神社本庁

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神社本庁(東京都渋谷区代々木1-1-2)

神社本庁(じんじゃほんちょう)は、神宮(伊勢神宮)を本宗とし、日本各地の神社を包括する宗教法人

概要[編集]

神社本庁の宗教法人としての規則である「神社本庁庁規」では、神社本庁の目的を、包括下の神社の管理・指導、神社神道の宣揚・神社祭祀の執行・信者(氏子)の教化育成・本宗である伊勢神宮の奉賛・神職の養成・冊子の発行頒布を通じた広報活動など、としている。また政治運動として、皇室の男系継承の尊重、首相靖国神社公式参拝の推進なども行っている。また、神道政治連盟日本会議といった団体を通じて、自民党を中心とした一部の保守政治家にも影響力を持ち政治活動を行っている。

神社本庁は最大の神社統括組織だが、唯一の組織ではなく、他団体に属する神社も数多い。また包括団体への加盟・離脱は各神社の選択によるため、有力社・古社・地域の中小神社にも、神社本庁の傘下に属さない神社(単立神社)がかなりの比率で存在している(後述)。

設立の経緯[編集]

戦前の日本においては、教派神道などの例外を除き、神道を国家神道とすることで日本国民の道徳の根源として、事実上国教化していた。戦後改革の一環として連合国軍最高司令官総司令部1945年12月15日、国家と神道勢力が結合する形態は、政教分離の概念から問題があるとして神道指令を発し、神社を国家から分離することを命じた[1]

そのため、1946年2月3日皇典講究所大日本神祇会神宮奉斎会の3団体が中心となり[1]、全国の神社の総意により内務省の外局・神祇院の業務を引き継ぐ形で神社本庁が設立された。神祇院の後継的存在だが、現在では宗教法人法にもとづく包括宗教法人の一つとされる。

教義[編集]

神道とは日本民族の古来の習俗に由来する、自然崇拝祖先崇拝を基調とした信仰を総称した言葉であり、神社神道には、キリスト教聖書イスラム教コーランのような教典は存在しない(教派神道は除く)。伊勢神宮系であり出雲派教義を明治期遠ざけたため、そのしこりは今も存在している。

神社本庁憲章[編集]

神社本庁は全国約8万社の包括宗教法人である。各神社にはそれぞれ由緒があり、信仰的にも八幡信仰、稲荷信仰などと様々であって、一つの教義を定めるのは非常に困難であった。そこで昭和55年5月21日評議員会議決を以て「神社本庁憲章」を定めた。その経緯と位置づけは前文に「今日まで重要な懸案とされてきたのは、精神的統合の紐帯として、基本的規範を確立整備することであつた。」とあり、その効果については附則に「この憲章施行の際、庁規及び従前の規程等は、この憲章に基いて定めたものとみなす。」とある。

第一条は「神社本庁は、伝統を重んじ、祭祀の振興と道義の昂揚を図り、以て大御代の彌栄を祈念し、併せて四海万邦の平安に寄与する。」とある。

敬神生活の綱領[編集]

「神社本庁憲章」以前、神社本庁の実践的精神を示すものとして昭和31年に制定されたのが「敬神生活の綱領」である。

神道は天地悠久の大道であって、崇高なる 精神を培ひ、太平を開くの基である。 神慮を畏み祖訓をつぎ、 いよいよ 道の精華を発揮し、 人類の福祉を増進するは、使命を達成する所以である。 ここにこの綱領をかかげて向ふところを明らかにし、 実践につとめて以て大道を宣揚することを期する。

一 神の恵みと祖先の恩とに感謝し、明き清きまことを以て祭祀にいそしむこと

一 世のため人のために奉仕し、神のみこともちとして世をつくり固め成すこと

一 大御心をいただきてむつび和らぎ、国の隆昌と世界の共存共栄とを祈ること

神社本庁には成文化された教義はないが「神社本庁憲章」と「敬神生活の綱領」を以てその設立及び活動の精神と見ることができる。

組織[編集]

広義と狭義の神社本庁[編集]

神社本庁は約8万社の神社包括団体である。そのため広義の「神社本庁」とは被包括神社を含めた集合体を指し、狭義の「神社本庁」とは渋谷区代々木にある事務組織を指す。神社本庁の議決機関は全国の神職・総代から選出された評議員会であり、総長以下役員もそこで選任される。そのため監督官庁である神祇院とは根本的に組織体質が異なる。

教団組織[編集]

また、以上の教団組織のほか、関係団体、指定団体がある。

関係団体[編集]

神社本庁が業務として事務を行う、又は事務局へ職員を派遣する等、神社本庁が直接その運営に参画している団体。

  • 一般財団法人神道文化会
  • 全国神社総代会
  • 神道政治連盟
  • 神社新報社(業界紙を発行する株式会社だが、評議員会開催の告知記事の掲載先に指定されている)

友好団体[編集]

神社本庁とは別組織の事務局に運営されるが、神社本庁関係者が役員に就任するなどの関係を有する団体。

指定団体[編集]

神社関係団体のうち特に神社本庁がその活動を勧奨、育成、助成するものに指定団体がある。

  • 全国敬神婦人連合会

 神社に奉仕する婦人会の全国組織。

  • 神道青年全国協議会

 若手神職からなる全国組織。

  • 全国神社保育団体連合会

 神社を運営母体とする幼稚園・保育園・認定こども園・保育所等の相互互助と研鑚を目的とする。

  • 全国教育関係神職協議会

 教職員を兼業する神職の相互互助と研鑚を目的とする。

  • 全国神社スカウト協議会

 ボーイスカウト・ガールスカウトを直接運営又は運営に協力する神社の相互互助を目的とする。

  • 全国氏子青年協議会

 神社を中心にした青年の団体で神社への奉仕を通じて地域社会の発展に寄与することを目的とする。

神社本庁との被包括関係に属さない神社[編集]

政治活動[編集]

神社本庁の関係団体に神道政治連盟があり、日本会議とも交流がある。

  • 過去に実施された日本会議のイベントの受付では、神社本庁を含む各種宗教団体別の受付窓口が設けられ、参加者を組織動員したこともあることが指摘されている[2][3]

皇室典範の改正[編集]

2005年(平成17年)3月17日、神社本庁は、「皇室典範に関する有識者会議」が皇位継承のあり方を検討していることを受け、「皇室典範改正に関する神社本庁の基本的な姿勢」としてまとめ、各都道府県の神社庁に送付した。また同年11月24日に有識者会議が報告書を提出したことに対し、12月2日に「皇室典範改正問題に関する神社本庁の基本見解」を発表した[4]

「皇室典範改正に関する神社本庁の基本的な姿勢」で、「歴史的に、皇位は男系によって継承された」などと主張している。政府や有識者会議に対しては「男系による継承の歴史的な意義と重みを明確にした上で、将来にわたって安定的に皇統を護持するための具体的な論議がなされるべきだ」などと主張し、男系による皇位継承を尊重する立場を明確にした。また、天皇皇族憲法基本的人権の「例外」とされることからも、男女平等の観点で女系天皇を論じるのは不適切と主張した。皇位継承のあり方に「海外の例を安易に取り入れることは、国柄の変更をもたらす恐れがある」などとも主張している。

「皇室典範改正問題に関する神社本庁の基本見解」においては、「皇位は、125代にわたって一つの例外もなく男系により継承されており、天皇を中心に国家・社会の安寧と秩序が保たれてきた」「本来、「伝統」とは、その本質において不変のものであり、皇位継承の伝統も各時代ごとにその本質を崩すことなく、様々な努力と選択が積み重ねられ伝えられてきた」などと主張。有識者会議の報告書について「女系継承の大前提となる女子皇族の配偶制度をはじめとする諸課題についての具体的議論を経ないままに、新制度を「安定的」と断ずることは甚だ疑問としなければならない」などと主張している。

首相の靖国神社公式参拝[編集]

2005年(平成17年)6月9日、神社本庁は内閣総理大臣の参拝等で議論を呼んだ靖国神社の諸問題に関して、神社本庁としての基本見解を発表した[5]

その中で、神社本庁としては、A級戦犯も含め、戦争裁判犠牲者を日本政府の一連の措置により昭和殉難者として合祀、慰霊してきた靖国神社を支持するとともに、多くの人が祭神の「分祀」の意味を誤解して神社祭祀の本義から外れた議論がなされていることを憂慮すると表明。見解の要旨は、靖国神社は日本の戦没者追悼の中心的施設である・祭神の分離という意味の「分祀」は神社祭祀の本義からありえない・首相は靖国神社参拝を継続するべきである・いわゆるA級戦犯は国会の決議とそれにかかる政府の対応により合祀されたというものである。

なお、神社本庁は靖国神社崇敬奉賛会の法人会員でもある。

紀元節復帰運動[編集]

1957年(昭和32年)8月21日には、神社本庁は生長の家修養団などと合同で紀元節復活運動のための統一団体「紀元節奉祝会」を結成した。1967年(昭和42年)には「建国記念の日」の名称で紀元節を復活させるなど政治的な理念も有して活動している。

上関原子力発電所建設に伴う四代八幡宮境内地処分問題について[編集]

中国電力が建設予定の山口県上関原子力発電所予定地の一部が四代八幡宮の境内地にかかっていたが、当時の宮司は神社地の原発用地への提供に反対したため、2003年には原発推進派の氏子が宮司解任を要求するなどの騒動に発展した[6][7]。神社本庁は同神社境内地の財産処分申請に対し「原子力発電地球温暖化の原因となる温室効果ガスを排出しないため環境破壊に当たらない」として、四代八幡宮に対して境内地売却の財産処分を承認した[8]

選択的夫婦別姓[編集]

選択的夫婦別姓制度導入に反対している。

脚注[編集]

  1. ^ a b 『神道』 136頁。
  2. ^ 上杉聡。「日本における『宗教右翼』の台頭と『つくる会』『日本会議』」戦争責任、39、2003年 53ページ。
  3. ^ 「日本会議に集まる宗教団体の面々」、Harbor Business Online、2015年3月11日
  4. ^ 皇室典範改正に関する神社本庁の基本的な姿勢・皇室典範改正問題に関する神社本庁の基本見解
  5. ^ 靖国神社をめぐる諸問題に関する神社本庁の基本見解
  6. ^ 「現代農業」(農山漁村文化協会)2002年5月増刊号
  7. ^ 「神社本庁が安倍の地元で鎮守の森を原発に売り飛ばし!反対する宮司を追放」、リテラ、2014年10月19日
  8. ^ 山口県上関町・八幡宮所有地の上関原発建設用地への財産処分承認申請書に対する承認の可否 『神社新報』平成16年8月30日

関連項目[編集]

参考文献[編集]

外部リンク[編集]