家父長制

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家父長制(かふちょうせい、ドイツ語: Patriarchat英語: patriarchy)は、家長権(家族と家族員に対する統率権)が男性たる家父長に集中している家族の形態[1]。「父権制」と訳されることもある[2]。古代ローマに、その典型を見ることができる[2]。日本の明治民法において、家長権は戸主権として法的に保証されていた[1]

家父長制はパターナリズム(paternalism)ともいわれる。父と子の関係にしばしば見られるような、他者の利益を名目に他者の行動に強制的に干渉しようとする考え方のこと[3]。父親が小さな子供のために、よかれと思って子供の意向をあまり聞かずに意思決定することから来ている[4]。父子関係以外にも、医師などが、患者の健康を理由に患者の治療方針を一方的に決めるような場合も例に挙げられる[5]

家父長制の問題点[編集]

家父長制度、父権制あるいはそれに準じる意識がDVの原因となっているとの研究や指摘がある[6][7][8][9]

女性の社会進出との関わり[編集]

神戸大学教授の平野光俊は、パターナリズムの一例として「結婚や出産後は退職して家事・育児に専念することが女性にとっての幸せだ」という固定観念と、「出産を経て復職した女性は大変そうだから責任のある仕事はさせない」という男性側の「優しさの勘違い」を挙げている[10]

このように女性の社会進出を阻むのは家父長制パターナリズム)による男性の支配・差別が原因と考えられてきた。しかし1990年代専業主婦論争で女性の自立を促すフェミニズムに批判があり、2013年厚生労働省調査では、15~39歳の独身女性の3人に1人が専業主婦になりたいと希望する一方、結婚相手に専業主婦になるよう望む同年代の独身男性は5人に1人にとどまるなど、女性自ら専業主婦を望む傾向にある[11]2018年マイナビウーマン記事によると、現代男性は「妻子を養う」とは考えていないという。女性活躍推進事業を展開している株式会社wiwiw執行役員の三輪英子は「専業主婦もキャリアのひとつ」とする[12]。人気ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』原作者の海野つなみは「価値観の違いを認め合えばいい。社会は多様化しており、いろんな形があっていい」と述べた[13]

脚注[編集]

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  1. ^ a b 『縮刷版 社会学事典』弘文堂、1994年、156頁。
  2. ^ a b 長谷川公一「政治社会とジェンダー」『ジェンダーの社会学』新曜社、1989年、91-92頁。
  3. ^ 池松辰男 (2017年3月). “時事用語事典 パターナリズム [paternalism]”. 時事オピニオン. 集英社. 2019年2月20日閲覧。
  4. ^ 用語集 パターナリズム”. 健康を決める力. 中山和弘(聖路加国際大学). 2019年2月20日閲覧。
  5. ^ 池松辰男 (2017年3月). “時事用語事典 パターナリズム [paternalism]”. 時事オピニオン. 集英社. 2019年2月20日閲覧。
  6. ^ R.E. Dobash and R.P. Dobash, "Violence and Social Change, Routledge & Kegan Paul, 1992.
  7. ^ K. Yllo and M. Bograd, "Feminist Perspectives on Wife Abuse, Sage", 1988.
  8. ^ 「ドメスティック・バイオレンス(DV)の加害者に関する研究」、研究部報告24、法務総合研究所研究部。
  9. ^ 松島京、「親密な関係性における暴力性とジェンダー」、立命館産業社会論集、36(4)、2001年。
  10. ^ 麓幸子. “女性管理職を増やすには”. 日経メディアマーケティング株式会社ホームページ. 日経メディアマーケティング株式会社. 2019年2月20日閲覧。
  11. ^ 独身女性、3人に1人が専業主婦希望 厚労省調査”. 日本経済新聞. 日本経済新聞社 (2013年9月24日). 2019年2月20日閲覧。
  12. ^ 30代以下専業主婦の7割が「罪悪感ある」 “女性活躍”で見失っているモノとは…”. FNN. 株式会社フジテレビジョン (2018年12月10日). 2019年2月20日閲覧。
  13. ^ 専業主婦は輝く女性?「逃げ恥」作者「違い認めると楽」”. 朝日新聞デジタル. 株式会社朝日新聞社 (2018年4月2日). 2019年2月20日閲覧。

参考文献[編集]

関連項目[編集]