形等が、入換専用機関車に相当するが、これらは出力や最高速度などが本線で列車を引くほどではないというだけである[5]

日本では、「スイッチャー」という言葉は引込み線や専用線で入換作業をする産業用の機関車、動車や貨車移動機を指すことが多い。これらの入換機は国鉄のディーゼル機関車に準ずる大きさのものから重量が10トン以下の小型機までさまざまであり、実際に国鉄やJRで使用されているものもあるが、これらは(JR北海道に在籍したDBR600形やJR貨物に在籍するDB500形を除き)車籍がなく保線用・入換用の機械扱いであり、機関車と明確に区分されている。

脚注[編集]

  1. ^ 入換とは、個々の車両を連結して列車を組成し、本線用機関車が牽引できる状態にすること、および本線用機関車が牽引してきた列車の連結を解き、目的に応じて仕分けることである。その作業は操車場貨物駅車両基地などで行われる。また、短区間での列車の牽引に充当されることもある。
  2. ^ 日本では国鉄B20形がこれに当たる。
  3. ^ デイビット・ロス『世界鉄道百科事典』小池滋・和久田康雄訳、悠書館、2007年、P137-138・140・143・173。
  4. ^ デイビット・ロス『世界鉄道百科事典』小池滋・和久田康雄訳、悠書館、2007年、P244。
  5. ^ DE11に至ってはDE10とほぼ同じなので暖房用の蒸気発生装置や重連走行用の装備がないという程度の違いである。

関連項目[編集]