トヨタ・ウィッシュ

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ウィッシュ(WISH)は、トヨタ自動車2003年から2017年まで生産販売していたミニバン型の乗用車である。ミニバンとしては全高が低く抑えられたデザインとなっている。

トヨタ・ウィッシュ
2代目 2009年モデル 2.0Z
概要
製造国 日本[注 1][注 2]
台湾[注 3]
タイ[注 4]
販売期間 2003年1月 - 2017年10月
ボディ
ボディタイプ 5ドア ミニバン
駆動方式 前輪駆動
四輪駆動(パートタイム式)
系譜
先代 トヨタ・イプサム(初代モデル)
後継 トヨタ・プリウスα
トヨタ・シエンタ
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概要[編集]

1994年ホンダ・オデッセイの登場以降、日本ミニバンはバリエーションを広げ、日産・セレナを始めとするセミキャブオーバー型、マツダ・MPVを始めとする2BOX型といった様々なタイプが誕生していた。2000年本田技研工業ミニバンのユーティリティ性と走行性能の両立を図ったストリームを発売した。これは低重心でセダンに匹敵する走行性能を備えた画期的な車種であった。

ウィッシュは、セダンに匹敵する走行性能を実現するため、トヨタ自動車5ナンバーセダンであるプレミオアリオンMCプラットフォームホイールベースを延長したものをベースに開発された。そのため、着座位置はプレミオ、アリオンとほぼ同等の高さに抑えられ、1590mm[注 5]という低い全高を実現している。コンパクトな5ナンバーサイズで低全高、スポーティを意識したパッケージングホンダ・ストリームと類似している。

販売面においては、イプサムが2代目へのフルモデルチェンジで大型化したことによりその後継を担う目的も与えられているが、初代イプサムとはエンジンの排気量が異なるほか、初代イプサムが「ファミリー」重視とした反面、ウィッシュは「スポーティ」を多く取り入れた内外装やグレード構成にするなど、両車種の違いは少なくない。そのため、トヨタではイプサムの後継車種ではないと説明している[注 6]

2010年代以降、全高が1700mmを超え、スライドドアを備えたセミキャブオーバー型のミニバンの走行性能の向上や人気の集中、SUVの台頭によるミニバン人気の低下などにより、販売台数が低下していった。そのため、2017年10月をもって生産・販売を終了した。なお、ライバルであるホンダ・ストリームも2014年5月に生産を終了している。

生産は初代が堤工場(第2ライン)で、2代目が田原工場(第2ライン)。当初は日本専用車であったが、のちにタイ王国台湾でも現地生産されるようになった[注 7]。台湾市場においてはタクシーとしての需要が大きく、初代・2代目とも頻繁に見かける。また、日本とは異なり、7人乗りでもタクシー登録をすることができる(タクシー専用グレードは5人乗りのみ)。

2代目は自衛隊で業務車1号として導入された。これはステーションワゴンの車種が減少し、使用できる車種が少なくなったためである。また、2003年末ごろより日本仕様車を中心に、香港シンガポールマレーシアといった国々へも自動車輸出業者により輸出されている。

初代 ZNE1#G/ANE10G/ANE11W型(2003年 - 2009年)[編集]

トヨタ・ウィッシュ(初代)
ZNE1#G/ANE10G/ANE11W型
2003年1月販売型 X"S パッケージ"(フロント)
2003年1月販売型 X"S パッケージ"(リヤ)
2003年1月販売型 X"S パッケージ"(インテリア)
概要
製造国 日本の旗 日本愛知県豊田市
中華民国の旗 台湾
タイ王国の旗 タイ
販売期間 2003年1月 - 2009年4月
設計統括 吉田健
デザイン トヨタ第2デザイン部
東京デザイン研究所
トヨタ車体デザイン部
ボディ
乗車定員 6•7名
ボディタイプ 5ドア ミニバン
駆動方式 前輪駆動FF
四輪駆動 (4WD)[注 8]
プラットフォーム トヨタ・MCプラットフォーム
パワートレイン
エンジン 1ZZ-FE型
1,794 cc 直列4気筒DOHC
1AZ-FSE型D-4
1,998 cc 直列4気筒DOHC
最高出力 1ZZ-FE型(1.8 L)
97 kW (132 PS)/6,000 rpm
92 kW (125 PS) /6,000 rpm (4WD車)
1AZ-FSE型 (2.0 L)
114 kW (155 PS)/6,000 rpm
最大トルク 1ZZ-FE型 (1.8 L)
170 N・m (17.2 kgf・m)/4,200 rpm
161 N・m (16.4 kgf・m)/4,200rpm (4WD車)
1AZ-FSE型 (2.0 L)
192 N・m (19.6 kgf・m)/4,200 rpm
変速機 U341 E/F型 4速AT (1.8 L車)
K110型 CVT (2.0 L車)
サスペンション
ストラット式
トーションビーム式(2WD車)
ダブルウィッシュボーン式 (Zおよび4WD車)
車両寸法
ホイールベース 2,750 mm
全長 4,550 mm(2003年 - 2005年)
4,560 mm(2005年 - 2009年)
全幅 1,695 mm
1,745 mm(Z
全高 1,590 mm
1,600 mm(Zと4WD車)
車両重量 1,300 kg
1,360 kg(G
1,400 kg(Zと4WD車)
その他
燃料消費率
10・15モード走行時
14.4 km/L
13.2 km/L(Z
12.8 km/L(4WD車)[6]
燃料タンク容量 60 L
系譜
先代 初代イプサム(ビスタ店→ネッツ店)
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開発主査およびチーフエンジニアは、カローラシリーズ(5代目、9代目セダン、初代フィールダーランクススパシオ)も手掛けた吉田健。プラットフォームプレミオアリオンのものをベースに、ホイールベースを延長するなどの改良がなされた。スタイリングを重視した結果、スライドレールによりデザインに制限が出るスライドドアを採用せず、後席ドアも前席ドアと同じ前ヒンジドアである。

グレード構成はベーシックな「X」、上級の「G」を基本に、トップモデルとして、2.0Lモデルにオーバーフェンダーと17インチタイヤ、シーケンシャルCVTを与えたスポーティな「Z」を据える。「Z」はオーバーフェンダーにより幅が1,700mmを超えるため、3ナンバー車である(その他のグレードは5ナンバー)。また1.8Lモデルには、スポーティグレードの「Sパッケージ」(2005年9月のマイナーチェンジで「Aero sportsパッケージ」に名称変更)、社用車向け廉価グレードの「Eパッケージ」が設定された。「Z」では2列目シートにキャプテンシートを採用したため6人乗りであるが、他のグレードでは2列目シートがベンチシートの7人乗りである。

メカニズム[編集]

エンジン

1.8Lと2.0Lの2機種。1.8Lにのみ4WDが設定されている。基本的にプレミオアリオンに採用されたものと同一仕様であり、2機種ともアイシン精機(現・アイシン)が開発したベーン式VVT-i搭載エンジンの総称であるBEAMS[注 9]という名が与えられている。

1.8L 1ZZ-FE型

2003年1月の発売時に投入されたもの。前方吸気・後方排気の横置き配置で搭載されている。吸気側に VVT-i[注 10] を搭載しており、 ECUを16ビットから32ビットに高度化することでノッキング対策や緻密な燃料カットを行う他、排気再循環も活用する。吸排気バルブ挟み角は33.1°で、コンパクトな燃焼室を形成している。燃焼室は斜めスキッシュを設けて、高圧縮比(10.0)とすることで高効率燃焼摩擦損失低減を実現している。燃料インジェクターシリンダーヘッドに直付してポートへの燃料付着を避けるとともに、レーザー加工を用いた12噴射孔ノズルを備え、燃料微粒化を促進する。シリンダーブロックアルミニウム合金製であり、オイルポンプも小型化することで軽量化している。エキゾーストマニホールド後方と床下に2つの触媒を搭載し、2WD車には前者が酸化触媒、後者が三元触媒。4WD車は両方とも三元触媒である[7]

2.0L 1AZ-FSE型

1.8L車の発売から約3か月遅れの2003年4月25日に追加設定された「Z」、「G」に搭載。2002年登場のプレミオ・アリオン搭載時、「平成12年基準排出ガス25%低減レベル」☆(1つ星)の『良-低排出ガス』認定に留まっており、2003年4月以降グリーン化減税の対象外となるため改良を行ったものである。

吸気側にVVT-iを搭載するとともに、ガソリン直噴・D-4[注 11]を搭載している[8]。トヨタ初のストイキ燃焼独立タンブルポートの片側にON-OFF式のスワールコントロールバルブを採用し、吸気管有効径を2段階に切り替える可変吸気システムを搭載する。低回転通常時は「成層燃焼」、低回転高負荷時は「弱成層燃焼」、高回転時は「均質燃焼」の3モードを切り替え、低燃費と高出力を両立する。スリットノズルのインジェクターによる扇型噴霧が燃料微粒化を促進するとともにピストン冠面の吸気側に凹みを設けることでタンブル流を発生させて均質な混合気を作り出す。浅皿燃焼室の採用により10.5という高圧縮比を実現した[9][10]。「平成17年基準排出ガス75%低減レベル」☆☆☆(3つ星)の『超-低排出ガス』に認定されている。

エンジン諸元
1ZZ-FE型 1AZ-FSE型
排気量 1,794 cc 1,998 cc
シリンダー 直列4気筒
配置 横置き
燃焼室形状 ベントルーフ型
吸排気方式 クロスフロー
バルブ機構 DOHC4バルブ・チェーン駆動
圧縮比 10.0 10.5
ボア×ストローク 79.0 mm×91.5 mm 86.0 mm×91.5 mm
燃料供給方式 EFI D-4
使用燃料 無鉛レギュラーガソリン
最高出力
kW (PS)/rpm
97 (132)/6,000 (2WD) 114 (155)/6,000
92 (125)/6,000 (4WD)
最大トルク
N・m (kgf・m)/rpm
170 (17.2)/4,200 (2WD) 192 (19.6)/4,200
161 (16.4)/4,200 (4WD)
トランスミッション
U341 E/F型英語版 4速AT(Super ECT)

1.8L車に搭載。2WD車がU341 E型、4WD車がフロントデファレンシャルギヤトランスファーをユニット化したU341 F型である。登坂時はアクセル操作ごとの不要な変速を抑制し、降坂時はブレーキ操作を行うと自動でシフトダウンを行い、エンジンブレーキを効かせる制御を組み込む。トルクコンバーターにロックアップ制御を備え、ワイドレンジにきめ細かく制御することでシフトダウン時の変速フィーリングの向上を図っている。また、後期型の1.8X"Aero Sports パッケージ"のFF車には4速シーケンシャルシフトマチックを搭載している。

K110型 CVTSuper CVT-i

2.0L車に搭載。オーパから搭載されたトヨタ初のCVTである。「Z」にはスポーツシーケンシャルシフトマチック[注 12]を備え、擬似的なマニュアル変速が可能である。

燃費性能

1.8LのFF車は10・15モード燃費で14.4km/Lで「平成22年度燃費基準+10%」を達成、「平成17年排出ガス基準75%低減☆☆☆☆(4つ星)」に認定されていた。また、4WD車は12.8km/Lで「平成17年排出ガス基準50%低減☆☆☆(3つ星)」に認定されていた。2.0L車では、Gが14.4km/Lで「平成22年度燃費基準+10%」、Zが13.2km/Lで「平成22年度燃費基準」をそれぞれ達成し、どちらも「平成17年排出ガス基準75%低減☆☆☆☆(4つ星)」に認定されていた[6]

4WDシステム

アクチュエータで電子的にFFと4WDを自動切替できるアクティブトルクコントロール4WDが、前述のとおり1.8L車にのみ設定されていた。リヤデファレンシャルギア直前にビスカスカップリングユニットを搭載したシンプルな構造ながら、舵角、横G、前後G、車輪速度の各種センサーの情報を基にFF状態から前後ロック状態まで前後輪のトルク配分を最適に制御する。また、ABSとの協調制御を行うことで安全性も高めている。さらに軽量化を施すと共に、通常走行時にはFFと同等の駆動力配分とすることで燃費を向上している。

サスペンション

フロントにはジオメトリーの最適化を図ったLアームマクファーソンストラット式、リヤにはトーコレクト機能付トーションビーム式(「Z」を除くFF車)またはダブルウィッシュボーン式(4WD車及び「Z」)を搭載。また、全車にスタビライザーを標準装備している。

ブレーキ

フロントがベンチレーテッド式ディスクブレーキ、リヤがリーディングトレーリング式ドラムブレーキまたはディスクブレーキ(「Z」及び「G」)が装備されている。全車にEBD付ABSを搭載し、急ブレーキを感知するとブレーキアシストが作動するとともに、走行状態に応じて適切な前後制動力配分を行うことで優れたブレーキ性能を確保している。

灯火類

ヘッドライトは、前期型の「X "S パッケージ"」、後期型の「X "Aero Sports パッケージ"」、前後期の「Z」にオートレベリング機能付きディスチャージヘッドランプ、その他グレードにはマニュアルレベリング機能付きハロゲンランプのロービームを採用している。また、発売時はリフレクター式であったが、マイナーチェンジでプロジェクター式に変更されている。ハイビームは全車リフレクター式ハロゲンランプとなっている。リヤコンビネーションランプ及びハイマウントストップランプには新構造LEDランプを採用。視認性の向上と省電力化を実現すると共に、マルチリフレクタータイプ化によりキラキラと反射させ、高級感を演出している。前期型ではリヤコンビネーションランプ下部にリフレクターを配置していたが、後期型ではバンパー下部に移設されたため、リヤコンビネーションランプ内のLED個数が9個×2(左右)の計21個から19個×2(左右)の計38個に変更されている。ヘッドランプは前期型がスタンレー電気製、後期型が市光工業製。テールランプは前期型、後期型ともに市光工業製である。台湾仕様車はマイナーチェンジ後もロービームにリフレクター式を採用するなど、ヘッドランプ、リヤコンビネーションランプ共に独自のデザインとなっている[11]

年表[編集]

2002年
10月29日 - 第36回東京モーターショー商用車ショー)でWISHを参考出品[12]
2003年
1月20日 - ネッツトヨタ店トヨタビスタ店より発売。月間目標販売台数は7,000台。生産は堤工場。キャッチフレーズは「ザ・ピープルズ・カー」。CMソングは宇多田ヒカルの「COLORS[13]。しかし、発売1ヶ月後にアメリカ合衆国で発生したクラブ火事の影響もあり、プロモーションは一時的に停止された。
4月25日 - 2.0Lエンジン搭載の「G」と「Z」を追加[14]
12月 - タイ、ゲートウェイ工場にて現地生産を開始[5]
2004年
5月1日 - 新生ネッツ店( = 旧ネッツトヨタ店 + 旧トヨタビスタ店)の誕生を記念し、特別仕様車「NEO Edition」を発売。
「X」と「G」をベースに、ディスチャージヘッドランプやフロントフォグランプなどを特別装備し、専用のドットパターンで統一された内装を採用した[15]
9月 - 台湾、観音工場での現地生産を開始[4]。日本仕様との大きな違いとして、ステアリング位置が右側から左側に移り、パーキングブレーキが足踏み式からサイドレバー式に。また、エンブレムの書体が変更されている。
2005年
9月5日 - マイナーチェンジ。キャッチフレーズは「願いの先へ走って行こう」で、CMキャラクターに中田英寿、CMソングにCrystal KayCHEMISTRYの「Two As One」を起用した。
ヘッドランププロジェクター化、リアコンビネーションランプウィンカー、バックランブが下部に、リフレクターがバンパーに移動し、テールランプがLED4灯×4列式に変更。フロントのエンブレムをネッツ店専売車種向けの「N」をかたどったものに変更するなど内外装のリフレッシュ、メカニズム関連の見直しと共に、カーナビG-BOOKALPHAやBluetoothハンズフリー機能、ヘルプネットなどに対応したHDDタイプに変更するなどの改良を行った。また、1800ccのFFモデルにはシーケンシャルシフトを装備。「Z」のシーケンシャルモードが6速から7速になった[16]
2006年
4月17日 - 特別仕様車「X Limited」を発売。
「X」をベースに、ディスチャージヘッドランプ、スエード調シート表皮、黒木目調パネル、本革巻き3本スポークステアリングホイール・シフトノブを装備した[17]
2007年
3月20日 - 台湾仕様をマイナーチェンジ。ヘッドランプ、リアコンビネーションランプ、フロントバンパーが変更される。
6月18日 - 「X"Aero Sports パッケージ"・L Edition」を発売。
「X」をベースに、グレーを基調とした内装に、上級グレードに採用されているスマートドアロックリモートコントロール、赤外線カット機能付ウインドシールドガラス、撥水機能付フロントドアガラスなどを装備した「X L Edition」並びに「X L Edition」の装備に加え、運転席・助手席アームレスト、スエード調ドアトリムオーナメント&シート表皮を追加した[18]
2008年
6月24日 - 2006年に発売された「X Limited」の仕様を一部変更し再発売。新たに赤外線カット機能付ウインドシールドガラスなどの快適装備をプラス。また、「X Aero Sports パッケージ・Limited」も同時発売[19]
2009年
3月 - 堤工場での生産を終了。日本国内では在庫対応分のみの販売となる[注 13]
4月 - 2代目と入れ替わる形で販売終了。販売終了前月までの新車登録台数の累計は52万3735台[20]
10月 - タイ、ゲートウェイ工場での現地生産を終了[5]

ギャラリー[編集]

2代目 ZGE2#G/ZGE2#W型(2009年 - 2017年)[編集]

トヨタ・ウィッシュ(2代目)
ZGE2#G/ZGE2#W型
2009年4月販売型 1.8X(フロント)
(2009年4月 - 2012年4月)
2009年4月販売型 1.8X(リヤ)
(2009年4月 - 2012年4月)
2009年4月販売型 1.8X (インテリア)
(2009年4月 - 2012年4月)
概要
製造国 日本の旗 日本愛知県田原市
中華民国の旗 台湾
販売期間 2009年4月 - 2017年10月
設計統括 大井敏裕
多田哲哉
ボディ
乗車定員 6・7人
ボディタイプ 5ドア ミニバン
駆動方式 FF / 4WD
プラットフォーム トヨタ・MCプラットフォーム
パワートレイン
エンジン 2ZR-FAE型 1,797 cc 直列4気筒 DOHC VALVE MATIC(日本・香港・マカオ仕様)
3ZR-FAE型 1,986 cc 直列4気筒 DOHC VALVE MATIC(日本・香港・マカオ仕様)
3ZR-FE型 1,986 cc 直列4気筒 DOHC(台湾仕様)
変速機 Super CVT-i
4AT(台湾仕様 前期のみ)
サスペンション
ストラット式
トーションビーム式(2WD車〈除く2.0Z〉)
ダブルウィッシュボーン式(4WD車、2.0Z)
車両寸法
ホイールベース 2,750 mm
全長 2009年4月販売型:4,590 mm
2012年4月改良型:
(台湾仕様:4,635 mm)
全幅 1,695 - 1,745 mm
全高 1,590 - 1,600 mm
車両重量 1,340 - 1,440 kg
その他
燃料 無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量 60L
系譜
後継 トヨタ・シエンタ(台湾・日本仕様5ナンバー)
トヨタ・プリウスα(日本仕様3ナンバー)
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2009年4月2日に2代目へフルモデルチェンジ。月間販売目標は6000台。開発主査は大井敏裕と2012年4月に登場した86の開発主査も手掛けた多田哲哉である。

今回は「Smart Multi Player WISH(スマート マルチ プレイヤー ウィッシュ)」をテーマに、スポーティ感と快適性をより一層向上させた。

優れた環境性能と高い動力性能を両立する動弁機構「バルブマチック」を搭載したエンジンを全車に搭載。Super CVT-i(SとZは7速パドルシフト付)と組み合わせることで、初代モデルと比較して燃費が最大約15%向上した。

フロントマスクはフロントバンパーに厚みを持たせ、シャープなヘッドランプと相まって精悍さを高めた他、ルーミーさとスポーティーさを兼ね備えたスタイリッシュなエクステリアとした。インパネを飛行機の翼をイメージした水平方向に広がるデザインにし、内装色には新たにグレージュを設定した。

この代では、トヨタ紡織製のアクティブヘッドレスト構造に対応した新世代シート骨格「TB-NF110」を初採用している[21]

また、10スピーカーを配置した「WISH・パノラミックライブサウンドシステム」(サイドミラーカメラの同時取り付け不可)を設定したほか、抗ダニアレルゲン加工シート、プラズマクラスター搭載の花粉除去モード付オートエアコン、S-VSC、SRSサイド&カーテンシールドエアバッグ(サンルーフオプション設定あり)、アクティブヘッドレスト(運転席・助手席)、自動エンジンブレーキ、全席オートパワーウィンドウを全車に標準装備し、安全性と快適性も向上。

この世代から、香港とマカオでも正規販売がされている。

グレード構成[編集]

2.0L車を除く全グレードに4WDの設定があるが、4WDであることを示すエンブレムが付いていないため、1.8Sのメーカー工場出荷時状態以外の車両は識別しにくい。その他のグレードは、メーカー工場出荷時の状態であればホイールやフォグランプの有無等により、ある程度は識別可能である。

年表[編集]

  • 2009年
    • 4月2日 - フルモデルチェンジ。キャッチフレーズは「I WISH」で、CMキャラクターにはEXILE、CMソングも同グループの「Someday」を起用[22]
    • 12月2日 - 一部改良。
      1.8L・4WD車、および「1.8X」の2WD車において充電制御やオルタネーターを改良し、燃費を向上。これにより、1.8L・4WD車が「平成22年度燃費基準+15%」、「1.8X」の2WD車は「平成22年度燃費基準+25%」をそれぞれ達成した[23]
  • 2010年4月19日 - 一部改良および特別仕様車「1.8X HIDセレクション」を発売。
    • 「1.8S」の2WD車において、バッテリーやオルタネーターの制御等の改良を行い、燃費を向上。これにより、「平成22年度燃費基準+25%」を達成した。
    • 特別仕様車「1.8X HIDセレクション」は「1.8X」をベースに、ディスチャージヘッドランプ(プロジェクター式ロービーム・オートレベリング機構付)、コンライト(ライト自動点灯・消灯システム)、助手席アームレスト(運転席アームレストはベース車に標準装備)、本革巻き(シルバーステッチ)のステアリングホイール、シフトノブを装備した[24]
  • 2011年9月28日 - 特別仕様車「1.8S MONOTONE」を発表(10月3日販売開始)。
    「1.8S」をベースに、ブラックメタリック塗装のディスチャージヘッドランプ(プロジェクター式ロービーム・オートレベリング機能付)、ダークメタリック塗装のアルミホイール、スモークメッキのフロントグリル&バックドアガーニッシュ、クロムメッキを組み合わせたカラードアウトサイドドアハンドルを特別装備するとともに、専用ファブリックと合成皮革をブラックとオフホワイトで組み合わせた専用シート表皮、ブラックの専用ファブリックを施したドアトリム、ボディカラーに合わせたセンタークラスターやパワーウィンドゥスイッチベースを採用するなどモノトーンで構成されたインテリアを採用した。ボディカラーはブラックとオプションカラーのホワイトパールクリスタルシャインの2色のみ[25]
  • 2012年
    • 4月9日 - 日本仕様をマイナーチェンジ(香港・マカオ仕様は5月18日より)。
      フロントグリルには、新たにメッキバーが付けられた。バックドアガーニッシュはリアコンビネーションランプ内まで連続しているようなデザインに変更されるとともに、リアコンビネーションランプのブレーキ部分をLED化し、上下を入れ替えたことで台湾仕様(前期)に似た配列になった。ドアミラーも台湾仕様同様にサイドターンランプを内蔵し、スポーティ系グレードには新デザインのエアロバンパーも採用。ボディカラーについては全グレードにおいてiQオーリスと同様の「オレンジメタリック」を選択できた。内装はシート表皮とメーター色をグレード毎に個別設定するなど個性を際立たせた。
      2Lグレードは「2.0Z」のみになり、従来の「2.0G」は「1.8G」へと変更。「1.8S」の廉価版として「1.8A」を追加した(なお、「1.8A」は「1.8S」同様3ナンバー登録であった)。また、「1.8S」と「2.0Z」には車両のGセンサーから減速度や旋回力を判断し、コーナリング中の不要なシフトアップを抑制するG AI-SHIFT制御付CVTスポーツモードを採用。さらに、エンジンなどの改良を行ったことで燃費を向上し、全車で「平成27年度燃費基準」を達成した[26]
      なお、法改正に伴う義務化の絡みで7人乗りの2列目中央シートベルトが2点式から3点式に変更された。
    • 12月 - 台湾仕様をマイナーチェンジ。
      全グレードとも日本仕様の「1.8S」や「1.8A」とほぼ同等のエクステリアであった。ただし、前期型同様にリヤバンパーは日本仕様のリフレクターの位置に大型のリヤフォグランプが内蔵されたため、若干形状が異なる。3ZR-FEエンジンに変更はないが、トランスミッションが4ATから7速シーケンシャルモード付「SUPER CVT-i」に変更され、燃費が向上した。
  • 2013年
    • 8月27日 - 生産を田原工場第2ラインから高岡工場第2ラインに移管。高岡工場第2ラインではヴィッツ(現・ヤリス)やラクティスなどの小型車を生産していたが、2010年から休止して需要変動に対応してさまざまな車種を混流生産できるよう刷新を行っていた[27][28]
    • 9月19日 - 2011年10月に発売した特別仕様車「1.8S MONOTONE」を再発売。
    今回は内装のヘッドレストに合成皮革を採用したほか、フロント周りはスモークメッキバー付のフロントグリルに加え、フロントエアロバンパーのセンターカラーをブラックに変更し、フロントフォグランプにスモークメッキガーニッシュを施した。さらに、スマートエントリー(運転席・助手席・バックドア/アンサーバック機能付・スマートキー2本)&スタートシステム、盗難防止システム(エンジンイモビライザーシステム)なども装備した[29]
  • 2014年 - 同年末までの新車登録台数の累計が23万656台に達する[30]
  • 2015年5月7日 - 一部改良
    CVTの改良により、1.8L・2WD車で燃費が16.0km/L(JC08モード)に向上した。また、フロントドアガラスには新たにスーパーUVカットガラスを採用し、「1.8G」と「2.0Z」に標準装備、特別仕様車の「1.8S MONOTONE」に特別装備した[31]
  • 2016年11月 - 台湾市場において、シエンタと入れ替わるかたちで生産・販売を終了。
  • 2017年10月13日 - 販売終了に伴い、ホームページの掲載を終了。日本市場においてはプリウスα(7人乗り仕様)に統合した[注 14]
  • 2019年6月3日 - 後付けの踏み間違い加速抑制システムの取付可能対象車種が拡大され、2代目ウィッシュでも取り付けが可能となる。車両前後に4つの超音波センサーを取り付け、前方または後方3m以内に障害物を検知するとブザー音で注意喚起を行い、さらにアクセルを踏み込んだ場合、加速を抑制する。また、後退時に5km/hを超えてアクセルを踏み込んだ場合、加速を抑制する[32]

ギャラリー[編集]

日本国内での販売台数[編集]

西暦 年間販売台数 出来事
2003年 158,658台 発売
2004年 126,531台
2005年 92,006台
2006年 78,142台 マイナーチェンジ
2007年 56,787台
2008年 39,292台
2009年 60,357台 モデルチェンジ
2010年 59,447台
2011年 36,766台
2012年 36,513台 マイナーチェンジ
2013年 26,021台
2014年 18,587台
2015年 13,204台
2016年 10,752台
2017年 6,987台 生産終了

[33]

車名の由来[編集]

英語で「願う、望む」を意味する「wish」が由来[34]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^
    初代
    堤工場第1ライン[1][2]
  2. ^ ; 2代目
    2009年4月 - 2013年8月 田原工場第2ライン
    2013年8月 - 2017年11月 高岡工場第2ライン[3]
  3. ^ 観音工場[4]
  4. ^ ゲートウェイ工場[5]
  5. ^ 4WD車は1600 mm。
  6. ^ 実際ウィッシュの車両型式は*XE1#・*XE2#となっており、同じ“E”の車両型式を持つカローラの系統であるともいえる。
  7. ^ ただし、台湾仕様はバンパーが大型化されて車名エンブレムの書体が異なったり(初代)、 パーキングブレーキがサイドレバー式であったり(初代・2代目)、パワーシートが備わる(2代目)など一部に違いある。
  8. ^ 4WD車は1.8 L車のみ
  9. ^ Breakthrough Engine with Advanced Mechanism System (先進機構を備えた画期的エンジン)
  10. ^ 連続可変バルブタイミング機構
  11. ^ 筒内直接燃料噴射装置
  12. ^ 2003年モデルは6速であったが、2005年のマイナーチェンジで7速に変更された
  13. ^ 堤工場での累計生産台数は56万4,558台[1]
  14. ^ 5ナンバーを基本とするミニバンとしてはシエンタが後継となる。

出典[編集]

  1. ^ a b トヨタ自動車 2012年
  2. ^ 工場をこの眼でみてみよう!この工場のここが見どころだ! ─ トヨタ自動車・堤工場、日産自動車・追浜工場 ─”. 新技術開発センター. 2020年12月19日閲覧。
  3. ^ トヨタ自動車75年史 国内工場概況 国内工場-田原工場”. トヨタ自動車. 2020年5月11日閲覧。
  4. ^ a b トヨタ自動車75年史 海外生産事業体概況 アジア 国瑞”. トヨタ自動車. 2020年5月10日閲覧。
  5. ^ a b c トヨタ自動車75年史 海外生産事業体概況 アジア TMT”. トヨタ自動車. 2020年5月10日閲覧。
  6. ^ a b 国土交通省 2009年
  7. ^ 星島 2003年, 29頁.
  8. ^ 石田 2003年.
  9. ^ トヨタ自動車 2012年.
  10. ^ 星島 2002年, p. 31-32.
  11. ^ 星島 2003, p. 27,28.
  12. ^ トヨタ、日野、ダイハツ、東京モーターショー(商用車)にハイブリッド車、福祉車両、次世代物流システムなどを出展』(プレスリリース)トヨタ自動車、2002年10月12日https://global.toyota/jp/detail/1988923 
  13. ^ トヨタ、新型車 ウィッシュ“WISH”を発売』(プレスリリース)トヨタ自動車、2003年1月20日https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/21778361.html 
  14. ^ トヨタ、ウィッシュに2.0リットル車を新設定』(プレスリリース)トヨタ自動車、2003年4月25日https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/21783467.html 
  15. ^ トヨタ、アベンシス・ヴィッツ・ウィッシュ・bBおよびラウムに特別仕様車を発売』(プレスリリース)トヨタ自動車、2004年4月26日https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/21788717.html 
  16. ^ TOYOTA、ウィッシュをマイナーチェンジ』(プレスリリース)トヨタ自動車、2005年9月5日https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/21784126.html 
  17. ^ TOYOTA、ウィッシュの特別仕様車を発売』(プレスリリース)トヨタ自動車、2004年4月17日https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/21779803.html 
  18. ^ TOYOTA、ウィッシュの特別仕様車を発売』(プレスリリース)トヨタ自動車、2007年6月18日https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/21781191.html 
  19. ^ TOYOTA、ウィッシュの特別仕様車を発売』(プレスリリース)トヨタ自動車、2008年6月24日https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/21784257.html 
  20. ^ デアゴスティーニジャパン週刊日本の名車第39号11ページより。
  21. ^ 浜田基彦 (2009年4月7日). “ウィッシュのシート、疲労を防ぎ、座面を長く感じさせる”. 日経BP. https://xtech.nikkei.com/dm/article/CAR/20090421/169104/ 
  22. ^ TOYOTA、ウィッシュをフルモデルチェンジ』(プレスリリース)トヨタ自動車、2009年4月2日https://global.toyota/jp/detail/1669863 
  23. ^ TOYOTA、ウィッシュの燃費を向上』(プレスリリース)トヨタ自動車、2009年12月2日https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/21778238.html 
  24. ^ TOYOTA、ウィッシュの燃費を向上』(プレスリリース)トヨタ自動車、2010年4月19日https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/21779075.html 
  25. ^ TOYOTA、ウィッシュの特別仕様車を発売』(プレスリリース)トヨタ自動車、2011年9月28日https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/21783681.html 
  26. ^ TOYOTA、ウィッシュをマイナーチェンジ』(プレスリリース)トヨタ自動車、2012年4月9日https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/21788549.html 
  27. ^ “トヨタ、高岡第2ラインが再稼働−「ウイッシュ」を生産開始”. 日刊工業新聞. (2013年8月28日). https://www.nikkan.co.jp/articles/view/266637 
  28. ^ “トヨタ、愛知・高岡第2ラインを8月再稼働−「ウィッシュ」田原から移管”. 日刊工業新聞. (2013年1月16日). https://www.nikkan.co.jp/articles/view/237339 
  29. ^ TOYOTA、ウィッシュの特別仕様車を発売』(プレスリリース)トヨタ自動車、2013年9月19日https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/21785465.html 
  30. ^ デアゴスティーニジャパン週刊日本の名車第86号5ページより。
  31. ^ TOYOTA、ウィッシュを一部改良』(プレスリリース)トヨタ自動車、2015年5月7日https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/21804622.html 
  32. ^ TOYOTA、後付けの踏み間違い加速抑制システム 対象車種拡大』(プレスリリース)トヨタ自動車、2019年5月29日https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/28290965.html 
  33. ^ トヨタ ウィッシュ 新車販売台数”. 株式会社アイディーインフォメーション. 2020年5月11日閲覧。
  34. ^ WISH 1代目 トヨタ自動車75年史 車両系統図 車両詳細情報”. トヨタ自動車. 2020年5月11日閲覧。


参考文献[編集]

雑誌記事[編集]

  • モーターファン別冊 ニューモデル速報三栄書房
    • 『第295弾 トヨタ プレミオ/アリオンのすべて』2002年3月。ISBN 4-87904-495-4 
      • 星島浩『メカニズム詳細解説 上質・高性能セダンに秘められた実力』、26-33頁。 
    • 『第316弾 トヨタ ウィッシュのすべて』2003年3月。ISBN 4-87904-613-2 
      • 河村康彦『ドライビング・インプレッション ミニバン? むしろ「3列シート・セダン」』、4-8頁。 
      • 青山尚樹『ドライビング・インプレッション 後攻ウィッシュ、一歩リード? のユーティリティ』、9-13頁。 
      • 編集部『デザイン・インタビュー 時代の変曲点に映えるボディ』、14-21頁。 
      • 大久保敦彦『開発ストーリー 何にでも楽しく使える、これからのハッチバック』、22-25頁。 
      • 星島浩『メカニズム詳細解説 「新しい乗用車」への"願い"』、26-31頁。 
      • 飛鳥学『使い勝手徹底チェック つくり込まれた3列目席、クラストップの心地よさ』、32-37頁。 

ネット記事[編集]

ウェブサイト[編集]

公文書[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]