プラズマクラスター

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近鉄50000系電車に設置されているプラズマクラスター

プラズマクラスター(Plasmacluster)は、家電メーカーシャープが開発した、プラズマ放電により活性酸素を発生させ、+(プラス)と-(マイナス)のプラズマクラスターイオンを作り、空気中に放出するプラズマクラスター技術[1]を総称するものであり、また、シャープによる造語である。この呼称は、シャープにより商標登録されている[2]

概要[編集]

シャープによると、+(プラス)のイオンはH+、-(マイナス)のイオンはO2-で、自然界に存在するものと同じであり、共に周りを分子が取り囲んでいるため、長寿命である[3]としている。

東芝等他の国内家電メーカーが、マイナスイオンと称する技術を家電に応用した後、シャープはこの技術を自社の家電製品に搭載し、空気清浄機エアコン冷蔵庫などの分野で、イオン発生器を組み込んだ製品を展開している。 「プラズマクラスターはシャープだけ」のキャッチコピー通り、自動車等の他社製品に組み込んでいる場合も「シャープのプラズマクラスター」と表記している。

2008年に、「プラズマクラスターイオンによる空気浄化」にて発明協会の発明賞を受賞した。

効果と効用[編集]

シャープは、プラズマクラスターイオンに以下の効果があるとしている。

  • 布に染み込ませたタバコの臭いを脱臭
  • 浮遊しているダニの糞や死骸等のタンパク質を切断して除去、アレルゲンの作用を低減
  • 空気中のウイルスを除去し、浮遊ウイルスの作用を抑える
  • 細菌の細胞膜のタンパク質を断片化して不活化
  • 浮遊しているカビの細胞膜のタンパク質を切断して分解除去
  • イオン濃度25000個/cm2の場合、肌の水分量の増加
  • 機能搭載エアコンの場合、内部のカビを除菌

しかし、2015年2月現在、「有効性を確認出来ない」とする研究[4]はあるが、開発者と開発者が研究委託した機関以外の純粋な第三者による「除菌効果が実空間で実証された」とする科学論文がみあたらないことが、有効性について懐疑的な主張や、消費者庁による優良誤認の判定につながっている(後述)。

有効性に関する議論[編集]

有効とする研究報告など[編集]

同社は、東京大学広島大学大阪市立大学ハーバード大学ソウル大学など国内外の複数機関で研究を行い効果を実証しているとしている[5]。新型H1N1インフルエンザウイルスに対しても2時間の照射で99.9%抑制するなどの効果を検証している[6]

シャープはまた、財団法人パブリックヘルスリサーチセンターが東京大学大学院医学系研究科教授大橋靖雄監修で行った二重盲検法による試験で、インフルエンザウイルス感染率を約30%低減できたことを確認したと発表している[7][8]

シャープが東京大学医学部附属病院臨床研究支援センターに委託して実施した臨床研究では、プラズマクラスターイオン技術が、小児アトピー型ぜんそくの気道炎症レベルを低減することが証明された。実験室ではなく臨床研究で効果が証明されたのは初めてで、注目を集めている[9]

懐疑的な研究報告など[編集]

前述のインフルエンザウイルス感染率試験については、結果が統計学的な有意差に至っていないと解釈する意見もある[10]

「感染症学雑誌 Vol.86 (2012) No.6」に掲載された論文「殺菌性能を有する空中浮遊物質の放出を謳う各種電気製品の、寒天平板培地上の細菌に対する殺菌能の本体についての解析」[11]によると、プラズマクラスターやナノイーには極めて狭い空間で濃度を高めた場合には一定の殺菌効果が認められた。しかし、殺菌効果を持つのはプラズマクラスターやナノイーと同時に発生するオゾンであり、プラズマクラスターやナノイーの粒子そのものではないとしている[12][13]。また、空気中ウイルスの減少は集塵フィルターの効果であったとする報告もある[14]

グローブボックス内で黄色ブドウ球菌、緑膿菌、セレウス菌、腸球菌に対して使用した試験では、殺菌効果の有効性が確認できなかった[4]とする研究がある。

更に、効能の一つに「機能搭載エアコンの場合、内部のカビを除菌」が挙げられているが、カビの発生自体を防ぐわけではない。プラズマクラスター機能がついていても、定期的な分解掃除は必要である。プラズマクラスター発生装置が備わっている製品は、その分分解掃除が困難になり、むしろカビが多く溜まってしまうという矛盾を抱えている。

消費者庁による不当表示判定(優良誤認)[編集]

シャープは製造した「プラズマクラスター」を組み込んだ掃除機に関して、空気中に浮遊しているダニの糞や死骸等のアレルギーの原因となる物質を分解、除去すると広告で表示していた。 2012年11月28日消費者庁が外部の研究機関に依頼して当該掃除機を調べた結果、表示された通りの性能が出なかったため、同社に対し不当景品類及び不当表示防止法違反(優良誤認)で再発防止を求める措置命令を出した[15][16]。この措置命令に対しシャープは、プラズマクラスターの性能自体の問題ではなく広告表示への指摘(「エアコンや空気清浄機などは部屋で長時間使うので効果がありますが、掃除機の場合は使用する時間も短く、動き回るので、部屋全体に効果があるような表示が行き過ぎと判断された」)とした上で、2012年10月末までに広告表示の修正を行った[17]

特許内容[編集]

特許第3680121号。特許庁webより閲覧できる。実験は縦2m、横2.5m、高さ2.7mの空間において行われているが、実験の有意差検定は行われておらず、n数も載っていない。

48項
イオンを送出しない場合において、1時間後の浮遊細菌の残存率は63.5%と書かれており、イオンとは関係なく36.5%減る。
36項
第一形態におけるイオン送出1時間後の残存率は36%であり、48項の内容と比較して27%程度の効果があるように書かれている。
56項
第三形態では同20%の効果。
61項
第四形態では30%の効果。
65項
第五形態では20%少々の効果。

上述の特許内容においては、プラズマクラスターがいずれの形態に該当するかは書かれていない。

原理[編集]

シャープによると、H+とO2-がカビや細菌やウイルス等の表面に付着すると、OHラジカルに変化し、それらの表面のタンパク質から水素を抜き取り分解して水になる、としている[3]

シャープ技報において公表された開発者の論文[18]によると、除菌効果は放電と同時に発生したオゾンによるものではなく、正イオンと負イオンの反応により生成した活性酸素(OHラジカルなど)のタンパク質変性作用が、ウイルスを不活性化するとしている。

安全性[編集]

シャープは、急性皮膚刺激性/腐食性試験、急性眼刺激性/腐食性試験、吸入毒性試験(肺組織の遺伝子影響評価)から、安全性を確認済みとしている[3]

なお上記メカニズムに記述されている通り、「細菌についても細胞膜を破るのでありDNA には変化が無いことを確認した」としている[19]

脚注[編集]

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  1. ^ 特許第3680121号
  2. ^ 商標登録番号:第4521235号ほか
  3. ^ a b c 『エアコン総合カタログ』シャープ株式会社、2010年4月
  4. ^ a b [ttp://dx.doi.org/10.4058/jsei.27.342 殺菌力を謳う各種空気清浄電気製品の,塗布乾燥状態の細菌に対する効果の有無の検証] 日本環境感染学会誌 Vol.27 (2012) No.5 p.342-345
  5. ^ 「プラズマクラスター」は、シャープだけ (SHARP)「高濃度プラズマクラスターイオン」が浮遊ダニアレルゲンによるアレルギー反応を抑制する効果を生体レベルで実証 (SHARP、2009年7月27日)
  6. ^ プラズマクラスター技術により、世界初、付着および浮遊両状態の「新型H1N1インフルエンザウイルス」の感染力を抑える効果を実証・詳細(ニュースリリース:シャープ)
  7. ^ “高濃度プラズマクラスターイオンにより世界初臨床試験において、ヒトへのインフルエンザウイルス感染率低減の傾向を確認” (プレスリリース), SHARP, (2010年11月9日), http://www.sharp.co.jp/corporate/news/101109-a.html 
  8. ^ “シャープのプラズマクラスターイオン、インフルエンザウイルス感染率の低減に効果”. 家電watch. (2010年11月9日). http://kaden.watch.impress.co.jp/docs/news/20101109_405698.html 
  9. ^ “臨床研究で注目--シャープのプラズマクラスターイオン、ぜんそくに効果”. ZDnet. (2015年2月26日). http://japan.zdnet.com/article/35060784/ 
  10. ^ 透析室でのプラズマクラスターイオン発生装置の利用、インフルエンザ感染の発症を抑える効果は確認できず”. 日経メディカルオンライン (2010年11月7日). 2015年2月26日閲覧。
  11. ^ 【原著】殺菌性能を有する空中浮遊物質の放出を謳う各種電気製品の,寒天平板培地上の細菌に対する殺菌能の本体についての解析 各種電気製品の寒天平板培地上の殺菌の本体 感染症学雑誌 Vol.86 (2012) No.6 p.723-733
  12. ^ “プラズマクラスターやナノイー自体にはほとんど殺菌効果がないことが明らかに”. 日経テクノロジー. (2015年2月26日). http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20121218/257052/ 
  13. ^ 殺菌性能を有する空中浮遊物質の放出を謳う各種電気製品の,寒天平板培地上の細菌に対する殺菌能の本体についての解析”. 感染症学雑誌. 2015年2月26日閲覧。
  14. ^ 高性能の空中浮遊インフルエンザウイルス不活化を謳う 市販各種電気製品の性能評価 平成23年9月20日 感染症学雑誌 Vol.85 (2011) No.5 (PDF)
  15. ^ “シャープ掃除機、不当表示 「ダニのふん除去」うたう”. 朝日新聞. (2012年11月28日). http://www.asahi.com/business/update/1128/TKY201211280461.html 2012年11月28日閲覧。 
  16. ^ シャープ株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について(PDF) (PDF) - 消費者庁・2012年11月28日
  17. ^ 弊社掃除機のカタログ表示等に関する措置命令についてのお詫びとお知らせ2012年12月3日閲覧
  18. ^ 西川 和男; 野島 秀雄. “放電プラズマにより生成したクラスターイオンを用いた気中ウィルス不活性化技術、シャープ技報、Vol.86、pp.10-15、2003 (PDF)”. 2007年8月27日閲覧。
  19. ^ 西川 和男「正極性と負極性のクラスターイオンによる細菌不活化メカニズム」『シャープ技報』第94号、2006年8月

関連項目[編集]

外部リンク[編集]