ルノー・4

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ルノー・4

ルノー・4フランス自動車メーカー、ルノーが1961年から製造した小型大衆車である。

4はフランス語で『カトル(Quatre)』。キャトルという呼び方も日本で浸透しているが、フランスでは主に、最もポピュラーな仕様「4L」から「カトレール(キャトレール)」と呼ばれる。

商業的に成功した世界初のハッチバック車とも考えられている。生産台数は1992年12月の生産終了までに約835万台で、フォルクスワーゲン・タイプ1フォード・モデルTに次ぐ、モデルチェンジなしの量産車としては史上第3位の生産台数を記録している。

概要[編集]

1950年代のフランスにおける人気車種であったシトロエン・2CVを徹底的に研究して設計、開発された。

当時ルノーでは最小モデルとして750cc級リアエンジンルノー・4CVを生産していたが、リアエンジンは室内空間が広くできるものの、車体前部のトランク容量は小さく、使い勝手がいいとは言えなかった。また、エンジンタイヤエンジンオイル道路舗装の進歩による速度や路面グリップ力の向上も、リアエンジン車にとっては不安要素となった。

4CVは1946年から長らく生産されており、時流に比べてやや旧態化・陳腐化していた。後継モデル開発にあたっては、前輪駆動の2CVが当初『缶詰』等と嘲笑されつつも、着実にフランスの路上に繁殖している以上、それを凌駕する車にすることが必須だった。

このため前輪駆動方式を採用するとともに、機能性を優先し小型の貨物バンを思わせるバックドア付きの2ボックスハッチバックスタイルを採用した。乗用車ではあるが貨物車のような汎用性を備え、ラゲッジスペースに限りのあったシトロエン・2CVに差を付けたのである[1]

ルノーのベーシックモデルとして企画された4シリーズ(当初は排気量750cc。当初600ccのルノー・3も存在した)は、経済的で実用性の高い小型車であったことから庶民に受け入れられ、ルノーの大衆車市場での足場を固めた。

このモデルの基本設計を基礎として、1968年ルノー・61972年ルノー・5の各前輪駆動車が登場し、それ以外にも、商用仕様の「4/F4、4/F6(フルゴネット)」や様々な特別仕様車、レジャー用の『ロデオ』シリーズ等を派生した。2CVのような熱心なファンこそ少なかったものの、商業的には大きな成功を収め、1992年まで生産が続けられた。

特徴[編集]

車体[編集]

  • 架装されるボディは、4ドアとテールゲート(ハッチバック)を組み合わせたものだが、この2ボックス型の貨物車風ボディ形式は、後のフォルクスワーゲン・ゴルフなど、多くのハッチバック車の先駆けとなった。ライバル車シトロエン・2CV同様、コストダウンのため、全ての窓には平面ガラスを使用している。四枚あるドアウインドウはいわゆる引き違い式で、2CVの跳ね上げ式よりは使いやすかったが、注意しないと外れて室内に落ちることがある。
  • 室内からのドアの開閉は、ちょうど手が入るサイズに開いている穴に、手を差し込んで操作する簡素な方式である。
  • 換気はフロントウインドシールド下のフラップベンチレーターを利用した簡易構造で、この点もシトロエン・2CVと同じであり、古い時代ので元々クーラー搭載を考慮していない大衆車ではごく標準的な方法である。日本など各国の気候に合わせ、後付クーラーを搭載する車も存在したが、プーリーのベルトが緩むトラブルを多発させる原因になった。
  • 内装はドアにかろうじて布が貼ってあるものの、基本的に鉄板が剥きだしであった。
  • 座席は布張りにスプリングを組み合わせた簡易な構造ながら良好な座り心地であった[2]
  • ウインドウウォッシャーは電動式ではなく、床のペダルを踏むことにより、水鉄砲方式で拭きかけられる。慣れるとペダルを踏む強さを調節して好きな位置に吹くことができた。
  • 他のラテン車同様キャンバストップ車が多く、純正のWサンルーフの他、後付けのキャンバストップ仕様も多く存在する。

サスペンション・ドライブトレーン[編集]

リアサスペンション平面図
  • サスペンションは前が縦置きトーションバー・スプリングによるダブルウィッシュボーン式、後ろは横置きトーションバー・スプリングで支えられたフル・トレーリングアーム式だが、後部サスペンションのトーションバーは左右輪とも車体全幅近い長さを持つ、柔らかでストロークの大きな設定である。
    • 長いトーションバー・スプリング2本はどうしてもずらして配置せざるを得ないが、上下並行では室内空間が圧迫されることから、前後に平行に配置した。その結果、左右のホイールベースは50mmのずれを生じた。前輪駆動車であるから、後輪にこの程度のわずかなずれがあっても大きな問題にはならない、というユニークな割り切りによる手法である。この結果荷室の床を平らにでき、サスペンションセッティングの自由度を高めて、優れた悪路走破性も確保できた。ただしサスペンション・ストロークを大きく取っているため、空車状態では車体後部が大きく持ち上がった前のめりの格好となる。
エンジンの上を通るシフト&セレクトロッド
  • エンジンは当初4CVのものをそのまま活用し、搭載位置もトランスミッションが先頭で、その直後にディファレンシャルエンジンが縦置きされた。リアエンジン車用のドライブトレーンを、そのままの向きで車体前方に移植したような体裁である。
    • シフトレバーはトランスミッションから長い棒を介し、エンジンを乗り越え、車室前方隔壁を貫いて、運転席のダッシュボードに直接繋がっている構造で、シトロエンのトラクシオン・アバンや2CVと同じ手法である。変速操作もシトロエン・2CVと似た、ダッシュボードから生えたレバーを回したり、押し引きする方式で、前進4速、後進1速である。ちなみに1速と後進はカウンターギアを出し入れして同じギアを使用するが、この方式は初期の5(サンク)も同様である。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 2CVはラゲッジスペースとなる車体後部が大きく傾斜しているため、かさばる大荷物を積む場合、トランク蓋や屋根のキャンバストップを外して、荷物を車外に露出させる必要があった。
  2. ^ 廃車から座席を抜き取って自宅のソファーとして使っているマニアも存在した。

外部リンク[編集]