大法廷

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最高裁判所大法廷(東京都千代田区隼町)

大法廷(だいほうてい)とは、最高裁判所における、裁判官15人全員で構成される合議体、あるいは15人全員の合議体で審理する場合の最高裁判所における法廷のことをさす。

概説[編集]

最高裁判所に係属した事件は、通常5人で構成される小法廷で審理されるが、重要な事件や違憲判決については大法廷で審理がなされる。裁判長最高裁判所長官(ただし、長官に審理を回避すべき事情があるなど、長官が審理に関与しない場合は、別の裁判官が裁判長を務める)。定足数は9名である。原則として水曜日に開廷される。年平均の開廷数は約3回程度となっている。一般には、違憲審査の最終判定が下される法廷として知られる。208席の傍聴席がある[1]

大法廷で審理される案件[編集]

  1. 当事者の主張に基づいて、法律条例命令規則、又は処分日本国憲法(以下「憲法」)との適合の是非を判断するとき(意見が前に大法廷でした、その法律、命令、規則、又は処分が憲法に適合するとの裁判と同じであるときを除く)
  2. 上記の場合を除いて、法律、条例、命令、規則、又は処分が憲法に適合しないと認めるとき
  3. 憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するとき
  4. 小法廷の裁判官の意見が数説に分かれ各々同数の場合
  5. 裁判官の分限裁判
  6. 人事官の弾劾裁判
  7. 国政選挙における一票の格差問題と憲法の適合の是非など小法廷が大法廷に回付することを相当と認めたとき

裁判所法10条及び裁判官分限法4条によれば1~3・5のときには大法廷で審理をしなければならず、最高裁判所規則により4・6のときも大法廷で審理することが義務づけられている。なお、裁判所法の一部を改正する等の法律(昭和23年法律第260号)による改正前までは、1号カッコ書きに該当する規定は存在せず、憲法事件は全て大法廷事件であったが、同改正法施行の1949年昭和24年)1月1日以降は、一度大法廷判決で合憲とした事件は、小法廷で判断できることになり、「大法廷判決の趣旨に照らして明らか」であれば、小法廷で判断を下すことができることになっている。したがって、小法廷で憲法判断をする場合は、必ず過去の大法廷判決が引用されている。

つまり、大法廷で審理される事件の多くは、処分の根拠となった法令が、日本国憲法に抵触しており、その法令を改訂し、処分を取り消さなければならない「違憲判決」となる可能性を秘めている。

最近の最高裁判所大法廷判決[編集]

  • 国籍法3条1項が、日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子につき、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した場合に限り日本国籍の取得を認めていることにより国籍の取得に関する区別を生じさせていることは、遅くとも2005年当時において、日本国憲法第14条1項に違反するとされた事例(最大判2008年6月4日退去強制令書発付処分取消等請求事件及び国籍確認請求事件)。
  • 土地区画整理事業の事業計画決定が取消訴訟の提起できる行政処分に当たるとした事例(最大判2008年9月10日(最大判1966年2月23日の判例(青写真判決)の判例変更))
  • 2007年7月29日施行の参議院議員通常選挙について、東京都選挙区の選挙人である上告人らが、参議院議員の議員定数配分規定は日本国憲法第14条1項等に違反し無効であるから、本件選挙の上記選挙区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟の上告審で、本件選挙は、2005年公職選挙法一部改正の約1年2か月後に施行された初めての参議院議員通常選挙であり、本件選挙当時の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は1対4.86であったところ、この較差は、改正前の最大較差1対5.13に比べて縮小したものとなっていたことなどの事情を考慮すれば、本件選挙までの間に本件定数配分規定を更に改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えたものということはできず、本件選挙当時において、本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたものとすることはできないとした事例(最大判2009年9月30日)。
  • 議会議員に対する解職請求を求める署名の請求代表者に農業委員会委員が含まれるとして無効とした選挙管理委員会の決定について、地方自治法施行令115条・113条・108条2項及び109条の各規定のうち、公職選挙法89条1項を準用することにより、公務員につき議員の解職請求代表者となることを禁止している部分は、その資格制限が地方自治法80条1項の請求手続にまで及ぼされる限りで、同法85条1項に基づく政令の定めとして許される範囲を超え、無効であるとして取り消された事例(最大判2009年11月18日)。
  • 北海道砂川市が、その所有する敷地を空知太神社に無償で使用させていた処分につき、憲法21条3項及び同89条後段に違反するとされた事例(最大判2010年1月20日。なお、同日大法廷において判決が言い渡された富平神社に対する市有地の無償譲与については、違憲のおそれのある状態を解消するために行われた本件事実関係の下では、憲法に違反するとはいえないと判示された)。
  • 裁判員裁判により審理された覚せい剤取締法違反被告事件において、裁判官でない裁判員が裁判に関与する裁判員制度が「憲法上、国民の司法参加が禁じられていると解すべき理由はない」として合憲とされた事例(最大判2011年11月16日)。
  • 2010年7月11日に行われた参議院議員通常選挙において投票較差が5.00倍になり、2つの弁護士グループから選挙無効を求めて全国の高等裁判所に提起された訴訟17件について、「違憲状態」と認定された事例(最大判2012年10月17日)。なお、香川県選挙管理委員会を被告として提起された訴訟では、同選管委員長が竹崎博允長官の実兄だったため、竹崎長官が審理を回避して田原睦夫裁判官が裁判長を務めた。
  • 嫡出子の遺産相続分は嫡出子の半分であると定める民法第900条の規定が、法の下の平等を定めた日本国憲法第14条に違反するとされた事例(最大判2013年9月4日)。
  • 2012年12月16日施行の衆議院議員選挙について、最大2.43倍の「一票の格差」が生じた状態で行われた選挙は「違憲状態」であるものの選挙自体は有効であるとされた事例(最大判2013年11月20日)。
  • 2013年7月に実施された第23回参議院議員通常選挙一票の格差が最大4.77倍に達しており、法の下の平等を定めた日本国憲法第14条に反し無効であるとの判決を求める訴訟(2014年6月25日回付)2014年11月26日、最高裁判所大法廷多数意見は「公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の下で,選挙区間における投票価値の不均衡は平成24年法律第94号による改正後も違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった」と判断したものの「国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず,上記規定が憲法に違反するに至っていたということはできない」と判断した。(最大判2014年11月26日)。
  • 夫婦別姓の選択を認めない民法の規定は日本国憲法違反として、国家賠償を求めた訴訟」「民法の再婚禁止期間規定は日本国憲法違反を求めた訴訟」の2つの上告審で、夫婦別姓は裁判官の多数決で合憲(だだし、女性裁判官は全員一致で「違憲」判決)、再婚禁止期間は100日を超える部分は過剰として、日本国憲法第14条1項及び24条2項に違反すると下した事例(最大判2015年12月16日)。
  • 2016年7月に実施された第24回参議院議員通常選挙一票の格差が最大3.08倍に達し、二つの弁護士グループが選挙無効を求めた訴訟で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は、「合憲」とする統一判断を言い渡した(最大判2017年9月27日)。

大法廷に係属中の事件[編集]

  • NHK契約義務違憲裁判で係争中の裁判が最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)で決着せず、大法廷に回付されてた訴訟[2](2016年11月2日)

別の意味[編集]

下級裁判所において、建物の設備として特に広い法廷を「大法廷」と称することがある。東京高等裁判所101号大法廷、東京地方裁判所103号大法廷など。当事者の人数が多い事件、世間の関心が高く多数の傍聴希望者が詰めかけると予想される事件などで使用される。

脚注[編集]

  1. ^ 野村二郎「日本の裁判史を読む事典」(自由国民社)63頁
  2. ^ NHK契約義務、憲法判断へ=受信料未払いめぐり―大法廷に回付・最高裁

関連項目[編集]