JR九州821系電車

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JR九州821系電車
821系UM001.jpg
基本情報
運用者 九州旅客鉄道
製造所 日立製作所
製造年 2018年 -
製造数 2編成6両
運用開始 2019年3月16日
投入先 鹿児島本線
(小倉荒尾)
主要諸元
編成 3両編成
軌間 1,067 mm狭軌
電気方式 交流20,000V 60Hz
架空電車線方式)
最高運転速度 120 km/h
設計最高速度 120 km/h
起動加速度 2.0 km/h/s[1]
減速度(常用) 4.2 km/h/s [1]
減速度(非常) 4.2 km/h/s [1]
編成定員 407人
車両定員 132人(Mc)
148人(T)
127人(Tc)
自重 36.5t(Mc)
25.9t(T)
31.2t(Tc)
編成重量 93.6t
全長 20,000 mm
全幅 3,024 mm
全高 4,087 mm
(パンタ折り畳み高さ 4,300 mm)
床面高さ 1,125 mm
車体 アルミダブルスキン構体
台車 軸はり式台車
DT410K・TR410K
主電動機 かご形三相誘導電動機(全閉式)
MT406K形
主電動機出力 150kW
駆動方式 TD平行カルダン駆動方式
歯車比 14:91=1:6:5
編成出力 150kW × 4= 600kW
制御方式 交流回生付きPWMコンバーター+VVVFインバータ制御
制動装置 回生発電併用電気指令式空気ブレーキ
直通予備ブレーキ
応荷重付き
保安装置 ATS-DKEB、乗務員無線、防護無線
備考

出典:交友社『鉄道ファン 2019年3月号』

電気車研究会『鉄道ピクトリアル 2019年2月号』
日本鉄道運転協会『運転協会誌 2018年11月号』
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821系電車(821けいでんしゃ)は、2018年(平成30年)に登場した九州旅客鉄道(JR九州)の交流近郊形電車

概要[編集]

JR九州が老朽化した415系電車の置き換えを目的として開発した。2001年から2015年にかけて大分地区を除く九州各地の交流電化区間に投入された817系電車の後継にあたる。811系1500番台に続き、最新技術のフルSiC-MOSFETを採用した主回路システムの搭載により、電力消費量を415系電車比較で約70パーセント低減。主変換装置(CI)や静止型インバータ(SIV)の冗長性(信頼性)により安全、安定輸送を確保する。

特徴として、車イスやベビーカーのためのスペースを1編成あたり2箇所設置。一人あたりの腰掛け座席幅を拡大するとともに、出入り口に足元のホームを照らす照明を設置。室内にダウンライトタイプのLED照明を設置、スマートドアの採用、4ヶ国対応の案内表示器を設置、台車個別制御ブレーキシステムを採用、車両・地上設備の状態を把握する状態監視システムを採用、空調装置やブレーキ装置等の機器共通化によるコストの低減を図った。

構造[編集]

編成[編集]

クモハ821形(Mc)
小倉方に連結される制御電動車主電動機、シングルアーム式パンタグラフ(PS403K)、主変圧器(TM412K)および主変換装置(PC409K)などの電装部品を搭載している。定員132人(座席定員46名)
サハ821形(T)
3両編成の中間に連結される付随車。空気圧縮機と補助電源装置(SC412K)などを搭載する。定員148人(座席定員51名)
クハ821形(Tc)
荒尾方に連結される制御車空気圧縮機と補助電源装置(SC412K×2,SC413K×1)、蓄電池などを搭載する。車内の後位側に車椅子対応の洋式便所を設けている。定員127人(座席定員40名)


編成は、門司港側からクモハ821形(Mc) - サハ821形(T) - クハ821形(Tc)の3両編成。

車両番号は基本的には編成毎に同じ番号で揃えられている。また、編成自体にも「Uxxx」の編成番号が与えられている。「U」は821系であることを示し、「xxx」は車両番号に対応している。車両前面に表記される編成番号は「Uxxx」だが、正式な編成番号は「UMxxx」である。「M」は南福岡車両区所属であることを表す。

編成番号
← 小倉
荒尾 →
クモハ821形
(Mc)
サハ821形
(T)
クハ821形
(Tc)
UM001 - 002 0番台 0番台 0番台

車体[編集]

アルミ合金の大型アルミ中空トラス形材を利用したダブルスキン構造を採用、無塗装のアルミヘアライン仕上げとし、定期検査時の塗装工程の省略を目的に検修区所でも作業可能なガラスコーティングを施している。全面は黒色、側引戸はディープレッドメタリックとし、インテリアデザインは明るい空間を実現すべくホワイトを基調とした。[2]前面構体のみは鋼製で予めワイパーなど必要部品を艤装し構体にボルトで締結している。前部標識後部標識はフルLEDを採用しておりそれぞれ切り替えて表示することができる。

前面と側面の上部には行先表示器はフルカラーLEDを採用しており、側面窓は光線透過率14%のUVカットガラスの固定窓とし遮光カーテンを省略している。空調や行先表示器は並行して開発されたYC1系と機器を共通化することでコストを削減している。側面行先表示器については日本語英語中国語韓国語による多言語表示が可能となっている。

817系と同様の「CT」ロゴが貼られており、青地に白抜きで「CT」「Commuter Train 821」と描かれている。

多言語表示が可能な側面に設置された行先表示器

電源・制御機器[編集]

制御装置にはVVVFインバータ装置により三相交流に変換して交流電動機を制御するVVVFインバータ制御を採用しており、最新技術の三菱電機製フルSiC-MOSFETを採用している。主回路方式は3レベルPWMコンバーター+2レベルPWMインバーター方式で2個モーター台車制御の2群構成(1C2M[2群])とし、故障時には健全な回路で電動機4台を制御(1C4M)し健全時と同等の加速度で走行可能としている。

主電動機は305系のような密閉式永久磁石同期電動機(PMSM)ではなく全閉自冷式の三相誘導電動機(MT406K)を採用し、回転子非解体軸受交換構造とすることでメンテナンスフリーを図っている。


空調機器や電動圧縮機への給電用として単相440Vを三相440Vに変換するSIVを編成あたり3台搭載(サハ821形2台、クハ821形1台)し、それぞれを並行運転とすることで故障時に2台で負荷を供給することでシステム故障率低減を図っている。また、低負荷時には2台運転に切り替えることで省エネルギー化を図っている。それとは別に単相440Vから直流100V及び単相交流100Vに変換するSIVもクハ821形に搭載している。こちらは待機冗長方式を採用し、電力変換部および制御部を二重化し、故障した場合には待機している装置に切り替えることでシステム故障率低減を図っている。

空調は各車両に1台ずつ集中方式(AU413K)のユニットを搭載している。この空調は冷房能力は55kW(約47300kcal/h)に加えて急速暖房用に6kWのヒーターを内蔵している。[3]


ブレーキは本形式の特徴として『分散型・台車制御方式』を採用している。これは台車ごとに計6台のブレーキ制御器を分散させることにより冗長性を確保している。ブレーキは主幹制御器からのブレーキ信号を伝える専用伝送線を二重化することにより冗長性を確保している。電動空気圧縮機はレシプロ式のオイルフリータイプを採用し編成あたり2台搭載しうち1台のみを使用することで不具合を検出した場合には自動的に健全な電動空気圧縮機に切り替え運転を継続できるようにし冗長性を確保している。

情報制御装置

本系列では運転及び搭載機器の動作に関わる情報を集中管理し車両動作状況表示、故障情報表示当の乗務員支援や空調、室内灯制御等のサービス機器制御、故障履歴表示や車上試験等の検修支援機能を有している。これらの伝送には車両情報伝送用のモニタ系伝送路と車内案内情報の伝達を行う情報系伝送路の2系統があり、片方の伝送路が途絶えた場合は残った1系統で両方の情報を伝送できるようにすることで冗長性を確保している。また、これらのシステムは従来の811系813系815系817系BEC819系などと併結可能なシステムとなっている。 また、編成間の伝達情報拡充を目的にJR九州としては初めて[3]イーサネット対応の電気連結器を採用している。この連結器は従来の連結器の左右にイーサネット対応の高速伝送回路用電気連結器を設け片方4芯×2系統の計4系統の伝送に対応している。


運転台

運転台は従来車と同じくワンハンドル式の主幹制御器を採用している。速度計などの計器類はグラスコックピット方式とし車両情報制御装置の表示器を2台設置することで速度計やMR・BC圧力計、電圧計、ATS情報を表示できるようになっている。これらの表示は左右どちらのモニターでも表示でき片方が故障した場合にもう片方に切り替えることで冗長性を確保している。ATS警報機とATS警報持続チャイムも同じく1運転台に2台ずつ搭載することで冗長性を確保している。また、他形式と同様にATS-DK形の車上コンソールを搭載する。

台車[編集]

台車は305系に引き続き川崎重工業製の軽量ボルスタレス台車を採用し、動力台車がDT410K形、付随台車がTR410K形となっている。305系同様軸箱支持装置の構造を円錐積層ゴム方式ではなく、軸はり式を採用し軽量化及び保守の容易化を図っている。車輪は低床化のため車輪径810mmとしている。拡大者には台車状態監視装置を搭載しており、各加速度センサーによりダンパー類の油漏れや歯車装置異常振動、ギヤ油漏れ、車輪凹摩、フラット等の台車の各種不具合を検知できるようになっている。鹿児島本線(小倉駅 - 荒尾駅間)の快速列車などでの813系などとの共通運用を念頭に置きヨーダンパを装備している。

基礎ブレーキ装置には305系同様ワンタッチ式シューコックタイプのユニットブレーキを採用することで制輪子取替作業の簡略化が図られている。

車内設備[編集]

クハ821-2 車内
クハ821-2 車内
マルチサポートビジョン
マルチサポートビジョン

側出入口はこれまで通り片側3箇所で電気式ドアを採用している。305系に引き続き「スマートドア」と称する押しボタン式半自動ドアを採用することで夏季の冷気流出及び冬季の暖気流出を防げるようになっている。ドア上に「マルチサポートビジョン(MSV)」と称する停車駅等案内用の大型液晶ディスプレイを設置しており、日本語英語中国語韓国語で表示される。画面上部の1/3は可変部となっており、列車の種別・行先や経由・次駅・号車を表示することができるようになっている。表示内容は自社で編集可能なシステムとなっている。室内灯はすべてLEDとなっておりスポットライトタイプのLEDを装備している。

トイレは清水空圧式でクハ821形に設置されている。電動車椅子対応のもので開口幅を1,000mmとし、床面の段差を極力少なくし車椅子が出入りしやすいようになっている。非常通報装置は筑肥線用の車両以外では初めて通話機能付きとなり、各車両の客室に1ヶ所ずつ、サハ821形の車椅子スペースとクハ821形のトイレ内にそれぞれ1ヶ所ずつ設置されている。

投入までの経過と今後[編集]

  • 2018年(平成30年)
  • 2019年(平成31年)
    • 2月6日 - 821系を同年3月16日に営業運転を開始すると発表。おもな運転区間は鹿児島本線の小倉~荒木(土休日は荒尾)間で、821系電車3両と811系電車4両を併結し、7両編成で普通・区間快速・快速列車として運転される(一部列車は821系3両のみで運転)[6][7]
    • 3月16日 − 営業運転を開始。

脚注[編集]

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  1. ^ a b c 日本鉄道車輌工業会「車両技術」257号(2019年3月)「JR九州 821系近郊形交流電車」54P記事。
  2. ^ 鉄道許協会誌11月号, p. 27.
  3. ^ a b 鉄道許協会誌11月号, p. 29.
  4. ^ 九州を明るく照らす次世代の車両が誕生します!! (PDF)”. 九州旅客鉄道 (2018年1月26日). 2018年1月閲覧。
  5. ^ JR九州821系・YC1系「やさしくて力持ち」新型車両を公開! 写真149枚 (1) 821系、近郊形電車415系を置き換える車両に”. マイナビニュース (2018年10月5日). 2018年10月閲覧。
  6. ^ 821系電車の運行を開始します!! (PDF)”. 九州旅客鉄道 (2019年2月6日). 2019年2月閲覧。
  7. ^ 新型821系電車、3月16日デビュー 鹿児島本線で普通・快速列車として運転”. 乗りものニュース (2019年2月6日). 2019年2月閲覧。