トヨタ・カローラII

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
トヨタ・カローラ > トヨタ・カローラII

カローラII(カローラツー、COROLLA II)は、トヨタ自動車で生産されていた小型乗用車である。

トヨタ・カローラII
概要
別名 トヨタ・ターセルハッチバック
トヨタ・コルサハッチバック
製造国 日本の旗 日本
販売期間 1982年-1999年
ボディ
ボディタイプ 3/5ドアハッチバック
駆動方式 前輪駆動
系譜
後継 トヨタ・デュエット(事実上)
ダイハツ・ストーリアOEM
テンプレートを表示

概要[編集]

1980年に登場し人気を博していたマツダ・ファミリアハッチバック(BD型)に対抗すべく、カローラ店においてカローラの下位を担う小型ハッチバック車として登場した。車格としては、スターレットとカローラの中間に位置する。

「カローラ」を名乗っているがメカニズム面で同車との関連はなく、ターセル/コルサと共通のプラットフォームを用いている。ボディはハッチバックのみで、ターセル/コルサに設定のあったセダンは存在しない。

本車の登場により、それまでカローラ店とビスタ店で併売されていたターセルは、2代目からビスタ店専売となった。

初代 L2#型(1982年 - 1986年)[編集]

トヨタ・カローラII(初代)  
AL2#型
1984年8月改良型 3ドア SR
概要
販売期間 1982年5月 - 1986年5月
設計統括 平井昭好
ボディ
乗車定員 5人
ボディタイプ 3 / 5ドアハッチバック
エンジン位置 フロント
駆動方式 前輪駆動
プラットフォーム ターセル/コルサと共通
パワートレイン
エンジン 3A-SU型 1452 cc 直4 SOHC
3A-U型 1452 cc 直4 SOHC
2A-U型 1295 cc 直4 SOHC
変速機 3速AT
5速 / 4速MT
前/後:ストラット式コイルスプリング
前/後:ストラット式コイルスプリング
車両寸法
ホイールベース 2,430 mm
全長 3,880 - 3,885 mm
全幅 1,615 mm
全高 1,385 - 1,405 mm
車両重量 800 - 900 kg
その他
姉妹車 トヨタ・コルサ(2代目)
トヨタ・ターセル(2代目)
データモデル 後期型 3ドア
系譜
先代 トヨタ・ターセルハッチバック(初代、カローラ店
テンプレートを表示
  • 1982年(昭和57年)5月、ターセル/コルサのフルモデルチェンジと同時に登場。排気量は1,500 cc(3A-U型)または1,300 cc(2A-U型)で、横置きエンジンジアコーサ式で問題となる不等長ドライブシャフトによるトルクステアを嫌い、エンジンを縦置きに搭載する前輪駆動車としては珍しい構成だった[注 1]。最上級グレードである1500 SRには可変ベンチュリー式シングルキャブ(3A-HU型)仕様が用意された。(前期のみ)CM出演者はジョン・マッケンローで、キャッチコピーは「僕らのチャンピオン・カー」。
  • 1984年(昭和59年)1月 チェック柄シート表皮とサイドストライプ(デカール)を装備した1300ウィンディDXを追加(マイナーチェンジでカタログモデルに昇格)(前年限定販売したDX-Sとほぼ同じ仕様)。
  • 1984年(昭和59年) 8月 - マイナーチェンジ。外観ではテールランプのデザインが大きな変更を受ける。1,500 ccはMT車が可変ベンチュリー式ツインキャブを搭載した3A-SU型(90馬力)に、AT車は従来の3A-HU型(83馬力)が継続して採用された。また1,500 cc車のグレードはSRのみに、さらに3ドアSRをベースにエアロパーツ60扁平タイヤを装備したSRスポーツパッケージが新たに追加された。
  • カローラII専用(ターセル/コルサには設定なし)グレードとして、社用車向け最廉価モデルの3ドア1300 CD(かつての乗用車でいう「STD(スタンダード)」に相当)が2代目末期の1990年平成2年)まで設定された。カタログでもオプション・諸元表のみで写真掲載は無し。シートは全ビニールレザーでラジオ、後窓熱線デフォッガーもメーカーオプション。

販売終了前月までの新車登録台数の累計は30万8554台[1]

2代目 L3#型(1986年 - 1990年)[編集]

トヨタ・カローラII(2代目)
EL3#/NL3#型
5ドア・1988年5月改良型「1.3スーパーウィンディ」
概要
販売期間 1986年5月 - 1990年9月
設計統括 平井昭好
ボディ
乗車定員 5人
ボディタイプ 3 / 5ドアハッチバック
エンジン位置 フロント
駆動方式 前輪駆動
プラットフォーム ターセル/コルサと共通
パワートレイン
エンジン 2E型 1.3L 直4 SOHC
3E型 1.5L 直4 OHC
3E-E型 1.5L 直4 SOHC
3E-TE型 1.5L 直4 OHCターボ
1N-T型 1.5L 直4 SOHC
変速機 4速 / 3速AT
5速 / 4速MT
前:ストラット
後:トーションビーム
前:ストラット
後:トーションビーム
車両寸法
ホイールベース 2,380mm
全長 3,865mm
全幅 1,625mm
全高 1,370mm
車両重量 890kg
その他
データモデル GPターボ
姉妹車 トヨタ・ターセル(3代目)
トヨタ・コルサ(3代目)
テンプレートを表示
  • 1986年5月 2代目にフルモデルチェンジ。キャッチフレーズは「流星ライナー」。初代が縦置きを前提とした設計であるA型エンジンを搭載していたのに対し、このクラスの主力として新たに投入されたE型エンジンに換装されたため、前輪駆動車として一般的なエンジン横置きとなる。ボディタイプは3ドアと5ドア、更に3ドアにはこのクラスとしては珍しいリトラクタブルライトを装備したスポーティグレードの「3ドア・リトラSR」を新たに追加し、エアロ仕様であるスポーツパッケージも初代から継続してグレード設定された。CM出演者は前期・後期とも原田知世
  • 同年9月には1.5L SOHC12バルブ インタークーラーターボエンジン(3E-TE型)を搭載した最上級グレード「リトラ・GPターボ」も登場。弟分であるスターレットと同じくHi/Lo切替え可能な2モードターボを採用。Hiモード時で110ps、Loモード時で97psを使い分けられた。歴代カローラIIシリーズの中でガソリンエンジンのターボ車は同モデルのみである。この2代目以降から1.5Lディーゼルターボ(1N-T型)エンジン搭載車も設定される。なおガソリンエンジンは全てSOHC12バルブ。車両型式は1.5Lガソリン車がEL31、1.3Lガソリン車がEL30、1.5Lディーゼル車がNL31となる。
  • 1988年5月 マイナーチェンジ。79psだったキャブレター仕様の3E型に加え、EFIを採用し88psとパワーアップした3E-E型が新設グレードである「リトラ・SR-i」に追加搭載される。更に3ドアの一部グレードにシリーズ初となる電動キャンバストップ仕様が設定される。外観ではリトラグレードのフォグランプ設置位置がバンパー下部からリトラクタブルライト直下に変更される。GPターボは過給圧が見直され、Hiモード時で115ps、Loモード時で105psとなる。リトラクタブル・ヘッドライトの一部採用、ターボ搭載、キャンバストップ、1.3L車に希薄燃焼仕様エンジンの搭載など、歴代のシリーズ中で最もバリエーションに富むと共に、様々な試行がなされたモデルだったが、四輪駆動に関しては3代目以降の採用となっている。カローラIIの5ドアはこのモデルが最後となる。

販売終了前月までの新車登録台数の累計は25万2618台[2]

3代目 L4#型(1990年 - 1994年)[編集]

トヨタ・カローラII(3代目)
EL4#/NL4#型
1990年9月改良型 TX
1992年8月改良型 SR 4WD
概要
販売期間 1990年9月 - 1994年9月
ボディ
乗車定員 5人
ボディタイプ 3ドアハッチバック
エンジン位置 フロント
駆動方式 前輪駆動 / 四輪駆動
プラットフォーム ターセル/コルサと共通
パワートレイン
エンジン 4E-FE型 1.3L DOHC
5E-FH型 1.5L DOHC
1N-T型 ディーゼル1.5L SOHC
変速機 4速 / 3速AT
5速 / 4速MT
前:ストラット式
後:トーションビーム式
(前輪駆動)
後:4リンク/コイル式
(四輪駆動)
前:ストラット式
後:トーションビーム式
(前輪駆動)
後:4リンク/コイル式
(四輪駆動)
車両寸法
ホイールベース 2,380mm
全長 3,930mm
全幅 1,645mm
全高 1,365 -1,435mm
その他
姉妹車 トヨタ・コルサ(4代目)
トヨタ・ターセル(4代目)
データモデル 後期型 SR 4WD
テンプレートを表示
  • 1990年9月 3代目デビュー。キャッチフレーズは「ごめんあさっせ。私の、新型カローラⅡ誕生」。カローラIIはこの代より3ドアハッチバック専用の車種となる。エンジンは4E-FE型1.3L・100馬力と1.5L・105馬力5E-FE型(SR)及びハイパワー仕様115馬力の5E-FHE型(ZS)1.5LでいずれもDOHC・EFIとなった(ディーゼル車は除く)。ディーゼル車は従来どおりの1.5Lの1N-T型・67馬力。先代とは一転して丸みを帯びた外観を持つのが特徴。バブル景気バブル経済)の真っ最中に設計されたためか、室内インテリアの質感も歴代モデルで最も高く、低価格車という印象を与えない。先代に引き続いて電動キャンバストップ仕様もラインナップされた。車両型式は1.5Lガソリン車の2WD仕様がEL43、同1.5Lガソリン車の四輪駆動仕様がEL45、1.3Lガソリン車がEL41、1.5Lディーゼル車がNL40となる。
  • 1992年8月 マイナーチェンジ。バンパー、フロントグリル、テールレンズなどの形状を変更。エアバッグのオプション設定、サイドドアビームの追設など。
  • 1993年8月 一部改良。エアコンに新冷媒(R134a)の採用。
  • 1994年8月[3] 生産終了。在庫対応分のみの販売となる。
  • 1994年9月 4代目とバトンタッチして販売終了。販売終了前月までの新車登録台数の累計は18万2034台[4]

4代目 L5#型(1994年 - 1999年)[編集]

トヨタ・カローラII(4代目)
EL5#/NL5#型
1997年12月改良型
概要
販売期間 1994年9月 - 1999年
ボディ
乗車定員 5人
ボディタイプ 3ドアハッチバック
エンジン位置 フロント
駆動方式 前輪駆動 / 四輪駆動
プラットフォーム ターセル/コルサと共通
パワートレイン
エンジン 4E-FE型 1.3L 直4 DOHC
5E-FE型 1.5L 直4 DOHC
1N-T型 ディーゼル1.5L 直4 SOHC
変速機 4速 / 3速AT
5速 / 4速MT
前:ストラット式
後:トーションビーム式
(前輪駆動)
後:4リンク/コイル式
(四輪駆動)
前:ストラット式
後:トーションビーム式
(前輪駆動)
後:4リンク/コイル式
(四輪駆動)
車両寸法
ホイールベース 2,380mm
全長 3,915mm
全幅 1,660mm
全高 1,370mm
車両重量 820 - 1,060kg
その他
姉妹車 トヨタ・ターセル(5代目)
トヨタ・コルサ(5代目)
データモデル 後期型
系譜
後継 トヨタ・デュエットダイハツ・ストーリアOEM)に統合
(事実上)
テンプレートを表示
  • 1994年9月 4代目デビュー。丸みを帯びた先代とは一転してコストダウンに徹したモデルで、直線・平面基調の外観となった[注 2]。ガソリンエンジンは先代に設定されていた5E-FHE型が消滅し、4E-FE型と5E-FE型の2種類となった。シャーシはほぼ先代のキャリーオーバーである。車両型式は1.5Lガソリン車の2WD仕様がEL53、同1.5Lガソリン車の四輪駆動仕様がEL55、1.3Lガソリン車がEL51、1.5Lディーゼル車がNL50となる。
  • CMソングは、前期は小沢健二カローラIIにのって』。後期はカジヒデキカローラIIに恋をした』。CM出演は今村直樹。
  • 1996年8月 マイナーチェンジで中期型に。 衝突安全ボディ「GOA」を採用し、それまでオプションであったABSとデュアルSRSエアバッグが全車に標準装備された。樹脂ホイールキャップのデザイン変更とリアハッチの車名レターマークがメッキパーツに変更された以外の外観差は少なく、フロント側からの識別は難しい。
  • 1997年12月 マイナーチェンジで後期型に。 マルチリフレクター式ヘッドランプやリアコンビランプのデザイン変更、クリアウインカー採用などエクステリアが大きく変更され、インテリアの質感もアップ、内装色に従来のグレーのほかにベージュが追加された。
  • モデリスタがフロントとリヤ周りをクラシカルなデザインに大幅に変更した特装車「モデリスタ PX12ナポリ」も少数ながら存在した。
  • 1998年12月[5]オーダーストップに伴い生産終了。以後は在庫のみの対応となる。
  • 1999年7月[6] 事実上スターレットとの統合後継車に当たるヴィッツが登場したが、ビスタ店及びカローラ店ではヴィッツが扱われず(2004年のビスタ店・ネッツ店統合時に旧ビスタ店であるネッツ店でもヴィッツが扱われるようになる[注 3])、ターセル/コルサと共に販売を終了し、17年の歴史に幕を下ろした。新車登録台数の累計は14万9869台[7]なお、ターセル/コルサにのみ設定されていた4ドアセダンの後継車でヴィッツをベースにしたプラッツは同様にカローラ店で扱われなかった(トヨペット店・ネッツ店にて取り扱い)が、プラッツのさらに後継のベルタはトヨペット店だけでなくカローラ店でも扱われていた。また、カローラの名前を冠したハッチバック車はカローラFXの事実上の後継となるカローラランクスの登場(2001年)まで途絶えることとなる。

改造車[編集]

L40型及び50型はEP82/91型スターレットとエンジン及び足回りが共通であったため、スターレットに設定されていた4E-FTE型エンジン(ターボチャージャー付き)やスターレット用の競技用サスペンションを移植された個体も若干存在した。中には5E-FE型エンジン搭載車両をベースに、4E-FTE型エンジンのターボチャージャーを移植した1,500ccのターボチャージャー搭載というものもあった。これらターボチャージャー移植車両は、車検証上は「EL4x改」あるいは「EL5x改」と表記された。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ プラットフォームを共用する初代スプリンターカリブも同様のレイアウト。
  2. ^ 言い換えればコストダウンしたのがはっきりとわかる外観であった。コストダウンは外装のみならず、シャーシや塗装の品質にも及んでおり、当時のほとんどのFF車が克服していたFF車特有の癖(ステアリングホイールにエンジンのトルク変動が伝わるトルクステア、発進時にガクガクするスナッチが出るなど)が現れたり、また経年時にほとんどの個体で塗装の剥げが見られたりした。なお、このような傾向は基本プラットフォ-ムを共有する2代目サイノスや5代目スターレット、初代ラウムにもほぼ同様の現象が見られた。
  3. ^ 2019年3月より東京都で、2020年4月よりその他の道府県でチャネル別の専売制度が廃止され、ヴィッツ(および後継のヤリス)がカローラ店で扱われるようになった。

出典[編集]

  1. ^ デアゴスティーニジャパン週刊日本の名車第35号13ページより。
  2. ^ デアゴスティーニジャパン週刊日本の名車第44号13ページより。
  3. ^ カローラII(トヨタ)1990年9月~1994年8月生産モデルのカタログ”. リクルート株式会社 (2020年1月11日). 2020年1月11日閲覧。
  4. ^ デアゴスティーニジャパン週刊日本の名車第81号11ページより。
  5. ^ <カローラII(トヨタ)のカタログ”. リクルート株式会社 (2020年1月11日). 2020年1月11日閲覧。
  6. ^ デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車第24号9ページより。
  7. ^ デアゴスティーニジャパン週刊日本の名車第24号9ぺ0-時より。

車名の由来[編集]

「カローラ」はラテン語花冠意味である。

「II」にはカローラの子分、あるいは/分という意味が込められており[1]ランドクルーザーIIなどと同様に、元の車名のサブシリーズ(格下)という意味である。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  1. ^ 車両系統図【豆知識】車名の由来”. トヨタ自動車株式会社. 2022年2月13日閲覧。
  2. ^ 文雄, 河崎. “「人前で手をつながない」天皇と雅子さまが“初めて”カメラの前で手を触れ合わせた日”. 文春オンライン. 2023年4月3日閲覧。