トヨタ・ターセル

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ターセルTercel )は、トヨタ自動車がかつて製造・販売していた小型乗用車である。

1978年昭和53年)にトヨタ初のFF車として誕生し、1999年平成11年)まで販売されていた。姉妹車コルサ/カローラII/サイノスがあり、日本国外にも『ターセル』の名称で輸出されていた実績がある。

初代と次の2代目は、FF車でありながらエンジンを縦置きに搭載するという現在ではあまり見られない方式をとっていた[1]。エンジン後方に置かれたトランスミッションからの駆動力は、トランスミッションハウジングに内蔵されたプロペラシャフトで車体前方へ反転し、エンジンとトランスミッションの間にあるクラッチの下に置かれたデフに達する。

縦置きエンジンとした理由は、エンジンの整備性が向上すること、既存のオートマチックトランスミッション搭載に有利なこと、不等長ドライブシャフトに対する等長ドライブシャフトの優位性(トルクステア軽減)などが挙げられた。また、FR車に慣れた従来からのトヨタ車の顧客にFF車の違和感を与えないようにする事も、このレイアウトを採った重要な理由の一つである。しかし、エンジンとデフが上下に重なった、いわゆる「2階建て構造」となったしわ寄せが車体デザインにもおよび、ボンネット上面および側面のベルトラインが比較的高いプロポーションとなった。室内では前席中央足元にトランスミッションが張り出すが、前後方向の室内寸法を大きく取ることで、競合する横置きエンジンホンダ・シビック日産・パルサーに対抗した。さらに後席からもホイールハウスを廃したため、4mをわずかに切る全長ながら2,500mmものホイールベースとなった。

海外では安価でボディサイズのわりに広大な室内空間が評価されて人気があったが、日本国内での販売は今ひとつだった。

歴史[編集]

初代 L1#型(1978年 - 1982年)[編集]

トヨタ・ターセル(初代)
AL1#型
3ドアハッチバック 前期型 1500 ハイデラックス
Toyota Tercel AL10.jpg
販売期間 1978年8月 - 1982年5月
乗車定員 5人
ボディタイプ 2/4ドアセダン
3ドアハッチバック
エンジン 1A-U型 1.5L 直4
2A-U型 1.3L 直4
3A-U型 1.5L 直4
変速機 3速AT
5速 / 4速MT
駆動方式 FF
サスペンション 前:マクファーソンストラット
後:トレーリングアーム
全長 3,960 - 3,990mm
全幅 1,555mm
全高 1,355 - 1,375mm
ホイールベース 2,500mm
-自動車のスペック表-


ボディタイプは2ドア/4ドアセダンと3ドアハッチバック。発売当初のエンジンは新開発の1,500ccSOHC直列4気筒1A-U型のみだった。

  • 1979年(昭和54年)6月 - 1,300ccの2A-U型エンジンとオートマチック(1,500ccのみ)を追加。1,500ccのエンジンが1A-U型からE70型カローラ/スプリンターと共通の3A-U型に変更される。
  • 1980年(昭和55年)8月 - スラントノーズ化されるマイナーチェンジを受けた。同時に1500に「SEアベニュー」を設定。


2代目 L2#型(1982年 - 1986年[2][編集]

2代目ターセル(北米仕様)

1982年5月 当初の、ボディタイプは4ドアセダンと5ドアハッチバック、エンジンは縦置きを継承。ホイールベースは、取り回し・小回り特性を考慮して、70mmも短くなった。

姉妹車にはカローラ店向けの、カローラIIも加わる。カローラ店向けのカローラIIが追加されたことでターセルは、ビスタ店の専売となる。ただし、沖縄県にはビスタ店がなかったため、トヨタオート沖縄(現ネッツトヨタ沖縄)にて扱っていた。

女性仕様車の「キューティ」が設定された(4代目以降は「アベニュー」。「アベニュー」の名称は初代でも、後期型で最上級グレード(ターセルはSE、コルサはGSL)の、特別仕様車(ただし数量限定ではない)に用いられた。

コルサ・ターセル‣カローラⅡそれぞれ、基本構造、仕様は同じである。但し、この2代目よりそれぞれのグレード呼称に、明確な差別化を設けた。ターセルは、VC/VL/VLキューティ/VS/VEとなる。また最上級グレードの、〝1500VE”にはデジタルメーターが採用されていた(タコメーターのみアナログ式)。

1983年8月 3ドアハッチバックを追加。特別仕様車「スポーツS」発売。

1984年8月 マイナーチェンジでフェイスリフト/3ドアVSにエアロパーツと60扁平タイヤ装着のスポーツパッケージ仕様と4ドアセダンに4WD仕様車追加。

1985年1月 3ドア/5ドアハッチバック特別仕様車「VLキューティ(エアコン付)」発売。

1985年9月 4ドアセダン特別仕様車「4WD VLエクストラ」、「4WD VEエクストラ」発売。

1985年12月 3ドア/5ドアハッチバックのVLキューティから、発展した特別仕様車「キューティエクストラ」発売。

1986年5月 4ドアセダンはマイナーチェンジ。3ドア/5ドアハッチバックは生産終了し、次期型へ移行。

1987年10月 特別仕様車「4WD VL特別仕様車」発売。

1989年10月 生産終了。

3代目 L3#型(1986年 - 1990年)[編集]

日本仕様3代目ターセル・ジョイナス
北米向け3代目ターセル2ドアクーペ
北米向け3代目ターセル3ドアハッチバック

1986年5月 ボディタイプは3ドア/5ドアハッチバックとなり、2代目の4ドアセダンのみマイナーチェンジして継続販売とした。(北米向けに限り2ドアクーペも設定。この2ドアクーペはのちにサイノス(現地名・パセオ)として発展する)

また、2代目からのスポーツグレードは継承され、専用のリトラクタブルヘッドライト仕様(1.5リッターのみ、スポーツパッケージはOP)となった。スターレットがベースとなってエンジン横置き搭載の、FF前輪駆動方式になりミッションも変更される。ホイールベースは2代目と比較して更に、50mmも短くなった事で小回りの、特性が向上した。このモデルでも3ドア/5ドアハッチバックは、全車種車型FF駆動方式となる。

ガソリン車は全車(4ドアセダンは、旧型に準ずる)SOHC12バルブ(1.3L・2E-U型、1.5L・3E-U型、1.5L EFI・3E-EU型)またこの3代目から、1.5Lディーゼルターボエンジン(1N-T型)が加わり[3]全車種車型において、"LASER"エンジンを搭載。

1.3リッターについては4MT/3AT仕様となり、1.5リッターは5MTと4AT(ロックアップ機構付き)も選択できた。 グレード構成は、VC/VL/キューティ/VS/VXとなる。VCとキューティ(VLにも?)には、1.3リッターガソリンエンジンを搭載、VL/VS/VXには1.5リッターガソリンエンジンを搭載。VL・VX(VCにも?)には新設された、1.5リッターディーゼルターボも設定。また、4輪独立懸荷"PEGASUS"の標準化や、GP-TURBOには電子制御サスペンション、"TEMS"のOP設定があった。

1986年10月 歴代3姉妹シリーズ唯一の、1.5L SOHC12バルブインタークーラーターボエンジン(3E-TEU型)搭載「GPターボ」が、3ドアリトラハッチバックのみ設定される。 特別仕様車の「1.3キューティ(CUTIE)エクストラ」を設定、 廉価グレード"VD"の、エアコン/パワステ付きお買い得仕様車として、"ジョイナス(JOINUS)"グレードを新設。「ジョイナス(JOINUS)」は"VC"に準じており、1.3リッターガソリンエンジン仕様と1.5リッターディーゼルターボ仕様、ミッションはそれぞれ4MTと3ATが選べた。

1988年5月 マイナーチェンジ、グレード設定と呼称の見直し。グレード呼称は、VC/VL/JOINUS/CUTIE/VX/リトラVR/リトラVS-i/リトラGP-TURBOとなる。オプションであったリトラの、スポーツパッケージはVS-iとGP-TURBOには装着され、リトラVRが廉価グレードとして新設される代わりに、スポーツパッケージを省かれた。同時に、3ドアのみキャンバストップ仕様の"リトラVS-i"と"1.5ガソリン仕様ジョイナス(JOINUS)"に設定。マイナーチェンジ後のキャッチコピーには、「オシャレ通りの新ターセル」となった。
3ドア/5ドアに1.3リッターガソリンエンジン仕様(4MT/3AT設定)の特別仕様車、「キューティエクストラ・ジョイナスエクストラ」をそれぞれ追加。 ボディカラーはホワイトとソリッドレッドの2種、ホワイトがブルー内装、レッドはブラック内装となる。 主な仕様として、既設グレード(キューティ/ジョイナス)に対して"キューティエクストラ"が「着座位置記憶機能付きシート・パワーウィンドウ・スペシャルエアコン・カラードバンパー/可倒式電動カラードドアミラー/カラードホイール/ブロンズガラス(チルトステアリング?)」、"ジョイナスエクストラ"は、「スペシャルエアコン・カラードバンパー/可倒式カラードドアミラー/カラードホイール」となる。

4代目 L4#型(1990年 - 1994年)[編集]

4代目ターセルセダン 4代目ターセルセダン
4代目ターセルセダン

1990年9月 発表時のキャッチコピーは、「ターセルゲームだ、オールマイティセダン」。ボディタイプは、3ドアハッチバックと4ドアセダン、4ドアセダンは2代目以来の刷新となったものの、5ドアハッチバックが消滅した。3ドアリトラ「1.5GPターボ」は廃止され全グレードの、エンジンがDOHC16バルブ(ハイメカツインカム)・EFI化される(ディーゼル車は除く)。

今回から、4ドアセダンとともに3ドアハッチバックにも、4WD仕様が導入された。当時の、自動車業界の傾向や世相からも内外装の、品質が高くなった。グレード構成は、3ドアハッチバックでVC/ジョイナス(JOINUS)/アベニュー(AVENUE)/VS/VZ、4ドアセダンがVC/ジョイナス(JOINUS)/アベニュー(AVENUE)/VE/VX/VZとなる。グレードごとのエンジン構成は、1.3リッターガソリン(4E-FE)がVC/JOINUS/AVENUEに設定。1.5リッターガソリン(5E-FE)は、VE/VS/VX/VZに設定され(VZに関してはハイメカツインカムの5E-FHE)。1.5リッターディーゼルターボ(1N-T)は、VC/JOINUS/VSに設定される。トランスミッションは、1.3リッターガソリンが4MT/3ATと変わりないものの、1.5リッターに関しては基準車が5MT/4ATとなり、グレード3ドア・4ドアVZには電子制御4ATの"ECT-S"が奢られた。なお4WDの設定は、グレードJOINUS/VS/VXとなる。4代目ベースの派生車種としてサイノスが発売された。


1992年4月 特別仕様車「3ドア1300ジョイナスエクストラ」、「4ドア1300ジョイナスエクストラ」、「4ドア1500VXリミテッド」発売。

1992年8月 マイナーチェンジ。全車、前後バンパーが若干大型化されサイドドアビームが標準装備された。一部上級グレードには、"運転席SRSエアバッグ"の設定もあった。グレード構成の見直し、3ドアハッチバックがVCカスタムパック/VC/JOINUS/AVENUE/VS/VZ、4ドアセダンがVCカスタムパック/VC/JOINUS/AVENUE/VE/VX/VZとなる。エンジン構成はほぼ前期型と変わらないが、ミッションについては3ドア・4ドアVZに設定されていた、電子制御4ATの"ECT-S"に対して(4ドアVXに追加設定)、1.5リッターガソリン車(グレード3ドア・4ドアVS)に電子制御4ATの、"ECT"が標準となる。

1992年12月 特別仕様車「3ドア1300ジョイナスエクストラ」、「4ドア1300ジョイナスエクストラ」発売。

1993年5月 特別仕様車「生産累計8000万台記念NEW ジョイナスエクストラ」発売。

1993年8月 特別仕様車「3ドア1300ジョイナスエクストラ」、「4ドア1300ジョイナスエクストラ」仕様変更。ディーラー特別仕様車の車種としても使用設定された。

5代目 L5#型(1994年 - 1999年)[編集]

トヨタ・ターセル(5代目)
EL5#/NL5#型
4ドアセダン(中期型・日本仕様)
Toyota-TercelL50.JPG
4ドアセダン(後期型・北米仕様)
'98-'99 Toyota Tercel Sedan.jpg
販売期間 1994年9月 - 1999年8月
乗車定員 5人
ボディタイプ 4ドアセダン
3ドアハッチバック
2ドアクーペ(北米のみ)
エンジン 5E-FE型 1.5L 直4
4E-FE型 1.3L 直4
1N-T型 1.5L 直4
変速機 4速 / 3速AT
5速 / 4速MT
駆動方式 FF/4WD
サスペンション 前:マクファーソンストラット
後:トーションビーム
(FF)
後:4リンク/コイル
(4WD)
全長 3,915 - 4,130mm
全幅 1,660mm
全高 1,370 - 1,385mm
ホイールベース 2,380mm
車両重量 820 - 1,080kg
-自動車のスペック表-


1994年9月 キャッチコピーは"ちょうど小さい新ターセル"、CMキャラクターには当初、吉川ひなのが起用[4]されていた。

ボディタイプは3ドアハッチバックと4ドアセダン。コストダウンを図るべく、基本コンポーネントは先代からのキャリーオーバーとなり、先代より直線的でなおかつ合理的なスタイリングを採用。グレード構成は、3ドアハッチバック及び4ドアセダンのそれぞれ、JOINUS Eパッケージ/JOINUS/AVENUE/VXとなる。

エンジンは、1.3リッターガソリン(4E-FE)を3ドア・4ドアJOINUS Eパッケージ/JOINUS/AVENUEに設定、また1,5リッターガソリン(5E-FE)を3ドア・4ドアVXにそれぞれ設定、1.5ディーゼルターボ(1N-TE)の設定は3ドア・4ドアJOINUSのみとされた。

当初はフルラップ衝突対応の衝突安全ボディ"CIAS"が採用されていたが、1996年の一部改良より最新基準となるオフセット衝突対応の衝突安全ボディ"GOA"を採用。運転席SRSエアバッグのOP設定、4WDを1.5リッターガソリンの、3ドア・4ドアそれぞれJOINUS/VXに設定。

トランスミッションは変わらず、1.3リッターガソリンが4MT/3ATという構成に、1.5リッターガソリンが5MT/4AT(ECT)、1.5リッターディーゼルターボに5MT/4AT(ロックアップ付き)となった。

セダン全車ショルダーベルトアンカー/ハッチバック全車ショルダーベルトホルダー設定。3ドア・4ドアJOINUSに対し、Eパッケージを設定、前後バンパーは無塗装。


1995年1月 特別仕様車、1.3リッターガソリン、3ドア・4ドア ジョイナス・エクストラ(JOINUS-EXTRA)を設定。


1996年1月 一部改良、全車に最新基準となるオフセット衝突対応の衝突安全ボディ"GOA"を採用。運転席SRSエアバッグとABSが全車標準装備となる。これに伴い特別仕様車、1.3リッターガソリン、3ドア ジョイナス・エクストラL(JOINUS-EXTRA-L)・4ドアJOINUS-EXTRA-Lを設定。


1997年12月 マイナーチェンジ、フロント周り/リア周り/シート生地色調の意匠変更。全車にマルチリフレクターヘッドランプが標準装備となる。ボディカラーの見直し、それまでの"スペシャルエアコン"(トヨタのエアコンは3種あり、通常のエアコンがスペシャルエアコン、ECOモード付きがマニュアルエアコン、オートがオートエアコンと、いうことになっている。)仕様に対して、ほとんどのグレードでマニュアルエアコン(ECOモード付き)に切り替わっている。全車デュアルエアバッグ/フロントプリテンショナーシートベルト、リアシート用ヘッドレストとリヤ左右シートベルト3点式の採用、グレード構成の見直しは無く、各グレード/エンジン/駆動方式に変更は無い。但し、ガソリン全車ディストリビュータレスの点火方式に、進化している。

1999年特別仕様車、1.3リッターガソリン、3ドアJOINUS-EXTRA-L・4ドアJOINUS-EXTRA-Lを設定。

  • 1999年(平成11年)7月 - ハッチバックは事実上のスターレットとの統合後継車に当たるヴィッツ、セダンはプラッツの生産へと移行したが、ビスタ店では該当2車種が扱われないまま、5代目を最後に生産終了。
北米向け5代目ターセル2ドアクーペ


車名の由来[編集]

英語の、「ハヤブサ(鳥)」から。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ トヨタ初の横置きエンジンFF車は1982年発表の2代目カムリ/初代ビスタとなった。
  2. ^ 4ドアセダンは1990年まで。
  3. ^ 5ドアに設定。
  4. ^ その後、1997年12月のマイナーチェンジでは太田裕美がCMキャラクターとして起用された。

外部リンク[編集]