ナット座ピッチ直径
ナット座ピッチ直径(ナットざピッチちょっけい)は車のホイールを固定する全てのハブボルトの中心を通る仮想円の直径(ピッチ円直径)。P.C.D.(Pitch Circle Diameter)[1]と略すことが通例である。
概要
P.C.D.は、例えば車のホイールを交換するときなどに重要となり、交換するホイールのP.C.D.と車のP.C.D.が一致していないと装着できない。また、車両総重量によってハブボルトの数や太さが異なり、小型から普通車では、軽量なものは3~4穴ホイール、それ以上は5穴が一般的である。トラックやSUVなどでは6穴やボルト径を太くした5穴、大型貨物車は8穴、総輪数が少なく、一輪当たりの荷重が大きくなる大型バスでは10穴となる。
同じ自動車メーカーでも車種によってP.C.D.が異なる場合がある。日本車の場合、アメリカ車やイギリス車のコピーからスタートしたものが市場の主流となったため、各部の寸法はインチサイズを基本としていた。 かつて主流だった4穴の114.3mm(4 1/2インチ)の車種は最近では激減し(2014年7月現在、日本車において新車でこの規格を採用するのは日産・NV200バネットとそのOEMの三菱・デリカD:3/デリカバンの実質1車種だけである)、特に小型車では前輪駆動車の台頭により、欧州車(フランス車、イタリア車、ドイツ車)で標準となっていたメトリックの100.0mmへと移行した。後輪駆動車では、5穴の114.3mm、6穴の139.7mm(5 1/2インチ)が依然として主流である。そのほか、メーカーの設計方針により110.0mm、120.0mm、150.0mmなどが見られる。
- アフターマーケットにおいて、デザインや耐荷重の面で4穴ホイールにないバリエーションを求める場合や、ブレーキの容量(ブレーキキャリパーの大型化など)を上げるため、4穴から5穴用のハブに改造する例がある。これは主に上級グレードの部品を流用する形で行われる。日産の車種、特にS13系のシルビア・180SXで多く見られる。
- また、近年では採用される事が稀となったP.C.D.と穴数の組み合わせによっては、純正・アフターマーケット共に当時の適合ホイールが入手困難となり、スタッドレスタイヤ用の予備ホイールを用意する、スチールホイールをアルミホイールへ変更するといった事も困難となる為、ハブボルト付きのホイールスペーサーを用いてP.C.D.の変換が行われる事もある。日本車だとスバル(特に3代目以前のレオーネ、初代アルシオーネ)やトヨタ(特に初代スターレットを含むパブリカシリーズ、2代目以前のカローラ/スプリンターシリーズの各12インチホイール装着車)、ダイハツ(特にコンパーノ、コンソルテ、2代目以前のシャレード)、マツダ(特に初代サバンナRX-7、2代目以前のコスモ、3代目以前のルーチェ、FR(後輪駆動)時代のカペラ、FR時代のファミリア)、ホンダ(特にホンダ・1300シリーズ、初代シビック、初代アコード)、日野・コンテッサなどのごく一部の旧車種がその一例である。
仕様別車種例(OEM車種を含む)
3穴
- 98.5mm
- 112.0mm
- ルノー:サンク
- メルセデスベンツ:スマート・フォーツークーペ/フォーツーカブリオ/フォーツーK/ロードスター/ロードスタークーペ/ブラバス/クロスブレード
- 160.0mm
4穴
- 98.0mm
- アルファロメオ
- フィアット
- ライトトレーラー(欧州各社):8~13インチホイール
- 100.0mm
- トヨタ:EP71型(3代目)以降のトヨタ・スターレットおよびL20型(2代目)以降のターセル系、ヴィッツ系、MR-S、E80型(5代目)以降のカローラ/スプリンター/アレックスシリーズ、初代MR2、初代プリウス、初代アクア、ST180/181カリーナED/コロナEXiVの初期型[2]など[3]
- 日産:日産・マーチ系、B12~B14型(6代目~8代目)サニー系、N13~N15型(3代目~5代目)パルサー系、日産・ティーダ系[4]、G11型(2代目)以降のブルーバードシルフィなど
- ホンダ:フィット系、インサイト、シビック(タイプRを除く2代目~7代目)、インテグラ(5ナンバー車のタイプR以外)、プレリュード(AB/BA1.4.5.7)など
- 三菱:三菱・コルト系など
- マツダ:マツダ・デミオ系など
- ダイハツ:3代目・4代目ダイハツ・シャレードおよびアプローズ、パイザー、アトレー7、ストーリア系、ブーン系など
- スズキ:スズキ・スイフトおよびソリオ、エリオ、3代目カルタス
- スバル:スバル・ジャスティおよびドミンゴ、デックスなど
- いすゞ:いすゞ・ジェミニおよびピアッツァ、初代アスカなど
- など多車種。
- 101.6mm (4インチ)
- 110.0mm
- 114.3mm (4 1/2インチ)
- 日産/ルノーサムスン:R32型/R33型(8代目/9代目)の一部を含むR31型(7代目)までのスカイライン、S13型(5代目)までのシルビア/180SX、S14型(6代目)シルビアの一部グレード、C34型(7代目)までのローレル、P310型(初代)を除くブルーバード、B12~B14を除くサニー、N10~N12型(初代/2代目)までのパルサー、P10~P11型(2代目)プリメーラ、G10型(初代)ブルーバードシルフィ/ルノーサムスン・SM3など
- トヨタ:KP61型スターレットおよびAE85/86型カローラレビン/スプリンタートレノを含むE20~E70型までのカローラ/スプリンターシリーズ(E20型のみ13インチホイール装着車に限る)、トヨタ・タウンエースノア/ライトエースノアの一部グレード、X70型までのマークII/チェイサー/クレスタ、A60型までのセリカ/カリーナ、T140型までのコロナなど
- 三菱:ギャラン/エテルナ/エメロード/レグナム(VR-4とST-Rと24ヴィエント除く)、RVR(ズポーツギア除く初代モデル全車)、ミラージュ(4・5代目のFF車除く全車)、ランサーエボリューションI~III、ミニカ・ダンガンZZ-4、ブラボー、コルトRALLIART Version-Rなど
- マツダ:マツダ・3代目カペラ、5代目/6代目/Y11型バン・ビジネスワゴンファミリア[5]、エチュード、2代目キャロル、AZ-1など
- 日本フォード:初代フェスティバ、初代/2代目レーザー、初代テルスター
- ホンダ:ホンダ・プレリュード(BA8.9/BB1.4 5th 5.7(前期のみ))、インテグラ(1995年から1998年1月までのタイプR)、アコードワゴン(初代CB9、2代目CE1/CF2、3代目CF6/CF7)
- ダイハツ:ダイハツ・シャルマン
- いすゞ:いすゞ・ヒルマンミンクスおよびベレット、フローリアン、117クーペ、ジェミネット、3代目/4代目アスカ
- スズキ:初代~2代目スズキ・カルタスおよび同社のジムニーを除く1994年以前までの一部の軽自動車(CA/CN/CR2x系アルト、D**51T/V系キャリイ/エブリイ初期型など)
- ヒュンダイ:エラントラ(XD系)
- 120.0mm
- ホンダ:ホンダ・1300シリーズおよび初代シビック、初代アコード、4WD仕様を除く初代アクティ
- 日野:コンテッサ1300(セダン、クーペ共に)
- マツダ:コスモスポーツおよび2代目コスモ
- 130.0mm
- フォルクスワーゲン:ビートル1968年以降
- 140.0mm
5穴
- 100.0mm
- 108.0mm
- ボルボ
- ランドローバー:フリーランダー2、レンジローバーイヴォーク
- ルノーカングーII、ルーテシアIII・ルノー・スポール
- 110.0mm
- オペル全般
- アルファロメオ:ジュリエッタ(第三世代)
- 112.0mm
- 114.3mm (4 1/2インチ)
- トヨタ:一部(例:USF40系レクサス・LS)を除く多くのFR車が該当するほか、FF車に於いてもこのサイズを採用する車種が増えてきている。トヨタ・センチュリーおよびRS30型(初代)を除くクラウン系、マークX/マークII系、カムリ系、2代目MR2、アルテッツァ/レクサス・IS、ヴォクシー/ノア、キャミ、ラッシュ、アイシス、ハリアー/レクサス・RX、RAV4/ヴァンガード、オーリス/ブレイド、カローラルミオン、SAI/レクサス・HS、プリウスαなど。
- ホンダ:〜3代目レジェンド、オデッセイ、ステップワゴン、シビック(8代目)、CR-Zなど。
- 日産:R32型/R33型の一部を含むR34型(10代目)以降のスカイライン、C35型(8代目)ローレル、ステージア、セレナ、P12型(3代目)プリメーラ、A32/A33型(2代目/3代目)セフィーロ、ティアナ、キックス
- 三菱:ランサーエボリューションIV~Χ、FTO、GTO、RVR(新型)、エアトレック、アウトランダー、ギャランフォルティス、シャリオグランディス、エクリプス、ディアマンテ、プラウディア、パジェロミニなど。
- ダイハツ:ダイハツ・アルティス、テリオス、テリオスキッド、ビーゴ、メビウス
- スバル:2代目アルシオーネ(アルシオーネSVX)、2代目インプレッサWRX STI(E型以後)、3代目以降のWRX STI、WRX S4、レヴォーグ、レガシィB4(BN9)/レガシィアウトバック(BS9)
- スズキ:スイフトスポーツ、SX4、ランディ、エスクード(3代目)
- ヒュンダイ:ソナタ、グレンジャー、ジェネシス(含・クーペ)、エクウス、エラントラ(アバンテ)など
- キア:ソウル、K3/フォルテ、K5/オプティマ、K7/カデンツァ、K9/クオリス など
- ルノー:コレオス、メガーヌ(3代目)、ルーテシアIV・ルノー・スポール、ラティテュード、フルエンス など
- ルノーサムスン:SM3(2代目・L38)、SM5、SM7、QM5
- ライトトレーラー(米国各社):8~15インチホイール
- 120.0mm
- トヨタ:レクサスLS(USF40系)
- ホンダ:ホンダ・レジェンドKB1/2、KC1/2
- BMW全般
- ランドローバー:3代目レンジローバー、レンジローバースポーツ、ディスカバリー3
- ミニ (BMW):クロスオーバー(カントリーマン)
- 120.65mm (4 3/4インチ)
- ランドローバー:2代目レンジローバー、2代目ディスカバリー
- 127.0mm (5インチ)
- ライトトレーラー(米国各社):15インチホイール
- 130.0mm
- ポルシェ全般(マカンを除く)
- 139.7mm (5 1/2インチ)
- 150.0mm
- トヨタ:ランドクルーザーシグナス/レクサス・LX(100系/200系)
- 165.1mm (6 1/2インチ)
- 205.0mm
- フォルクスワーゲン:ビートル1967年以前
6穴
- 139.7mm (5 1/2インチ)
- トヨタ: 200系ハイエース
- 日産: キャラバン、初代エルグランド(E50型)
- ライトトレーラー(米国各社):14.5~16インチホイール
- 222.25mm
- 中型・大型トラック・バス: JIS方式17.5インチホイール、JIS方式19.5インチホイール
8穴
- 165.1mm (6 1/2インチ)
- ライトトレーラー(米国各社):14.5~16.5インチホイール
- 275.0mm
- 中型・大型トラック・バス: 新ISO方式19.5インチホイール
- 285.0mm
- 中型・大型トラック・バス: JIS方式19.5インチホイール、JIS方式22.5インチホイール
10穴
- 225.0mm
- トレーラー: 新ISO方式17.5インチホイール
- 335.0mm
- 中型・大型トラック・バス: 新ISO方式22.5インチホイール
- トレーラー: 新ISO方式22.5インチホイール
脚注
- ^ PCDについて-サイクルベースあさひ、2012年8月20日閲覧。
- ^ 180系ED/EXiVは当初は2000cc車5H・1800cc車4Hだったがマイナーチェンジで全車5Hになった。長期生産車種でPCDが変わったケースは他にもあるが、180系の生産時期の短さ(4年、マイチェン後はわずか2年)を考えると珍しい例である。
- ^ ただし、カローラ系の場合は例外も少なくない。AE85/86型レビン/トレノは4穴の114.3mmとなり、E150型カローラセダン(欧州/中国/韓国市場向け)、およびE150N型ルミオン、オーリス、ブレイドはいずれも5穴の114.3mmとなる。
- ^ ただし、一時期設定されていた1.8Lの6速MT車に限り114.3mmとされていた。
- ^ Y11型バン・ビジネスワゴンは4WD車に限る。
- ^ トヨタ・セリカ、カリーナ/コロナ、アベンシス、カルディナ、カレン/、ED/EXiV)、プレミオ/アリオン)
- ^ 北米市場向けE130型(9代目)、および北米/東南アジア市場向けE140型(10代目)、および香港/マカオを除く海外市場向けE170型(11代目)
- ^ ドリフト天国 2012年1月号 9ページ