個人番号
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個人番号 | 法人番号 | |
---|---|---|
指定する機関 | 市区町村長 | 国税庁長官 |
指定を受ける対象 | 市区町村の住民(個人) | 国の機関・法人・団体 |
桁数 | 12桁 | 13桁 |
利用範囲 | 社会保障・税・災害対策などに限定 | 自由 |
開示 | 利用範囲外の開示禁止 | 全面公開 |
個人番号(こじんばんごう)とは、個人の識別番号として、日本において「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(番号法[1])」に基づき、各市区町村から住民に指定される12桁の番号である。
個人番号は、市区町村長が住民票を持つ人に付番する12桁の番号であり、社会保障、税、災害対策の3分野で情報を効率的に管理し、複数の機関が保有する個人の情報が同一人の情報であることを確認する為に使われる。個人番号単体では持ち主が設定したパスワードのため悪用出来ない。そのため、個人番号の数字だけが知られただけでは悪用されない[2]。 2015年10月5日から、個人番号の指定が始まり、2016年1月からは、行政手続における個人番号の利用が開始された。全国ネットワーク化させた住民基本台帳である住基ネットが全国で地方自治体職員・住民が同姓同名同年齢同市町村内でも情報を別の人として確認出来る利便化にあったのに対して、個人番号制度はそれを土台として、社会保障・税など利用限定的なものの他国の識別番号により近い制度となっている[3]。
なお法人や団体などには、個人番号の代わりに番号法に基づき法人番号が指定される[4]。法人番号には利用目的の制限はない。
名称[編集]
「個人番号」が法律上の正式名称[5]。番号法第2条第5項の規定に基づく用語である(「個人番号カード」の用語は同条第7項に拠る)。
通称は「マイナンバー」で、2015年(平成27年)10月現在、日本国政府が「マイナンバー」の商標権を保有している[注 1]。
個人番号および法人番号を徴税、社会保障などの手続に使用する制度を、社会保障・税番号制度[6]、マイナンバー制度[6]、または共通番号制度[7]といい、番号法に規定されている。英字の頭文字をとって「MN」とも[8]。
名称決定の経緯[編集]
番号制度の検討段階では、番号は「国民ID」や「共通番号」と呼ばれていた。当時、「マイナンバー」という名称は、NTTグループが「ひかり電話 追加番号サービス」の商標として使っていた。2020年現在も使用中。
日本国政府は、2011年(平成23年)2月から3月にかけて「共通番号」に付ける名称を公募した[9]。807件の応募の中からの選考を経て、「共通番号」の名称は「マイナンバー」に決まったと番号制度創設推進本部が2011年(平成23年)6月30日に公表した[10][11][12]。
この「共通番号」・「マイナンバー」は、法案の検討段階で「個人番号」と表現されるようになった[13]。そして、法令では「個人番号」の用語が使用されたため、これが正式名称となった。
外国語訳[編集]
個人番号は、住民票を持つ在日外国人にも指定されることから、日本国政府は日本語のほか、26の言語で個人番号に関する情報を提供している。
付番の対象[編集]
個人番号の指定を受けるのは、日本の市区町村に住民票がある住民(個人)全員である[14]。これには日本国民[注 2]と外国人[注 3]の両方が含まれる。
日本国民[編集]
日本国籍のうち、個人番号の指定の対象外なのは、2015年(平成27年)10月5日以降、一度も日本の市区町村の住民票に記録されたことのない在外日本人である(同日前から引き続き海外に在住、または、同日以降に海外で出生し、そのまま海外に在住)。この場合、帰国して日本の市区町村のいずれかに転入届を出した際に、個人番号の指定を受ける。
また、日本国民のうち「戸籍法の適用を受けない者」は、日本国内に居住していても、個人番号の指定の対象外である[15][16]。天皇・皇族がこれに該当する。
外国人[編集]
次の4類型のいずれかに該当する在日外国人は、個人番号の指定を受ける[17]。
日本に住所を置く外国人のうち、「外交」の在留資格で在留する外国政府の駐日大使館・領事館に勤務する特命全権大使や特命全権公使や外交官とその家族、「公用」の在留資格で在留する在日米軍の軍人とその家族などは、個人番号の指定の対象外である[18]。
番号の構成[編集]
個人番号のn桁目(先頭が12桁目) | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
12 | 11 | 10 | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
住民票コードから生成される11桁 | 検査用数字 |
個人番号は数字12桁である。これに対して住民票コードは11桁、法人番号は13桁であるので、桁数によって個人番号、住民票コード、法人番号を区別することができる。
個人番号12桁の途中に、ハイフン(-)やコンマ(,)やスペース( )を置く決まりはない。個人番号カードでは「1234 5678 9012」のように4桁ごとにスペースを挟んで印刷されている[19]。また、申告書類の記入枠でも4桁ごとに区切られている[20]。
個人番号の12桁のうち、左側の11桁は、住民票に記録されている住民票コードの変換により得られる番号である[21]。住民票コードそのものを個人番号としない理由について、内閣官房は「『住民票コード』はもともと今回のような利用を想定しておらず、運用の大幅な改変が必要になることや、パブリックコメントの多数意見が『新しい番号の利用』だったこと、等」[22]と説明している。11桁の住民票コードを個人番号中の11桁の数字に変換するための変換式は公開されていない。個人番号からその元になった住民票コードを復元することはできない[23]。
個人番号の末尾の1桁は、検査用数字であり[21]、左側の11桁に基づいて計算される。左側の11桁から検査用数字を計算する方法は公開されている[24][25]。
各人の個人番号は、ほかの誰の個人番号とも異なる[23]。結婚、転居などで個人番号が変わることはない。また司法での親子関係不存在確認などによる無戸籍状態化および就籍でも個人番号は変わらない。
個人番号が情報漏洩して、不正使用のおそれがある場合に限り、従前の番号を廃止し、新たな個人番号の指定を受けることができる[26]。住民票コードは不正使用のおそれがある場合に限らず、本人の請求により変更できるが[27]、住民票コードの変更と個人番号の変更は互いに影響しない。
個人番号と個人の属性(氏名・住所・本籍地・性別・生年月日など)との間に関係はない。よって、個人番号の解析により持ち主の属性が明らかになることはないし、住所・性別・生年月日などに基づいて個人番号が推測されることもない。この点、戸籍地・性別・生年月日などを基に構成される、中華人民共和国における公民身分番号、大韓民国における住民登録証の住民登録番号とは異なっている。
番号の指定方法[編集]
個人番号の指定を受けるために、本人による手続(申請など)は不要である。個人番号の指定と通知は市区町村長が住民基本台帳(住民票)の記録に基づいて職権で行う。
同じ個人番号を複数の人に対して重複指定することがあってはならない。そのため、各人に対して指定する番号の生成は、日本全国の都道府県・市区町村が共同で運営する地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が一手に引き受けている。具体的には、市区町村の端末から住民の住民票コードをJ-LISのコンピュータシステムにオンラインで送信すると、J-LISのサーバがその住民票コードに対応する番号をコンピュータによって決定し、市区町村のコンピュータ端末に返信する[28][29][30]。市区町村は、J-LISのシステムから受信した番号を、住民の個人番号として指定し、その住民に通知する[14]。
よって、住民本人や市区町村の職員が、その住民の個人番号とする番号を、恣意的に選ぶことはできない。個人番号が情報漏洩して、不正に用いられるおそれがある場合は、住民本人からの請求または市区町村長の職権により、個人番号を変更することになっているが[26]、この場合も、新しい個人番号はJ-LISのサーバがランダムで決定し、J-LISの職員や住民本人や市区町村の担当者に、選択の余地はない。
番号の調べ方[編集]
自分の番号[編集]
自分の個人番号は、次の4種類に記載されている。
- 2020年(令和2年)5月24日以前に、住民票がある市区町村から、世帯主宛に送付された「通知カード」[14]
- 2020年(令和2年)5月25日以降に、住民票がある市区町村から、送付された「個人番号通知書」[31]
- 本人の希望により「通知カード」と引き換えに発行された「個人番号カード」[32]
- 個人番号入りの住民票の写し[33]
また、個人番号は、「保有個人情報開示請求制度」を利用することによっても知ることができる[34]。
他人の番号[編集]
税(源泉徴収)、社会保障、災害対策に関する事務のために他人の個人番号が必要な場合は、利用目的を明示して、本人または本人以外から個人番号の提供を受けることができる[35]。自分と同一世帯の人の個人番号を収集することは、他人には当たらず差し支えない[36]。
収集可能な者[編集]
第十五条 何人も、第十九条各号のいずれかに該当して特定個人情報の提供を受けることができる場合を除き、他人(自己と同一の世帯に属する者以外の者をいう。第二十条において同じ。)に対し、個人番号の提供を求めてはならない。
第二十条 何人も、前条各号のいずれかに該当する場合を除き、特定個人情報(他人の個人番号を含むものに限る。)を収集し、又は保管してはならない。
決められた場合以外に個人番号を他人に教えたり、他人に個人番号の開示を求めたり、他人の個人番号を収集したりすることは禁じられている(番号の持ち主本人の同意があっても不可)[37]。
個人番号利用事務等実施者は、個人番号利用事務等を処理するために必要があるときは、本人又は他の個人番号利用事務等実施者に対し個人番号の提供を求めることができる(第14条)。
- 個人番号利用事務等実施者(第14条)
-
- 個人番号利用事務
- 行政機関、地方公共団体、独立行政法人等その他の行政事務を処理する者
- 個人番号関係事務
- 第九条第三項(本人又はその代理人が個人番号利用事務等実施者に対し、当該本人の個人番号を含む特定個人情報を提供する)の規定により、個人番号利用事務に関して行われる他人の個人番号を必要な限度で利用して行う事務
- たとえば雇用主は、税務署に提出する法定調書において、雇用者の個人番号を記載するために番号を求める
本人確認の方法[編集]
![]() 個人番号カード |
もしくは | 個人番号が記載された住民票の写し + ![]() 写真付き公的身分証明書 (運転免許証,パスポートなど) |
第十六条 個人番号利用事務等実施者は、第十四条第一項の規定により本人から個人番号の提供を受けるときは、当該提供をする者から個人番号カードの提示を受けることその他その者が本人であることを確認するための措置として政令で定める措置をとらなければならない。
他人の個人番号を使って他人になりすますことを防ぐために、個人番号の持ち主本人から番号を収集する際には、顔写真付身分証明書などによる「身元確認」と、通知カードまたは個人番号カードなどによる「番号確認」の、2つの本人確認が必要である[38][39][40]。
番号の利用[編集]
利用方法[編集]
個人番号の提供が求められる例は、以下のようなものがある。なお、これらの中には個人番号が原則として必要とされているものの、記載せずとも手続きを進めることは可能な例や、個人番号を記載することで添付書類の省略が可能となる例が存在する。
- 税金
- 金融機関
- 保険と年金
- 障害者手帳の申請・更新時[要出典]
- 生活保護の申請(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第19条1項1号)[51]
- 公営住宅への入居申込み[52]
情報提供ネットワークシステム(マイナポータル)[編集]
情報提供ネットワークシステム(マイナポータル)は、マイナンバーのポータルサイトで、2017年(平成29年)7月18日に試用開始、2017年(平成29年)11月13日より本運用[53]が開始された。
マイナポータルにて利用できる内容は、以下を参照されたし。
- 自己情報表示。
- 利用できる行政サービスの通知。
- 税金などの支払い。
- 各種書類の受け取り。
- ログイン時点の最新情報表示(プッシュ通知もあり)。
- マイナンバーカードの受け取り時に登録したパスワードの変更(変更対象は、利用者証明用電子証明書、署名用電子証明書、券面事項入力補助用の3種類。変更後のパスワードそのものは、個人番号カードのICチップ内には登録されない[要出典])。
利用範囲[編集]
利用範囲は、第九条の以下別表第一として定められる。

効果[編集]
日本国政府は、個人番号(社会保障・税番号制度)を導入すると次の効果があると説明している[55]。
- 「より正確な所得把握が可能となり、社会保障や税の給付と負担の公平化が図られる」
- 「社会保障や税に係る各種行政事務の効率化が図られる」
- 「ITを活用することにより添付書類が不要となる等、国民の利便性が向上する」
以下のような具体的な効果も指摘されている。
- 番号法の施行によって、自治体(都道府県知事等)は生活保護の受給実態をマイナンバーで把握できるようになった。それにより、「複数の自治体から重複して受給する」など不正に生活保護を受けることが困難になった。
- 番号法の施行以前に生活保護や税務調査など、行政の職員が預貯金や資産を調査する場合、従来は住所・氏名・年齢・性別の基本4情報を元に本人確認を行なっていたが、番号法の施行により、従来の基本4情報に合わせて個人番号による本人確認を行うことが可能になった。これにより、引っ越しによる住所変更で本人確認ができないケースなどが低下すると考えられている[56]。
- 洪水などの激甚災害に見舞われ、通帳やキャッシュカードが手元からなくなってしまった場合や金融機関が破たんした場合、疫病や経済危機などによって全国民へ給付金を支給する必要が生じた場合など、全ての預貯金口座に個人番号が紐づけられれば、円滑に預貯金を払い戻したり、速やかに給付金を支給することなどが可能になるとの指摘がある[56]。しかしながら、預貯金口座への個人番号の付番については2020年11月時点で任意である。
番号の通知[編集]
個人番号通知書[編集]
2020年(令和2年)5月25日以降、市区町村から住民への個人番号の通知は「個人番号通知書」によって行われる。個人番号通知書は、後述の「通知カード」と異なり、個人番号を証明する書類には当たらない[31]。
「個人番号通知書」を紛失した場合、再発行は行われない[31]。
通知カード[編集]
2020年(令和2年)5月24日まで、市区町村から住民への個人番号の通知は、通知カードの送付によって行われていた[14][57]。新規発行や再交付の終了後においても、現存する通知カードは券面上の記載事項に変更がない限りは、個人番号を証明する書類として使用することが可能である[31]。 また、個人番号カードの申請は引き続き可能である[31]。
この通知カードは「個人番号カード」の交付を受ける際に、市区町村に返納する必要がある[31]。
通知カードは、運転免許証、キャッシュカードと同じ大きさの紙で[58][59]、偽造防止のため、国立印刷局が印刷した透かしが入る[60]。通知カードを偽造すると、すき入紙製造取締法違反で罰せられる。
通知カードのオモテ面には個人番号・氏名・住所・性別・生年月日などが印刷される[58]。通知カードには、持ち主の証明写真や住民票コードは掲載されないし、ICチップは入らない。後述の「個人番号カード」とは異なり、通知カードにあらかじめ決められた有効期限はない。また、個人番号カードとは異なり、身分証明書としての利用は出来ない。
2016年には、通知カードを、住民票に記載されている住所に、日本郵便の簡易書留で発送をしたものの、尋ね所無しや受取人が引き取らないなどで、通知カードが役所に返送される事態が起き、発送した市区町村では通知カードの保管場所に苦慮した[61]。また、総務省は当時、通知カードの保管期限を明確にしていなかった為、平成28年10月時点で約170万通が差出人に届かず、保管場所が無いなどの理由により、通知カードを破棄する地方公共団体も出た[62]。
個人番号カード[編集]


個人番号カードは、希望する住民に対して、作成されるICカードであり、交付手数料は、当面の間無料である[63]。個人番号カードの交付を受ける際、「通知カード」や「住民基本台帳カード」の交付を受けている場合は市区町村へ返納する必要がある[31]。住民基本台帳カードの後継となるもので、個人番号を証明する書類をはじめ、公的な身分証明書や、様々な行政・民間サービスを受けることができるICカードとして利用することができる[32]。通称マイナンバーカード[32]。
個人番号カードは運転免許証、キャッシュカードなどと同じ大きさのプラスチックカードである(ISO/IEC 7810 ID-1規格)[64]。個人番号カードのオモテ面には、氏名・住所・生年月日・性別・カードの有効期限などが印刷され、本人の顔写真が掲載される。裏面には、個人番号・氏名・生年月日が印刷される。
個人番号カードはICカードであり、カードに埋め込まれたICチップには、券面記載事項のほか、住民票コードが記録される[65][66]。住民基本台帳カードと同様、ICチップに公的個人認証サービスの電子証明書が記録できる[67]。ICチップの記録の読み出しのために、4桁の暗証番号が設定される[68]。
個人番号カードには有効期限がある[69]。20歳以上の日本国民の場合、発行後10回目の誕生日までが有効期間である[70]。
個人番号通知書 | 通知カード | 個人番号カード | ||
---|---|---|---|---|
保有者 | 住民票へ登録されたもの | 個人番号カードの 保有者以外 |
希望者 | |
交付方法 | 住民票上の住所へ 簡易書留で郵送 |
住民票上の住所へ 簡易書留で郵送 |
窓口で本人確認・手交 | |
発行手数料 | 無料 | 無料 | 無料[71] | |
有効期限 | なし | 2020年5月24日 | 発行後10回目の誕生日まで(未成年者は5回目まで) | |
ICチップ | なし | なし | あり | |
身分証明書としての効力 | なし | なし | あり | |
個人番号を証明する書類としての効力 | なし | あり(別途本人確認が必要) | あり | |
記録 される 情報 |
個人番号 | あり | 券面のみ | 券面・ICの両方 |
氏名 | ||||
外国人の通名 | ||||
生年月日 | ||||
住所 | なし | |||
性別 | ||||
カード等の
有効期限 |
なし | なし | ||
顔写真 | ||||
住民票コード | ICのみ | |||
公的個人認証の証明書 | ||||
点字 | 券面(希望者のみ) | |||
SPコード | あり | あり | なし |
システム改修[編集]
住民基本台帳ネットワークシステムは、従来の基本4情報(氏名・住所・性別・生年月日)と住民票コードに加えて、個人番号を管理するよう改修が行われた[72][73]。地方公共団体において、個人番号制度の運用のためには住民基本台帳ネットワークシステムの利用が前提になる。
住民基本台帳ネットワークシステム稼働時から非接続だった福島県東白川郡矢祭町は、個人番号制度へ対応するため、2015年(平成27年)3月30日に住民基本台帳ネットワークシステムに接続した[74]。
歴史[編集]
日本において、日本国政府が国民に付けた番号を、行政の様々な分野で利用しようという議論は、過去に何度もあった。しかし、税務分野で利用できる番号は、長年実現しなかった。
昭和[編集]
1970年(昭和45年)、政府は「各省庁統一コード研究連絡会議」を設置し、「省庁統一個人コード」の研究を開始した[75]。当時、1971年(昭和46年)末までに全国民に「省庁統一個人コード」を付与することを計画したが、議論は立ち消えとなった[75]。議論のスタートは、世界の銀行間決済を一気にオンライン化するプロジェクトに並行していた。
第1次大平内閣の政府税制調査会(小倉武一会長)が1978年(昭和53年)12月に提出した答申では、少額貯蓄非課税制度に関連し「利子・配当所得の適正な把握のため、いわゆる納税者番号制度の導入を検討すべきである」という意見を紹介しつつ、結論は出さなかった[76]。また、翌年の答申では「現時点においては、納税者番号制度を導入するために十分な環境整備が行われているとは言い難い」という認識が示された[77]。
1988年(昭和63年)2月、政府税制調査会に「納税者番号等検討小委員会」が設置され、この小委員会は同年12月に報告書を公表した[78]。また1989年(平成元年)2月には、関係14省庁の担当者からなる「税務等行政分野における共通番号制度に関する関係省庁連絡検討会議」が発足した。1994年(平成6年)には自治省が「住民記録システムのネットワークの構築に関する研究会」を設置した[75]。この研究会では、住民票コードの納税者番号制度への利用についての検討も行われた[75]。
平成以後[編集]
1997年(平成9年)1月、厚生省は10桁の基礎年金番号を導入した。
1999年(平成11年)、小渕内閣が第145回国会に提出した住民基本台帳法の改正案が成立した[79]。この改正法の施行により、2002年(平成14年)8月から、住民基本台帳ネットワークシステムが稼働し、住民票に11桁の住民票コードが付けられた。
2007年(平成19年)年金記録問題が発覚し、これ以降社会保障制度をめぐる議論が活発になった。
2009年(平成21年)6月に麻生内閣が決定した「経済財政改革の基本方針 2009」には「社会保障番号・カード(仮称)を2011年(平成23年)度中を目途に導入する」ことが明記された[80]。しかし、麻生内閣はこれを実現しないまま衆議院を解散した。
民主党は、2009年(平成21年)夏の第45回衆議院議員総選挙で勝利を収め、政権の座に就いた。同党が掲げた選挙公約の一つが「所得の把握を確実に行うために、税と社会保障制度共通の番号制度を導入する」であった[81]。番号制度は、民主党と関係の深い日本労働組合総連合会(連合)が最重要課題に位置付けていたものであった[82]。
2012年の三党合意にて社会保障制度改革推進法が成立、その第5条2では「年金記録の管理の不備に起因した様々な問題への対処及び社会保障番号制度の早期導入を行うこと」と定められた。
政府・与党内の検討を経て、2012年(平成24年)、野田内閣が番号制度関連3法案を第180回国会に提出した[83]。しかし、この法案は同年の近いうち解散により廃案となった[83]。
法案成立[編集]
同年の第46回衆議院議員総選挙後に誕生した第2次安倍内閣は、2013年(平成25年)、番号制度関連4法案を第183回国会に提出した。内容は、野田内閣が提出した法案を手直ししたものであった。この法案は、衆議院による修正を経て、自由民主党、公明党の与党のほか、野党のうち民主党、日本維新の会、みんなの党などの賛成により成立した(日本共産党、生活の党、社会民主党などは反対)[84][85]。
番号制度関連法の成立を受けて、連合は事務局長名で「連合結成以来の最重要課題として力を入れて取り組んできた番号制度が今国会で導入されるに至ったことを高く評価する」と表明した[82]。経済同友会(長谷川閑史代表幹事)は「マイナンバー関連法案が参議院にて可決、成立したことを歓迎する」と表明した[86]。また、日本経済団体連合会(経団連)も番号制度の早期実現を求めていた立場であった[87]。
一方、日本弁護士連合会(山岸憲司会長)は「本法案には、日本社会の今後のあり方や財政に重大な影響を与える問題があるにもかかわらず、十分な審議に基づく抜本的な見直しを行うことなく、国会が拙速に本法案を成立させたことは極めて問題であり、強く抗議する」という会長声明を出した[88]。
運用開始[編集]
2015年(平成27年)10月5日に、日本国内の全住民に対する個人番号の指定が始まった。2016年(平成28年)1月からは、行政手続における個人番号の利用が開始された。2016年(平成28年)1月時点では、個人番号の利用範囲は、法律で税、社会保障、災害対策の3分野のうちの、特定の範囲に限定されている[89]。ただし、近い将来に3分野以外でも個人番号の利用が開始されることが確定している[90]。
PRキャラクター[編集]
脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ 登録第5756402号
- ^ 日本国籍を有する者。以下特に記述ない限り同じ。
- ^ 外国国籍を有し、日本国籍を有さない者。以下特に記述ない限り同じ。
- ^ 電子申告をする場合、申告者本人の番号確認書類および本人確認書類の提出は、公的個人認証サービスの確認により省略される。
出典[編集]
- ^ 宇賀克也『番号法の逐条解説』(有斐閣、2014年、ISBN 978-4-64113158-3)
- ^ “デジタル庁統括官が語るマイナンバーの活用法、今後の取り組みは?(TOKYO MX)”. Yahoo!ニュース. 2021年11月5日閲覧。
- ^ 「行政機関が保有する情報の再提出不要化」に関する質問事項に対する回答
高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部 情報通信技術利活用のための規制・制度改革に関する専門調査会(第6回) 議事次第資料2、2011年2月3日。首相官邸ホームページ - ^ “法人番号とは|国税庁法人番号公表サイト”. www.houjin-bangou.nta.go.jp. 2020年6月2日閲覧。
- ^ マイナンバー制度概要
- ^ a b マイナンバー社会保障・税番号制度(内閣官房、2015年10月16日閲覧)
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- ^ 週刊金曜日 2018年11月2日号
- ^ 国民の皆様から「共通番号」の名称を募集します(番号制度創設推進本部、2011年2月24日)
- ^ 井出一仁 共通番号の名称が「マイナンバー」に決まった経緯は?(ITpro、2011年7月8日)
- ^ 原井直子 社会保障・税に関わる番号制度の概要 レファレンス 平成24年4月号
- ^ 社会保障・税に関わる番号制度における「番号」の名称の決定について 番号制度創設推進本部 平成23年6月30日
- ^ 社会保障・税に関わる番号制度に関する実務検討会(第14回)(2011年12月16日)の配布資料
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- ^ 住民基本台帳法第39条
- ^ 住民基本台帳法施行令第33条
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- ^ 所得税法施行規則73条1項1号。給与収入30万円以下の退職者の「給与支払報告書」の提出を省略する場合(地方税法317条の6第3項但書)を除き、当該申告書を提出しない給与所得者も同様。
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- ^ 内閣官房社会保障改革担当室・内閣府大臣官房番号制度担当室『マイナンバー 社会保障・税番号制度 概要資料(平成26年11月版)』(2014年11月)
- ^ a b “「秘密の副業」「隠し口座」「遺産」が全部バレるって本当!? - 「マイナンバー制度」について担当省庁に聞いた(1)”. マイナビニュース (2016年1月5日). 2020年12月3日閲覧。
- ^ 番号法施行令第2条第2項
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- ^ 「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の規定による通知カード及び個人番号カード並びに情報提供ネットワークシステムによる特定個人情報の提供等に関する省令」(平成26年総務省令第85号)第33条第1項
- ^ 番号法第17条第6項
- ^ 「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の規定による通知カード及び個人番号カード並びに情報提供ネットワークシステムによる特定個人情報の提供等に関する省令」(平成26年総務省令第85号)第26条
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- ^ a b 「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」の成立に対する談話(2013年5月27日、日本労働組合総連合会事務局長南雲弘行)
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- ^ 法律案等審査経過概要(衆議院)
- ^ 本会議投票結果(参議院)
- ^ マイナンバー関連法案の成立について(2013年5月24日、公益社団法人経済同友会代表幹事長谷川閑史)
- ^ 豊かな国民生活の基盤としての番号制度の早期実現を求める(2010年11月16日、日本経済団体連合会)
- ^ 「共通番号」法案成立に対する会長声明(2013年5月24日、日本弁護士連合会会長山岸憲司)
- ^ 番号法第9条
- ^ 「個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律」(平成27年法律第65号)第7条により、金融機関の破綻時のペイオフのための名寄せに個人番号が利用できるようになる。
参考文献[編集]
- 水町, 雅子 『逐条解説番号法』(第1版)(株)商事法務、東京都中央区日本橋茅場町、2017年11月15日。ISBN 978-4-7857-2567-9。
関連項目[編集]
- 国民識別番号 - 同姓同名同年齢でも区別出来る、世界各国の共通番号制度の総称。
- マイナンバーカード(個人番号カード) - 個人番号が記載されたプラスチック製のICカード。
- 法人番号 - 法人と一部の団体に対し日本の国税庁が指定する識別番号。
- 内閣府特命担当大臣(マイナンバー制度担当)
- 基礎年金番号
- 住民基本台帳
- 住民票コード
- 住民基本台帳カード
- デジタルトランスフォーメーション
- デジタル庁
外部リンク[編集]
- 総合ポータルサイト
- 関係行政機関のページ
- 公式の広報
- マイナンバー制度 (@mynumber_pr) - Twitter - 内閣府
- マイナちゃんのマイナンバー日記 (mynadiary) - Facebook - 内閣府
- マイナンバーカード総合サイト - 地方公共団体情報システム機構
- マイナンバー制度 - YouTubeチャンネル - 内閣府