夫婦別姓

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夫婦別姓(ふうふべっせい)とは、婚姻時に両者の名字(法律用語では「」)を統一せずに、夫婦の双方が婚姻前の名字(氏)をなんらかの形で保持する婚姻及び家族形態、またはその制度のことである。法的には「夫婦別氏(ふうふべっし)」という。このほか、現行制度の下での非法律婚(事実婚)のことを夫婦別姓と呼ぶこともある[1]。なお、婚姻時に両者の名字(氏)を統一する婚姻および家族形態、またはその制度のことを「夫婦同姓」(法的には「夫婦同氏」)という。

法的な夫婦別氏という家族形態は日本国の現行法制の下では認められていないため、民法を改正して夫婦別姓と夫婦同姓のいずれかから選択できるようにすることが議論されている。そのような夫婦別姓と夫婦同姓を選択できるような制度を、特に「選択的」を前置して「選択的夫婦別姓(せんたくてきふうふべっせい)」、法的には「選択的夫婦別氏(せんたくてきふうふべっし)」と呼ぶ。

夫婦別姓の導入に対して、その是非に関する激しい議論がしばしば行われている。

目次

概要[編集]

日本では明治時代まで、名字(苗字)は姓(本姓)と異なり、名やあざなと同じように節目節目に変える文化があった。明治になると文明開化の名の下に姓は廃止され苗字と統合され、姓と苗字(名字)の区別がなくなった。あわせて当時の欧米先進諸国が導入したように日本でも法律により苗字の勝手な変更は禁止され、婚姻養子縁組等による変更以外は固定された。

西洋の一部でもキリスト教思想の下で夫婦一体という観点から、夫婦同氏を実現するために婚姻に際して氏を変更する権利が認められ、特にプロテスタント色の強いドイツでは、夫婦同氏が強制されるに至った。これに対して、儒教的な文化が強い東洋では、父の氏の変更を伴う夫婦同姓は認められなかったとされる[2]中国朝鮮明治前半までの日本などでは血縁についての意識が強いために別氏を原則としていた[3][4]。日本は、近代に入ってからも1898年に明治民法が制定されるまでは妻は生家の姓を用いることとされており(明治9年3月17日太政官指令15号参照)[2]、夫婦別姓であった。

そもそも世界のさまざまな文化においては人の名をどのようにあらわすか、人は何を指す名前を持ちどのように名乗るかということがそれぞれに異なっている[注 1]。何らかの所属または関係性を示す名称と本人個人を示す名称の2種類以上を持つ場合が大半であるが、前者を欠くところもある。

世界のさまざまな文化における家系や家族を示す名称に関しては、大きく2つに分けると以下のように分類できる。

  • 父系、家系を示す名前(日本の「氏(姓)」、中国や韓国の姓にあたるもの)
  • 同族集団、生活集団、世帯などを示す名前(日本の「名字」にあたるもの)

所属や関係性を示す名称は、文化ごとに類似しつつもさまざまな差異がある。たとえばスラブ語圏に見られる父称(父親の名前を用いて「〜の子」という意味を表す名前。父を同じくする兄弟姉妹間では同一になる)や一部の文化に見られる出身地名、氏族名、部族名といったものもある。これらは「姓」とは違うものとみなされる。 なお、日本の名字は中世において居住地の地名を使用する場合が多かった。

したがってこのような名称の文化的な差異を論じる場合、同姓か別姓かのみを抽出して論じることは難しい。但し別姓や結合姓など、何らかの手段で結婚前の姓を結婚後も名乗ることができるところがほとんどである[5]

氏に関する法制度としては、社会構造の変遷によって従来の血縁集団ではなく夫婦間に構成される生活共同体が重要性をもつようになり、その生活共同体に共通する呼称を氏という形で示すようになったものと考えられている[2]。ドイツでは、民法制定時から婚氏統一であり、オーストリア、スイス、インド、タイ、そして日本もこのゲルマン法グループに属するとされるが[6]、近時は夫婦のそれぞれが個別的な社会的活動を行うことも多くなり、このような点から別氏を認めるべきとの意見が強く出されるようになり[2]、ドイツ、タイ等でも法改正が行われ選択制となった結果、純粋に同氏制を維持する国は日本だけになったと見られている[7][8][9][10]

海外で法律上の夫婦が選択する氏・姓等の名称に、どのような選択肢があり得るかどうかであるが、実際上同姓・別姓のどちらが多いかという事実の問題と、法律で同姓以外の選択肢がないかどうかという法規範の問題とは別である。これについて立命館大学教授の二宮周平は「氏と名の組み合わせで個人を特定する制度ないし習慣を持つ国々では、周知のように、夫婦別氏あるいは旧姓の併用を認める国がほとんどである」と指摘している[11]。以前は、日本以外にも同姓しか選択肢がない国もあったが、それらの国で法改正が行われたことにより、比較法的に見て、夫婦同氏を強制する国は2014年の時点で日本のみとなった[7][8][9][10]トルコタイなどドイツ法の影響が強い国ではかつて法律上に婚氏統一が明記されていたが、ともに法改正があり、婚氏統一の規定はなくなった。ドイツでは特に申し出がない限り夫の姓を用いる同姓とされていたが、この規定が違憲とされ、夫婦の姓を定めないと別姓になるように改正された(ドイツ民法1355条)。

日本では、2015年12月現在、夫婦別姓の選択は認められておらず、様々な議論がある。

日本における氏名制度の歴史背景[編集]

近代以前[編集]

  • 飛鳥時代 - 平安時代初中期:氏姓制度古代戸籍
    • 「氏」(うぢ)・「氏名」(うじな)と「姓」(かばね)があった。「藤原」が氏であり「朝臣」が姓である。大宝2年(702年)御野国加毛郡半布里戸籍、同年豊前国仲津郡丁里戸籍、養老5年(721年)下総国葛飾郡大嶋郷戸籍、延喜2年(902年)阿波国板野郡田上郷戸籍等には夫婦同氏と別氏が見られるが、寛弘元年(1004年)讃岐国入野郷戸籍・同年国郡未詳戸籍では19夫婦の全てが同氏となっている。日本には「同姓不婚」の習慣はなく、養老令の戸令にも改姓規定がないため、この同氏は同族婚とする見方がある。なお同氏の増えた理由は不明[12]
    • この時期、女性名には「刀自売(とじめ)」「二子」「定子」「犬子」などの型があった[13]。但し嵯峨天皇期(809-823年)には下の名前の唐風化が行われ、「童名(わらわな)」(つまり幼名)と「諱(いみな)=実名(じつみょう)」(つまり成人名)の区別、男性の実名に「嘉字」(縁起のよい字)と「系字」が導入された。系字とは同一世代の男性に同じ一字を共有するもので、「正良」「秀良」「業良」のようなものである。これは父系親族組織内の世代序列を示すもので、「輩字」ともいう。女性の実名は「2音節の嘉字+子」が内親王に導入された[14]。これら実名は9世紀から10世紀にかけて貴族武家、庶民にまで広まっていった。
  • 平安後期 - 中世前期:氏姓に加え名字が発生
    • 系字は横(同一世代)の共有字であったが、11-12世紀頃に縦(父-子)の「通字(とおりじ)」へと変化した。これは「家」の形成に伴い、家系を示すものとされる[15]。例えば桓武平氏の本流ではみな「盛」を通字として持っている。但し藤原摂関家で「忠実-忠通-基実-基通」のように「実」「通」を交互に継承した例も見られる[16]
    • 氏・姓もまた引き続き用いられるが、「氏姓」はいつしか「姓」(セイ)と呼ばれるようになった。一方で名田の名が「名字」となった。「源」は氏であり「足利」が名字である(例:足利左馬頭源朝臣直義)。氏姓は公的な名であり名字は私的な名である。また氏姓は夫婦別氏姓であり名字は夫婦同名字である[17]。但し「北条」の子がそのまま「北条」を名乗るわけではなかった[18]。名字はその世代限りのものであり、代々継承される永続的な組織の名(家名)ではなかった[19]。鎌倉時代までは貴族・武士・庶民とも氏(姓)の使用の方が一般的であり、夫婦別氏であった[20]。下の名前は、「頼朝」のような実名・諱のほか、「犬次郎」のような仮名(けみょう)・字(あざな)・通称を持ち、同一人物が社会関係に応じて両者を使い分けた[21][22]。女性名は「刀自売」型から「鶴女」型へ移り、13世紀に比率が高まる。「二子」型は13世紀までは半分以上を占めるがやがて減少する。また「紀氏女」型が11世紀後半に現れた[13]。男性名は「源次」のように氏(姓)を含む字、「和泉大夫」「左衛門」のように国名や役職名を用いる字、「犬次郎」のような童名の字、「西念」のような法名、その他「孫太郎」のような字などがあった[17]
  • 中世後期:名字の家名化
    • 家産家業などを継承する永続的な「家」が成立するとともに夫婦同名字が一般化し、名字が家名となった[23][17]摂関家も夫婦別氏・同名字であった[24]。また父親の字「平三郎」が長男へ継承され続けたと思われる例が近江国菅浦(すがのうら)の文書(13世紀-16世紀)に多数見られ、そのような人名が家名化したとする説がある[17]。庶民の女性名は「紀氏女」型も「二子」型も姿を消し、「鶴女」のような童名や「兵衛女」のように「男性名+女」の型、「妙賢禅尼」のような法名を名乗った。殊に戦国期以降はかなりの割合が童名型を生涯名乗るようになった[23][17]
  • 江戸時代:庶民の氏・苗字の使用は禁止
    • 「名字」は「苗字」と書かれるのが普通になった。士分以外の者は一部を除き氏・苗字を公式に使用することが認められなかった。但しあくまで「名乗る」ことが禁止されていたのであり、氏・苗字を持つ庶民も多くいた。苗字は必ずしも生涯不変ではなく(本姓を除く)、何度も変える者もいたが、婚姻によって変えるという決まりもなかった。但し庶民の女性名は単に「女房」とだけ書かれることが多く、実態は明らかでないが、おそらく夫婦同苗字であったとされる[17]。しかし、芦東山の妻が夫の幽閉赦免願書に「飯塚【女へんに召】」(いいづかちょう)と生家の苗字での署名があったり、松尾家に嫁いだ妻多勢(たせ)が平田国学に入門した際の誓詞帳に「松尾佐治右衛門妻 竹村多勢子」と実家の姓名で署名する例があったり、或いは夫婦別苗字の墓標があったりする(大藤(2012)、58ページ)など、氏も苗字も実家の父方のものを名乗るのが一般的という説もある[25]。また妻の死後実家の墓地に「帰葬」する習慣が北陸から東北にかけて広く分布する[26]
    • なお「家名」として通用していたのは苗字ではなく通称(「○左右衛門」や「○兵衛」など)や屋号であったとする説がある[27]

近代以降[編集]

  • 1870年10月13日(明治3年9月19日)(太政官布告:苗字の使用を許可)
    • 平民でも苗字を使用してもよいことになる。
  • 1872年3月9日(明治5年2月1日)(戸籍法施行:壬申戸籍
    • 中央集権国家を実現しようとする流れのなかで、国内総人口を把握する手段として戸籍法を制定し、世帯を単位とする住所や身分登録が行われた。1872年の干支が壬申だったのでこの明治の戸籍のことを「壬申戸籍」と呼ぶ。
  • 1872年(明治5年)5月7日 太政官布告:一人一名主義
  • 1872年(明治5年)8月24日 太政官布告:改姓・改名の禁止
  • 1875年(明治8年)2月13日 太政官布告:苗字の使用を義務化
    • 苗字の使用を許可したものの、未だ慣れない平民は「余計に税金を徴収されるのでは」などと警戒したこともあって苗字の使用はなかなか広まらなかった。国民皆兵制度の導入に伴い個人の兵役履歴をより正確に把握するための体系の確立が急務となっていた軍部はこうした状況に業を煮やし、司法省に対して事態打開のための方策を早急に法制化することを要求、その結果苗字の使用は義務づけられることとなった[28]
  • 1876年(明治9年)3月17日 太政官指令:夫婦別氏の確定
    • 苗字=氏の使用が義務化されると、こんどは婚姻後の氏をどうするのかが問題となった。この時は、婚姻後の妻の氏は「所生ノ氏」、つまり実家の氏とすることが定められた。夫婦別氏とする理由として太政官法制局は3つの理由を指摘。「妻は夫の身分に従うとしても、姓氏と身分は異なる」「皇后藤原氏であるのに皇后を王氏とするのはおかしい」「歴史の沿革を無視」[29]。しかし地方においては、民間普通の慣例によれば婦は夫の氏を称しその生家の氏を称する者は極めて僅かである[30]など、妻が夫の氏や屋号を家族の苗字として通称することが少なくなかった。
  • 1880年(明治13年)1月13日 太政官指令:改名禁止の緩和
  • 1890年(明治23年) 民法草案(旧民法)が法律28号として制定されるも、実施はされず[31]
  • 1898年(明治31年) 明治民法成立:夫婦同氏の制定
    • 民法草案(1878年)および旧民法(1888年)では、当初から「婦ハ其夫ノ姓ヲ用フ可シ」「婦其夫ノ氏ヲ称シ」のように当時のドイツと同じ夫婦同姓案が示されたが、我が国古来の家父長制度に反するとして反対が強かった(民法典論争)。そこであらためて戸主制度(家父長制)を導入した家制度を構築し、戸籍は家を体現するものと位置づけた上で「妻ハ婚姻ニ因リテ夫ノ家ニ入ル」ことになった(明治民法788条)。これによって、日本の法制上初めて「夫婦同氏」が規定されることになった[32]
  • 1947年(昭和22年) 改正民法成立:夫婦同氏制の残留
    • 戦後、明治の戸主制度は廃止され、それまでは戸主の同意を必要としていた婚姻も当事者の同意のみがあれば可能となった(憲法24条)。この時、夫婦の氏は、婚姻前の夫のものか妻のもののいずれかを選べるようになったが、夫婦同氏の原則は残った(民法750条)。
  • 1948年(昭和23年) 改正戸籍法施行:現行戸籍の開始
    • 全面的に改正された戸籍法が施行される。戸籍は戸主と家族を記載する家の登録から、個人の登録へと変わった。ただし戸籍の編成基準が一組の夫婦とその夫婦と氏を同じくする子(戸籍法6条)であることが明記され、ここでも夫婦同氏の原則が確認されることになった。

日本における選択的夫婦別姓制度に関する議論の状況[編集]

現況[編集]

日本の民法は婚姻時に夫または妻のいずれかの氏を選択する「夫婦同氏原則」(民法750条)を規定している。これにより夫婦の一方の改氏による夫婦同氏は届出の際に必須の形式的要件となり(民法750条、戸籍法74条1項)、また婚姻期間中は公文書において夫婦が異なる氏となることはない。なお、これらの規定は夫婦ともに日本国籍を有する場合に適用され、国際結婚の場合は所定の手続きを経ない限り改氏されない。

そのため、夫婦がともに婚姻前の氏を継続使用しようとする場合、婚姻届を提出せず改氏を回避する「事実婚」や婚姻届を提出した上で片方が旧姓を使う「通称使用」などの手段をとることがある。しかし、前者については、民法739条による婚姻関係と必ずしも扱いが同一というわけではなく、例えば配偶者の遺産相続などの場合に不都合が生じる可能性がある。また、後者については、通称の氏(旧姓)の使用が公的に認められる場合もあるものの[33]、あらゆる場面で認められているわけではないため、現状では法律的な(内縁、事実婚ではない)夫婦と別氏は同時には成立しがたい側面がある。

そういった状況の中で、婚姻時の改氏に不都合を訴え、夫婦同氏の原則の緩和を求める声もあり、選択的夫婦別氏制度の導入など民法750条の改正が提案されている。ただし、その一方で、現状制度の維持を望む人も存在するため、民法750条改正の是非を争点とする論争が続いている(項目「選択的夫婦別姓制度の賛否をめぐる論点」を参照)。

用語[編集]

現在、人名から下の名前を除いた部分は、氏名、姓名、苗字、名字など様々な呼び方で呼ばれている[34]。氏は血族集団、姓は(朝臣、臣、連、君などの)人民の格付け、苗字・名字は所領・在地、というように、歴史的にはこれらの名称はそれぞれ意味合いが異なるものの、現在ではほぼ同じ意味として用いられている[34]。なお、法律用語としては「姓」ではなく「氏」が用いられており、そのため「夫婦別姓」の用語としては法的には「夫婦別氏」が用いられる[34]

婚姻時に夫婦同姓と夫婦別姓から選択できる制度は、一般的には「選択的夫婦別姓」(法的には「選択的夫婦別氏」)と呼ばれるが、「夫婦別姓選択制」とよばれることもある[35][36]

議論の歴史[編集]

制度としての夫婦別姓に関する議論は1950年代からすでに存在しており、1975年には参議院に選択的夫婦別姓制度のための民法改正を求める初めての請願が参議院に提出された[37][38]他、1976年には内閣府世論調査にはじめて夫婦別姓についての設問が見られる。

これらの論議が活発になったのは1990年代からで、1991年には法制審議会が「民法の婚姻・離婚制度の見直し審議」を開始した[7]。また、民法を改正し婚姻時に夫婦が同姓か別姓かを選択する「選択的夫婦別姓制度」とする民法改正案が、国会に議員立法により提出されるようになった。1996年には法制審議会が選択的夫婦別氏制度を含む「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申した[7]。また男女共同参画社会基本法の成立および男女共同参画局の設立によりその政策の中心的課題と位置づけられ、政策的にさまざまな推進策が展開されてきた。一方、これらの男女共同参画や選択的夫婦別姓制度を求める運動に対して危機感を起こした家族観における保守層が、日本会議神道政治連盟などの「ジェンダーフリー反対」「選択的夫婦別姓反対」などを掲げる「バックラッシュ」とも呼ばれる運動を起こした、とも指摘されている[39][40][41][42]。その後、この民法改正案に関していまだに決着をみていない。

1996年の法制審答申後、自民党内の選択的夫婦別姓制度を求める議員ら(野田聖子ら)は法案の国会提出を模索したが、自民党内の事前審査で合意に達することができず国会提出が見送られた。当初政府案は法制審答申の民法改正案を提案していたが抵抗が根強く、政府案は例外的夫婦別氏制度と呼称や内容を変更するも合意には達せず、さらに反対派に譲歩し(西川京子が自民党法務部会にて発言した)家裁の許可を要件とすることを盛り込んだ例外的夫婦別氏制度を議員立法で自民党法務部会に提出したが合意に至らなかった。以後、自民党内ではほぼ議論はなされないまま今日に至っている[43][44][45][46]

一方、民主党社民党共産党などは、法制審答申以来、超党派で会期ごとに民法改正案を国会に提出し続けているが、審議されないまま廃案と再提出を繰り返す状況である[47]

国連に設置されている女子差別撤廃委員会より2003年8月に、婚姻最低年齢、離婚後の女性の再婚禁止期間の男女差、非嫡出子の扱いと共に「夫婦の氏の選択などに関する、差別的な規定を依然として含んでいることに懸念を表明する」との勧告を受けた[48]。これを受けて国は2008年4月に「選択的夫婦別氏制度について、国民の議論が深まるよう引き続き努めている。」と報告した[49]。しかし2009年8月に再度、「委員会は、前回の最終見解における勧告にもかかわらず、民法における婚姻適齢、離婚後の女性の再婚禁止期間、及び夫婦の氏の選択に関する差別的な法規定が撤廃されていないことについて懸念を有する」との勧告を受けている[50]。これに対して政府は2014年8月に女子差別撤廃条約実施状況第7・8回報告書を提出したが[51]、2016年には再度、「過去の勧告が十分に実行されていない」として厳しく勧告を受けた[52][53]

これまで提案されてきた試案[編集]

これまで提案されてきた夫婦別姓案導入のための民法改正の試案は概ね以下の6種に分類される。

原則夫婦別姓
別姓を原則とし、同姓も認める。1994年法務省「B案」はこの趣旨である。なおこのB案では子供の姓は出生時に決定するものとする[21]
選択的夫婦別姓(子供の姓を統一しないもの)
婚姻時に夫婦同姓か夫婦別姓か自由に選択できるとし子供の姓は出生時に決め、兄弟姉妹の姓を別々にすることを認める案。夫婦同姓と夫婦別姓とを同列に扱うが同姓の場合、兄弟姉妹の姓を別々にすることを認めない。かつて民主党が提案していたが、鳩山由紀夫内閣以降は子供の姓を統一する案を受け入れた。
選択的夫婦別姓(子供の姓を統一するもの)
婚姻時に夫婦同姓か夫婦別姓か自由に選択できるとするが子供の姓は婚姻時に決め、兄弟姉妹の姓を別々にすることを認めない案。夫婦同姓と夫婦別姓とを同列に扱い、両者の間に形式的にも実質的にも差別はない。1995年「婚姻制度の見直し審議に関する中間報告」[54]、1996年法制審議会で答申されたものはこれに相当する。但し第1子出生時に、婚姻時に決めた姓から変更可とする付則も後に検討された(2001年法務省、自民党法務部会へ提案)。
例外的夫婦別姓
夫婦別姓を望む場合には例外的に認めるとする案。夫婦同姓を原則とするがそれはほぼ形式的な差別であり、実質的には自由に夫婦別姓を選択できる。1994年法務省「A案」。2002年に法務省が提案。
家裁許可制夫婦別姓
夫婦同姓を原則とし、夫婦別姓は家庭裁判所による許可を得た上で認めるとする案。祭祀の継承や職業上の理由など、許可理由を限定する。2002年に自民党の一部の議員による「例外的に夫婦の別姓を実現させる会」が提案(提案者は本案を「例外的夫婦別姓」と称するが先に提案された上記の例外的夫婦別姓と明らかに内容が異なるため、「家裁許可制」として区別する)。
通称使用公認制
夫婦同姓の原則を堅持する代わりに、通称使用を法律で認めるとする案。1994年法務省「C案」。また夫婦別姓制度に反対する自民党の一部などの勢力による対案。
1997年に野中広務が提案した「旧姓続称制度」[55]、1993年に高市早苗が提案したもの[56]などがこれにあたる。旧姓続称制度は、配偶者の同意を得た上で届け出れば、社会生活上の全ての場面で旧姓を使うことができるようにしようというもの。離婚後も婚姻時の姓を名乗れるという「婚氏続称制度」(1976年の民法改正で採用)を参考に、野中が1997年に自民党内に提案した[55]

1996年の法制審議会答申で出された民法改正案[57]は、上記の分類のうち「選択的別姓(子供の姓を統一するもの)」に相当する。なお現在同姓婚を行っている夫婦が別姓に変更できる経過措置を1年設けている。

これらの案は同時に併存しているのではなく、ほとんどが1994年の法務省民事局参事官室「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」や1996年の法制審議会答申で出された民法改正案[57]から派生したものである。派生の系統としては主に2通りあり、自民党内の事前審査で法務省が反対派に譲歩して変更を加えたものと民主党・共産党・社民党の共同提出法案とである。

自民党内で審議されたもののほとんどは、上記法制審議会案に準じている。自民党内では政府提出法案であろうとも法案提出の前には党内の事前審査を通過しなくてはならないという慣例がある。法制審答申の民法改正案[57]に対して党内の抵抗が強かったため例外的夫婦別姓制度に修正し、政府提出法案ではなく議員立法で家裁許可制夫婦別姓へと形を変えた[58]

民主党・共産党・社民党が提出していた法案は、子供の姓を統一しない選択的別姓に相当する。なお経過措置を1年ではなく2年と定めている。

関連する裁判や判例[編集]

国立大学夫婦別姓通称使用事件(東京地判93(平5)年11月19日 判時1486号21頁 判タ835号58頁)[59]

国立大学の女性教授が国に対して、自身の研究教育活動や人事記録その他の文書において旧姓名を使用することおよび戸籍名の使用を強制されることについての損害賠償請求をした裁判。

東京地裁は判決において、「通称名であっても、個人がそれを一定期間専用し続けることによって当該個人を他人から識別し特定する機能を有するようになれば、人が個人として尊重される基礎となる法的保護の対象たる名称として、その個人の人格の象徴ともなりうる可能性を有する。」としたが、「原告主張に係る氏名保持権が憲法13条によって保障されているものとは断定することはできない」、「夫婦が同じ姓を称することは、主観的には夫婦の一体性を高める場合があることは否定できず、また客観的には利害関係を有する第三者に対し夫婦である事実を示すことを容易にするものといえるから、夫婦同氏を定める民法750条は合理性を有し、何ら憲法に違反するものではない。」とし、「個人の同一性を識別する機能において戸籍名より優れたものは存在しないというべきであるから、公務員の同一性を把握する方法としてその氏名を戸籍名で取り扱うことは極めて合理的なことというべきである。」として、原告の請求を一部退けた。その後本件は控訴され、1998年、東京高裁にて旧姓使用を認める和解が成立した。

この裁判は、旧姓や通称に法的保護の対象となりうる可能性をある程度認めた点や、夫婦同氏を定める民法750条が客観的合理性を有し憲法には違反しないという判断をした点や、戸籍名で公務員の氏名を取り扱うことの合理性を認めた点などにおいて注目され、その後の旧姓使用や夫婦別姓の議論に大きな影響を与え、この裁判以降、国家公務員の旧姓使用や[33]科学研究費補助金でも旧姓使用が認められるようになっていった[60]。ただし、その一方で、特許や学会の理事や会社役員登録など、戸籍名による登録のみしか認められない分野も存在する。また民間企業においては、必ずしも全ての企業が旧姓使用を認めているわけではない。2010年の産労総合研究所の調査において、回答があった192社のうち、旧姓使用を認めているのは55.7%であり、従業員1千人以上の企業に限っても71.8%である[61]

年表[編集]

年月日 出来事
1876年02月13日 太政官指令(明治9年)、「婦女は結婚してもなお所生の氏(婚姻前の氏)を用いること」、すなわち夫婦別氏が原則とされた[62]
1898年07月16日 明治民法制定、家制度の導入。妻は婚姻により夫の家に入り、家の氏を称する。このことにより夫婦同氏の原則に転換することとなった[63]
1948年01月01日 民法改正、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」[64]
1955年07月05日 法制審議会民法部会、夫婦異姓を認める案を論議[65]
1959年06月29日-30日 法制審議会民法部会、夫婦異姓を認むべきか否かの問題はなお検討の必要があるとする[65]
1975年09月26日 選択的夫婦別姓制度のための民法改正を求める初めての請願が参議院に提出される[37][38]
1976年06月15日 民法改正離婚時の婚氏続称可能に[66]
1984年05月25日 国籍法改正国際結婚の際に外国姓への改姓(同姓)可能に[67]
1985年06月24日 女性差別撤廃条約、日本国批准[68]
1988年05月09日 事実婚夫婦、住民票続柄記載差別訴訟、東京地裁(1991年敗訴、2005年最高裁棄却)[69]
1988年11月28日 国立大学女性教授通称使用を求める訴訟、東京地裁(1993年敗訴、1998年東京高裁で和解)[70]
1988年12月 富士ゼロックス、旧姓使用を導入[71]
1989年01月20日 東京弁護士会が「選択的夫婦別姓採用に関する意見書」を法務省に提出[72]
1989年06月23日 別姓婚姻届不受理処分の取り消しを求める訴訟、岐阜家裁、却下[73]
1992年12月01日 法務相民事局参事官室「婚姻及び離婚制度の見直し審議に関する中間報告(論点整理)」、夫婦同氏制度と夫婦が別氏を称することのできる制度との対比[65]
1994年07月12日 法務省民事局参事官室「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」A案B案C案の3案が俎上に[65]
1995年08月26日 法制審議会民法部会、子の姓は婚姻時に統一するA案を軸にまとまる[74]
1995年09月12日 法務省民事局参事官室「婚姻制度の見直し審議に関する中間報告」[54]
1996年01月16日 法制審議会民法部会、「民法改正要綱案」決定[75]
1996年02月26日 法制審議会、民法の一部を改正する法律案要綱[76]を法相に答申。(これより政府案としてこの民法改正案を軸に国会提出を与党内で模索する。)
1996年06月18日 長尾立子法務大臣、法案の提出を正式に断念。埼玉県新座市、市職員の旧姓使用を4月に遡って実施。
1996年010月25日 日本弁護士連合会、選択的夫婦別姓制導入並びに非嫡出子差別撤廃の民法改正を求める決議[77]
1997年03月04日 自民党家族法改正小委員会、旧姓続称制度導入試案(民主党と社・さ有志、それぞれ参議院に民法改正案を提出。自民党法務部会、旧姓続称制度を議論。自民党内で戸籍上の別氏に対する抵抗が根強く、旧姓を利用可能とする制度を模索するが立ち消えになる。)
1997年03月27日 法学者260人「選択的夫婦別姓制度の導入と婚外子相続分の平等化の実現を求めるアピール」。なお、このうち婚外子相続分の平等化については、2013年9月04日、最高裁判所は、相続において婚外子を差別する民法の規定が違憲であるとの判断を下した[78]
1998年06月08日 超党派野党、衆議院に民法改正案を提出[47]
1998年07月25日 政府、女子差別撤廃条約実施状況第4回報告、選択制を「引き続き検討」[79]
1999年12月10日 超党派野党、衆参両議院に民法改正案を提出[47]
2000年01月20日 超党派野党、参議院に民法改正案を提出[65]
2000年10月25日 民法改正を求める「民法改正情報ネットワーク」(mネット)設立[80]
2000年10月31日 超党派野党、参議院に民法改正案を提出[47]
2000年12月11日 男女共同参画審議会、夫婦別姓を5年以内に検討すると表明
2001年05月10日 超党派野党、参議院に民法改正案を提出[47]
2001年05月14日 政府、男女共同参画審議会の基本問題専門調査会を開き、選択的夫婦別姓制度の法制化を検討する方針を決定
2001年08月04日 5月の内閣府世論調査発表[65]
2001年10月01日 国家公務員の旧姓使用が可能に。以後、地方公務員、民間にもひろがる
2001年10月11日 内閣府男女共同参画会議基本問題専門調査会、「選択的夫婦別姓制度に関する審議の中間まとめ」発表[81]
2001年11月05日 野田聖子自民党有志、夫婦別姓法案賛同署名を提出
2002年01月10日 法務省、同姓が原則で別姓は例外とする修正案を作成
2002年03月14日 自民党法務部会、例外的夫婦別氏制度の法務省試案を議論[65]。このころから政府案は「選択的」から「例外的」となる。反対派に譲歩して理解を求める。
2002年06月04日 森山眞弓法務大臣、例外的夫婦別氏制度の法務省試案の国会提出を断念。「例外的」とした政府案でも与党内の合意は得られず。
2002年07月24日 自民党有志(例外的に夫婦の別姓を実現させる会)、家裁の許可を要件とする例外的夫婦別氏制度(家裁許可制)の民法改正案を自民党法務部会に提出。自民党有志が政府案の例外的夫婦別氏制度に家裁の許可を要件に加えた案を議員立法で提出する。
2002年09月13日 政府、女子差別撤廃条約実施状況第5回報告、選択制「制度の導入に向けて努力」
2003年07月08日 女子差別撤廃条約実施状況第4回・第5回報告に対する国連女子差別撤廃委員会最終コメント、「夫婦の氏の選択などに関する、差別的な規定を依然として含んでいることに懸念を表明する」
2004年03月11日 自民党、職業上の理由などで必要な場合に家庭裁判所の許可を得て別姓を認める改正案の国会提出を見送る[82][83]
2004年05月14日 超党派野党、衆参両議院に民法改正案を提出[47][65]
2005年03月30日 超党派野党、参議院に民法改正案を提出[47][65]
2006年03月20日 パスポートに旧姓を併記し得る基準が緩和され、学者や記者だけでなく、「職場で旧姓使用が認められており、業務により渡航する者」も可能となる[84]
2006年04月25日 別姓婚姻届不受理処分の撤回を求める訴訟、東京家裁、却下
2006年05月31日 超党派野党、参議院に民法改正案を提出[85][47]
2006年06月08日 超党派野党、衆議院に民法改正案を提出[47]
2008年04月22日 超党派野党、参議院に民法改正案を提出[86][47][65]
2008年04月30日 政府、女子差別撤廃条約実施状況第6回報告、「選択的夫婦別氏制度について、国民の議論が深まるよう引き続き努めている」[49]
2009年04月24日 超党派野党、参議院に民法改正案を提出[47]
2009年08月07日 女子差別撤廃条約実施状況第6回報告に対する国連女子差別撤廃委員会最終見解、「夫婦の氏の選択に関する差別的な法規定が撤廃されていないことについて懸念を有する」[87]
2011年02月14日 男女5人、違憲を争い夫婦別姓を求める国家賠償提訴、東京地裁[88][89]
2011年02月24日 別姓婚姻届3度提出、不受理処分の撤回を求め、却下、東京地裁[90]
2013年05月29日 男女5人、違憲を争い損害賠償請求、棄却、東京地裁[91][92]
2013年09月11日 別姓婚姻届訴訟、却下、最高裁[93]
2014年03月28日 男女5人、控訴棄却、東京高裁[94]
2014年06月23日 日本学術会議が、提言「男女共同参画社会の形成に向けた民法改正」において選択的夫婦別姓制度の導入を提言[7][95]
2014年09月05日 第2次安倍改造内閣松島みどり法務大臣は就任直後の会見で、旧姓使用など現実的な運用の改善を検討する意向[96][46]
2015年02月15日 改正商業登記規則が施行され、役員登記において旧姓の併記を行うことが認められた[97]
2015年02月18日 事実婚の夫婦合わせて5人が「夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法違反」として、日本国政府に対し損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷は、審理を大法廷に回付し、憲法判断される[98]
2015年06月12日 超党派野党、参議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[99][100]
2015年12月16日 事実婚の夫婦合わせて5人が「夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法違反」として、日本国政府に対し損害賠償を求めた訴訟で、最高裁判所大法廷は、民法の規定を合憲とする判断を示し却下[101]。ただし裁判官15人のうち5人は違憲とする判断。特に女性裁判官3人は全員が違憲判断を示した[102][103][104][105][106]
2016年03月07日 国連女性差別撤廃委員会が日本に対し、「過去の勧告が十分に実行されていない」「実際には女性に夫の姓を強制している」として、選択的夫婦別姓制度導入のための民法改正を求める再度の勧告[52]

世論の動向[編集]

民法や女性問題に関する世論調査は1976年の「婦人に関する世論調査」など数年おきに実施されているが、1996年に選択的夫婦別氏制度を含めた法制審議会答申が出た後の4回は選択的夫婦別氏制度についての設問は同じ文言になっている。

2012年「家族の法制に関する世論調査」

内閣府が2012年12月に実施した「家族の法制に関する世論調査」によると、選択的夫婦別氏制度に関する設問については以下の結果となった。なお本調査は2012年12月6日から12月23日にかけ、全国5,000人以上の成人男女を対象に実施。有効回収率は60.8%であった(調査不能 だった者の中には「被災」者も4割近くを占める)。男性1,366名、女性1,675名の回収となった。

Q11〔回答票17〕 現在は、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗らなければならないことになっていますが「現行制度と同じように夫婦が同じ名字(姓)を名乗ることのほか、夫婦が希望する場合には、同じ名字(姓)ではなく、それぞれの婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めた方がよい。」という意見があります。このような意見について、あなたはどのように思いますか。次の中から1つだけお答えください。

  • (ア)「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」=「法改正には反対」が36.4%
  • (イ)「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」=「選択的別姓制度への改正を容認」が35.5%
  • (ウ)「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない」=「通称使用を認める法改正には賛成」が24.0%

(ア)「反対」の回答は、男性の60歳代、70歳以上、女性の70歳以上で多く、(イ)「別姓容認」は男性の40歳代、女性の20 - 40歳代で多く、女性の20歳代では半数を超えた(53.3%)。また、回答数を年齢ごとの人口分布に重み付けし直し回答結果を人口構成に補正すると、賛成は36.6%、反対は34.6%となる[107][108]

他の設問を見ると、婚姻時の改姓によって仕事の上で「何らかの不便が生ずることがあると思う」と答えた人の割合は全体で45.6%であった。一方、「何らの不便も生じないと思う」と答えた人の割合は51.4%であった。2006年度調査と大きな変化は見られなかった。

婚姻による改姓に対する意識の設問(複数回答)に関しては、「新たな人生が始まるような喜びを感じると思う」を挙げた人の割合が47.5%と最も高く、以下、「相手と一体となったような喜びを感じると思う」(30.8%)、「違和感を持つと思う」(22.3%)、「何も感じないと思う」(19.1%)、「今までの自分が失われてしまったような感じを持つと思う」(7.4%)などの順であった。

家族の一体感に関する設問については、「家族の名字(姓)が違うと、家族の一体感(きずな)が弱まると思う」との回答は36.1%、「家族の名字(姓)が違っても、家族の一体感(きずな)には影響がないと思う」との回答は59.8%であった。「弱まる」の回答が減少し、「影響がない」の回答が増加した。

夫婦の名字(姓)が違うと夫婦の間の子供に何か影響が出てくると思うかという設問に関しては、「子供にとって好ましくない影響があると思う」という回答は67.1%であり、この回答は男性の30歳代で多かった。一方、「子供に影響はないと思う」という回答は28.4%であった。

各政党の姿勢[編集]

おもに「選択的夫婦別氏制度」についての、国会議員を擁する各政治団体の賛否の状況は以下のとおりである。

党として賛成を表明している政党
「男女共同参画に必要な制度」[46]であり、「公明党は一貫して同制度の導入に努力してきた」[109][110]とし、代表の山口那津男は、2016年1月に「国会で議論を深め、時代に応じた立法政策を決めていくのが政治の責任だ」と述べている[111][112]。また、参議院会長の魚住裕一郎も「国会で議論をまきおこしたい」と2015年12月に述べている[113]。一方で、連立政権の足並みの乱れを生じさせたくないため、自民党を積極的に説得していない、との報道(2015年12月)も見られる[113]
民法改正に意欲的である[114]。前身の民主党は審議には至っていないものの衆参両院において法案を提出してきた[47][115][116][117][99][100][注 2]。「民主党は結党以来その必要性を訴え、過去繰り返し法案を提出してきた」としている[119]維新の党と合流前の2016年2月には、維新の党と共同で選択的夫婦別姓と再婚禁止期間短縮等を柱とする「民法の一部を改正する法律案」を共同議員立法として登録[120]、民進党へ党名変更後も、党の柱として挙げる「民進党11の提案(共生イレブン)」の中に、選択的夫婦別姓の実現を盛り込んでいる[121]。代表の岡田克也は、2015年に「結婚すれば一つの姓になるということ自身が、非常に偏った一方的な見方だ。自由な選択肢というものがあってしかるべきだ」と述べ[122]、代表代行の蓮舫は「時代の要請に応じて当然変えるべきものだ」と述べている[113]。2016年の民進党への党名変更後も、政調会長の山尾志桜里が、「再婚禁止期間、選択的夫婦別姓、婚姻年齢をパッケージとして出していく」、と述べている[114]
これまでも審議には至っていないものの衆参両院において法案を提出してきた[123]。家族に関する法律上の差別を全面的に改正したい、としている[124][125]。委員長の志位和夫は、「本当の意味での両性の平等、個人の尊厳、基本的人権の観点から認めるべきだ」と訴えている[46]
2009年の衆議院選挙公約でも選択的夫婦別姓制度の導入の実現を盛り込むなど[126]、選択的夫婦別姓制度に賛成している[46]
党として反対を表明している政党
2002年に、野田聖子らが「例外的に夫婦の別姓を実現させる会」を立ち上げ選択的夫婦別姓制度の導入を目指したが頓挫[43][44][45][46]。その後、野党であった2010年時点に自民党が作成した党公約において反対を掲げた[127][113]。2015年の時点でも、党の姿勢として「反対」を崩していない、あるいは積極的でない、と報道されている[46][113][128]。野田は自民党において選択的夫婦別姓制度の導入が進まない理由について、「自民党の応援団体である神社庁などが猛烈に反対している。」と述べている[129][注 3]。その他、同党議員が多数議員懇談会に参加している[131]日本会議が選択的夫婦別姓制度導入への反対運動を行っている[132][133]。なお、総裁の安倍晋三は、2010年に、選択的夫婦別姓制度について「夫婦別姓は家族の解体を意味」「夫婦別姓は左翼的かつ共産主義のドグマ」と述べ反対を表明している[134][135]。一方、議員単位で見た場合、選択的夫婦別姓の導入を支持する同党議員も見られる[136][137][138]。なお、自民党下野時の公約における選択的夫婦別姓への反対の記載については、2014年に男女共同参画担当大臣であった森まさこは、「民主党が当時提出した法案への反対」だった、と述べている[139][140]
党の運動方針として「夫婦間・親子間で別姓になってしまうという選択的夫婦別姓については反対」としている[141]
党としての賛否が明確でない政党・院内会派
党としての賛否は明確ではない。なお、共同代表の山本太郎は、mネットによるアンケートで、選択的夫婦別姓に賛成するとしている[138]。同じく共同代表の小沢一郎は、2014年の朝日新聞による調査によると、「どちらとも言えない」としている[136]ものの、過去に選択的夫婦別姓について「基本的に賛成である」と述べている[142]
党としての賛否は明確ではないが、代表・幹事長の松田公太は、選択的夫婦別姓への賛同を示している[143][144]他、事実婚についても、より権利を幅広く与えるべき、としている[145]
院内会派としての賛否は明確ではないが、2015年の超党派野党による選択的夫婦別姓を求める民法改正案の提出には、無所属クラブ所属の議員も参加している[100]
党としての賛否は明確ではないが、委員長の糸数慶子は選択的夫婦別姓の導入に積極的に賛成しており、政府世論調査について「結婚改姓をしている女性たちは圧倒的に選択的夫婦別姓を容認している。男女とも反対は60歳以上だが、60歳以上に反対が多いから必要ないということでは、若い世代をないがしろにしていると言われても仕方がない。」とコメントした[146][147]他、この問題は国連の各人権委員会が勧告されている、人権問題である、とも指摘している[148]
党としての賛否は明らかではないが、同党の法律政策顧問で発足時の暫定代表だった橋下徹は、選択的夫婦別姓への反対論として挙げられる「家族のきずな」について、2010年の大阪府議会において「自身は橋下、母親は東山と姓は違うが、子どもの立場で悪影響を受けたことも家族のきずなが薄まったなどということもない。姓と家族のきずなというものを簡単に同一視することには非常に危険性がある」と述べている[149]。一方、mネットによるアンケートによれば、同党が維新の党から分裂する前の2014年の衆議院選挙においては、維新の党は公約として「選択的夫婦別姓について反対」を掲げていた[150]

選択的夫婦別姓制度の賛否をめぐる論点[編集]

賛成論・反対論双方の主張を以下に記す。

賛成論から[編集]

人権・憲法に関する議論[編集]

以下のように、同姓を強制する現制度が憲法に違反するとの主張がある。主張は主に人格権の問題と男女平等の面から議論されることが多い。

人格権の問題に基づく議論としては、以下のような議論がある。今日、氏名は自己を表すものとして、氏にアイデンティティを感じる人がおり、婚姻によって氏が変わると自己を否定された感覚を持つ人がいる。夫婦同姓であれば、夫であれ妻であれ、必ず一方は改姓しなければならず、改姓した側は自らのアイデンティティを失う可能性がある[151]。氏名は個人を表すものとして重要な憲法第13条で保証された人格権である。したがって、夫婦同氏制は氏名権という根源的な人格権を侵害するものである。婚姻するために氏名という人格権を剥奪する合理的理由が示されていない。一方の姓の変更を強要する現行民法は、「婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」とする憲法第14条憲法第24条に違反する、という主張である[7][152][153]。また、民法上でも民法2条の解釈基準と矛盾をきたすものである、との主張もある[7][154]

また、類論として、民法750条における婚姻時の氏の変更という要件は、憲法第13条人格権としての「氏の変更を強制されない自由」と憲法第24条で保障される「婚姻の自由」の双方の自由を同時に満たすことができず、またそのような要件を課す十分な合理性があるとも認められず、民法750条は憲法第24条に違反する、との主張もある[92][155][156]

一方、男女平等の面からの議論としては、以下のような議論がある。民法の規定は、夫又は妻の氏のいずれを称するかを夫婦の選択にゆだねているものの、実際には妻の側が改氏する割合が全体の96%[157][注 4]といわれており、これは女性の間接差別に当たり、男女平等に反する[7][152][157][159][153][35]。同姓の強要は、男女における個人の尊厳・両性の平等を定める憲法第14条憲法第24条に抵触する[7][152][160]、などの主張である。

また、男女不平等以外にも、現制度に起因する不平等に関して、以下のような議論がある。別姓を望むカップルは、民法750条があり法律婚を選ぶことができないため、「氏の変更を容認するカップル」と「氏の変更を容認しないカップル」との間に、「法律婚として保護される利益を享受できるか」という区別・不平等が存在する。しかしそのような区別・不平等が存在する合理的理由がない[161]。反対論には同姓の方が家族の一体感があり子どもの利益にもなる、といった主張もあるが、実際には逆に、民法750条は、別姓希望カップルやその子どもを法律婚から排除することによって家族の一体感にも子どもの利益にも、かえってマイナスの影響を与えている[161][162]、といった指摘がある。その他、国際結婚では現在の制度でも夫婦別姓が可能であるが、日本国民同士の婚姻で夫婦別姓が認められないのは不公平である、といった議論もある[163][164]

これらの他、現在の制度において、婚姻により強制的に氏を変更させられ新たな姓を世間に公表させられることはプライバシーの侵害である、との議論がある[21][165][166]。このプライバシーの問題は、婚姻の際のみならず、子供がいる場合の離婚・再婚の際には、子供にとってのプライバシーの問題も引き起こすため、この問題はさらに顕著である[167][168]、といった議論もある。

立法府に関する議論[編集]

1996年法制審議会が答申した民法改正案要綱が、立法府においてきわめて長期間にわたり放置されている状況は、異常であり[7][169][170][35]、立法府が時代に適応した法律を作っていないのは立法府の怠慢である[171]、といった議論がある。また、2015年の選択的夫婦別姓を求める裁判の判決は「選択的夫婦別姓制度について合理性がないとするものではなく、国会で論じられるべき」としており、それを怠るのは司法の軽視にもあたる[172]、といった指摘もある。

裁判を巡る議論[編集]

これまで行われた選択的夫婦別姓を巡る裁判に関して、以下のような議論がある。

夫婦別姓を認めない民法の規定は、憲法が保障する「婚姻の自由」を侵害しているなどとして、5人の男女が国に損害賠償を求めていた裁判では、最高裁大法廷は2015年に、夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲とする判断を下したが、15人の裁判官のうち、女性裁判官全員の3人を含む5人は違憲との反対意見を表明した[102][173]。また、弁護士出身の裁判官の判断は、4人中3人が違憲だった。このようにこの判決は、男女の割合に加え、裁判官出身なのか弁護士出身なのかといった前職のプロフィルがかなり濃厚に反映されており、最高裁判所の裁判官の構成が人口比に照らしておかしいことが明るみになり、裁判官の構成比率によっては違憲判決が出た可能性も指摘された[174][175][176]。また、この判決は現制度の合憲性を判断したものであり、判決理由からもわかるとおり、夫婦別姓制度の是非を判断したものではなく、立法府への期待を示したものと受け止めるべきである、といった議論がある[177][178]

また、同裁判では、「96%もの多数が夫の氏を称することは、女性の社会的経済的な立場の弱さ、家庭生活における立場の弱さ、種々の事実上の圧力など様々な要因のもたらすところであるといえるのであって、夫の氏を称することが妻の意思に基づくものであるとしても、その意思決定の過程に現実の不平等と力関係が作用しているのである。そうすると、その点の配慮をしないまま夫婦同氏に例外を設けないことは、多くの場合妻となった者のみが個人の尊厳の基礎である個人識別機能を損ねられ、また、自己喪失感といった負担を負うこととなり、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した制度とはいえない」などの反対意見が付された[179][180]

さらに、同裁判の結果については、選択的夫婦別姓制度の採用は世界の潮流であり、人権のグローバルスタンダードから遠い判決[181]、といった指摘がある。また、過去の別の裁判では判断において「国際社会の潮流」を違憲要因に挙げているが、夫婦同姓の強制は明らかに国際社会の潮流に外れているにも関わらず、同裁判ではそれに関して判決は触れておらず、二重基準になっている、といった議論も見られる[182]

また、同判決を「はなはだしく時代遅れ」と指摘する意見もある[183]他、同判決について、文言が政権の意向を忖度したと見える[184]といった批判がある。

一方、反対論に民法750条の立法目的が「家族の一体感の醸成」であったなどという主張が見られることがあるが、東京地方裁判所は平成25年の判決において、そのような主張は明確に退け、立法時の資料に忠実に同姓を強制する制度が「婚姻制度に必要不可欠のものであるとも、婚姻の本質に起因するものであるとも説明されていない」と認定している[170][185]

世論[編集]

これまで選択的夫婦別姓制度に関連して、以下のような世論調査や、それに関する議論がある。

2014年 - 2015年の大手3紙(毎日新聞(2014[186]・2015[187])、朝日新聞(2015)[188]産経新聞(2015)[189])の世論調査では、選択的夫婦別姓制度への賛成がいずれも51%〜52%と過半数を超え、反対を大幅に上回っている。なお、2009年の時点でも、大手新聞4紙(産経新聞読売新聞毎日新聞朝日新聞)の世論調査において、選択的夫婦別姓制度への賛成が反対を上回っていた[190]

また、2012年政府の調査においても、若い世代ではすでに賛成が多数派である[191][192][193]。また、2011年の独身男女意識調査(インテージ)によれば、独身女性の夫婦別姓支持率は7割近い[194]。反対は主に高齢者男性からであるが、若い世代がそれを望むのに、それを既に大半の人生を終えた人たちが反対し、同姓を押し付ける構図は、全くもって不快である[195]。少子高齢化の中で、社会制度づくりの意思決定の議論に歪みを与えず、性別や年齢に偏りのない多様な国民各層の声を、国の重要な政策決定に反映できる社会にしなければならない[196]、といった議論がある。

一方、反対派には賛否が拮抗していることを理由に先送りを主張する意見が見られるが、そもそも人権にかかわる問題では世論の賛否の割合を条件にしてはいけない[191]。この問題は普遍的な人権に関わる問題であり、すみやかに導入を図るべきである[191]、といった議論がある。

その他、2012年の政府の調査では、「名字(姓)を変えたくないという理由で正式な夫婦となる届出をしない内縁の夫婦もいると思う」と考えている人の割合が6割を超えている[192]。国民の意識が変化しつつあり、別氏が選択でないため事実婚で我慢せざるを得ず婚姻の自由が侵害されている人たちにも平等に婚姻の権利を与える必要がある[7]、といった議論がある。

国際条約・国際情勢に関する議論[編集]

日本を含む130カ国の賛成で国連1979年に採択された「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」では、選択的夫婦別氏の導入が要求されている[7][152][191][153][197][198][128]。そのため、国連の女性差別撤廃委員会は、2003年や2009年、2016年の勧告で、日本の民法が定める夫婦同姓を「差別的な規定」と批判し、「本条約の批准による締約国の義務は、世論調査の結果のみに依拠するのではなく、本条約は締約 国の国内法体制の一部であることから、本条約の規定に沿うように国内法を整備するという義務に基づくべき」(2009年)、「過去の勧告が十分に実行されていない」、「実際には女性に夫の姓を強制している」(2016年)とするなど、法改正するよう繰り返し求めている[199][7][52]。また、批准から30年経ってもまだ夫婦同姓を強制している日本の異様さは国際的にも非難の対象となる[35][200]、といった議論がある。国連女性事務局長のプムジレ・ムランボヌクカは、日本の夫婦別姓を認めない規定について、「男女の平等を確かなものにするため、選択肢を持たなければならない。」と述べている[201]。その他、米国務省による世界199カ国・地域の人権状況に関する年次報告書(2015年版)においても、日本の夫婦別姓を認めない民法規定が言及されている[202]

また、夫婦同氏を強制する国家は現在、日本のみである[7][203][204]。かつて強制されていた、ドイツトルコインドタイでも選択制に移行した。現在の状況は歴史的、世界的にも「ガラパゴス」的であり[205]グローバルスタンダードから外れた制度は、海外交流や海外活動において理解されず、説明が困難である[168]、先進国で夫婦同姓が残っているのは日本だけで恥ずかしい[183]、といった指摘がある。(各国の姓のありようについては項目「世界の氏名制度とその状況」も参照。)

また、日本も明治以前は、同じ文化圏である中国韓国などの東アジアの国と同様、夫婦別姓が基本であった、との指摘がなされることもある[2][206]

男女共同参画に関する議論[編集]

2015年日本経済新聞による調査によれば、働く既婚女性の77%が、夫婦が望む場合に結婚後もそれぞれ結婚前の姓を名乗ることを認める「選択的夫婦別姓制度」に賛成している。現在仕事で旧姓を使っている人に限ると賛成は83%にのぼった[207]

また、グローバル化が進む現代、選択的夫婦別姓制度を導入し結婚しても改姓しないことを選択できるようになれば、女性の社会進出や国際的な活躍の場を広げられ、男女共同参画を大幅に進めるになると考えられる、との主張がある[208][209]。現状では、パスポートが戸籍姓に限られるため、別姓を選べない制度が国をまたいで活躍する女性の足を引っ張っている[210][211]、などの指摘もある。また、理工系の職に関しては、特許を戸籍名でしかとることができない[212]文部科学省若手科学者賞」の表彰者名簿など、研究成果が認められる重要な場面で名前が混在する[211]、などの問題も指摘されている。

少子化に関する議論[編集]

少子化対策として進めるべき施策である、との主張もある[213][214][215][216][217][218][219][35]。婚姻率が下がっていることが少子化の大きな原因であり、選択的夫婦別姓を認めることは婚姻率を高める可能性が高く、少子化対策として非常に有効な施策であると考えられる。夫婦別姓を実現し、子育てのセーフティネットを手厚くすることで出生率の2が見えてくる、といった主張がある[220]。また、現在、日本では少子・高齢化により労働者人口が減少する危機にあり、そのことが高齢者扶養の問題等、きわめて大きな問題を引き起こし、今後さらにそれらの問題は一層大きくなることが予想されている。選択的夫婦別姓を認めることは、女性の更なる社会進出を促し、男女共同参画を大幅に進めることになると考えられ[209]、日本の労働者人口を増やす突破口としても、すぐにでも推進するべき施策である。さらに、男女共同参画が進めば、家計も安定し、子供を望む夫婦も増えることも考えられる。また、夫婦同姓を強制する現制度自身が、「嫁入りして家長の姓に合わせる」という価値観を助長し、それが非婚少子化を招いており、少子化阻止のためには、そもそも選択的夫婦別姓制度を認めないような家族観を見直すべき、といった主張もある[217][221][222]

また、これらの議論とは別に、選択的夫婦別姓制度を求める声には様々なものがあるが、少子化の中で実家の姓を残すために選択的夫婦別姓を求める声もある、という指摘がある[223][65]

氏の変更に関する議論[編集]

婚姻の際の氏名の変更に起因する不利益・損失に関して、以下のような議論がある。

まず、夫婦同氏を強制する現制度では、婚姻によって氏の変更を婚姻当事者の一方に強制することとなり、強制された者にとっては、自分の歴史が分断され自己が否定されるように感じられ、その者に自己喪失感をもたらす場合があるなど、アイデンティティの問題があるとの指摘がある[21][224]

また、現在の制度において、長年月、社会生活を行ってきた者が、その姓を変えることは、多大の社会的損失[21][225][226][39]ならびに個人的損失[227][228][229]をもたらす、といった指摘がある。しかも、その旧姓を用いていた期間は晩婚化によって以前よりも長くなっており、さらに共働き家庭も増えており、そのような損失はより大きくなっている[230][231]。1997年にはすでに、共働き世帯の数が専業主婦世帯の数よりも多くなっており[227]、2014年時点では共働き世帯が1077万世帯、男性雇用者と専業主婦からなる世帯は720万世帯、と共働き世帯が大幅に専業主婦世帯を上回っている[232][112]

さらに、職業上、氏の変更が業績の連続性や信用、キャリアにとって損害となる場合もある、との指摘もある[233][128][234][210]。名前を売る必要のある職種であれば、モチベーションにも関わる[235][236]。また、現在の制度において、社会で活躍している女性などが結婚によってそれまで通用していた姓を変更すると、周りに混乱を起こしてしまうことがある[237]。また、姓は変わらない方が便利である[238]、という指摘もある。

これらの議論の他に、現在の制度においては、例えば亀井静香荒川静香、などのように姓名のうち名が同一のカップルが結婚する際に不都合が生じる、といった指摘[239]や、結婚によって不適切な姓名の組み合わせになってしまう場合もある、といった指摘[240]がある。

旧姓通称利用に関する議論[編集]

氏の変更による不利益や損失、アイデンティティの喪失などを回避するための方策のひとつとして、旧姓通称として利用することが考えられる。しかし、この旧姓通称利用に関しては以下のような問題の指摘や議論がある。

まず、現在の制度において、旧姓の通称利用では様々な社会生活上の不便に関する指摘がなされている[152][211][241]。たとえば、職場・職業によっては戸籍姓しか認められない[152][242][243][244][245]。国家資格が必要な職業でも、医師など約半数の資格では旧姓使用が認められない[182]。2015年の時点で、民間での旧姓通称利用を認めている企業は65%にとどまる[242][182]。また、 運転免許証印鑑登録証健康保険証パスポート銀行口座などは旧姓では作ることができない[152][注 5]。さらには、 クレジットカードやパスポートと旧姓の不一致のために、海外のホテルなどの予約ができないことなどもある[211]。また、役員登記もできない。2015年より役員登記で旧姓併記が可能となったが、併記は中途半端で、より一層不便である[247][248][249]特許申請は旧姓ではできない[212]公証役場でのサインは旧姓は認められない[250]

また、旧姓の通称利用に関しては、そもそも二重の姓を持ち、使い分けるのは不便である、との指摘もある[234][251]。他にも、姓が2つある生活はアイデンティティが2つに分裂するような感覚がある[251]、といった意見も見られる。

さらに、通称の利用は二つの名前の管理が必要であり企業の負担が大きくなる[168][210][182][252]、戸籍上の姓と職場での姓が違うために混乱が生じる[253]、などの指摘もある。

また、これらの通称利用の不便を解消する方法として、戸籍に通称を記載し、免許証パスポート等にも通称を使用できるようにする徹底した通称使用制度も観念上は考えられなくはないが、選択的夫婦別姓による解決が合理的[152]、といった議論がある。

その他、通称の利用によって夫婦同姓を規定する民法による不利益が緩和される、といった意見があるが、そのようなことはない[254][35][255]。旧姓を通称利用したとしても、法律上ではなく通称というものは本人にとって嬉しいものではない[237]、といった議論・指摘がある。

事実婚に関する議論[編集]

氏の変更による不利益や損失、アイデンティティの喪失などを回避するもう一つの方策として、事実婚を選ぶことも考えられるが、この場合も、様々な問題があることが指摘されている[256][257][258][259][242][260][248]。まず、子どもがいる場合はどちらかしか親権を持てない(共同親権が持てない)[256][257][242][261]。そのため、事実婚の夫婦が子供を持つことをためらう可能性についての指摘もある[262]。さらに、子供を持った場合に子どもを認知したとしても戸籍には子の立場として婚外子(非嫡出子)と記載される[257]。また、自分が死んだ際に相手に相続権がないため、遺贈するための遺言を残す必要がある[256][257][263][注 6]。さらには、家族の手術サインができない場合や、入院家族の病状説明を断られる場合がある[258][266]。また、生命保険の受取人や住宅ローン連帯保証人になりにくい[256][注 7]。さらに、法律婚の場合と比較して、経済的な不利益を逃れられない。具体的には、税金配偶者控除が受けられない[256][242]医療費控除の夫婦合算ができない[242]厚生年金配偶者の扱いが受けられない[257]不妊助成が受けられない[258][242]クレジットカードマイレージ携帯電話契約等の家族会員・家族割等の適用などが難しい場合がある[242]。会社からの家族手当等の受給がされない場合がある[242]、など。また他にも、仮に夫婦間問題が起こった場合も法律的には結婚していないので結婚していれば可能な損害賠償を請求できない場合がある[257]、など様々な問題が挙げられる。

家族観に関連した議論[編集]

家族観に関連した議論として、以下のような議論がある。まず、別姓の選択を認めない現制度に関して様々な批判がある。まず、現在の家族制度は時代遅れ、との主張が多く見られる[169][258][268][206][269][270][271][272][273][195][274]

また、夫婦同姓を強制する現状の制度では、親の離婚・再婚時に子供の姓が変わることが多く、子供がかわいそうである、との主張もある[168][275]。さらに、現在の夫婦同姓を強制する制度は別姓を希望するカップルやその子どもを法律婚から排除するため、(反対論としてよく見られる主張とは全く逆に)家族の一体感にも子どもの利益にもマイナスの影響を与えている。これを解消するには、選択的夫婦別姓制度を導入するか、事実婚法律婚同様の保護を与えるか、という二つの方法のいずれかが必要である、という主張がある[161]。その他、選択制にすれば、子連れ再婚がしやすくなる、との指摘もある[276]

また、家族は個の集団であって、いろいろな家族があってよい[183]、家族の形が多様になる中、夫婦別姓を認め、いろいろな夫婦、家族のあり方を尊重することが大事[277]、とする意見がある。また、離婚時に離婚前の姓と旧姓を選べるのに、結婚時に旧姓を選べないのはおかしい[251]、といった意見もある。

さらに、現在の制度の家族観への悪影響に関する以下のような議論がある。まず、現在の制度では、夫の氏を婚氏とする(夫婦同姓の98%[21]、2015年の報道では96%[157])ことは、夫の「家」に入ることになり、「嫁」と意識されることに結びつき、結婚する女性にとっては、姓の変更が男性への従属を意味するように感じられる、との議論がある[21][278][165]。さらには、夫婦同姓という制度の保持するべきなどという主張は、女性に対する安い低賃金労働者としての支配を貫徹することを意味し、差別意識がなければできないことである[279]、別氏制が法制度化され社会に周知されれば偏見に基づく「いじめ」等もなくなる[65]、といった議論もある。

また、現行の同姓を定めた制度は「嫁入りして家長の姓に合わせる」という価値観を助長し、その価値観が男尊女卑につながり、結果として家事育児の共同分担が遅れ、非婚少子化を招いているという深刻な問題に重なっている、といった議論があり[217]、出生率を改善するには、選択的夫婦別姓制度すら認めないような家族観は抜本的に見直す必要がある、といった議論もある[221][222]。また、現状では夫の姓を名乗っている夫婦が多いが、いわば妻が夫に従う形になるため、夫の中にはあたかも妻が自分の所有物であるかのような潜在意識を有する者がおり、妻に暴力を振るう傾向を持つことを否定できず、現在の制度は、DVの原因にもなっている、といった議論もある[216][注 8]

また、(妻が一人っ子などの理由で)妻側の苗字を存続させたい場合、選択的夫婦別姓制度を導入すれば、養子縁組も夫の苗字の変更もせずに、子供を妻側の苗字にすることができるようになる[152]、という指摘もある。

家族観に関連した反対論への反論[編集]

反対論として「家族の一体感を壊す」「家族の絆」といった理由が挙げられることがあるが、それらに対しての反論として以下のようなものがある。まず、根拠がない[284][177][195][285]、同姓でないから家族としての絆が希薄などということはない[276]、同姓にしたからといって、家族の絆が保障されるものではない[286]、といった指摘がある。また、家族の一体感(絆)にとって最も大切なことは「同氏」という形式ではなく愛情や思いやりといった実質である、といった議論もある[81][287]。さらに、家族の絆だ、などというお題目は家に縛り付けるだけの概念でしかなく、時代錯誤である、といった主張もある[195]。また、政府の調査では「家族の絆と姓は関係ない」と答えた人が6割に上り[191][192][193][250]、家族の絆や「幸せの形」は人それぞれに異なる、との指摘もある[171][288]。また、議論されている制度は「選択制」であるから、別氏にすると家庭が崩壊すると思う人は同氏を選択すればよいだけである、という指摘もある[289][290]。さらに、反対派のそのような主張は、現在すでにいる事実婚国際結婚の家族に対して大変失礼である、といった指摘もある[291]他、実際には、同姓を強制する現制度こそが、別姓を希望するカップルやその子供の家族に対し、家族の一体感や子供の利益に対しマイナスの影響を与えている、との主張もある[161]。また、反対論として挙げられることのある「子供がいじめられそう」などという意見は、「別姓の家族や子どもに対して『白い目で見られて当然』」といった思い込みによるもので差別主義だ[292]、といった意見もある。

また、そもそも崩壊に至る家庭は別氏か同氏かという議論以前の問題として、同氏強制の現在でも離婚は存在しその件数は増加傾向にある[152]。日本でも国際結婚の場合は、1984年に別姓の強制から同姓別姓の選択制に法改正されたが、同姓の選択肢が増えたからといって離婚率が減ったということはない、といった指摘もある[152]。さらに、法律で夫婦同姓を強制しているのは日本だけだが、夫婦別姓の多くの国でそれがために家族が崩壊している、という話も聞かない[293]、日本と同様、儒教の影響を受けた中国や韓国はずっと別姓の原則でやってきたが、そのために家族が壊れている、仲が悪い、など聞いたことがない[294][295]、といった主張もある。

これらの議論以外にも、反対論として、「家族の呼称」がなくなる、といった主張があるが、そもそも氏名は「個人の呼称」である。夫婦別姓を認める国においても、「家の呼称」がなくて困る、などということはない[245][65]、といった主張がある。

また、反対論として戸籍を理由とする論も見られるが、台湾の戸籍制度などは別姓を許容する制度となっており、選択的夫婦別姓制度を導入したとしても制度設計として問題ない[245]、との議論もある。また、2015年に導入されたマイナンバーに関連して、マイナンバーがあれば個人識別が容易であり、また、単身世帯も増えており、世帯という概念自体が衰退しつつあり、夫婦同姓を堅持する合理性もない[168][296][297]マイナンバー導入とともに夫婦別姓も解禁し、配偶者と別姓でいることも国民の権利の1つとすればよい、といった議論がある[298]

伝統に関する議論[編集]

反対論として「伝統維持」が挙げられることがある。しかしこれに対しては、夫婦同氏が強制されるようになったのは1898年に制定された明治民法によるものであり、歴史も浅く伝統であるとはいえない、との指摘がある[7][206][295][205][299][300]1876年太政官指令時は夫婦別氏であったし、それ以前も家族の形は地域や身分で異なり、多様であり、それが伝統だった[295][205]。古くには名字ではなく氏・本姓(古代氏姓制度による氏)についていえば夫婦別氏が原則であり[301]、飛鳥-平安時代の庶民の戸籍において女性にも氏が記載されており夫婦別氏と同氏が混在する[12][注 9]。中世に至っても例えば日野富子の氏名は「藤原富子」が正式であり別姓である[24]、などの指摘がある。また、同じ姓にする現在の制度は、明治政府が西洋化政策の一環として、法律で強制したものである[294]、といった指摘もある。

関連した議論として、そもそも伝統であるか否かの議論以前の問題として、たとえ僅か100年程度の歴史しかない夫婦同氏を日本の伝統であると仮に認めたとしても、「伝統の強制」はするべきではない[303]、という議論もある。

また、反対論として「伝統的な『○○家の墓』に入れない」といった理由が挙げられることもあるが、祭祀の主宰やお墓の継承は別姓でも可能である。「○○家の墓」は普遍的なものではないし、「○○家の墓」には「○○」以外の氏の人の遺骨を納めてはいけないという規制はない。また、少子化のため、一人っ子同士の結婚が増えており、別姓問題に関係なく、自由な方法が工夫されつつある[152]。実際には、逆に、例えば長男長女が結婚した場合、選択的夫婦別姓制度導入により双方の墓を守る選択肢が従来より増える可能性もある[128]、などの指摘がある。

個人の尊重・多様な価値観の尊重[編集]

日本社会は1980年代後半以降、国際的な男女平等の潮流と女性の経済的自立の傾向から、家族観、婚姻観、男女の生き方や役割観に変化があり、社会における男女の働き方、家族形態は多様化した[7][304]。多様な価値観を認めることが現代の日本では求められている[205][305][128][223]。同姓を望む人は同姓を、別姓を望む人は別姓を選べる「選択的夫婦別姓」が認められないことは、多様な考えや価値観を否定するようなもので成熟した民主主義国家の姿とは言いがたい[285]、といった主張がある。

選択的夫婦別姓を導入すれば別姓という選択肢が増えるが、選択肢が広がることはよいことである、との主張がある[306][307][308]。関連した主張・意見としては、選択制なら希望者だけが別姓にでき、反対する理由がわからない[309]、夫婦別姓を選択できるようになることによって、ほかの人が不利益をこうむることもない[191][310]、現実の不便や苦労を感じなくても良い人々が反対するのはおかしい[311]、反対する人の声からは「自分と違う価値観を持つ人間が、とにかく許せない」との響きを感じる[312]、反対派の行っていることは「価値観」の押し付けであり、最も嫌がられる行為である[205][195]、反対論者は、姓が変わることで損をする人への想像力が欠けている[313]、反対論者は、他の人の立場や境遇を思いやることができないようである[314]、反対論は結局、理屈ではなく感情であり、その底にあるのは、社会の同調圧力である[294][315]、などの指摘や主張がなされている。

また、社会、国のあるべき姿に関する議論として、現在の制度のように、法的婚姻をすることで、社会生活をする上で不便に耐えたり、または好ましい使い慣れた姓を捨てさせたりするところまで強制力を持つ社会は窮屈で非寛容である[237][205][316]、といった議論がある。また、そもそも、夫婦は同姓であるべき、などとが縛るべきではない[317]、といった主張もある。

反対論から[編集]

人権・憲法に関連した議論[編集]

人権・憲法に関連しては以下のような議論が挙げられる。

  • 夫と妻に同等の権利を与えた現在の夫婦同姓制は、一方で「個人の尊厳」や「両性の平等」を尊重しつつ、他方で「家族を保護」しようとした憲法の精神にふさわしいものである。明文化されなかったが、当初のマッカーサー草案には「家庭は人類社会の基礎」と明記されており、新憲法下でも善き意味の家族制度は否定されないというのが、憲法制定当時の政府見解であった[318]、との主張がある。
  • 夫婦別姓制は必ず親子別姓をもたらすため、家族よりも過度に個人を優先する結果、「家族の絆」と「一体感」を破壊し、家族を崩壊させかねない。国が「家族」を保護すべきことは、世界人権宣言国際人権規約も認めている。同規約では「できる限り広範な保護及び援助が、社会の自然かつ基礎的な単位である家族に対し、…与えられるべきである」(10条1項)と定められている。婚姻を結ぶ者が家族よりも過度に個人を優先・絶対視する風潮が進むとことは、国際的な国家による「家族保護」の義務に逆行し、憲法の精神にも反する[318]、といった主張がある。
  • 人権は絶対無制限ではなく、他者の権利・利益の確保、自然的・文化的環境の保護、国家の正当な統治・行政機能の確保などの「公共の福祉」と矛盾・衝突する場合は制約されることもあり、いかに両立させていくかの努力が必要である[319]、といった主張がある。

また、人権に関する賛成論に対する反論として、以下のような主張がある。

  • 賛成派は賛成する理由に「男女平等に反する」という意見があるが、「又はの氏を称する。」という民法の規定は、夫又は妻の氏のいずれを称するかを夫婦の選択にゆだねていることから、男女の平等の理念に反するものではない[320]、との主張がある。
  • 賛成派は賛成する理由に「女性の多くが改姓している」という意見があるが、それは両者の合意の結果であり、民法の規定のせいではない。仮に社会格差のせいで女性の方が改姓を強いられているというのであれば、その社会の不平等を正さなければ意味がなく、民法の規定の問題ではない、[321]といった主張がある。
  • 賛成論の中には夫婦同姓の強制は憲法13条人格権を侵害するという意見があるが、配偶者の姓を改めることが人格権の侵害なら親の姓の使用強制(例えば親の離婚再婚によって親権が変わることで子供の姓が変わることなど)も同様に人格権の侵害に当たるはずであり、そうなれば賛成論者は別姓ではなく氏姓の全廃を主張しないとおかしい[322]、といった主張がある。

裁判を巡る議論[編集]

  • 2015年12月16日に、上告人が夫婦が婚姻の際に定めるところに従い夫又は妻の氏を称すると定める民法750条の規定が、憲法13条14条1項24条1項及び2項に違反するとして国に賠償を求めた裁判で、最高裁は「名字が改められることでアイデンティティが失われるという見方もあるが、旧姓の通称使用で緩和されており、憲法に違反しない」「わが国に定着した家族の呼称として意義があり、呼称を1つに定めることには合理性が認められる」と位置づけ、現在の民法規定を合憲とし訴えを退ける判決を出している[323][324][325]
  • 同裁判で、寺田逸郎裁判長は補足意見として「民法上の家族は、夫婦とその間に生まれた子供が基本をなしている」「子供は夫婦と同じ姓を持つ存在として意義づけられている」「現在の家族制度は社会の多数に受け入れられており、その合理性を疑う余地があるとは思えない」と述べている[326][327][328]
  • 同裁判では史上初めて最高裁が家族を「社会の構成要素」「社会の自然かつ基礎的な集団単位」であると位置づけた判決であり、この文言は世界人権宣言第16条と国際人権規約A規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)第10条の内容を踏まえていることから、判決が家族共同体の意義を重視したものであることが窺える[329]、といった主張がある。

世論[編集]

  • 2001年の政府の世論調査によると、夫婦別姓の実践を希望する人の割合は7.7%である[330]
  • 2012年内閣府が行った選択的夫婦別姓の世論調査では、「現行の法律を改める必要はない」が36.4%、「現行の法律を改める必要はないが通称をどこでも使えるような法改正はかまわない」が24.0%、「法律を改めてもかまわない」が35.5%を占めており、6割以上の人が選択的夫婦別姓のために法改正する必要はないと答えた。一方、内閣府の調査で、夫婦の姓が違うと「子供にとって好ましくない影響があると思う」とした人は67.1%に達しており、「子供に影響はないと思う」とした28.4%を大きく上回っている[331][332]
  • 2014年8月国立社会保障・人口問題研究所が発表した全国家庭調査動向調査によると、選択的夫婦別姓について2003年では「賛成」47.0%、「反対」53.0%であったのに対し、10年後の2013年では「賛成」41.5%、「反対」58.5%と反対派が増加している[333]
  • 2016年2月16日に配信されたAERA編集部とYahoo!ニュース編集部の共同企画「みんなのリアル~1億人総検証」の記事によると、「家族の姓はどの範囲まで同じであるべきだと思う?」という質問に対して、「夫婦の姓は同じであるべき」が56.6%、「親と、未婚の子どもの姓は同じであるべき」が33.0%であったのに対して、「同じ姓でなくても構わない」は31.2%だった[334]
  • Yahoo!ニュース 意識調査2016年2月16日2月26日に実施した「あなたは、姓が家族の関係をつなぐものだと感じますか?」というアンケートで、投票総数12万8250票のうち「強く感じる」が50.0%、「やや感じる」が21.2%、「あまり感じない」が15.7%、「まったく感じない」が13.1%だった[335][336]
  • 2016年3月2日讀賣新聞によると、全国世論調査(郵送方式)で夫婦別姓制度の導入について聞いたところ、「反対」が61%で、「賛成」の38%を上回る結果となった。反対する理由のトップは「子どもと親で姓が異なることに違和感があるから」の75%であった[337]

国際情勢に関する議論[編集]

賛成論として、夫婦同姓は先進国では日本だけであり、先進諸国の大勢やグローバルな基準に反していると主張する意見があるが、そもそも全国一律の戸籍制度を完備してきた国は日本以外はほとんどないため、次元の違う制度比較である[338]、といった主張がある。また、キリスト教国の多くは誕生も結婚も教会に登録され、横の連絡網が欠けるので家系をたどりにくく、日本ではありえない重婚も起きる[338]、といった主張もある。

また、各国の状況に関して以下のような主張や指摘がある。

  • 夫婦別姓である韓国では、結婚後も女性は旧姓を名乗るが、女性運動が華やかだった1960~70年代に、韓国の事例は女性蔑視の例として語られ、女性を差別するがゆえに夫と同じ姓を名乗らせず、族譜(家系図)にも載せないのだと批判されてきた[339]、という主張がある。
  • フランスは夫婦別姓だが、妻は夫の姓を名乗る選択肢が与えられている。夫婦の姓を並べた「結合姓」が認められている国もある[340]アメリカ合衆国では州ごとに制度が分かれており、別姓の他にミドルネームなど概ね5つの選択肢が与えられているものの、女性の67%が夫の姓を選択しており、子供にも夫の姓を付ける夫婦が多い[341]ドイツタイ王国など元々夫婦同姓しか認めていなかった国が法改正して夫婦別姓を認めた例もあるが、ドイツでは8割の女性が夫の姓を選択している[342]、といった指摘がある。
  • アメリカ合衆国民主党ヒラリー・クリントンの名前はヒラリー(洗礼名)・ロダム(父の姓)・クリントン(夫の姓)となっている。ミャンマーは姓を持たぬ国であり、アウン・サン・スー・チーはアウン・サン(父の名前)・スー(父方の祖母の名前)・チー(母の名前)となっている、[343]といった指摘がある。

このように、世界の姓名事情は国の文化や慣習によって異なっており、日本の夫婦同姓が「女性差別」「グローバルの基準に反する」という指摘には当たらない[343]、といった主張がある。

少子化に関する議論[編集]

  • 女性の社会進出により共働き夫婦やパートで働く女性が増え、妻方に近居し祖父母から子育て支援を受ける傾向や、子どもの成長後は夫方からの支援を受けて二世帯住宅に改築のうえ共住、あるいは近くに持ち家を取得する傾向が強まっている。このような三世代関係は、外孫(姓を異にする孫)と内孫(姓を共有する孫)の分別によって父方と母方の祖父母間の利害調整(片方が「名」をとり片方が「実」をとる)が存在することで可能となっている。夫婦別姓制度の導入はこのような調整をできなくするため、祖父母という重要なサポート源を失わせることで子育て環境を悪化させ、出生率を低下させる可能性が高い。実際、専業主婦であっても、第1子において祖父母からの子育て支援がない夫婦は予定子ども数が低くなる傾向がある[344]、といった主張がある。
  • 国立社会保障・人口問題研究所の『第14回出生動向基本調査第・報告書』によると、2000年以降、日本人の家族意識は脱伝統から伝統回帰へと転換する傾向を特に若い世代で顕著にみせている。伝統的家族観を支持している夫婦と支持していない夫婦の理想の子供数・予定の子供数の比較では、「結婚したら、家族のためには自分の個性や生き方を半分犠牲にするのは当然だ」などの伝統的家族観に関する全11項目中すべての項目で伝統的家族支持派の夫婦の出生意欲が不支持派を上回っている。このような再家族化の動きはヨーロッパでも始まっている[344]、といった主張がある。

旧姓通称利用に関する議論[編集]

  • 賛成論の理由として挙げられることのある社会生活・職業上の不便などは、おおむね旧姓の通称使用で解決が可能である[345]。現在では登記簿パスポートにも通称の併記が可能であり、銀行口座も本人確認ができれば通称使用可能な場合もある。職業上の不便も各業界や組織・団体、あるいは個別法規の改正で足り、民法改正の必要性とするには足りない[346]、といった主張がある。
  • 民間調査機関「労務行政研究所」によると、1995年に旧姓使用可能な企業は約18%だったが、上場企業約3700社を対象に行った2013年には約65%まで進んでおり、年々旧姓使用可能な企業が増えている。また、公務員は本人の申し出で職場での旧姓使用が可能である。弁護士など多くの国家資格も仕事上の通称使用を認めている。医師看護師は登録は戸籍名だが旧姓を使用しても罰則は無い。安倍内閣女性閣僚を初めとした多くの政治家が通称を使用している。こうした背景から、通称使用が広がることにより不利益は緩和され得る[347]、といった主張がある。
  • 自民党稲田朋美は「(自民党は)女性の社会進出に伴う通称使用を拡大することを公約しており、そうした方向性が多数意見と思う」と述べている[348]
  • 通称を使用している者の中には、姓の使い分けは心身のリフレッシュにもなり、名乗る名前で『仕事』と『家庭』の線引きが明確になることでメリハリが付き、生活全体の充実につながっていると感じるとの意見もある[349]
  • 別姓の夫婦の下で生まれた子供大人になってから自分の姓を両親どちらかの姓に選べるが、その時の書類を書き換えなどの不便さは夫婦同姓制度のもとで結婚時に姓を変える側の不便さと同じである。「姓を変えるのが不便だから別姓制度にせよ」と言っている人々は、子供が大人になって姓を変えたい時の不便さを考えていない。親が免れた不便さを、確実に子供が背負い込むことになる。結婚し家族を持つということは不便なことや面倒くさいこともあるものであり、夫婦別姓は不便さを次世代に先送りし子供に押しつけるだけである[350]、という主張がある。

家族観に関する議論[編集]

  • 姓は家族のである。賛成派の主張は家族・家庭より個人を過度に優先する思想であり、現今問題となっている家庭崩壊を促進する惧れがある[345]。多くの人が自らは別姓を選ばない理由はここにあり、別姓の容認は家族の呼称の廃止と戸籍制度の破壊を意味するため、家族の一体感をも損なうことになる。家族の呼称を持つことで家族としての精神的な一体感が生ずるという点も軽視してはならない[346]、といった主張がある。
  • 賛成論の中には反対論の「夫婦別姓は家族の一体感を弱める」という主張に対して「家族の一体感にとって大切なのは同姓という形式ではなく、愛情や思いやりといった実質である」といった反論がある。これに対して、夫婦同姓は決して「単なる形式」ではない。それは家族統合のための大切な象徴であり、また日本文化の基本の型である。もちろん愛情も家族の絆を強める大切な働きをしているが、同一の姓という象徴もまた心理学的な絆を強める重要な働きをしている。全く異なる範疇の愛情と象徴を比較して、どちらが重要かという議論をするのはナンセンスである[351][350]、といった主張がある。

戸籍制度に関する議論[編集]

  • 結婚すると夫婦は同じ戸籍に登載され、その間に生まれた子供も同様である。そのため夫婦同姓の制度は戸籍制度と一体不可分である。つまり、姓(法律上は氏)は夫婦とその間に生まれた子供からなる家族共同体の名称という意味を持つ。別姓になれば、姓は共同体の名称ではなくなる[346]。制度として別姓を認めると氏名の性格が根本的に変わる。氏名は家族共同体の名称(姓・氏)に個人の名称(名)を加えたものだが、別姓を認めると、家族の呼称を持たない存在を認めることになり、氏名は純然たる個人の呼称となってしまう[346]、といった主張がある。
  • 現行法のもとでの結婚は、夫婦二人を基本単位として、それを中心に家族単位を形成するという思想に基づいている。この制度の下では、結婚離婚を決断するにはそれなりの覚悟を要する。例えば、離婚をすれば姓が変わる、結婚しないで子を産めば非嫡出子になる等の代償を払うことになるが、これらは子供を守るために夫婦を簡単に離婚を決断させないための心理的歯止め、社会としての防衛策になっている。そのため、低いハードルで容易に結婚や離婚が出来てしまう夫婦別姓は、婚外子の増加や離婚率の上昇に作用する恐れがある[350]、といった主張がある。
  • 日本戸籍制度は、国家が「個人を直接管理」するのではなく「家族単位で管理」するという原理に立ったものであり、「日本人の家族重視」の観念を前提にしたものである。姓名とは個体を分離するシステムであり、決して私事ではないし個体だけの所有物ではない。婚姻制度や戸籍制度を、単なる個人単位思想の観点からのみ見て不要と断ずるのは「人類は社会的動物である」という視点を欠いた一面的な見方である[352]、といった主張がある。

伝統に関する議論[編集]

伝統に関して以下のような議論がある。

  • 夫婦同姓(戸籍制度)は日本独自の伝統であり、他国の真似をする必要はない。日本人は国連権威や「世界がこうだから」「日本は遅れている」という風潮に流されやすいが、その国の伝統文化を踏まえた上で政策を判断すべきであり「遅れている、進んでいる」という問題ではない[353][354][355]、といった主張がある。
  • 日本は古来より母性原理が強く、八百万の神に守られた多神教社会であるため集団依存型の国民性である。しかし、これを無理に夫婦別姓が適用されている欧米のような父性原理が強く、一神教の中で罪と罰、善と悪、主体と客体などのように常に切断、分離していく個人独立型の社会にしていくと、適応できない者から順に家庭の崩壊を招く恐れがある[356][357][355]、といった主張がある。
  • 戸籍制度は今や日本でしか存続していない世界に誇れる伝統的かつ近代的、合理的な制度であり、家系の連続性・家族一体性を記し、先祖を敬いつつ自分たちの存在を次の世代に残していく日本民族の伝統である。それを選択的夫婦別姓の導入によって戸籍制度の終焉を迎えさせてしまうことは、多くの日本人アイデンティティを喪失させることにも繋がってしまう[358][346]、といった主張がある。
  • 賛成論の中には、中世北条政子日野富子などの例を出して「昔は別姓だった」「同姓制度などはつい最近出てきたことで、日本では本来は別姓だった」などの主張があるが、この2人の氏名は1960年代以降に教育界で使用されるようになった歴史用語であり、政子という実名も夫・源頼朝、父・北条時政の没後の叙位に際しての命名で、当時は尼御台などと呼ばれていた。女叙位以外に親の姓を女性に用いられることは少なく、夫婦別姓は一般の慣習では無かった。そもそも中世では母系制が布かれていたため、男女共に縦のつながりが強かった。これに対し、出自に関係なく今住んでいる家族との横のつながりを重視するようになって取り入れられたのが同姓制度であり、明治政府によってあるとき唐突に導入されたものではなく、家族の近代化の進展ともに家族成員の下からの意識変化として生まれたものである。1874年(明治7年)の左院議案と1875年(明治8年)の内務省案では夫婦同姓であったが、1876年(明治9年)の太政官指令で「婦女人二嫁スルモ仍ホ所生ノ氏ヲ用ユ可キ事」と夫婦別姓とすることに覆されてしまった。しかし、各府県が伺文で「嫁家(夫家)の氏を称するのは地方一般の慣行である」「民間普通の慣例によれば婦は夫の氏を称しその生家の氏を称する者は極めて僅かである」と訴え、1978年(明治11年)の司法省による民法草案では「婦ハ其夫の姓ヲ用フ可シ」と夫婦同姓制度に戻された経緯がある。これには、文明開化を急いで欧米の制度の導入をはかった影響もあると考えられるが、1881年(明治21年)の第一草案でも夫婦同姓とされており、理由書では「入嫁入夫の形態と夫婦同氏は我国の慣習であり、実態である」と記されている。明治民法施行前の1890年(明治23年)発刊の『女学雑誌』(242号)にも「凡そ夫あるの婦人は、多く其夫の家の姓を用い居る」と書かれてある。実際、当時婦人解放運動の先駆者であった岸田俊子景山英子も明治民法施行前に結婚してから自ら夫の姓を称している。一方で、家制度家父長制度とは必ずしも結びつくものではない。そのため、今後は実質的に夫婦が男性の姓を選ぼうが女性の姓を選ぼうが、誰も気にしないというように社会的な意識を変えていくように運動することが最も良い社会改革になるのではないか[359][360][361][362][350]、といった主張がある。
  • 賛成論の中には「夫婦同姓になったのはたった100年前であり、伝統ではない」などの主張があるが、ある観念が社会に定着するには100年は十分すぎる長さであり、今や日本人の意識の中に確固として根づいている[350]、といった主張がある。

社会生活的観点の議論[編集]

  • 夫婦別姓というと夫婦で納得すればいいと思いがちだが、別姓を選択した夫婦に子供が生まれた場合、子供は必ず片方の親と別姓になる。つまり夫婦のあり方や親の自由だけの問題ではなく子供の人権にも大きな影響を及ぼすことであり、簡単に「誰にも迷惑をかけない」と言い切れるような話ではない[363]。選択的夫婦別姓制度が導入されれば、子供が物心が付いて自分が片方の親と姓が違うと気付いた時に、ショックを受けトラウマになる恐れがある[345]。選択的夫婦別姓制度が導入されれば、親や兄弟と姓が異なることで孤独感が助長されることが懸念される[345]。選択的夫婦別姓制度が導入されれば、場合によっては成長した子供に両親どちらかの姓を選択を迫ることになり、子供が負担を強いられることになる[364]、といった主張がある。
  • 家族の呼称が廃止されることから夫婦の間に生まれた子供の姓(氏)をどうするのかという問題も生じる。夫と妻のどちらの姓を名乗るのか、どの時点で決めるのか、複数生まれた場合はどうするのか、さまざまな問題が生じてくる。そこに双方の祖父母が関わるため、さらに揉め事が多くなる[346]、といった主張がある。
  • 選択的夫婦別姓制度には子供の姓は最初に決めておくとなっているが、その取り決めはどの程度の拘束力を持つのか不明確であり、導入された場合「やっぱり子供を自分の姓にしたい」などという裁判が起こる可能性がある[365][366]。選択的夫婦別姓制度が導入されれば、夫婦が互いに譲らず子供の姓を決定できなかった場合、家族内で子供が微妙な立場になりかねない。別姓を導入した諸外国では夫婦が揉めた際、子供の姓を裁判で解決することがほとんどだが、司法の結論が出るまで子供の立場が揺らぐことに変わりない[367]。選択的夫婦別姓が導入されると、これから結婚するカップルだけではなく既婚夫婦にも別姓にする選択肢が与えられる。その場合、「やっぱり旧姓に戻したい」などと全国で同姓夫婦同士の喧嘩や裁判が相次ぐことが懸念される[368]、といった主張がある。
  • 賛成論の一部に、夫婦同姓であると結婚で一方の家名が無くなるとの議論がある。その多くが子供が1人といった場合に強く主張されたが、さらに次の世代()を養子にして家名を継がせればよく、どのみち孫が複数生まれなければ家名の継承者はいなくなる。そのため別姓での解決は不可能である。そもそも、夫婦別姓は家制度の打破を意味しているのに、保守的な意味で家名を残したいから夫婦別姓賛成というのは矛盾している[322][346]、といった主張がある。
  • 賛成派の中には自分は子供を産むつもりはないし養子をとる予定もないと主張する人がいるが、夫婦別姓賛成論者であった自民党野田聖子が50歳で妊娠して出産するなど、いつどんな形で自分が子供を持つことになるか分からない。この話題では常に子供のことを念頭に置いて考える必要がある[366]、といった主張がある。
  • 別姓の夫婦の家族は、それまでの家系が守ってきた「○○家の」に入れず、墓石にまで姓を併記したり個人の墓を新たに設けるなど手間が増える。さらに、その個人の墓を本人が死んだ後に誰が守っていくのかという問題もある[355]、といった主張がある。
  • 教育現場などでは姓の異なる兄弟が同じ学校にいた場合、教師や他の生徒が名前を呼び間違えてしまうことで、子供を傷付けてしまうことが懸念される[369]、といった主張がある。

個人の尊重・多様な価値観の尊重[編集]

  • 一般論としては社会の多様化は歓迎すべきではあるが、何でも「多様化」という言葉で正当化していては、そこで思考停止することになる。この問題を考える時には、直接影響を受けることになる子供からもっと話を聞くなどした方がよい[363]、といった主張がある。
  • 賛成論として、現行民法で夫婦は「夫又は妻の氏を称する」と規定しているが実際には96.1%が夫の姓を選んでいることを「実質的に女性が姓の変更を強いられており、正当化できない」とする議論があるが、10%前後いる養子による改姓はこの中からは除外されている。また、若いカップルが結婚の際に姓の選択をめぐって激論になったという話は少なく、もし女性から改姓をお願いされれば受け入れる男性も多いのではないか[338]、といった主張がある。
  • 賛成論として、「夫婦同姓制度が女性にのみ姓の変更を強要しているように感じ、もし『男女』が逆になった場合、男性も同じことを思うだろうと」主張する意見がある。しかし、明治時代日本人苗字を持つようになってから、ずっと一般的には男性の方が姓を変えるとなっていたとしたら結局同じことである。さらに、今でも「女性が変えないといけない」とは民法にも憲法にもどこにも書かれておらず、実際男性が変える場合も多くある。頭から「女性=弱者」と主張すること自体がおかしいのではないか[370]、といった主張がある。
  • 賛成論として、「選択的夫婦別姓は別姓にしたい人に選択肢を与えるだけであり、同姓にしたい人はそのままで結構なのだから、別姓を希望する者に自分たちの価値観を押し付けるべきではない」とする意見がある。しかし、選択的夫婦別姓を認めると、一つの戸籍の中に二つの姓(氏)が存在することになり、共通の姓(氏)は存在しなくなる。つまり、家族の呼称を持たない家族が存在することになる。これを制度として認めると個々人の姓(氏)はもはや家族の呼称ではなく、個人の呼称の一部となるため、家族の氏は廃止されるということになる。そうなれば、これは同姓を選んだ家族にも及ぶ問題となり、制度として家族の呼称としての姓(氏)が廃止されたのだから、同姓夫婦・親子にも家族の呼称はなく、氏名の一部が共通しているに過ぎないことになる。それゆえに、選択的夫婦別姓制度の議論は同姓を選択する人にも影響を及ぼす問題であるため、一国の制度のあり方として国民全員が議論しなければならない[329]、といった主張がある。
  • 賛成論として、「夫婦別姓反対を叫ぶ人たちには他人への寛容さが欠けており、それは自分なりの生き方を選ぶマイノリティに対する差別偏見である」とする意見がある。しかし、そう言われてしまうと誰も少数者の言うことに反論できなくなってしまい、このような議論の封殺は民主主義とは言えなくなってしまう。「自分なりの生き方を選びたい」と言っても、その生き方が他人や社会(いわゆる公共の福祉)にどういう影響を与えるかを考えなくて良いわけがない。反対論はそこのところを問題にしており、例えば離婚が増えるのではないか、家族の崩壊に拍車がかかるのではないか、子供への影響はどうか、等々である。こういう疑問に誠実に答えることをしないで、反対論を「不寛容」「個人の自由」と切り捨てても、反対論は無くならないであろう[371]、といった主張がある。
  • 賛成論として「家族の個人主義化」を要求するものや、家庭を築く夫婦が「個人の自由」「自己実現」「非拘束的な関係性を選択する自由」を持つことを要求するものがある。しかし、それらは子供のニーズよりも大人の性的・情緒的ニーズを重視するものであり、選択的夫婦別姓により「夫婦の自由」が保障されることと引き換えに「子供の不自由」が発生することを忘れてはいけない。個人の自由とは他人に迷惑をかけない範囲内で保障されるべきものであり、家族(配偶者・子供)を持つということは他人と関わりを持って社会集団を築くということであるため、(改姓によるパスポート等の諸手続きの煩わしさなど)自分の自由に一定の制約が発生することは避けられないことである。個人主義の主張は良いとしても、それを過度に認めた家族が結果的にどのような姿をもたらすのか、余りにも不明確である[372][373]、といった主張がある。
  • 60年代から70年代、アメリカ合衆国では個人主義の嵐が吹き、「フェミニズム」「家父長的な権威の否定」「性解放」「個人の満足を家族の福祉より優先させる風潮」などがアメリカ国内のあらゆる制度、人々の意識、価値までを根底から覆した。しかし、その変化がアメリカ人にとって望ましい社会を生み出したとは単純に言い切れない。アメリカでは個人主義のもとに、いとも簡単に結婚や離婚するカップルが多く、結婚したカップルのうち半数は離婚している。そしてその7割は3年以内に再婚し、更にその6割は再び離婚している。さらに毎年200万人の子供たちが自分の親の離婚に巻き込まれており、子供の6割が18歳になるまでに親の離婚を経験する。そして、その3人に1人は親の再婚・2度目の離婚を経験している。このような両親の離婚を経験した女性たちは、自身の結婚の際に夫と同姓になることを選択する傾向が増えている。そのため、日本がこれらの流れに追従する必要はない[372][374][375]、という主張がある。
  • 選択的夫婦別姓を導入しているフランスでは家族の個人主義を追求するあまり、家制度による拘束の拒絶どころか「結婚という制度それ自体が拘束ではないか」と考える男女が出始めている。彼らはそれゆえに結婚という制度を拒否してあえて「事実婚」という共同生活の形態をとっており、婚外子が日本よりも圧倒的に多くなっている。このような社会の流れは、夫婦が同姓になることで相手との結びつきを得ることよりも、「個」の自立と自由の方に天秤を傾けさせようとしている姿が伺える。そのため、日本がこれらの流れに追従する必要はない[372][376]、といった主張がある。
  • 本来夫婦というものは「われわれ」という連帯意識で最小単位の社会集団を構成し、相倚り相扶けあって世の荒波をくぐり抜けていくものである。しかし、個人主義を追求しすぎた国では「われ」に拘れば拘るほど「われわれ」は崩壊してしまっており、「われわれ」という意識がまず確保されなければ、「われわれ」という意識は最後まで確固たるものにはならない[372]、との主張がある。

その他の議論・代替案[編集]

夫婦創姓論・結合姓論[編集]

同姓制度と同様に「家族の姓を定めて名称夫婦・家族の一体性」を「夫妻平等」に実現するなら、夫妻とも氏を変えるべきではないか、あるいは反対に、選択的夫婦別姓制度は「旧姓にこだわりすぎた制度である」、「そもそも選択をみとめるならば、夫婦いずれかの姓以外の選択肢(創姓など)もみとめるべきではないか」といった反対意見や指摘があり、それらを解決するためのものとして、婚姻時などに新たに姓を決める夫婦創姓や、夫婦の旧姓を結合して姓とする夫婦結合姓を含めた制度が、選択的夫婦別姓制度に代わるものとして提案されてもいる[377]
なお、これらの論に対しては、選択的夫婦別姓論者が望んでもいない議論を起こす理由はない[310]、現実感の乏しい机上の空論である、家族名称に執着するのは時代遅れだ、標準的な核家族以外のいろいろな家族形態に対応できないのではないか、規制緩和の時代だ、実現は困難だ、別姓も例外的に認めてもよいのではないか[377]等の反論がある。

世界の氏名制度とその状況[編集]

国家別の状況を以下に示す。婚姻の際の氏についての法制度を大別すると、英米法では何の規制もなく個人の自由に委ね、ドイツ民法を輸入した国(日本トルコなど)では、かつては夫婦同姓が強制された。しかし、ドイツを含めて法改正された結果、法的に夫婦同姓を強制する国は日本だけである[7]

東アジア[編集]

日本の旗 日本
明治31年に施行された明治民法により「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」(民法750条)と規定されて以来、夫婦同氏である。それ以前は夫婦別氏が原則であった(明治9年太政官指令)。なお、国際結婚の場合は、夫婦同氏・別氏を選択することが可能である。
中華人民共和国の旗 中華人民共和国
1950年の婚姻法(1980年改正)において男女平等の観点から「自己の姓名を使用する権利」が認められ、夫婦双方が自己の姓名を用いることができる。これは相手方の家族の成員になった場合でも妨げられない。また夫婦自らの意志で夫婦同姓や複合姓(冠姓)を用いることもできる[378][295][379][380][381][382]。子供の姓は1980年婚姻法において両親のいずれかから選択することになり、2001年改正でより夫婦平等な文言になったが、漢民族の伝統によりほとんどの場合父の姓が使われる[383]
香港の旗 香港
香港では20世紀まで冠姓(一種の複合姓)も多かった。例えば政治家の陳方安生は本名が「方安生」で結婚時に夫の姓「陳」を追加している。
中華民国の旗 中華民国台湾
選択できるが、別姓が多い。その背景には、改姓する事は親を蔑ろにする事だと非難される社会風潮があるともいわれる。1985年民法において、冠姓が義務づけられていたが、当事者が別段の取り決めをした場合はその取り決めに従うとされていた[384]。その後1998年の改正で、原則として本姓をそのまま使用し、冠姓にすることもできると改められた。職場では以前から冠姓せず本姓を使用することが多かったという[385]。子供の姓は、原則的に父系の姓が適用されていた(入夫の場合は逆)が、1985年の改正で、母に兄弟がない場合は母の姓にすることもできるようになった。この結果、兄弟別姓が可能である[386]。これも男女平等原則の違反とされ、2008年戸籍法改正で父の姓か母の姓か両親が子供の姓を合意し、両方の署名を入れ役所に提出することとなった。合意に至らない場合は役所が抽選で決める[387]
韓国の旗 韓国
男女問わず婚姻後もそれぞれの父系名を名乗る父系制のため夫婦別姓である。子に関しては、原則的に父親の姓を名乗っていた。しかし、2005年改正により、子は、父母が婚姻届出の時に協議した場合には母の姓に従うこともできるようになった[388][389]。なお、古代の律令制導入以来からあった、日本と同様の戸籍制度は、2008年血統主義に立脚した正当な理由のない制度であるとして廃止されている[390]

南アジア・東南アジア・北アジア[編集]

インドの旗 インド
地域・宗教によって様々な習慣があり、ヒンズー教徒は夫婦同姓とするとされている[199]。しかし、結婚時の姓に関する厳密な法律的な規定は存在しない[391]。一方、氏名を自由に変更することが可能である[391]。なお、マハーラーシュトラ州では、婚前の姓をそのまま名乗ってよいことが2011年に明文化されている[392]
タイ王国の旗 タイ
1913年の個人姓名法により国民全員が名字(姓)を持つことが義務化された。同12条では妻は夫の姓を用いると定められていたが2003年にタイの憲法裁判所は「夫の姓を名乗るとする条項は違憲である」との判決[393]を出し、2005年に同12条が改正された。現行の同12条では夫婦の姓は合意によりいずれの姓を選ぶことができ、またそれぞれの旧姓を選ぶことも可能となった[394]
ベトナムの旗 ベトナム
父系名を名乗り、夫婦で異なる。
フィリピンの旗 フィリピン
法律では、結婚時に女性側は、自分の姓を用い続け相手の姓をミドルネームとして加えるか、相手の姓を用いるか、相手のフルネームにMrs.をつけるか、を選ぶことが可能、とされていたが、2010年に、裁判所は、女性の権利を守る観点から、これらに加えて、相手の姓を用いず自分の姓のみを用い続けることも可能、との判断を下した[395]
モンゴル国の旗 モンゴル国
家名にあたる名は存在しないが、氏族名が姓に近い役割を持つ。しかし名前の表記としては個人名と父親名を併記する(父親名は当然、夫婦間で異なる)。

南北アメリカ・オセアニア[編集]

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
州によって制度が異なる[396]。同姓、複合姓、別姓が可能。法律上は氏の変更はせず、事実上、夫婦同姓を名乗ることが多いとされる。仕事上の都合などにより女性が特定の場所では婚姻前の姓をそのまま名乗っていたり、元々の姓をミドルネームのように加え名乗る場合もあれば、家庭関係では同姓の場合もある。また、同性同士の結婚においては互いの姓のままであることが多い。
ジャマイカの旗 ジャマイカ
慣習では夫婦は同姓である[199]が、法で規定されているわけではないため、姓を変更せずに結婚することもできる[397]
ニュージーランドの旗 ニュージーランド
伝統的には男性の姓を名乗ることが多いが、法的には、別姓、結合姓、同姓いずれも可能である[398]
オーストラリアの旗 オーストラリア
別姓、結合姓、同姓いずれも可能である。さらに、氏名の変更も比較的容易に可能である[399]

西ヨーロッパ[編集]

イギリスの旗 イギリス
法的には規定がなく、同姓・複合姓・別姓を用いることができる。夫の氏を称するのが通例[396]
フランスの旗 フランス
法的には規定がない。近代化に伴い、人民管理が容易となる「氏名不変の原則」が唱えられるようになり(それまでは明治以前の日本と同様、随時、氏を変えることは禁止されていなかった)、婚姻によって姓が強制的に変わることはない(別姓)。但し、妻は夫の姓を称する権利も持つとされ、慣習的には妻は夫の姓を名乗るが、従前の姓を名乗る例も増加している。また相手の姓を加えることもできる[400]。また、父母が別姓の場合には、子どもの姓は父か母の姓を選ぶことができる[10]
ドイツの旗 ドイツ
婚姻時に夫婦の姓を定める。定めない場合は別姓となる。伝統的に家族名としての姓を用い、日本の夫婦同姓のお手本になったとされるが(1957年までの条文は、妻は夫の氏を称するとされており、明治民法案はそれと全く同じ。)、1957年、妻が出生氏を二重氏として付加できるとする改正が行われた。次に、1976年の改正では、婚氏選択制を導入し、婚氏として妻の氏を選択する可能性を認めたが、決定されない場合は夫の氏を婚氏とするとされた。しかし、連邦憲法裁判所1991年3月5日決定が両性の平等違反としてこの条文を無効とし、人間の出生氏が個性又は同一性の現れとして尊重され保護されるべきことを明言した。その結果、1993年の民法改正で[401]、夫婦の姓を定めない場合は別姓になるという形で選択的夫婦別姓となった。子供に関しては、親権が父母それぞれにある場合には、どちらの姓とすることも可能であるが、子供一人ごとに姓を変えることはできない。婚姻で姓を変更して後離婚・死別した場合には、旧姓に戻す選択肢の他、旧姓を婚氏に加える二重氏を選択することもできる[402]
オーストリアの旗 オーストリア
2013年までは、原則として夫または妻の氏(その決定がない場合は夫の氏)を称する(同氏)。自己の氏を後置することもできる[396]、とされていたが、2013年4月以降、婚前に特に手続きしないかぎり原則として婚前の氏を保持する、と変更された[403][404]。夫の氏に変更、あるいは複合姓を選択するためにはそのように婚姻前に手続きを行わなければならない[404]
スイスの旗 スイス
2013年以前は、夫の氏が優先。正当な利益があれば、妻の氏を称することもできる(同氏)。自己の氏を前置することもできる[396]、とされていたが、2013年以降、婚前に特に手続きしないかぎり原則として婚前の氏を保持する、と変更された。配偶者の氏に変更、あるいは複合姓を選択するためにはそのように婚姻前に手続きを行わなければならない[405]
オランダの旗 オランダ
夫の氏は不変。妻は夫の姓(同姓)または自己の姓(別姓)を称する。妻は自己の姓を後置することもできる[396]。社会的には家族名としての姓を用い、夫婦で統一されることが多い。
イタリアの旗 イタリア
1975年までは、婚姻時に妻が夫の姓に改姓する、という民法の規定が存在していた[注 10]が、1975年に民法が改正され、それ以後は別姓および結合姓が認められている[407]。子の姓に関しては、法的な規定はないが、これまで慣習法として父親の姓としていた。これに対し、母親の姓を子の姓として選択できるようにするべき、との判決が2014年に欧州人権裁判所において出され[408]、2015年現在、法改正へ向けて動いている[409]。なお、イタリアは極めて離婚が少ない国として知られている[410]
スペインの旗 スペイン
個人の名は、一般的には「名、父方の祖父の姓、母方の祖父の姓」であるが、1999年に「名、母方の祖父の姓、父方の祖父の姓」でもよい、と法律が改正された。婚姻によって名前を変える必要はないが、女性はその他の選択肢として「de+相手の父方の姓」を後置する、「母方の祖父の姓」を「相手の父方の姓」に置き換える、「母方の祖父の姓」を「de+相手の父方の姓」に置き換える、などの選択が可能である[411]
ポルトガルの旗 ポルトガル
個人の名は「名、母方の祖父の姓、父方の祖父の姓」である。婚姻によって姓の変更する必要はないが、従来の姓に相手の姓を加えるか、婚姻前の姓のうちの1つに相手の姓を加えるかのいずれかを選ぶこともできる。2011年の時点では、既婚女性の60%が婚前の姓をそのまま用いている[412][413]

北ヨーロッパ[編集]

スウェーデンの旗 スウェーデン
以前は父姓に統一するのを原則とし、例外的に別姓とする慣習法があったとされるが、1982年に同姓・複合姓・別姓が選択できることが明文化された婚姻法が施行された。日本で提案されている制度に近い制度とする主張もあるが、複合姓も認められているので異なる。
デンマークの旗 デンマーク
同姓・別姓の選択は全くの自由(1980年明文化)。
アイルランドの旗 アイルランド
父の名前に息子あるいは娘を表す語尾をつけたもの(父称)を姓として用いるのが伝統であったとされるが、親の姓を用いる(別姓)ことや夫婦で同姓になることもできるよう制度改正が行われている。

東ヨーロッパ[編集]

スラブ圏
個人の名は、名+父称+姓となる。父称は父親の名を用いて〜の息子、〜の娘という意味を表す。姓は夫婦で統一することが一般的。但し男性形と女性形で語尾が異なるため、結果的に表記や発音のうえでは異なる(例:姓がПавловであれば夫や男性家族はパブロフ Павловとなり、妻や女性家族はパブロワ Павлова)。
Flag of Russian SFSR.svg ソビエト連邦ロシア共和国ロシアの旗 ロシア
1924年政令において登録婚でも夫婦同姓の義務がなくなり、1926年の「婚姻・家族・後見法法典」において同姓(夫又は妻の姓)、別姓(婚姻前の姓の保持)の選択が可能になった。但し結合姓は廃止された。この時の家族法は事実婚を大幅に認める「事実婚主義」のものであった。しかし1944年法令において事実婚が否定され、登録婚主義となったが、姓については従前通りであった。44年のこの改正は、戦争中の困難に対し、家族の強化と母子の保護を目的とするものであった[414]1995年家族法典では同姓、別姓、結合姓が選択できる(第32条1項)[415]。また、14歳以上であれば、姓も名前も父称(ミドルネーム)も自分の意思で変更可能である[416]
ポーランドの旗 ポーランド
婚姻後の姓はどちらかの姓に統一しても良いし(同姓)、変えなくても良い(別姓)し、婚姻前の自分の姓の後に結婚相手の姓をつなげても良い(別姓、複合姓)[417]。ただし複合姓にする場合、3つ以上の姓をつなげてはいけない[418](1964年)。同じ姓でも男性形と女性形で活用語尾が異なることがあるのは上記の通りスラブ語圏共通である。

中東[編集]

トルコの旗 トルコ
かつては同姓のみだったが、2001年の法改正により女性の複合姓も認められるようになった[419]。さらに、2014年には、最高裁において婚前の姓のみを名乗ることを認めないことは憲法違反、と判決が下された[420]
サウジアラビアの旗 サウジアラビア
姓名は出自を表す意味があり生涯不変が原則であるため結婚や養子縁組などによって姓が変わることは無い。生まれた子供は原則として父親の姓を名のる。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 各国の姓のありようについては項目「世界の氏名制度とその状況」および英語版の「Family name」を参照。
  2. ^ ただし、民主党政権時には連立政権を組んだ国民新党の反対や党内からの異論があり法案提出には至らなかった[46][118]
  3. ^ これについては、政教分離の面から、神道政治連盟国会議員懇談会といった宗教に関連した団体に属する議員や大臣が、その宗教の意向を政策の根本において選択的夫婦別姓の制度について論ずることには問題がある、との指摘がある[130]
  4. ^ 厚生労働省の2014年の調査で96.1%[158]
  5. ^ パスポートは必要な事情がある場合には旧姓を括弧書きで付記することが認められることがある[246]が、パスポートに旧姓を表示した場合でも、ICチップには旧姓名は入らない。そのため、旧姓での航空券の自動発券機等の利用ができない場合がある[211]
  6. ^ さらに、法律婚における配偶者への遺産分割や遺贈の場合は税額の軽減がある[264][265]
  7. ^ なお、生命保険の受取人や住宅ローンについては、会社によるものの、住民票における続柄に「妻(未届)」「夫(未届)」を記載する等、条件によっては可能となる場合がある[267][263]。ただし、単身赴任などで住民票を同一にできない場合にはこの方法を取ることもできない。
  8. ^ これに関連しては、家父長制度、父権制あるいはそれに準じる意識がDVの原因となっているとの研究や指摘がある[280][281][282][283]
  9. ^ 現存する日本最古(世界最古)の戸籍『半布里戸籍』(正倉院所蔵)も、庶民の戸籍が夫婦別姓で記録されている[302]
  10. ^ ただし、この規定については、1961年の最高裁判決で、「妻は婚姻で本来の姓を使用する権利を失うのではなく、夫の姓を使用する権利を得る」と解釈されており、1975年以前も実質的に夫婦別姓が可能だった[406]

出典[編集]

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参考文献[編集]

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  • 大藤修『日本人の姓・苗字・名前:人名に刻まれた歴史』吉川弘文館、2012年
  • 鎌田明彦『夫婦創姓論―選択性夫婦別姓論に代わるもうひとつの提案』マイブック社、2007年
  • 後藤みち子『戦国を生きた公家の妻たち』吉川弘文館、2009年
  • 坂田聡「中世の家と女性」『岩波講座日本通史第8巻中世2』岩波書店、1994年
  • 坂田聡『苗字と名前の歴史』吉川弘文館、2006年
  • 新田一郎「中世」『新体系日本史2 法社会史』山川出版社、2001年。
  • 二宮周平『事実婚を考える―もう一つの選択』日本評論社、1991年
  • 日本弁護士連合会編『今こそ変えよう!家族法―婚外子差別・選択的夫婦別姓を考える』日本加除出版、2011年
  • 長谷川三千子 (他) 『ちょっとまって!夫婦別姓』日本教育新聞社、1997年
  • 久武綾子『氏と戸籍の女性史:わが国における変遷と諸外国との比較』世界思想社、1988年
  • 久武綾子『夫婦別姓—その歴史と背景—』世界思想社、2003年
  • 民法改正を考える会『よくわかる民法改正―選択的夫婦別姓&婚外子差別撤廃を求めて』朝陽会、2010年
  • 森謙二「家(家族)と村の法秩序」『新体系日本史2 法社会史』山川出版社、2001年。
  • 八木秀次宮崎哲弥 (編) 『夫婦別姓大論破! 』洋泉社、1996年

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

推進論・肯定論[編集]

反対論・慎重論[編集]

中立的資料[編集]