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JR西日本DEC741形気動車

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JR西日本DEC741形気動車
DEC741形(2021年11月)
基本情報
運用者 西日本旅客鉄道
製造所 近畿車輛[1]
製造年 2021年(令和3年)11月
製造数 2両(1M1T)
運用開始 2022年(令和4年)4月[1]
投入先 吹田総合車両所京都支所[1]
主要諸元
編成 2両編成
軌間 1,067 mm(狭軌
最高運転速度 100 km/h[2]
設計最高速度 100 km/h[2]
起動加速度 2.1 km/h/s
(3モードから選択可能)[1][2]
減速度 3.9 km/h/s[1]
車両定員 3人(測定員・DCC741-1) + 2人(測定員・DCC741-101)[2]
車両重量 53.1 t(DCC741-1)
44.5 t(DCC741-101)[1]
全長 21,750 mm
車体長 21,250 mm
車体幅 2,800 mm
全高 4,080 mm
車体 普通鋼
台車 軸梁式ボルスタレス台車ヨーダンパ付
WDT71(DEC741-1)/WTR253(DEC741-101)[1]
動力伝達方式 電気式
機関 SA6D140HE-3形直噴式直列6気筒ディーゼルエンジン[1]
機関出力 331 kW
発電機 永久磁石同期発電機
WDM116形 245 kW[1]
主電動機 かご形三相誘導電動機(全閉式・PGセンサレス) WMT109形[2]
主電動機出力 140 kW
歯車比 7.07
制御方式 2レベルPWMコンバータ+2レベルVVVFインバータ制御IGBT素子使用・補助電源装置一体形)[1][2]
制御装置 東芝インフラシステムズ WPC18形(1C1M×2群制御)[1]
制動装置 電気指令式空気ブレーキ
遅れ込め制御直通予備ブレーキ・救援ブレーキ・耐雪ブレーキ・抑速ブレーキ機関ブレーキ排気ブレーキ駐車ブレーキ[2]
保安装置 ATS-SWATS-PD-TAS
可搬式ATS-DK(JR九州用)[1]
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DEC741形気動車(デック741がたきどうしゃ)は、西日本旅客鉄道(JR西日本)の事業用電気式気動車である。

JR西日本の報道資料等では「DEC741形」ではなく単に「DEC741」と呼ばれているが[3]、便宜上、記事名を一部資料[4]で用いられている「DEC741形」としている。

概要

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JR西日本が2021年10月27日に導入を発表し、同年11月1日より試験運用を開始した、電気検測のみならず線路設備の検査も行う総合検測車[3]日本国有鉄道(国鉄)から承継した電気検測用車両443系の老朽化が進行していることを受け、その代替として本形式が近畿車輛より製造された。導入に先立ち、2021年10月22日に報道関係者向けに公開された。編成番号は「E1」である。

当初は、軌道・信号検測車であるキヤ141系に電気検測機能を持つ車両を組み込み3両編成とすることが計画されていたが、本系列の導入により計画が変更され中止となった。

形式名について

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形式名の「DEC」および百の位の数字「7」は電気式気動車(Diesel Electric Carの略)、十の位の「4」は事業用車、一の位の「1」は設計順をそれぞれ表している[4][5]

構造

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JR西日本全路線をはじめ、自前の電気検測車を持たないJR九州およびJR四国、JR西日本の路線と線路が接続されている第三セクター鉄道の各路線でも運用されるため、JR東西線関西空港線など、気動車の乗入れ対象外の路線での自走運転も可能となっており、基本的な走行システムはDEC700形に準じている。このため、DEC700形と同様二次電池(バッテリー)を追加搭載することでハイブリッド方式への切り替えも可能な構造となっている[3][5]

車体

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構体・台枠には、検測機器類の重量に耐え、かつ将来的な検測機器の交換時に車体に穴を開けて機器の搬入・搬出を行うことを想定し普通鋼が採用された。車体長はキヤ141系と同じ21m、車体幅はDEC700形と同じ2.8mとされたが、曲線通過時に車両限界への抵触が懸念されたことから、DEC700形と異なり裾絞りのある車体断面形状を採用した[5]

車体塗装は検測車のイメージ色であり警戒色を兼ねた黄色と事業用車のイメージ色である青色のツートンカラーとされ、DEC741-101の側面には黄色のストライプと共に「鉄道の安全を守る」ことを示すイラストがあしらわれた[5][6]

編成

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DEC741-101 (Tzc)
運転台・架線検測装置・電気設備測定装置が設置されている。
DEC741-1(Mzc)
運転台・機器室(検測機器給電用発電機)・測定室・電気設備撮像装置が設置されているほか、線路設備診断システムの設置も予定されている。

制御動力車であるDEC741-1と制御付随車であるDEC741-101の2両編成を組成している。走行用エンジンと発電機は各車に設置されているが、主電動機はDEC741-1にのみ設置されている。また、検測機器への給電用エンジンがDEC741-1に設置されているため、編成中に3基のエンジンが搭載されていることになる。また、DEC741-101の架線検測装置は443系より流用された[4]

運用

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落成後、流用品のため実績があり試験が不要な架線検測装置を用いた架線検測に充当され、並行して線路設備診断システムなどの試験を行い、2025年度までにシステムの実用化を予定している[5]

2022年2月27日に初めてJR九州管内へ入線した[7]。2022年4月17日にはあいの風とやま鉄道えちごトキめき鉄道へ入線した[8]。2022年4月22日にはJR四国管内へ入線した[9]。その後、2022年7月20日には肥薩おれんじ鉄道にも入線した[10]。その他にも京都丹後鉄道ハピラインふくいにも入線履歴がある。

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l 「JR西日本・吹田総合車両所京都支所DEC741」『j-train』第87巻、イカロス出版、82-89頁。 
  2. ^ a b c d e f g 日本鉄道運転協会「運転協会誌」2023年4月号新型車両プロフィールガイド「西日本旅客鉄道DEC741電気式ディーゼル動車の概要」pp.26 - 30。
  3. ^ a b c 総合検測車導入による検査の車上化』(PDF)(プレスリリース)西日本旅客鉄道、2021年10月27日https://www.westjr.co.jp/press/article/items/211027_03_dec.pdf2021年10月27日閲覧 
  4. ^ a b c JR西日本、総合検測車DEC741形導入!”. 鉄道ホビダス (2021年10月27日). 2021年10月28日閲覧。
  5. ^ a b c d e 西中悠基 (2021年10月27日). “JR西日本の「DEC741」登場 屋根上に大量のカメラを搭載”. 鉄道コム. 2021年10月28日閲覧。
  6. ^ MN鉄道ニュース編集部 (2021年10月27日). “JR西日本「DEC741」公開! 総合検測車の新型車両を導入”. マイナビニュース. 2021年10月28日閲覧。
  7. ^ DEC741形が九州入り”. 鉄道ファン・railf.jp. 鉄道ニュース (2022年2月28日). 2022年5月5日閲覧。
  8. ^ DEC741形が,あいの風とやま鉄道・えちごトキめき鉄道に初入線”. 鉄道ファン・railf.jp. 鉄道ニュース (2022年4月18日). 2022年4月18日閲覧。
  9. ^ DEC741形が四国へ”. 鉄道ファン・railf.jp. 鉄道ニュース (2022年4月23日). 2022年4月23日閲覧。
  10. ^ DEC741形が肥薩おれんじ鉄道に初入線”. 鉄道ファン・railf.jp. 鉄道ニュース (2022年7月21日). 2022年7月21日閲覧。

関連項目

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