非常上告

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非常上告(ひじょうじょうこく)とは、日本において検事総長最高裁判所に対して、刑事訴訟における確定判決について、その事件の審判が法令に違反したことを理由としてその違法の是正を求める申立てである(刑事訴訟法454条)。

解説[編集]

通常、判決文の中に如何に明白な誤りがあったとしても、当事者上訴しなければ訂正はできない[注 1]。当事者の上訴の意思とは無関係に原判決を破棄できる点に、この制度の意義がある。例えば、法律上は最高刑が罰金10万円となっているのに求刑・判決とも罰金20万円となり、被告人が控訴・上告等をせずに判決が確定してしまった場合に非常上告により判決を破棄させることができる。判例によれば、被告人が原判決の確定後に死亡した場合[1]や海外に出国している場合[2]にも、非常上告できるとされている。

受理件数[編集]

各年の新規受理件数は以下のとおりである[3]。通常は年間1桁の件数である。

受理件数
2000年 0
2001年 3
2002年 4
2003年 3
2004年 4
2005年 5
2006年 2
2007年 3
2008年 3
2009年 1
2010年 253
2011年 2
2012年 62
2013年 19
2014年 2
2015年 2
2016年 2
2017年 0
2018年 0
2019年 1
2020年 1
2021年 0
2022年 0
  • 2011年8月-2012年1月に、大分地方検察庁において、休職により検察官事務取扱検察事務官の発令が失効した検察事務官が、復職後にその再発令を受けず、権限のないまま164件の事件(道路交通法違反、自動車運転過失傷害罪など)を処理していたことが発覚した。97件は不起訴とされたが、67件は略式起訴の手続が取られ、62件はすでに略式命令による罰金判決が確定していた[5]。この62件について非常上告が申し立てられたため、2012年の受理件数が極端に増加している。
  • 2023年3月2日、福井地方検察庁は、休職により検察官事務取扱検察事務官の発令が失効した検察事務官が、復職後にその再発令を受けず、権限のないまま42件の事件(道路交通法違反など)を処理し、そのうち23件は略式命令が確定していたため、非常上告を行い、2023年9月までにいずれも公訴が棄却された。
  • さらに、2023年9月27日、松江地方検察庁は、2023年4月から5月にかけて、益田市神田町を通る国道9号線にて、制限速度を60km/hから50km/hに引き下げる手続きが完了していないにもかかわらず、警察が現地に50km/h制限の標識を設置したうえ、17人を速度違反で取り締り、そのうち2人は罰金の略式命令が確定していたと発表した[6]。そのため、同年12月に非常上告を申し立て、2024年3月7日にいずれも公訴が棄却された[7]。このため、2023年の受理件数が多くなる可能性がある。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 例外的に、単なる誤記の場合には判決の更正という手続が認められている。

出典[編集]

関連項目[編集]