プラズマクラスター

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近鉄50000系電車に設置されているプラズマクラスター

プラズマクラスター(Plasmacluster)は、家電メーカーシャープによる造語であり、プラズマ放電により活性酸素を発生させ+(プラス)と-(マイナス)のプラズマクラスターイオンを作り空気中に放出するプラズマクラスター技術(特許第3680121号)を総称するものである。この「プラズマクラスター」の呼称はシャープにより商標登録されている(商標登録番号:第4521235号ほか)。

概要[編集]

+(プラス)のイオンはH+、-(マイナス)のイオンはO2-で、自然界に存在するものと同じであるとしている。共に周りを分子が取り囲んでいるため長寿命であるという[1]

東芝等他の国内家電メーカーがマイナスイオンと称するものの技術を家電に応用した後、シャープはプラスのイオンとマイナスのイオンの両方を空気中に放出する独自技術を、家電製品に搭載した。 空気清浄機エアコン冷蔵庫などの分野で、イオン発生器を組み込んだ製品を展開している。 「プラズマクラスターはシャープだけ」のキャッチコピー通り、自動車等の他社製品に組み込んでいる場合も「シャープのプラズマクラスター」としている。

2008年に、「プラズマクラスターイオンによる空気浄化」にて発明協会の発明賞を受賞した。

効果と効用[編集]

シャープは、プラズマクラスターイオンに以下の効果があるとしている。しかし、有効性を確認出来ないとする研究[2]はあるが、開発者以外の第三者による「除菌効果の実空間での実証」がされた科学論文2010年現在のところ存在していない。

  • 布に染み込ませたタバコの臭いを脱臭
  • 浮遊しているダニの糞や死骸等のタンパク質を切断して除去、アレルゲンの作用を低減
  • 空気中のウイルスを除去し、浮遊ウイルスの作用を抑える
  • 細菌の細胞膜のタンパク質を断片化して不活化
  • 浮遊しているカビの細胞膜のタンパク質を切断して分解除去
  • イオン濃度25000個/cm2の場合、肌の水分量の増加
  • 機能搭載エアコンの場合、内部のカビを除菌

有効性に関する主張と議論[編集]

有効とする主張

同社は、広島大学大阪市立大学ハーバード大学ソウル大学など国内外の複数機関で研究を行い効果を実証しているとしている[3]。新型H1N1インフルエンザウイルスに対しても2時間の照射で99.9%抑制するなどの効果を検証している[4]

シャープはまた、財団法人パブリックヘルスリサーチセンターが大橋靖雄教授(東京大学大学院医学系研究科)の監修の下で行った二重盲検法による試験において、インフルエンザウイルス感染率を約30%低減できたことを確認したと発表している[5][6]

懐疑的な主張

しかし、上述臨床試験については結果が統計学的な有意差に至っていないことから、効果が無いことを証明したものであると解釈する意見もある[7]

グローブボックス内で黄色ブドウ球菌、緑膿菌、セレウス菌、腸球菌に対して使用した試験では、殺菌効果の有効性が確認できなかった[2]とする研究がある。

効能の一つに「機能搭載エアコンの場合、内部のカビを除菌」が挙げられているが、カビの発生自体を防ぐわけではない。プラズマクラスター機能がついていても定期的な分解掃除は必要である。プラズマクラスター発生装置が備わっている製品はその分、分解掃除が困難になり、むしろカビが多く溜まってしまうという矛盾を抱えている。

消費者庁による不当表示判定(優良誤認)[編集]

シャープは製造した「プラズマクラスター」を組み込んだ掃除機に関して、空気中に浮遊しているダニの糞や死骸等のアレルギーの原因となる物質を分解、除去すると広告で表示していたが、2012年11月28日、消費者庁が外部の研究機関に依頼して調べた結果、表示された通りの性能が出なかったため、同社に対し不当景品類及び不当表示防止法違反(優良誤認)で再発防止を求める措置命令を出した[8][9]。この措置命令に対しシャープは、プラズマクラスターの性能自体の問題ではなく広告表示への指摘だとしたうえで、2012年10月末までに広告表示の修正を行った[10]

特許内容[編集]

特許第3680121号。特許庁webより閲覧できる。実験は縦2m、横2.5m、高さ2.7mの空間において行われているが、実験の有意差検定は行われておらず、n数も載っていない。

48項
イオンを送出しない場合において、1時間後の浮遊細菌の残存率は63.5%と書かれており、イオンとは関係なく36.5%減る。
36項
第一形態におけるイオン送出1時間後の残存率は36%であり、48項の内容と比較して27%程度の効果があるように書かれている。
56項
第三形態では同20%の効果。
61項
第四形態では30%の効果。
65項
第五形態では20%少々の効果。

プラズマクラスターがいずれの形態に該当するかは書かれていない。

原理[編集]

H+とO2-がカビや細菌やウイルス等の表面に付着すると、OHラジカルに変化し、それらの表面のタンパク質から水素を抜き取り分解して水になるとしている[1]

開発者による技報[11]によると、除菌効果は放電と同時に発生したオゾンによるものではなく、正イオンと負イオンの反応により生成した活性酸素(OHラジカルなど)のタンパク質変性作用が、ウイルスを不活性化するとしている。

安全性[編集]

急性皮膚刺激性/腐食性試験、急性眼刺激性/腐食性試験、吸入毒性試験(肺組織の遺伝子影響評価)から、安全性を確認済みとしている[1]

なお上記メカニズムに記述されている通り、細菌についても、細胞膜を破るのでありDNA には変化が無いことを確認したとしている[12]

脚注[編集]

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  1. ^ a b c 『エアコン総合カタログ』シャープ株式会社、2010年4月
  2. ^ a b [ttp://dx.doi.org/10.4058/jsei.27.342 殺菌力を謳う各種空気清浄電気製品の,塗布乾燥状態の細菌に対する効果の有無の検証] 日本環境感染学会誌 Vol.27 (2012) No.5 p.342-345
  3. ^ 「プラズマクラスター」は、シャープだけ (SHARP)「高濃度プラズマクラスターイオン」が浮遊ダニアレルゲンによるアレルギー反応を抑制する効果を生体レベルで実証 (SHARP、2009年7月27日)
  4. ^ プラズマクラスター技術により、世界初、付着および浮遊両状態の「新型H1N1インフルエンザウイルス」の感染力を抑える効果を実証・詳細(ニュースリリース:シャープ)
  5. ^ “高濃度プラズマクラスターイオンにより世界初臨床試験において、ヒトへのインフルエンザウイルス感染率低減の傾向を確認” (プレスリリース), SHARP, (2010年11月9日), http://www.sharp.co.jp/corporate/news/101109-a.html 
  6. ^ “シャープのプラズマクラスターイオン、インフルエンザウイルス感染率の低減に効果”. 家電watch. (2010年11月9日). http://kaden.watch.impress.co.jp/docs/news/20101109_405698.html 
  7. ^ 透析室でのプラズマクラスターイオン発生装置の利用、インフルエンザ感染の発症を抑える効果は確認できず”. 日経メディカルオンライン (2010年11月7日). 2012年10月1日閲覧。
  8. ^ “シャープ掃除機、不当表示 「ダニのふん除去」うたう”. 朝日新聞. (2012年11月28日). http://www.asahi.com/business/update/1128/TKY201211280461.html 2012年11月28日閲覧。 
  9. ^ シャープ株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について(PDF) (PDF) - 消費者庁,2012年11月28日
  10. ^ 弊社掃除機のカタログ表示等に関する措置命令についてのお詫びとお知らせ2012年12月3日閲覧
  11. ^ 西川 和男; 野島 秀雄. “放電プラズマにより生成したクラスターイオンを用いた気中ウィルス不活性化技術、シャープ技報、Vol.86、pp.10-15、2003 (PDF)”. 2007年8月27日閲覧。
  12. ^ 西川 和男「正極性と負極性のクラスターイオンによる細菌不活化メカニズム」『シャープ技報』第94号、2006年8月

関連項目[編集]

外部リンク[編集]